SCP-000『オール・イン・ワン』 Object Class: Thaumiel / Apollyon   作:アママサ二次創作

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第6話 コスチューム? いえ、軍服です

 翌日。学校に行ってすぐに十影に拉致され、解放されたのはこれまた朝の学活の直前になってからだった。

 

 そして昼休みも、同じように十影に教室から引っ張り出される。おかげで、クラスメイト達と食事を摂ることも出来ない。

 

「お前、俺に構ってないでクラスメイトと仲良くしないで良いのか?」

「おー? まあ別に良いだろ。そういやあよ。もしかしてお前ら昨日いなかったの、個性把握テストやってたのか?」

「ん? ああ入学式か。そうだな。朝教室に行ったらいきなり体操服着ろって言われた。お前らは今日か?」

「おう。お前、個性使えないのにテストどうやったんだ?」

 

 要はカツカレー。十影はラーメンにカツ丼に唐揚げ定食に……要から見ると胸焼けしそうなぐらいの量の学食を購入してきて、2人で食堂の隅の方で昼食を取っていた。

 

「使えないから普通に。お前はどうせ無茶苦茶したんだろう?」

「まあ……握力計とかボールが壊れたぐらい」

「身体能力凄まじいな」

 

 十影の個性は、SCP-682“不死身の爬虫類”をベースとした異形、変形型のハイブリッドである。普段の姿から体のあちこちに鱗に覆われた部分があったり指先が尖っていたりするが基本の形は人間型を保っており、また頭部も顎から耳の後ろまでが鱗で覆われていることを除けば一応普通の人間である。

 

 そしてそこから体を変化、というか変身する事によって“不死身の爬虫類”の姿になることができるらしい。ちなみに不死身の爬虫類、クソトカゲなんて言っているが、あくまでトカゲや爬虫類っぽい特徴を持っているというだけでそのまま巨大なトカゲの見た目をしているわけではない。完全に変身した状態の見た目は四足歩行の化け物である。そもそも爬虫類と言いながら何故か髪の毛のようなものが生えていたりする。

 

 また不死身の爬虫類はその特性から体を一時的に別のものに変化させる能力を持っており、それは十影にも、人型から不死身の爬虫類型の間で変身の段階を自由に使い分け、また部分的な変化などを可能にする、という形で現れている。

 

 その個性を十全に身体能力を強化する方向へ発揮すればどうなるか。

 

 まあ。銃火器で武装し訓練を十分に行った財団職員を身体能力だけで軽く屠ることを考えれば、どうなるかなど簡単にわかるだろう。

 

「んー。そう言えば訓練したいんだっけか?」

「食べ終わったら屋上で」

「りょーかい。武術で良いのか?」

「何を身につけるのが良いのかはまだ思案中だ。俺のただの身体能力で体術を身につけるだけで良いのかは疑問だからな。射撃術もやっていると言ったがそれも多少威力の高いエアガンで練習したぐらいだ。昨日うちの担任の縄、というか布で敵を拘束する術を見て便利そうだなとは思ったが」

「コスチュームの申請は何書いた?」

「コスチューム自体は防弾チョッキとプロテクターにゴーグルヘルメット、道具類は拘束用のロープと移動用の鉤縄もどきとナイフと警棒と非致死性のエアガン。エアガンは法律に引っかからないようになるから多分威力はたかが知れてるがな」

 

 最後のカツを口に放り込みながら答える要に、十影はポカンとした表情をする。

 

「特殊部隊か何かか?」

「個性が無いんだからそっちにいくしかないだろう。まあさっき言った通りうちの担任は個性自体は戦闘に使えるものじゃないけど布みたいなので格闘戦できるみたいだがな。そっちを目指すのもありかもしれん」

 

 要がそう答えると、十影は首を捻った後ぽんと手を叩いた。

 

「今日放課後、コスチューム一式持って演習場行こうぜ。何ができるか考えてやるからよ」

「もう届いているのか? というか持ち出して良いものなのか?」

「届いてるだろ。俺ら午前中に着たし。持ち出すのも演習なら良いだろ。見てみねえとわからねえからな。心配すんな。銃器の扱いも一通り学んでる」

「ほんとか?」

「ほんとほんと。といっても独学の部分もそれなりにあるけどな。というか記憶を辿ればいくらでも出てくるし。敵として」

 

 そう言えばそうである。十影は不死身の爬虫類時代に特殊部隊のようなエージェントをずっと相手にしてきたのだ。そこからその動きを分析するのはわけないだろう。

 

「ああそうか」

「でも銃火器となると相手を殺しかねないからな。使うなら麻酔銃か多少痛い程度のエアガンか。後はテーザー銃なんてのもあるか」

「テーザー銃?」

「スタンガンの遠距離用だ。ワイヤーのついた針を打ち出して電気を流す。まあこれも一般じゃあ所持は禁止されてるが、ヒーローなら許されるらしいぜ?」

 

 十影の言葉に、要はそれについて思案する。確かに、それであれば多少痛い程度のエアガンよりも制圧力は高そうである。

 

「なるほど。そういうのもあるのか」

「ま、おいおい何が使えそうか考えていこうぜ。取り敢えずヒーローになるなら、相手はオブジェクトじゃなくて人間だしな。やりようはいくらでもある」

「ああ。ありがとう。ということで行くぞ」

「おん。ごちそーさんでした」

 

 それぞれに短時間で食事を追えた2人は、そのまま連れ立って食器を返却し、屋上へと向かった。屋上に上がると他に生徒の姿は無く、十分にトレーニングに使えそうである。

 

「よし、かかってこい」

「何か大事な過程が吹っ飛んでいるように思うんだが」

「取り敢えずお前の実力を知っておこうってことよ。良いから来いって」

 

 十影にそう促され、戦う事に関しては彼に従うと決めている要はおとなしくブレザーの上着を脱ぎ、彼の前に立つ。身長175センチとクラスの中でも高身長な部類に入る要だが、2メートルを超えている十影の前ではまるでの子供のようなものだ。

 

「行くぞ」

「遠慮なくどうぞ」

 

 十影の答えが終わるか終わらないかのうちに、要はその顎を狙って下から拳を突き出す。それが十影に軽く躱されるよりも前に引き戻し、上に伸び上がっていた体を下に引きつけ、両足を踏ん張って腹部に向けての正拳突き。

 

 だが十影はそれに堪えた様子は無く、また要も効かないのはわかっているので今度は十影の胸元と袖を掴み、柔道の技術を応用してその体制を崩そうとするが、十影の体は微動だにしない。そこでしゃがみこんだ要は、全力で跳ね上がりながら腕の力も使って体を引き上げ、十影の顔面に膝蹴りを入れた。

 

「よし。十分だぜ」

 

 その蹴りを軽く手で受け止め、十影は言った。

 

「ある程度は体動くんだな。けどまだ威力不足というか体の使い方が上手くない。後は鍛え方もちょっと足りないか。後はまあ、実戦こなせば強くなるんじゃないか?」

「体の使い方、ってのは?」

「蹴りのときの重心の動かし方とか、動きと動きの移行とか。けど基礎自体は多少ある感じがしたな。ちなみに何の武術やってたんだ?」

「柔道と空手とボクシングと……後は書籍から学んだ程度だが古武術だ。どれも1つに偏らないように混ぜるようにしてるんだが」

「あーなるほど。それがまだ体に馴染んでないんだわ要。だからぎこちなさがある、って感じかな。まあでもこれなら、下手に俺が教えるより俺とひたすら殴り合ったほうが良いかもなあ。理論自体は自分で組み立てれるみたいだし」

「わかった。よろしく頼む」

 

 おう、と十影が答えようとしたところで予鈴がなる。いつの間にか昼休みの終わりになっていたのだ。

 

 慌てて2人は上着を羽織、それぞれの教室へとダッシュする。

 

「放課後教室いろよ!」

「わかった」

 

 自分の教室の前から叫んでくる十影に応えて、要も自分の教室へと入る。幸いまだ授業開始前だったので、担当の教師は来ていなかったしクラスメイト達も好き勝手に会話している。

 

 自分の席についた要は、次の授業に用意するものは無いのを確認して、先程の十影との戦いを振り返った。

 

 シンプルな話ではあるが、怪力かつ頑強な体を持つ十影に対して要が有効打を与えるのは不可能だ。そしてこれは、十影だけでなく例えヴィランであってもパワータイプや頑丈なタイプの個性を持つ相手には全般的に言えることだろう。そうした物を叩き割るための体術、あるいは道具。何かがあると良いのだが。残念ながら要には、自分の身体能力での運用が可能で、かつ法律的にオーケーな手段というのが重い浮かばなかった。それこそ、真剣でも使えればそれはそれで戦えると思うのだが、ありだろうか。そういう意味では、ナイフも申請したが使用許可が降りるのかは疑問である。ヒーローという個性を用いてヴィランを傷つけつつ制圧する職業ならば許される気もするのだが。

 

 そんなことを考えていると、本鈴とともに教室の扉が勢いよく開いた。

 

「わーたーしーがー普通にドアから来た!!」

 

 大きな笑い声とともに教室に入ってきたのはオールマイトである。その登場にクラスメイト達は沸き立つ。要自身はクラスメイトほど熱狂的に彼のことを好きなわけではないが、一方でオブジェクトの対処に利用することを考えた場合彼の強さというのは確かに有用なものなので、そうした意味では彼に会えるというのは楽しみであった。

 

「私が担当するのはヒーロー基礎学! ヒーローに必要な様々な技能を訓練する課目だ! そして早速だが今日はコレ!」

 

 そう言ってオールマイトが突き出したカードには、『BATTLE』と英語で書かれていた。

 

「戦闘訓練! 細かいことは現地で説明しよう!」

「現地?」

 

 オールマイトの質問に一部のクラスメイトが疑問の声を上げる中、彼は更にボタンを操作する。すると壁際にあった装置が起動し、その棚がせり出してきた。

 

「入学前に送ってもらった『個性届』と『要望』に従って作られた戦闘服だ! これに着替えたら順次グラウンドβに集まってくれ!」

「「「はーい!!!」」」

 

 オールマイトの指示に、皆喜び遺産でコスチュームを取りに行く。ヒーローとはやはりかっこいい存在であり、そのための見た目、というのも特に重要視されるものなのである。

 

 クラスメイトたちが棚に殺到していたので、要は一番最後に棚からコスチュームを取り出した。他のものがケース1つとヘルメットであったりするのに対して、要はケース2つ分。おそらくは一方がコスチュームで、もう一方に武器類が入っているのだろうというのは予想がついた。

 

 それぞれに自分のコスチュームに対する希望などを語りながら更衣室へと向かうクラスメイトを追って、要も更衣室へと向かう。

 

 ケースの1つ目は案の定プロテクターやヘルメットなどの防具類が入っていた。長袖長ズボンの迷彩服に、ゴーグルとヘルメット。口元までを覆うマスクなども入っている。道理で大型なわけである。

 

 そして2つ目のケースもまた思った通り。こちらには武器類が収納されていた。ロープや警棒、銃器類は基本として、更には様々な状況を想定したメッセージを送っていたためか、警棒だけではなく携帯型のスコップやカラビナなど、一層特殊部隊じみた装備が追加されている。

 

 そして肝心の遠距離用の武器だが、どうやら二種類用意されているようだ。一方は拳銃ほどの大きさのもの。説明書によるとまさに先程十影が言っていたテーザー銃らしい。小型の弾頭を発射することになっており、それがバッテリーを内蔵していて相手に突き刺さって電撃が流れる。

 

 また大型の方、見た目としてはショットガンのような大口径なのだが、これは多用途向けのようで、様々な種類の弾薬がケースに収められていた。先程の戦闘服の方を見ると、たしかにそれらを収納できるパーツが胴体やベルト部分などに見受けられる。

 

 弾薬のタイプとしては、スタングレネード弾、発煙弾、そしてテーザー銃としての弾にゴム弾。見るところによると前者2つはスイッチの切替で手投げ式の手榴弾としても機能するらしい。形状としてはショットガンが近いのだが、散弾は無いようだ。

 

『個性の内容と要望から個性を使用せずにヴィランの制圧、救助活動を行うことを想定しているようでしたので、それに対応した弾丸を用意させていただきました。また要望があればお知らせください。またそれに合わせて特殊部隊を意識した道具も入れていますので是非お使いください。個性を使えぬ中ヒーローを目指すあなたに敬意を評して』

 

 説明書の武装のところに書かれていたメッセージだ。これほどありがたい文章も無いだろう。

 

「よし、着てみよう」

 

 まずは制服を脱いでインナーに身を通し、その上から戦闘服を装着する。防弾ジャケットのようなものがあるかと思ったが、各部に既にプレートが内臓されているらしい。確かに胴体や太ももの外側など触ってみると確かな硬さがあるのだが、にも関わらず非常に軽い。そしてその上から膝や肘のプロテクターを装備していく。

 

 ヘルメットとゴーグルの装備は一番後で良いだろう。

 

 そしてまずは弾薬類を、一緒にケースに入っていたポーチやストックを使ってベルトや胸部などに収納していく。一箇所に収めないようになっているのは、攻撃を受けた際に一気に紛失するのを避けるため、だろうか。そしてその他の応急手当用の道具やスマホ、ロープなどもポーチに収納していく。

 

 警棒は腰の右太ももの側面に。そしてナイフは右のコンバットブーツの側面だ。

 

 そして2つのウェポン。説明書によると銃と呼ぶのはヒーローとしてまずいらしく、ウェポンという呼称をすることにしたらしい。それぞれABでも12でもαβでも好きな名をつけてくれということだ。

 

 まずは大型の方、ウェポン1にスリングという銃を装備する用のベルトを取り付け、肩を通して体の後方に吊るす。扱い方についても説明書に記載してくれていて、前に吊るせばウェポンをすぐに発射できる状態に持っていけるが、代わりに格闘戦が困難になる。そして背中にまわした場合には持ち直すのに少し時間がかかるが、格闘戦はしやすくなるという。また放棄したい場合のためにスリングをワンタッチで取り外せる装置もついている。使いやすいようにとにかく考えてくれているらしい。

 

 そして拳銃型のウェポン2は腰のホルスターに。ショットガンの方が使い道は多いが、格闘戦の中で扱うのはこちらになるのだろう。

 

 そして最後に、ヘルメットとゴーグルを装備し、首元のマスクを鼻を覆う位置まで引き上げる。素材の都合上か、息苦しさはほとんどない。両手には指先だけ露出したコンバットグローブをつけ、左の手首に腕時計を巻く。

 

 他にも暗視ゴーグルや前述した携帯スコップにガスマスクなどいろいろな道具が入っていたが、それらはおそらく今日は使用しないので置いてきた。小型の無線機なんて話せる相手がいない。せめてペアで入れていてくれれば通信相手もいたのだが。

 

 コスチュームが軽装であったり装備がしやすいクラスメイトは皆先に出ていってしまっており、更衣室には緑谷と要だけが残されていた。要の方は緑谷を気にせずに出ていこうとしたが、緑谷の方から声をかけてきた。

 

「財田くん、その、コスチューム? 軍人、みたいだね」

「それをイメージしている。個性の都合上、戦闘は武器に頼らざるを得ないからな」

「そ、そうなの? 財田くんの個性って、どんななの?」

 

 おどおどとしながら問いかける緑谷に軽く視線を向けて前に戻した後、要は自分のストーリーのカバーストーリーを答える。

 

「記憶の中に結構な数の物語があって、その文章や絵、映像音声を好きな時に閲覧できる。そしてそれを他人に伝える時に臨場感を出したり気をひきつけたりできる、ぐらいだ」

「え?」

「どうした?」

 

 要の答えに、緑谷は信じられないと言いたげな目を向ける。それはつまり、要は無個性であのテストを突破し、入学したことを示しているのだ。

 

「いや、えっと、なんでヒーロー目指そうと思ったの? いや、ほら例えば小説家とか、なれたのかな~って思って……」

 

 しどろもどろになりながら問いかける緑谷に、要はこれまたカバーストーリーを答えた。

 

「それだけ多くの物語を見ている。ヒーローのような存在に憧れてしまっただけだ」

 

 あながち間違い、でも無いのだが。財団のエージェントの中には、要の憧れる相手もいる。何より、一般の人々が光の中で生を謳歌できるように闇の中でひっそりと戦い続ける、という献身。それを見てかっこいいと、思わないはずがなかった。

 

「そ、っか。そうだよね。どういう装備なの?」

「俺も全部把握してるわけじゃない。要望を書いたら揃えてくれたんだ」

 

 全部を明かすことは控えつつ歩いていくと、既に他のクラスメイト達は全員揃っており、2人が最後だった。その集団の一番うしろにひっそりと立ち、要は授業の進行を待った。




とある人気なヒロアカ二次創作を読んだ時にその主人公が銃を使ってまして。『あ、良いんだ』と思って主人公はこんな感じになりました。まあそうしないと戦いになりませんので。見た目はがっちがちな特殊部隊が、APEXのミラージュみたいな感じにしようか悩みましたが、要の性格上ヘルメットとか絶対使うだろうな、ということでガチガチの特殊部隊仕様です。あしからず。

Pixiv fanboxやってます。僕に『創作続けろ』と思う方はぜひ支援お願いします。
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