Muv-Luv ALTERNATIVE <The White Evil King> 作:段段だ段
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「オルタナティブ3計画…ですか…」
カシュガル本部のやり取りから1時間後…。
私はオルタナティブ3計画の責任者であるソ連の高官の前で呆れ返っていた。
まだあの肉塊とのやり取りを諦めてなかったのかよ!
私は笑いが噴出するのを堪え、震えるのが精一杯だった。
「憤慨するのも無理はありません…。
我々の力不足と言われてもぐうの根も出ないのが現状です…」
腹の出た、それでいて気の弱そうな高官は額の汗をハンカチで拭う。
どうやら私が憤っていると思ったらしい。
オルタナティブ計画の第三計画とは、人工的なESP能力者を作りあげ、BETAに人類殺さないでお願い☆
とする計画らしい。
もうなんも言えねえ。
サーシャさえ口元を一文字に結び、鉄面皮を維持するに精一杯らしい。
「それで、私…。
イノベイターに白羽の矢が立ったと?」
当然なことながら超能力なんてSF通り越して、ファンタジーな存在を生み出すのには無理があるらしく…。
聞くまでないが成功例は今までほぼ0%らしい。
だろうな。
「たしかに我々イノベイターは、脳量子波により他者と言語を超えたコミュニケーションを取れますが…」
相手が生き物ではなかった場合はどうします?
とは聞けなかった。
だって、私のザー〇ンや血をやるだけでとんでもない報酬が出る。
今回の依頼は私の遺伝子提供だった。
イノベイターの屈強な生命力を持つ衛士、かつBETAとのコミュニケーションを取れるスパイを生み出す目的らしい。
「しかし、人工的に人間を生み出すというのも…」
「もちろん!貴方の望む通りの報酬を用意する覚悟です!」
大歓迎でーすと言う前にデブに遮られた。
私の全衛士イノベイター化計画の大きな魁になるだろう。
イノベイターの血筋は優勢遺伝だ。
数は多いにこしたことはない。
ただし、付け加えたい条件がある。
「これを見て頂きたい。
可愛らしいでしょう?」
私は同情を引くために、アーニャとイザベラが自宅のプールではしゃぐ動画をサーシャに流させる。
相変わらずの天使っぷりだ。
少しでも文句言ったら、報酬関係なしにコイツを殺すとしよう。
「ええ…、本当に…。
お嬢様と計画に何の関係が?」
天使ちゃんの愛嬌を分かってくれたか。
でもうっとりとした顔がムカつくから殺そうかな?
私より高い殺意を放つサーシャを手でけん制し、私は続ける。
「わかって頂きたいのは、これから生まれる彼、彼女も『人間』であり、私の子供…。
そして、彼女らの兄弟になるということです…」
その言葉に豚はハッと目を見開く。
私の血を受け継ぐイノベイターの最高傑作達だ。
貴様らの好きにはさせん。
ヤリまくってたくさん増えてもらわねば。
「率直に言いますと…。
『オレのガキ共に手ぇだすな』。
作ってやるには大賛成だが、寿命やら生殖機能に手をだしたら殺す。
親として約束してくれますか?
可愛い『ミハエル君』に誓って?」
当然のことながら肉団子の身辺調査は完璧だ。
その証拠にサーシャがタブレットに映し出したのは、今年で士官学校を卒業した若々しい青年だ。
その動画に高官は瞬間に脂汗をしたたせる。
しかし、高官は伏せた目を見開き、コップの水を飲み干す。
私というと、期待していたリアクションが見られず、呆気にとられた。
嗚呼…、これが父親か。
高官はグンと立ち上がり私に向けて右手を突き出す。
どうやら見誤ったらしい。
「ええ!私も父親の端くれです!あなたの子供たちには国のゲス共の指一本触れさせないことを約束しましょう!」
今回ばかりは私の負けか…。
私はほくそ笑み立ち上がる。
「その言葉を聞けて良かった。
今回の任務の報酬はそれだけで十分です」
私もグンと立ち上がり、彼の右手を握る。
やれやれ…。
父親の先輩として勉強になった。
内心、ドロップアウトしたデイビットした謝罪する。
そうは言いながらも、私はサーシャに脳量子波で彼らの計画をハッキングで見張らせるように命ずる。
政府の計画、しかも人造人間ネタなんて厄すぎだろ!
ヒト型ロボットがメインの世界は、執拗に人間を弄ろうするからな…。
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握手を済ませ、いざモルモットと身構えていると、イノベイターの感が危険を察し、ざわついていた。
サーシャも危険を察していたのか、来賓室にいた護衛の一人に目をやり、制服の背中のホルスターに隠していたナノマシン収納式の三節混に手を伸ばす。
入室してから、この護衛の殺気のピリ付きかたが尋常でないと気づいていた。
サーシャにタブレットでメモを取らせるふりして、顔写真から犯罪歴を検索させたら、FBIのデータにヒットした。
サーシャから送られたデータを脳内バイオコンピューターを通し、確認したところ、案の定真っ黒。
元戦車兵で、衛士の恋人をBETAとの戦闘で目の前で亡くし、ストックホルム症候群からキリスト教殉教に肩までどっぷりつかり、2件の殺人、1件の放火未遂を起こした雑魚だ。
大方上から鉄砲玉に使われたのだろう。
可愛そうに。
「我らの神に反する悪魔め!!私が正義の鉄槌を食らわしてやる!!」
男が私に向けて突撃銃を乱射する。
あーはいはい。
ナノスキンで弾いて心臓ズドンかな。
私は高官だけ守ろうと身をせり出させる。
サーシャに関しては心配あるまい。
サーシャやベアトリクスはそれぞれ、三節混とナイフで突撃銃の銃弾くらいなら弾ける。
私が言うのもなんだが、アメコミヒーローかな?
いざ身を動かそうとした時、サーシャがタブレットを操作するのが眼に映る。
―――瞬間。
世界が静止した。
―――――
「一体…!
これは…!!!!」
何が起こっている?!
眼前の男が放つ突撃銃から放たれる銃弾は、ほとんど止まって見える。
サイボーグ化前でも銃弾をよけることなど、容易かったが、ここまでは。
銃弾のメーカー、弾道まで予測できる。
男の顔は義憤で歪み、高官の顔は恐怖で引きつり、情けない。
サーシャは…。
「やっぱりそうだよねー。
こんなことするのお前しか居ないよねー」
澄まし顔でタブレットを構えていた。
『驚きましたか?
ガンダムサタナエルグレゴリに合わせて、総司令官の身体もアップグレードさせて頂きました』
そう表示されていた。
文字が変わる。
『これはその機能の一つ、加速装置です。
総司令官の体感速度で90秒間、認識能力、反射速度、肉体稼働速度を通常時の200倍まで加速可能です』
そうなるとこの説明の動画はとんでもないコマ送りなのだろう。
私は銃弾を一つ一つデコピンで弾き飛ばす。
途中銃弾の何発かが、かすった衝撃で融解したため、アップグレードされたのは加速装置だけではないのだろう。
後でとっちめてやる。
そうこうしているうちに男の側に移動する。
さて、まずこのライフルを切り飛ばし、加速装置を解除した後で男の怯える顔を堪能しよう。
右手を手刀の形に振りかぶる。
私の手刀は本身の日本刀の切れ味を上回る。
右胸から手の先まで違和感を感じる。
無数の虫がは弄っているような…、だが自身の身体の変化のように不快感は感じない。
右手を恐る恐る見上げる。
私の右手部のナノスキンはコート、制服と一体化し、液状にうねり、右掌先端に集合していた。
硬質化発動時の、黒鉄に鈍く光るナノマシンの集合体は一つの生命体のようにウゾウゾとうねり、変形していく。
「いーーーーーーーーーーーーーーやああああああああああああ!!!!!!
ナニコレ????!!!!!!
ナニコレ??????!!!!!!!
ヤダコレ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ナノマシンは変形を完了する。
私の右掌部は刃渡り80㎝の刀と一体化していた。
よく見るとは刀身を小さなスパイクが超高速で周回していた。
ターミネーターか柱の男がどっちかにしなさいよ!
この場合、側が液体金属だからT-XとREV-9どっちなんだ?
私の右腕部はナノマシンを出し尽くし、白い人工筋肉がむき出しになっている。
『驚きましたか?
今や総司令官の全身のナノマシンは全身の90%を自在に変形可能です』
助けを求めるようにサーシャを振り向くと、新たな説明書きが表示されていた。
注射一本でアップグレードし過ぎだろ!
もう、我々の技術力が怖くなってきたわ!
『それだけではなく、チェーンソーブレード、火炎放射、ビームライフルなどを瞬時に構成可能です』
T-Xのほうだったわ。
もうBETAじゃなくお前が怖いよ。
私は奴あたりに男へブレードを振り下ろす。
男は突撃銃ごと袈裟切りに真っ二つになる。
豆腐切ったときより手ごたえなかったんですけど…?
『また、ナノマシンを独立させ、総司令官のダミーを操作することも可能です。
それに合わせ、総司令官の人工筋肉の表面にもナノスキンを散布しました』
両方の合いの子ってことね。
それにしても、MSを軽々持ち上げる、変幻自在のサイボーグが人間の認知外のスピードで襲うとか…。
私、もしかして平成中期までの仮面ライダーなら大概完封できるんじゃない?
それどころか、スペック考えたら令和ライダーの中間フォームまでなら負けなさそうなんだけど。
加速装置が解除された後、うろたえる高官をなだめるのは大変だった。
――――――
「やっぱり納得いかないわ…!!」
プシュケー・ディアキリスティスの遺伝子提供後、ベアトリクスは憤りながら、サーシャを追いかけるように、カシュガル本部の研究開発棟をドスドスと歩いていた。
第三計画の施設訪問2時間後のことである。
「偉大なるディアキリスティス様の血が…、ご子息が…、イザベラの弟や妹が汚らしい第三計画の豚共にいいように使われるなんて…!
サーシャ!今からでも力尽くでも回収すべきよ!!」
サーシャとベアトリクスは各々白衣と真紅のコートを揺らし、研究開発室の奥へ奥へと歩を進める。
道中出会う、原作ではアナハイムエレクトロニクスなどに勤めていたマッドたちは彼女らの怒気に押され、通路のはしで敬礼するのが精一杯だ。
「それくらい、総司令官が対策してないとでも?
貴方ともあろうものが総司令官を疑うのですが?
ベアトリクス?」
サーシャは歩みを止め、ベアトリクスに冷たい視線を流す。
ベアトリクスは言いよどんだ。
「総司令官のDNAが向こうに渡る前、すでに対策済みです。
総司令官はあらかじめナノマシンで、イノベイターの因子を抑えたデッドストックの遺伝子情報を採取させました。
第三計画が成功しても、劣化版のイノベイトが関の山でしょう」
因みにこの対策に関しても、ディアキリスティスは容認していない。
何も考えず、大嫌いな注射に耐えている際、サーシャがナノマシンを操作し、クズ遺伝子の血液をくれてやったのだ。
ザー〇ンも同様。
ビニール手袋での手コキも乙だなと、か思っている間に一部分的にDNA操作が行われたのだ。
本人の預かり知らぬ間に。
「あの人の血族が広まる事は我々の悲願の一つ…。
そしてこれから産まれる我が子たちに比べれば玩具同然です」
「『我が子たち』ってまさか!
完成したというの?!サーシャ?!」
ベアトリクスが歓喜に満ちた声を挙げる。
サーシャは口元を吊り上げ、これが応えだといわんだかりにいつの間にか到着していた巨大な鉄扉を開ける。
サーシャの静脈、網膜の生態認証、ナノマシンとカードキーによって鉄扉がうなる。
「こっ…、これは?!」
ベアトリクスは扉の向こうの光景に悲鳴に近い声を挙げる。
眼前には全長2mほどのカプセルが4列ほど重なり、部屋の奥まで並んでいた。
200平方mはある部屋はカプセルで敷き詰められていた。
「なんて…愛おしい…」
ベアトリクスは傍のカプセルの一つを愛おしそうに撫でる。
中には黒髪を薄緑色の培養液に揺蕩わせる12歳ほどの少女が眠っていた。
少女の顔はイザベラに酷似しており、姉妹でなければもはや不自然だ。
サーシャは眼鏡のブリッジに手をやり、説明する。
「ようするに、質も量もこちらが上と言うことです。
総司令官の精細胞とベアトリクス、私の卵細胞の安定培養に成功しました。
双方を良質な組み合わせで受精させ、戦闘や扇動などを目的とした最高の塩基配に調整した最高のイノベイト…、もはや完璧なる人工イノベイターと呼べるでしょう。
アーニャとイザベラは、彼女らを率いてこの世界に総司令官のための楽園を築くのです」
「あの子らには妹ができたと報告しないとね…」
ベアトリクスは我が子の眠るカプセルにキスをする。
「家族は仲良く、ですからね…」
サーシャは自身の面影の強い少女の入ったカプセルを聖母のような顔で撫でる。
やがてどちらともなく笑みが漏れ、二人の魔女の歓喜に満ちた笑い声は薄暗い室内に響く。
因みにこの計画は当然のごとく、プシュケー・ディアキリスティスには知らされていなかった。
ご愛読ありがとうございます。
どっちがラスボスかわからんなこりゃ。