Muv-Luv ALTERNATIVE <The White Evil King> 作:段段だ段
カシュガル独立自治区のとある高級ホテルのパーティーホール。
スポットライトと共にとある女性が照らされた。
ワインレッドのイブニングドレスを着ている。
その恰好は背中はざっくり開いており、金の刺繡が施されており、そのドレス一着でどれほどの値段がするか如実としている。
「今から約十年前…、この世界に救世主が降臨なされた…」
女性-ベアトリクスはゆっくりヒールを鳴らし、ステージの中央へ進む。
「その名もプシュケー・ディアキリティアス様!
今、我々は感謝しなくてはならない!
このような素晴らしきお方と出会えたことを!
今こそ、我々の忠義を…」
「ベアト、その辺でストップです」
サーシャの鉄拳がベアトリクスの頭に刺さり、ベアトリクスは頭からステージに床に刺さる。
サーシャの目は血走り、ホールのデザートコーナーにロックオンされており、手加減がバカになっていたのだろう。
口元から飢えた狂犬のごとくよだれが垂れている。
「今日は私のために集まってくれてありがとう。
君たちと戦えることが、私にとっての宝だ。
今日は存分に楽しんでくれ。
それでは乾杯!!」
そんな彼女らをよそに私は乾杯の音頭をとる。
合図とともにホール中から歓声が挙がる。
同時に私はグラスの中の液体を飲み干す。
今日は私の誕生日だ。
乾杯の音頭と共にサーシャが発剄の応用でステージにクレーターができるほどの踏み込みでアーニャを背中にのせ、スイーツコーナへー飛び込む。
パティシエの悲鳴が響く。
今日に限ってチャイナドレスだったのはこれが目的か。
サーシャは菫色のチャイナドレスを着ている。
髪は珍しくアップにしている。
七面鳥のローストを骨ごとかぶりつき、最高級のウィスキーで流し込む。
げっぷと一緒にため息をつき、ようやく落ち着く。
見渡す光景はガノタ大歓喜だった。
コウが盛り付けられたサラダからニンジンを顔を歪め、取り除いている。
バナージとミネバは二人きりでいい雰囲気だ。
一つのテーブルにはヒイロ・ユイたちがたむろっている。
ステージ上では各国のVIPや軍事関係者にベアトリクスが演説している。
カルト教団の拡散やめろよ。
どうやらイザベラのお披露目らしい。
人類を導く新たな希望だとか言っている。
イザベラは小さな胸を張る。
カワイイ。
「よう。
主役様が一人酒かい?
社長さん?」
肩に負荷を感じると思ったらサーシェスだった。
やつはいやらしい笑みを浮かべている。
挨拶に殺到してきた各国のVIPの相手に疲れたのだ。
一人にしてくれ。
前の世界と例に漏れず、コイツとは気があった。
今では気がねばく話せる悪友だ。
「貴様こそ今日はキリスト教殉教派の討伐ついでに『アルケー』のテストだったのだろう?
で、どうだった?
感想は?」
「ああ…、あれこそ俺の求めていたMSだ!
やっぱり戦争は白兵戦じゃねーとなあ!」
サーシェスは興奮気味に叫ぶ。
「アリー・アルサーシェス一尉!
最高総司令官殿に気安すぎませんか!
最高総司令官殿もなぜ注意しないのですか?!」
うるさいのが来た。
『レーン・エイム』がツカツカ近づいてきた。
私は面倒ごとの予感がしたので地雷原のサーシェスにボトルを渡す。
サーシェスはおっ、と喜びの声を挙げ、つまみを物色しに群衆に消えていく。
「レーン、『ペーネロペー』のテストは終わったのか。
ご苦労だった」
「はッ!
レーン・エイム二尉、ペーネロペーのテスト飛行を終え、無事帰還致しました!
最高総司令官殿!」
レーン・エイムはお手本の様な敬礼をする。
「で、どうだった?
『GNフライトシステム』は?」
GNフライトシステムとは要するにサタナエルグレゴリと同じく、MSの主動力と推進力を別個にするだけだ。
元の世界では珍しくもない。
ペーネロペーとクスィーGには推進力にツインドライブシステムが積まれている。
「はツ!僭越ながら圧巻の一言であります!ジンクスとは比較にならない推進力、圧倒的であります
!」
「何が圧倒的だ。
終始振り回されていたじゃないか」
レーン・エイムの頭に乗馬鞭が振り下ろされる。
「申し訳ありません。
総司令官、あとで強く言っておきますのでどうかご容赦を」
『ケネス・グレック』はそう言いながら頭を下げる。
「構わん。
誰だって初めてはこんなもんだ。
長い目で見てやれ」
私はレーンの肩に手をやり、労う。
「ありがとうございます。
それにしても、ペーネロペーやガンダムサタナエルグレゴリ!
あんな兵器を開発できる副指令はまさしく天才ですな!」
ケネスは窓の外のサタナエルグレゴリを見上げる。
パーティーホールは窓張になっており、外には三体のガンダムをはじめ、ベアトリクスの部下のMSが待機している。
各国のVIPはそれを背景に写真撮影している。
「全く、それには大いに同意ですな」
『パプテマス・シロッコ』がシャンパングラス片手に近寄ってくる。
「恥ずかしながら、私は自身を天才だと考えていました。
しかし、室長に出会ってから自分が井の中の蛙と知りました。
あのお方こそ真の天才です」
「全く本当に人知の及ばずって感じですよね…」
カタギリが苦笑しながら言い放つ。
「ガンダムサタナエルグレゴリの主動力を聞いて腰をぬかしましたよ…。
まさかブラックホールエンジンなんて。
SF世界の技術をMSに載せてしまうなんて何者なんですか?
あの人?」
カタギリはスイーツコーナへのサーシャへ目をやる。
奴は幸せそうにスイーツをほおばっている。
するとズボンのすそを引っ張られる。
「父上!私お寿司食べたい!」
イザベラがズボンを引っ張いた。
ベアトリクスに付き合わされるのに飽きたのだろう。
「何者だろうと関係ない」
イザベラを持ち上げ肩に乗せる。
「この子らの母で、私の愛しい妻だよ、サーシャはね」
敬礼で送る彼らをよそに寿司コーナへ向かう。
―――――
それにしてもサーシャが何者かか…。
考えたこともなかったな…。
戦闘用イノベイト、私の秘書官、副社長、特務一佐、開発研究室室長、私の妻、アーニャの母…。
数多くの階級や立場を持つ彼女だが、彼女の過去を知らない。
思えば彼女との出会いは不自然だった。
―――――
「あーあ、なんでだれもオレを殺せないかなー」
ガンダム00の世界にて、今から数十年前のとある日。
私はやさぐれていた。
せっかく死に場所を作るためPMCを立ち上げたのにだれも自身を殺せない。
私が強すぎるのが要因だ。
どんなに困難な任務でも生き残ってしまう。
そのたびに英雄扱いされてしまい、罪悪感と自己嫌悪でつぶされそうだった。
「いっそ自分で死んじゃおっかかなー」
アルコールでふにゃふにゃになった脳は衝動的な回答を導きだす。
ウィスキーの酒瓶を投げすて、机から拳銃をとりだす。
弾奏を確認し、銃身をスライドし、銃口を咥える。
さあ、これで楽になれる。
「早まらないで下さい」
眼を開けると神秘的な女の顔がいっぱいに広がっていた。
途端私の拳銃を握った腕にとんでもない圧力がかかり、口から拳銃が抜かれる。
足元から力が抜ける感覚がある。
これは合気か!
なんて技量だ!
これほどの技量を持つものなど、世界に一握りもいるまい。
思わず拳銃を離す。
何者だと言う前に私の身体は宙を舞う。
視界が一回転し、壁に激突する。
彼女なら私を殺してくれるかもな。
私の口元から笑みが漏れる。
「早々に粗相をしてしまったことにまず謝罪させてください」
彼女は深々と謝罪する。
彼女の姿勢は一本巨木のような芯が通っている。
身長170㎝。
細い手足は柔肌の下に強靭かつしなやかな筋肉を秘めている。
「貴方様へ『福音』を運んでまいりました。
サーシャ・リターナーでございます。
ヴェーダから派遣された連絡員でございます。
貴方様の願いは今叶うのです。
以後、永久によしなに」
彼女は再び結手のまま礼をする。
「私の願いが叶う?
はっ…!、面白い!
話を聞こうじゃないか」
ここまでくればもうヤケクソだ。
なんにでもすがってやる。
「それはそうと…」
サーシャと名乗った女は拳銃を拾うと私の唾液をひとなめする。
その目は淫蕩に蕩けている。
「DNAレベルの一目ぼれです。
私と一緒に墓に入る前提で男女交際してください」
彼女は銃口をこちらに向けて告白する。
重いよ!
こんな命の危機を感じる告白は初めてだわ!
「べ…、別にいいけど私、浮気するよ…?」
趣味くらい寛容になって頂かねば。
すると彼女は切れ長の目を丸くし、きょとんとする。
「ぷッ…、ふふふ…。
あはははははははははは‼‼」
はあ?
なにこの娘いきなり大爆笑してんの?
彼女は口元と腹を抑えて大爆笑している。
「…やっぱり…、やっぱり先輩だ…。
変わってない…!」
となると彼女ははたと動きを止め静かに涙を流し始めた。
どう収拾つければいいんだよ?
これは?
―――――
普通初対面の相手にあんな感情ぶつけるか?
思えばヴェーダにサーシャの開発経路を聞いても、『回答不可(分からない)』だった。
そうこう考えている内に寿司コーナへ着く。
「さあ、着いたぞイザベラ。
生態系崩壊するほど食べるがいい」
イザベラは肩から飛び降り、寿司のブースのショーケースへ張り付く。
「へいらっしゃい!司令官、お嬢様何を握りましょう!」
いかにも職人然とした板前はうれしそうだ。
久しぶりに天然ものの本物の魚が握れるのが嬉しいのだろう。
うちの食材は全てクローン技術で再現し、養殖した本物だ。
品質にもこだわっている。
イザベラに何を食べるか聞いても要領をえない。
おすすめは何か聞こうか悩んでいると、野太い声が後ろから来た。
「しめ鯖がオススメですな」
振り向くと特徴的な髪形の中年の大男と、二人の青年がいた。
「そこの板前のすし屋は代々の老舗でしてな。
わしも長年贔屓にさせとるんですわ。
申し遅れました。
わしは大日本帝国近衛軍代表で伺いました。
紅蓮醍三郎少将でございます。
このたびはご生誕おめでとうございます、ディアキリティアス総司令官」
「お会いできて光栄です。
帝国技術廠の巌谷大尉です」
「同じく、皇大尉です。
お誕生日おめでとうございます。
ディアキリティアス総司令官殿」
私は三人と握手する。
「征夷大将軍様から書簡を預かっております。
どうかお納めください」
紅蓮少将から書簡を受け取り、中を確認する。
内容は誕おめ☆
という内容を大変かしこまった内容だった。
条件付きで佐渡島をくれるらしい。
ちょうど本部も手狭に感じていたところだ。
ついでに軌道間エレベータもたてよう。
やったぜ。
「それで…?
その条件とは…?」
私はじろりと三人をねめりつける。
「それは…、近衛にふさわしいMSを造ってほしいのです!」
巌谷大尉はそう告げる。
はあ?
お前らには『ジム(ガンダムサンダーボルト版)』や『ガンキャノン』を売ってやっているだろうが?!
突然だが、我が社の製品の売り上げを紹介しよう。
一位は勿論、『ビームライフル』。
次点でMSで、三位に『ビームサーベル』だ。
これはわが社で配布しているデータを除いたもので、ムーバブルフレームやリニアライフルなどは無視している。
当初は戦術機にビームライフルを装備させようとしたところ、ロックオンシステム、OSの相違からなるトラブルが多発した。
いちいちOSをばらまきなおしたり、設定にわが社の整備兵をまわすのもウザかったのでMSを市場に流したわけである。
また、世界中の戦術機に適正のなかった戦車兵たちをBETAのクソにするのも気がひけたので、ガンキャノンも販売した。
ちなみに修繕費、メンテナンス費はわが社でライセンスを頂き、世界中からごひいきしてもらっている。
みなさん、末永く仲良くしようね?
「失礼ですが理由をおききしても?」
近衛と機体を分ける理由がわからん。
「それは、国民を守る象徴が欲しいのです。
貴方のガンダムサタナエルグレゴリのような…。
はっきりとした力の象徴を…!」
イコンが欲しいわけね。
私はサーシャへ近衛共が専用機欲しがってだだこねている。
テキトーに見繕ってくれない?
と脳量子波を送る。
奴はチョコレートフォンデュをストローで直飲みしている。
何やってんだこのバカ!
アーニャも真似するのをやめなさい。
サーシャは脳量子波に反応ししげしげとタブレットを操作し歩いてくる。
「初めまして。
私、ディアキリティアス総司令官の秘書官を務めております。
副指令兼副社長、サーシャ・リターナー特務一佐でございます。
同時に研究開発室局長を務めております。
以後良しなに」
サーシャは一例する。
三人はサーシャの美貌に一瞬ポカンとする。
「近衛軍は近接戦が得意だと伺っております。
こちらの機体は如何でしょう?」
サーシャはタブレットに『イフリート・シュナイド』を写す。
「イフリート・シュナイドでございます。
ギェネレータ出力はジムの約二倍。
カタログスペックはこちらに」
サーシャはタブレットを指し示す。
「素晴らしい…」
「しかしながらデザインがかの第三帝国を彷彿させますな…」
はあ?
いいじゃねえかこのトゲトゲのデザイン!
豊野監督にいいつけるぞ!
「では日本の武者甲冑風にデザインしてみましょう」
サーシャはタブレットを高速で操作する。
「いかかがでしょう?
名前は日本風に言わせて頂ければ『武御雷』。
お気に召したならば一週間後にはテスト機10機をそちらに送らせて頂きますが?」
出来上がったのは原作よりマッシブな武御雷。
デザインが似たのは偶然か?
「おお…、美しい…」
「最高だ!これぞ帝国の力の象徴にふさわしい!是非とも今後と共に継続した購入を!」
お気に召してくれてなにより。
しかしながら衆人環視の中行ったのがよくなかった。
「日本ばかりずるいですぞ!リターナー特務一佐!ぜひとも我が国にも専用MSを!」
「アメリカ空軍の×××といいます!ぜひとも我が軍にフラッグの納入を!」
「ロックウィード・マーディン社の△△△といいます!ぜひともあなたの元でMS開発のノウハウを学ばせて頂きたい!私を弟子にしてください!」
各国のお偉いさんが殺到した。
あーあ、どう収拾つけるんだこりゃ。
「皆様、落ち着いて。
ここではほかの迷惑になります。
場所を移しましょう」
サーシャを先頭にぞろぞろと移動する一同。
さながらハーメルンの笛吹のようだった。
「おとうさま…ねむーい」
「おふとん…」
眼をしょぼつかせた娘二人がゾンビのような足取りでやってきた。
慌てて抱き留め、持ち上げる。
途端に私の体温で眠り始める二人。
大きくなってきたと思ったがまだまだ子供だな。
たらふく食ったことと、パーティーではしゃぎすぎたのだろう。
私は妻二人にアーニャとイザベラを寝かせてくると脳量子波を送る。
ベアトリクスからは了解と意志が送られてきた。
ステージ上の彼女からはウインクされる。
サーシャからはちゃんと歯磨きさせてくださいね、とつたわってきた。
「貴君!少しよろしいか?!」
よろしくねーよ!
私の天使ちゃんたちが起きたらどーしてくれんだ?!
殺すぞ!!
私は紅蓮少将に青筋を立てながら口元に人差し指を立てる。
紅蓮少将はおっとと言いながら声のボリュームを落とす。
「それでまだ何か?」
「わしと手合わせ願いたいのです…」
私たちはひそひそ声で話す。
何でも世界最強のパイロットの私の胸を借りたいらしい。
刹那でもアムロでも勝てなかった私に、エロゲのモブキャラが勝てるわけなかろう。
「わかりました。
しかしながら条件が…」
雑魚にハンデを与えるのもこの世界の王たる勤めだろう。
世話のかかる。
―――――
「これがホワイト・ホエール・セキュリティー・ガード社の専用MS。
ジンクスか!!!!
たぎる…、たぎるぞ!!!」
後日わが社の演習場で紅蓮少将ははしゃいでいた。
年考えろよ。
結局決闘をのんだ私は彼にジンクスを貸出し、決闘に臨んでいた。
因みにビーム兵器はエフェクトだけのダミーだ。
モニター室ではわが社のスタッフが賭けをしている。
もちろんどっちが勝つかではなく、紅蓮少将が何秒もつかで。
「とんだ身の程知らずもいたものね…」
ベアトリクスがため息を吐く。
「無理だと思っても身体が動くのは男の子の本能でしょう」
サーシャはココアに練乳を絞り、呟く。
その姿にベアトリクスは口元を引く付かせる。
「待たせたな。
紅蓮少将」
演習場に私はジンクスで降り立つ。
決闘の条件はお互いに同じ機体で、というものだった。
たまにはサタナエルグレゴリ以外のMSというのも乙なものだ。
繋がっていない阿頼耶識システムのプラグが痒い。
「しかし本当にジンクスなのですな…。
少々残念です…」
はあ?
お前のためにハンデやってんだろうが!
サタナエルグレゴリなら0.2秒でお前を八つ裂きにしとるわ!
『勝敗はどちらかの大破判定、もしくは降参にて判断します!
それでは…、試合開始!!』
CPのメイリン・ホークの声が響く。
「まずは手始め!!」
紅蓮少将のジンクスは右方向へ旋回しながら、ビームライフルを三発放つ。
私はビームサーベルを三回振り、ビームをはじく。
会場は静まり返った。
「うわっ…!すごっ…!」
三日月はサーシャに貰ったチョコレートを口にし。呟いた。
「すごいどころじゃねーよ!総司令官はバケモンだな…こりゃ…」
オルガ・イツカは冷や汗をかき訂正するように言う。
「なんと!!」
紅蓮少将は私の神業に眼を丸くする。
私はジンクスにビームライフルを吐かせる。
私の放ったビームは寸分たがわず紅蓮少将のジンクスのビームライフルの銃口へ吸い込まれた。
『ビームライフル、破壊!同時に誘爆したとみなし、右腕部破損、中破判定!』
「うっわー…ありえねー」
わが社でも狙撃を得意とするディランディ兄弟の長兄、ニールはドン引きした。
「ビームライフルの銃口にピンポイントで当てられるかね…?
二人とも飛び回ってるんだぜ?」
ライルは水で唇を濡らした。
「次から次へと見せてくれる!
だがただでは終わらんぞ!」
紅蓮少将はビームサーベルを抜刀し、突っ込んでくる。
「あーあ…、終わっちゃた」
アーニャがチョコレート片手に呟く。
「よりによって父上に近接戦なんて…」
イザベラが『グリーン・インフェルノ』を写した端末から目線を離し、言い放つ。
私はジンクスに紅蓮少将のジンクスのビームサーベルを蹴り飛ばさせ、手足を切り飛ばさせる。
もちろんシミュレーションなので、紅蓮少将は無傷だ。
「父上は、蟻の手足をもいでから踏みつぶすのが大好きなのに…」
イザベラは端末に顔を戻す。
「下等生物(人間)にお父様のことなんて分からなくて当然ですよ!」
アーニャはイザベラの頭をなでる。
『ぐ…紅蓮少将、大破判定!よって勝者、ディアキリティアス総司令官!』
メイリンの声により、会場はあーあやっぱりねという空気に包まれた。
―――――
「ここまでくるともはや清々しいわい!
しかし、人類の明日は明るいなあ!!」
紅蓮は私の背中をバシバシやり豪快に笑う。
場所を変わってここはカシュガル独立自治区の銭湯。
私は半ば無理やり紅蓮と湯を同衾させられていた。
「流石世界最強の衛士!
噂以上の鬼神ぶりだったわ!」
私はテンションの高いおっさんを無視し、桶に浮かばせている清酒を口に運ぶ。
「それにしてもおぬし、幾つになったのだ?」
男というのは単純なもので、喧嘩すればダチである。
さっきからなれなれしい。
「今年で6X歳だが…?」
「6X…!!!!!!」
なんだよ、文句あっか?
それより周りの迷惑考えろよ。
おかげで周囲に男どもが集まる。
「とても老人にみえんが…!?
わしより随分と年上だったのだな!!」
「イノベイターは常人より老化が遅い。
それに加えて、私はサイボーグだからな」
サーシャ曰く、メンテナンスなしでも私の耐用年数は500年だとか。
まもなくサーシャもベアトリクスもサイボーグ化手術を受けるらしい。
将来お互いにメンテナンスしあえば半永久的に生きられる。
「ますますもって素晴らしい!
僕もイノベイターになれますか?!」
近くにいたリボンズ・アルマークが詰め寄る。
「間もなくリターナー特務一佐が研究を出してくれる。
将来的には全人類がイノベイターになれる未来がくるはずだ」
その言葉に男湯が歓喜に包まれる。
風呂ぐらいゆっくりつからせろよ。
「そうだ、お前が乗ったジンクス…。
お前にやるよ」
イフリート・シュナイドに対して佐渡島は貰いすぎだ。
なんか罪悪感がある。
すると紅蓮は目をぱちくりする。
「本当か…!」
「整備兵も何人か寄越す。
兵装もわがまま聞いてやるよ」
MSだけもらってもアフターケアなくては宝の持ち腐れだからな。
寛容な私に感謝しろ。
「感謝するぞ!!
義兄弟よ!!」
ええい!だれが兄弟か?!
こんなむさくるしい弟持った覚えないわ!
しかも当たっているんだよ!
離れろおっさん!!
―――――
サーシャが何者か…。
何者であろうと関係ないが…。
私は隣で風呂あがりにマッサージチェアを受けるサーシャを見る。
彼女は極楽そうな顔で振動を受ける。
振動とともにサーシャの爆乳がばいんばいん揺れる。
男どもの視線に睨みをきかせる。
ベアトリクスは爆睡している。
「なあ…、サーシャお前は何者なんだ?」
私は思案の疑問をそのまま口に出してしまった。
サーシャはその疑問に目を丸くするとふっ、と口元を挙げる。
サーシャはマッサージチェアから腰を挙げると、私の唇をふさぐ。
周りから私たちをひやかす歓声があがる。
「私は前世から来世まで、永遠に貴方様の『サーシャ・リターナー』でございます…。
たとえどれほど輪廻転生しても、貴方様のそばにいます。
■■…」
またもや唇を塞がる。
疑った私が馬鹿だったな。
妻を疑う夫がいるものか。
「お母様ー!私フルーツ牛乳飲みたい!」
「私、コーヒー牛乳!!」
アーニャとイザベラが髪びっしゃびしゃでやってきた。
「あらあら、ふたりとも濡れた捨て犬のようじゃないですか。
ベアト、起きなさい。
娘の一大事ですよ」
サーシャはマッサージチェアがひっくり返るほどのデコピンをベアトリクスにお見舞いする。
「いったいわね!!何すんのよ!!
って何でびしょ濡れなのよイザベラ!
あーもう!髪は女の命だって教えたでしょう?!」
二人はタオルで娘たちを包み込む。
さーて私もビール、ビール…。
「はあ!!!!
お前今何て言った???!!!!」
突然だが私には本当の名前が二つ存在する。
一つはこちらの戸籍上の名前、『ジャック・トレヴァー』。
『プシュケー・ディアキリティアス』などという『命の管理者』などという大それた名前、どんなDQNでもつけないだろう。
もう一つは私の前世の名前、かつて私にも平々凡々な名前があった。
苗字は『橋本』から始まり、漢字二文字の『■■』という名前が。
こんな名前日本中探せばはいて捨てるほどいるだろう。
私が異世界転移者だということはサーシャにもベアトリクスに話している、
だが、真の本名は話していないはず。
「サーシャ…、教えてくれ…。
お前は何者なんだ…?」
サーシャとベアトリクスは娘たちの髪をタオルで掻きあげる。
―――――
「ここで何をしようってんだ…」
私の誕生日から一週間後、私は研究開発棟の一角を歩いていた。
ベアトリクスに目隠しされてながら研究開発棟をサーシャに手を引かれて歩いている。
突如シン・アスカを訓練でもんでやっている最中、
サーシャがやってきた。
なんでも渡し忘れたプレゼントがあるんだと。
おそらくMS格納庫で私は解放された。
ベアトリクスの手が解放される。
「「「初めまして!お父様(父上)!」」」
そこにいたのはアーニャとイザベラを12歳ほどにした100人ほどの群衆だった。
ーーーー
「いーーーーーーーやあああああああああーーーーーーーーーーーーー????!!!!!
ナニコレ??!!ダレコレ??!!誰だよ?!
お前!!お前!!??」
両耳に走る炸裂音に私はバック宙で回避する。
「「さぷらいーず!」」
アーニャとイザベラがクラッカーを構えていやがった。
「そんなに意地悪しないでほしいわ…」
ベアトリクスは私に手を貸す。
「培養した貴方様の精細胞と私たちの卵細胞を人口的に配合した、人工イノベイターです」
「そして彼女らを統制するのは…」
ベアトリクスは芸者のように手で招き挙げる。
そこに出てきたのは私に似た女性だった。
年のころ16歳ころ。
顔立ちは私に似ているが目つきはサーシャ似だ。
艶やかな黒髪はベアトリクス似でサラッサラだ。
彼女はわが社の制服に黒いレザーのライダースジャケットを着ている。
「初めまして、パパ。
ボクは『使徒』の統率者。
『カルディア・ディアキリティアス』だよ。
ホエール・セキュリティー・ガード社では臨時一佐の階級をもらったよ。
可愛がってね。
パパ」
腰元まである黒髪を掻き上げ、彼女は眼鏡のブリッジを中指であげ、告げる。
そのしぐさにサーシャとベアトリクスの面影を感じる。
「『使徒』?!
それに統率者?!
どういうことだ?!
説明しろ!」
「彼女は『カルディア・ディアキリティアス』。
私とベアトリクスの卵細胞を組み合わせた最高の卵細胞と貴方様の精細胞を結合させた、究極の人工イノベイターでございます。
それだけでなく、人為的に戦闘、扇動などに塩基配列を操作させております。
貴方様の娘、『使徒』達は私たちを除けば彼女の命令を聞くように調律されております。」
サーシャは『カルディア・ディアキリティアス』と名乗った少女をなでながら告げる。
彼女を脳量子波でさぐる。
自身の体臭に気づかないように、私と同じだ。
おまけに脳量子波の感度自体は私より上ときた。
「私たちの妹です!」
「いよいよ私もお姉ちゃん!」
アーニャとイザベラは嬉しそうだ。
「それだけじゃなく、彼女たちには私たちにはない能力があるのよ!」
ベアトリクスは前のめり気味に告げる。
だがそのベアトリクスが説明した能力は私が望む最高の力だった。
―――――
「ふふふふっ…、ふははははははは!!!!!」
素晴らしい!まさに私が望む最高の力だ!
『福音』は私が死にかけなければ発動できなかったが、これならいつでも発動できる。
「ボクたちの事、歓迎してくれる?」
カルディアは不安そうに問いかける。
私はそんな彼女を抱きしめ、額にキスする。
「お前たちは私の最愛の娘だよ、カルディア」
彼女はそれを聞くと、口をすぼめ、キス待ちの顔をする。
さ…、さすがに近親相姦は忌むべきものかと。
「私たちのこと喜んでくれたみたい」
「なら喜ばないとね」
「みんなで笑わないと…」
『使徒』達は嬉しそうだ。
私たちはMS格納庫で喜びを共にした。
開発研究室のMS格納庫にはISガンダムが立ち並んでいる。
その奥には背中にディスクバインダーに12本のビットを背負ったガンダムが佇んでいた。
その未知なるガンダムの額のクリアパーツには『メタトロン』と刻まれていた。
名前 カルディア・ディアキリティアス
種族 イノベイター サイボーグ
性別 女性
階級 ホエール・セキュリティー・ガード社、臨時一佐
搭乗機 メタトロンガンダム
外見 ディアキリティアスににた顔立ち、サーシャに似た目つき、ベアトリクスに似た髪質
趣味 ディアキリティアスの盗撮 映画鑑賞
特技 中国武術
特質 ディアキリティアス、サーシャ、ベアトリクスの性質を併せ持つ人工イノベイター。『使徒』達の統率者でもある。