SCP-000『オール・イン・ワン』 Object Class: Thaumiel / Apollyon 作:アママサ二次創作
「やあ! 君もオブジェクトかい?」
カフェに入ってすぐ、そう言って手を上げた人物の首元にぶら下がっている首飾りを見て、要は額に手を当て大きなため息を吐いた。
******
「おーすおはよう要」
体育祭の翌日。登校した要が、他のクラスメイトの話を聞いていると十影が教室に入ってくる。いつもの光景だ。
「お! 藤見! お前朝凄かったんじゃね?」
「絶対注目されたでしょ! 圧倒的1位だったし!」
教室に入ってきた十影に、芦戸や切島など放課後のトレーニングでそれなりの知り合いになっていたメンバーが声をかけた。
雄英の体育祭は1万人以上の観客を誇り、また全国で生放送をされるため、そこで活躍すると大きな注目を集める。今朝A組のほとんどのクラスメイトは、周りの一般人からかなりの注目、ある種の芸能人を見るような視線を向けられながら学校にやってきたのである。彼らにとってそれは、ヒーローという職業の夢を感じさせるものであり、それでクラスが盛り上がっていたのだ。
そしてそれは、トーナメントでそれなりの順位につけた自分たちよりも、圧倒的な1位になった十影が凄かったのだろうと声をかけたのである。
だが、十影の反応は鈍いものだった。
「あー、まあな。それよりちょっと要借りてくぜ」
そう答えると、クラスメイトの話を聞きながら教科書をめくっていた要が何かを言う前に肩に担いで教室から出る。背中の側にいる要には久しぶりの光景にぽかんとするクラスメイトの顔が見えたが、それもすぐに教室の扉に遮られて見えなくなった。やがて階段の踊り場で要は地面に下ろされる。
「急にどうした?」
「あー、今日の放課後、空いてたりする?」
「トレーニングの予定しか無いから空いていると言えば空いているが。どうした?」
そう問い返すと、十影は少しばかり悩むようにした後話し始める。
「実は昨日、うちに来客があってよ」
「ああ」
「親父もお袋も知らねえ相手だったけど、なんつーか、俺も見覚えのある首飾りをしてたんだよな」
大抵の休日は要の家に遊びに来るか、要と一緒に高校のトレーニングルームや演習場で訓練をしている十影が、体育祭直後には遊びに来なかった。別に毎日要に絡むのが彼の義務というわけでもないし、そういうこともあるだろう程度に考えていたのだが、どうやら昨日十影のところには来客があったらしい。
そこまではまだいい。
問題は、その来客者だ。
「……すまん、もう一回言ってくれ」
「だからよ、変な首飾り、っつーか見覚えのある首飾りしたやつが来て色々話していこうとしやがったんだよ。記憶のことは親にもはっきりとは言ってねえから、取り敢えず近くの公園まで引きずっていって話聞いたんだよ。凄い自分勝手な人でさ」
十影の言った人物。変な、十影の見覚えのある首飾り。自分勝手。
聞き覚えがあるではないか。
「くすぐりスライムがどうとか、幼女がどうとか。見覚えがあるかとか色々と言ってきてさ」
その話の細部を要に伝える必要はない、と十影は省略する。要も、それだけの情報を知ればわかる。
「……なんて答えたんだ」
「1人じゃあ判断がつかねえからまた連絡する、っつって電話番号もらってきた」
そう答える十影に、要はポケットから出したメモ帳に脳内にある1つの首飾りを描く。
「その首飾りは、これか?」
「それ」
「相手は名乗ってたか?」
「いや、名乗ってはくれなかった。聞いたんだけど、思い出せないなら話すわけにはいかない、って言ってよ。あれは俺に記憶があるって気づいてたな」
「だろうな」
そう答えた要は、ポケットにメモ帳を突っ込んでから少し考え込む。その相手の正体には、正直心当たりしかない。ただ、いきなり会っても良いものか決めかねている。とはいえ。
「会わないわけにもいかない、か。今日の放課後って言ったか?」
「会うなら早い方が良いと思ってよ。じゃあ放課後に会えるように連絡しとくぜ?」
「頼む。と、もう時間だ。後は昼休み」
「りょーかい」
朝の学活の時間が近づいたので、話を切り上げて教室に戻る。要が自分の席についた直後、相澤が教室に入ってきた。
「今日の“ヒーロー情報学”はちょっといつもと違ったことをやる。『コードネーム』。つまりヒーロー名の考案だ」
「「「ヒーローっぽいの来たあああああ!!!」」」
相澤の指示に、クラスが大きく沸き立つ。コードネーム。即ち、ヒーローとして活動する際の名前だ。例えばオールマイトやミッドナイトというのは彼彼女の本名ではなく、そのヒーローとしての姿を示すためのものだ。相澤で言えば、イレイザーヘッドというのがヒーロー名である。
それを、自分たちで考える。まさにヒーローとしての第一歩ともいえる。
「静かに。このタイミングでこれをするのは、先日話した『プロからのドラフト指名』があるからだ。端的に言えば、お前らにはこの指名の有無に関わらず『職場体験』に行ってもらう。プロの活動を実際に体験して、今後の訓練を充実したものにしようってことだ」
そこで盛り上がりそうになるクラスだが、相澤がざわりと髪の毛を逆立てると一瞬で静かになる。
「指名が本格化するのは実力が確かなものになる2、3年から。言ってみれば今回のは才能のありそうなやつに唾つけとこうってことだ。とはいえ、ここで実力を見せれれば来年以降の指名につながるし、逆に興味を失われたら今後一切声がかからない、なんてこともありえる」
―――で、その指名の結果がこれ。
そう言って相澤が黒板を叩くと、そこにグラフが表示される。
トーナメントで上位に入った轟、常闇、爆豪らの数が多く、続いてトーナメント出場者の名前ばかりが集まっている。
「例年はもっとばらけるんだが、今回は上位に集まった。まあ、一番多かったのはB組の藤見だがな。あいつ1人でこのクラスの合計より多い」
「まじか……!」
「とにかく、この指名をもらえたやつはその中から選んで。それ以外のやつも、こっちで契約している事務所から選んで職場体験に行ってもらう。ということで、その前にヒーロー名決めだ。後は―――ミッドナイトさん」
相澤の言葉と同時に、ミッドナイトが教室に入ってくる。
「ヒーロー名を考えるお手伝いは私がするわ!」
「俺にそのあたりのセンスは無い。後はミッドナイトさんに聞いてくれ」
そう言うと相澤は教室の隅で寝袋に潜り込んでしまった。
そして、ミッドナイトが話を初めて、クラスメイトたちが順にヒーロー名を発表していく。そんな中朝十影にされた話について考えていた要が、『エージェント』という適当な名前をつけてしまったのは、仕方の無いことだろう。
******
放課後。十影と合流した要は、学校から離れたとあるカフェに来ていた。個室ありのそのカフェが密談にちょうど良く、また学校の生徒に目撃される可能性が低く丁度いい、ということでそこに決まったのだ。
「準備は良いか?」
「俺は別に良いけど……ってか捕まりそうになったら逃げられるし。お前の方がやばくね?」
「……財団が存在するなら俺を収容してもらえば良い」
「まあそうだけどよ」
指示された個室の前で足を止めた2人は、軽く深呼吸をし、十影が先に立ってその個室の扉を引き開けた。
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