しょうか   作:くりすてぃーぬ 

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第12話:不安!緊張!ホワイトデー!

今日の朝、メイクをしている時に。高田くんからLINEが、来た。

 

心臓が高鳴ってる。高田くんからのLINEなんて久しぶりで。すごく、どきどきする。

 

 

すぐに開きたい気持ちを抑えて、スマホの機能をフル活用。未読のまま文章を覗いてみるよ。すぐに既読、付けちゃうと、がっついてるみたいでカッコ悪いかな。

って思ったからね。

 

 

 

LINEは、今日の夕方以降の予定を尋ねる内容、だった。

 

 

カレンダーを見る。今日は3月14日。「ホワイトデー」という行事を示す赤文字が、カレンダーの中で、際立って見えるよ。

 

私、いつから、バレンタインデーやホワイトデー、大安の日に印、付けなくなったんだっけ?ふとそんなことが頭をよぎったよ。けど、すぐに、高田くんのこと、思い出して。

ぱらぱらと手帳をめくる。

 

うん。3月14日、水曜日の今日は。戦車道部の練習があるけど。夕方までには家に帰れるね。

いや、何があっても絶対に帰るんだ。

 

そう決めたら今度はLINEを開く。そして、返事を早打ちした。

 

 

今日の夕方以降?いつも通り

部屋にいるよ

 

 

あえて、そっけなさを心がけて、こんなふうにしたよ。本当は夕方に何があるか、気になって仕方ないけど。どんなことがあるか、高田くんの考えてること、わかんないから。文章をもう一度確認してから、深呼吸をして。送信ボタンを押した。

 

 

 

 

今日の練習は、2,3年生が大学のバス乗り場に8時集合で、1年生が6時半に部室集合、だね。そこから自分のチーム戦車を運転して、水戸市郊外に点在する練習場の1つまで、隊列を組んで移動するよ。

 

1年生は6時半に集合して、戦車のお手入れや移動手配をやってくれている。

んで、私とあんこうチームのみんなは、7時に部室に着けば、大丈夫かな?1年生の子だけに任せるのは負担が大きいし、ミスがあるといけないから。当番制で2年生チームが補助につくのよね。

 

今週の2年朝当番は2号車チーム、つまりあんこうチームだから。私も早めに着けるよう、6時半に家を出た。

 

 

 

市指定のゴミ袋に入れたゴミを外の回収所に出して、その足でアパートの駐輪場に行く。自転車のカゴに荷物を入れて、自転車に跨って、ペダルを漕ぐ。

 

そこから、いつもの道を通って、6時50分に大学駐輪場に着いたよ。後輩ちゃんたちがもう集まって作業を始めてた。しばらく待っていると麻子以外のあんこうチームのみんなが、ちらほらと到着してきた。

 

あんこうチームも準備に取り掛かるよ。まずは二手に分かれて。戦車の点検・掃除と、砲弾・弾薬・救命セットとかの持ち物準備に取り掛かる。今日の練習に出席する戦車をまとめた表にそって、戦車を倉庫から出して、作業をしているよ。

 

1年生の子達はもう慣れてきた感じで、てきぱきと動いてくれるから、私たちの仕事が多くなくて、安心だよ。頼もしい後輩ちゃんばかりで、今後も安心だね!

 

とここで、麻子が到着した。いつものように眠そうに目をこすりつつ。「遅れて申し訳ない」といいながらの登場だよ。みんなもう慣れてるから、軽く笑ってすぐに作業に戻る。高校時代と比べると、大躍進だけどね。

 

 

 

戦車点検、掃除と持ち物準備が終わったら7時45分になっていた。うん、予定通りだね。

 

そして、先輩方が到着したら、朝礼を行って戦車に乗り込むよ。んで、今日の練習場、大学から北西にある草原まで、決められた道路を走って走行してく。

 

 

 

 

練習場についた。そこから部メンバーは2つに分かれる。一方は試合練習で、もう一方は近くの高台に移動して改善点とかを見つける役で。

 

試合練習メンバー・戦車に選ばれた私達は、各々の配置に移動して、無線指示を待つよ。指示と同時にチーム練を始めて、お昼休みの時間まで、ひたすら撃ったり走行したり。んで、終わったあとは見学チームが改善点を共有してお昼休みに入る。

 

 

「練習終わり!休憩入るよー!」

 

「練習再開するよー!Bチーム戦車は速やかに配置に移動して〜!」

 

12時から13時の昼休みに持ってきたお弁当を食べて、歓談して。そのあとは高台に移動して、戦車の動きを見て、改善点を探すよ。

 

そしてあっという間に17時。反省会を終えて、戦車で大学まで戻る!そのあとは戦車を車庫に戻したり、片付けをして解散、というのがいつものスケジュールだよ。

 

でも、今日は違ったんだ。

 

「お食事いきませんか?」

って華から誘いがあって。

みんなは行く行く!って言ってたけど......。私は断って早く帰ることにしたよ。

 

今日のこれからの時間は、大事なものになりそう。

そう思いながら、帰路についたんだ。

 

 

18時半頃。

玄関からチャイム音がした。これが、高田くんと向かい合う、合図。

 

ドアを開ける。高田くんがそこに立っていた。

 

 

「あ、高田くん。どうぞ」

 

「中へ、ですか?」

 

「上がって」

 

「はい」

 

高田くんの口調、雰囲気は、いつも通り。ちょっと自信がなさそうな、でも礼儀正しいものだった。だけど、今日はその中に。芯の強さと覚悟を感じる。

 

私は靴を脱いで、上に上がる。私の靴、ハイヒールやブーツとかを避けて。玄関の真ん中に、高田くんが靴を揃える。 

 

 

 

「失礼します……えー、はい」

 

高田くんが息の調子を整えてる。

 

「どうしたの?」

 

 

 

「これ、ホワイトデーの、この前のお返しです!」

 

 

 

私の目の前に、紙袋が、差し出された……!

 

 

 

驚きで、すぐに動けないよ。思わず、右手を口に当てて固まっちゃった。

 

 

 

そして、高田くんのつむじが見えると思ったら、高田くんがすぐにお顔を上げた。

私の驚く顔を見て、呆然としてる。

 

なにか言わなきゃ。声を喉から絞り出す。 

 

 

 

「……いいの?」

 

「……ええ。むしろ是非」

 

 

 

 

ゆっくりと。右手を口元から離して。紙袋の取っ手と高田くんの手の方へと、伸ばしていく。

 

 

そして紙袋を受け取った。

その時に高田くんの手にちょっと触れたけど。

普段の私なら、それだけでも舞い上がってしまいそうだけど。

 

今日はそのことが気にならないくらい、胸がいっぱいで。

 

 

まずは、お礼を言わないと。また、声を喉から絞り出す。

 

 

「……ありがと」

 

 

 

すると、自然と頬がはにかんできたの。

高田くんは私のその顔を、じっと見つめてくれている。

 

恥ずかしい。けど、もっと見つめててほしい。相反する二つの気持ちが、私の中で、渦を巻いて、消化されていく。

その気持ちで私はいっぱいで。思わず私は目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

「もう一つだけ……宜しいですか?」

 

高田くんの声が聞こえた。いつも以上に通った声。

 

 

 

 

「はい……」

 

ちょっと間を置いて。まだ紙袋を抱えたままで。私は再び、目を開けた。

 

彼が目の前にいる。背筋を伸ばして、私を見ている。見てくれている。

 

 

 

 

「……色々考えていたんですが、全て飛んでしまいました」

 

 

 

「武部さん。あって一年もせずに言えることではないものかもしれません」

 

 

 

 

「この想いを持つのも初めてのことで、それでいてここまで進むのが善いことなのかもわかりません」

 

 

 

 

 

「それでも、言わせてください。

 

 

 

 

好きです。付き合ってください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ついに、言ってくれた。彼が頭を下げた。

 

 

 

私が今までやってきたこと、頑張ってきたこと、無駄じゃなかったんだ......。

高田くんも私と同じように、私のことを気にかけてくれた。好きだって言ってくれた。私の片思いじゃなかったんだ。

 

 

 

 

............っっ。

あれ......??いつの間にか、私、泣いてる......。

 

 

 

涙が止まらないよ......!どーしたんだろ......。

あ、私、すごく嬉しかったんだ。高田くんの言葉が心に響いて。いつかのように切なさで胸がいっぱいだ。

これは嬉し涙、っていうものかもしれない......。

 

 

 

 

すすり泣きとは違う涙が、止まらない。

涙が口に入る。悲しくて出てきた涙みたいに、しょっぱくなくて。むしろ甘い涙だった。

 

 

 

静寂が続く。彼がようやく顔を上げる。

びっくりしてるけど、すぐに心配の表情がお顔に浮かんでた。

 

 

 

「あの……すみません。大丈夫ですか?気分を悪くさせたのなら……」

 

 

「違う……違うの……」

 

 

 

 

彼がおずおずとハンカチを渡してくれる。

チェックのきちんと折りたたまれたハンカチ。

このために用意してくれてたのかなってくらいに。

自然に手渡してくれた。

こういう優しいところも。本当に好き。大好き。

狂おしくなるくらい、好き。

 

 

 

 

「……ありがと」

 

だから、今度は私の気持ちをちゃんと、伝えなきゃ。

高田くんが一生懸命、気持ちを伝えてくれたんだから。それに答えるのが、今の私のやるべきこと、だよ。

 

 

 

 

「……高田くん、覚えてる?」

 

「覚えてる……って、何をです?」

 

「ネコ……」

 

「猫?」

 

ぽかんとしてる。私は続ける。

 

 

 

 

「捨て猫を見かけた時のこと」

  

「7月頭くらいの時の……ゴミ捨て場の近くで段ボールに入っていた猫」

 

「あの時、多くの人がその猫を見ていたと思うの。でも、誰も何もしなかった。水も、餌も、何も入っていなかったから」

  

「でも高田くん、貴方は違った。可愛がった後すぐに保健所に連絡を入れ、ここの管理人さんに引き継いだ。あの後すぐ出かけていったから、そこそこ忙しかったにも関わらず」

 

 

 

「……あの時、貴方のことをすっごく優しい人だなって……思ったの。人の見えないところを見て、あらゆるもののために動けるんだって……」

 

そう言い終わったあと、私は高田くんへの全ての真心と誠意を胸に込める。

 

全て。そう、全てじゃなくちゃ。

今そうしなかったらいつするの。

 

 

 

 

 

口を開く。

 

「高田くん。こちらこそよろしくお願いします」

 

 

私は頭を下げた。

 




皆さま、今週もお疲れ様です。

今回の話を書くにあたり、『ようかい』第9話から高田青年とさおりんの会話、さおりんのLINE文章を引用しました。

ついにお互いの気持ちが成就しました。

次話からは付き合ってからの2人の日々を、綴っていきます。
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