SCP-000『オール・イン・ワン』 Object Class: Thaumiel / Apollyon   作:アママサ二次創作

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第14話 指名

「―――。それと財田はこの後職員室に来い。以上」

 

 相澤の号令で学活が終わり、学校での一日が終わる。相澤に呼ばれた要は、荷物をまとめた後相澤から少し遅れて教室を出た。相澤に呼ばれるのは普段は学級委員の2人か小テストの点数がよろしくない数名ぐらいなので、要が呼ばれたことに何人かは不思議そうな目を向けてきた。

 

 職員室につくと、相澤に手招きされて職員室から面談室へ移動する。

 

「取り敢えず座れ」

「はい」

 

 言われたとおりに相澤と机を挟む位置で座ると、相澤は1枚の紙を要の方に差し出してきた。

 

「お前のところに指名が来た」

「はい」

「それ自体は問題ないんだが、お前の体育祭での成績とアピールがスカウトに値するものじゃなかったってのは自分でも認識してるな?」

 

 体育祭における要の活躍。それはクラスの他の指名が来ていない生徒よりも端的に言ってしょぼいものだった。最初の障害物競走自体は素の身体能力で突破したものの、その後の騎馬戦であえなく敗退。しかも目に見える個性を使えていないので、活躍と言える活躍を一切残していないのである。

 

「はい。それが問題、ということですか?」

「ああ。と言っても疑ってるわけじゃない。あくまで確認というだけの話だ。うちの生徒に対する指名においては、事務所と生徒の事前交渉は禁止されている。今回お前のところに指名が来たのは疑うに値する、ということだ」

「なるほど。それは十影にも同じ事務所から来ているからですか?」

 

 冷静に返した要の問いかけに、相澤は小さくため息をついて答える。

 

「お前が藤見と何らかの関係があるのは俺たちでも把握している。正直、お前が指名の来た事務所に行くのは問題じゃない。ただ藤見の場合は別だ。あいつは今回の1年生で一番注目されている」

「なるほど。ちなみに指名が来た事務所の名前は?」

「それに書いてるだろ」

 

 言われるままに紙を見て、要は口元を緩めた。やはりというべきか。ブライト博士の知人というプロヒーロー。こっち側の人間である。

 

「この際ですからお話して起きたいことがあるのですが」

「なんだ?」

「自分と十影の関係についてです」

 

 要の言葉に、相澤は怪訝そうに眉を潜める。そこの関係に関しては、あくまで仲が良いだけだと認識していたからだ。

 

「何かあるのか?」

 

 相澤の言葉に、要は数瞬の間を作ってから答える。このあたりの話術というのは、要が個人的に鍛えたものである。

 

「十影には、前世の記憶があるそうです」

「前世、というと生まれ変わるというあれか?」

「はい。その生まれ変わり前が自分のよく知るものだったのでそこから仲良くなりました」

「お前のよく知るもの?」

 

 遠回しな話で相澤を引き込んだところで、本題を放り込む。

 

「SCP-682“不死身の爬虫類”です」

 

 要の言葉に、相澤の表情が僅かに変わる。

 

「どういうことだ?」

「十影の個性は、俺の知っているSCP-682というオブジェクトの特性とほとんど一緒でした。おそらく個性の由来に、このオブジェクトが存在しています。またそのオブジェクトであった頃の記憶もある程度保持しているようです。自分と十影の間ですり合わせを行った結果、自分の知っているオブジェクトの記録と十影の前世の記憶に大部分の一致が確認できました」

「つまり……お前の言うオブジェクトとやらが転生したのが藤見だ、というのか?」

 

 確認するような相澤の問に、要は首を横に振る。

 

「十影の人格はあくまであいつのもののようです。しかし記憶や知識として、オブジェクトであった頃の過去を持っている感じのようです。そもそも十影の元になったオブジェクトはすべての生命を嫌悪する存在なので、全く同じだった場合にはこんなところにいないでしょう」

「……それが今回の指名に関係する、と?」

「昨日、十影とはまた別の、財団の存在した世界からの生まれ変わりである人物に遭遇しました」

「そいつも十影のようにオブジェクトだった頃の記憶があるのか?」

「いえ、彼の場合は十影と違って元から人間です。ちょっとしたオブジェクトの影響は受けていましたが、人間であったままその人格のまま転生してきています」

 

 説明を聴いた相澤は、少しの間額に手を当てて考え込む。

 

 要の話があくまで懸念程度に抑えられていたのは、それに関する存在が要だけだったからだ。だが。もうひとりの特別入学生である藤見や、他の転生したという人物。

 

 その存在は、即ちオブジェクトの存在を現しているのではないだろうか。

 

「……もう少し詳しく聞かせろ。この指名の来た事務所に覚えはあるのか? その転生したという人物がそこのヒーロー、ということか?」

「その人は自分がヒーローであるかどうかは言っていませんでした。ただその事務所のヒーローは知り合いである、と言ってました。それとその事務所の名前からして、多分そのヒーローの人も元オブジェクトです」

「何? それは確かか?」

「オブジェクトの1人がその名前を名乗っていたというだけで名前自体は聖書に出てくるものですが、あの人の知り合いということはそういうことなのだろうと思っています」

 

 少し考え込んだ相澤は、指名がプリントアウトされた紙の裏側にここまでの話を軽くメモする。これは自分の懐で収めるのではなく、校長まで通さなければならないものだ。

 

「じゃあもう1つ。2年生にも1人この事務所から指名が来てるんだが、心当たりはあるか?」

「昨日転生したという人物と会った際に1人先輩がいました。その方はオブジェクトの特性上記憶は曖昧のようですが、個性の内容は記憶の断片からオブジェクトの前世を持つことは間違い無いと思います」

「そうか……」

「ですが、その先輩は俺や十影と違って自分の記憶を嫌っていたようでしたので、学校からそれに関して何かアクションを起こすというのはやめた方が良いと思います」

 

 要の言葉に、一旦教室を出た相澤は録音用の端末を持ってきた。今更ながらに、この会話を録音しておいて校長に聞かせることを思いついたのだ。

 

「取り敢えず藤見と、その2年生、それと指名先のヒーローそれぞれのもともとのオブジェクトについて教えろ……。いや、基本的に今は個性だ。となると詮索すべきじゃない、か」

「先輩に関しては彼女自身もまだ整理がついていない様子だったのでお伝えは出来ませんが、十影と受け入れ先のヒーローに関しては問題ないと思います」

「……助かる」

「いえ。では」

 

 

 

******

 

 

 

「十影のもとになっているオブジェクトはさっき言った通りSCP-682“不死身の爬虫類”、オブジェクトクラスは《Keter》です。その本体は体育祭の決勝で十影が見せたあの大きな爬虫類の状態です。かなりの力と俊敏性を備えており武装した兵士程度なら軽く殺しますが、特筆すべきはその回復力と適応力です。またかなり高い知性を備えており、特に多くのオブジェクトに対して初見であるにも関わらずその特性を理解した行動を見せました」

「つまり……強靭な生物か?」

「はい。ただ強靭さは想像の遥か上にいくと思います。SCP-682は体の最大87%を失った状態から回復したのが確認されています。また体を両断された際にはそれぞれがSCP-682へと回復しました。他にも適応力が高く、両目をライフルで破壊された際には体中に無数の目を生成し、またそれぞれの目にライフルすら弾く保護膜を生成していました。その収容の困難さから常に傷つく高濃度の塩酸のプールに沈められた状態で収容されているにも関わらずエラ呼吸と塩酸を分解することでエネルギーを獲得して生存しています」

「……文字通りの不死身、か」

「はい。十影はそれを使って俺に協力することを約束してくれました。次に指名のヒーローに関して話していいですか?」

 

 わずかな間の後、相澤が頷いたのを確認して要は受け入れ先のヒーローとそのもとになっているであろうオブジェクトについて話し始めた。

 

「SCP-076“アベル”、オブジェクトクラスはこちらも《Keter》です。ただ“不死身の爬虫類”と違うのは、こちらが2つの存在で構成されていることです。1つ目は、破壊不可能な黒い変成岩で出来た立方体で、もう1つはその中にいる人型の存在です。この人型の存在を“アベル”と呼んでいます。アベルは身体能力が非常に高いです。具体的には、『4分間の銃火器の射撃に耐え、鉄で補強された安全ドアを素手で引き裂く』『64メートルの範囲内の敵を3秒で排除』『複数の弾丸で脳に大きな損傷を受けても数分間停止せず戦闘を続行する』『無酸素で1時間生存する』『鉄製の棒で銃弾を叩き落とす』などがあげられます。また武器として、ブレード状の武器を出現させて使用します」

「めちゃくちゃだな」

「ですがアベルは“不死身の爬虫類”とは違って死にます。財団もそれなりの回数アベルの殺害には成功しています。ただ問題は死んだ後です。アベルが死亡した直後、その体は塵となって消滅します。そして先述した黒い変成岩の立方体の中である程度の時間をかけて蘇生し、やがてまた傷一つない状態で中から出てきます。まあこれが個性でどの程度再現されているかはわかりませんが」

「こっちも不死身か……」

 

 飛び出してきた2つのオブジェクトとその規格外さに、相澤は頭をかく。そんな存在が、人間としてではなく人間の敵として出現する可能性があるというのだ。

 

「……この話の内容は取り敢えず校長には報告する。それと、場合によってはお前の扱いも変わるかもしれん」

「退学ですか?」

「いや……。確かなことは言えんが、こうした存在の出現が確定した場合は、このまま学校に通ってるというわけにもいかないだろう?」

「まあ、正直そう思います。取り敢えずそのあたりも含めて、アベルさんや昨日会った人にも相談してみたいと思います。現在の俺よりは確かにつてが大きいでしょうから」

「その会った相手というのは、いったいなんなんだ?」

 

 相澤の問いかけに要は一瞬悩むが、ブライトについても話しておくことにする。そもそもあの人にはあまり配慮は必要ないだろう。

 

「もともとは財団の博士として勤務していたそうです。俺の脳内の報告書にもそれなりの回数登場します」

「なるほど……それでお前、いや、藤見と2年に声をかけてきた、ということか」

「はい。本人がそう言っていました。もっとも正確なところはわかりませんが。何分、かなり問題のある素行が目立つ人物なので」

「問題?」

「いろんなオブジェクトで遊ぼうとするんです。例えば“アベル”も“不死身の爬虫類”も基本的に目の前に来た人間は殺そうとするんですが、博士は爬虫類を乗り回したりアベルとボードゲームをしたりするんです」

 

 要の言い出したいきなりシリアスさを欠いた説明に、相澤は一瞬固まる。

 

「それはジョークか?」

「いえ、ジョークではありません。話が長くなるので省略しますが、博士もとある理由で不死身になってます。なので結構ふざけたことを平気でするみたいです」

 

 ポンポンと不死身という単語が飛び出してくる要の話に、相澤は今度こそ寝袋に潜り込んで考えることを放棄したくなった。




財団は存在していないので、これぐらいの戦力は必要だと思います。ブライトの個性も多少魔改造気味です。





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この作品はクリエイティブ・コモンズ 表示-継承3.0ライセンスに基づき作成されています。


SCP-076 アベル
著者:Kain Pathos Crow(原著), DrClef(改稿)
URL:http://www.scp-wiki.net/scp-076



SCP-682 不死身の爬虫類
著者:Dr Gears, Epic Phail Spy
URL:http://scp-jp.wikidot.com/scp-682
作成年:2013年

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