「いい天気になってよかった~。私のことが大好きなイケメンさん!今行くからね!」
うららかな春の日差しと満開の桜並木の下、私は大学までの道を歩きながら、胸を躍らせていたよ。道行く桜や景色のすべてが、私を祝福してくれてるみたい!引っ越ししたばかりのアパートを出て、数歩歩いたところだけど。目に入る景色のすべてが、私の目に新鮮に映るんだ。
なんてったって、今日は大学の入学式!それにね。私がこれから4年間を過ごすのは、共学の総合国立大学、水戸大学だもん。水戸大学は、私が生まれ育った茨城県でもトップクラスの大学。入学するために、私、相当頑張ったんだよ?幼なじみの麻子にもサポートしてもらって、必死に勉強を頑張りつつ、戦車道で内向点を稼いで合格したの!私なりに頑張ったんだ!
なかなかやるでしょ?私。えっへん!
そして、私が入るのは、水戸大学、文学部の国文学科。大洗女子学園が廃校を免れた後、大学で日本文学を学びたい!って決めたんだ。そうそう、廃校を回避できたあの時はどうなることかと思ったよ...!私もみんなも先輩方も廃校を撤廃するために必死だったな......。そのおかげで今があるんだけどねっ!
国文学科に決めたのは、大学のオープンキャンパスの説明会に参加したから、なのよね。日本文学を学ぶと、やまとなでしこみたいな、教養もあって、内面がキレイで男の人にモテモテな女性になれるって!教授に言われたんだから、間違いないよ!
『国文学。それは奈良時代から続く日本の約二千年の歴史そのものであり、人が身に着けるべき教養とされ、受け継がれてきました!奈良時代より、人々は物語や和歌によって、自分の思いを表現し、自分が知らない世界を知り、そして、交流を深めてきたのです。
文学のジャンルは様々であり、恋歌から政治の話まで、様々です!文学には、どんな人でも必ず「探求したい!」と思えるジャンルに出会えることでしょう!
そして、ここだけの話、日本の伝統的な女性像である、やまとなでしこと呼ばれる女性が、わが水戸大学国文学科には多数在籍し、社会で活躍しているのです!国文学科で学ぶことは、日本のルーツを学び、教養を深め、発信力を高めるためにはうってつけです。あなたも教養と発信力を身に着け、やまとなでしこのような、穏やかさの中にりりしさのある、魅力的な人になりませんか?国文学科一同、皆様のご入学をお待ちしております!!』
こんな風に、オープンキャンパスの学科説明会で説明がされて。この説明会に参加するまでは、自分が何を学びたいのかがまだわかっていなかった。けどね、説明の動画を見ながら、私は思わず身を乗り出してた。だってだって、だって。やまとなでしこになれるんだよ!……そんなの、やるっきゃないじゃん!
って決めたら、やることは決まっているよね?水戸大学 文学部 国文学科に絶対に入るんだ!そんなわけで、勉強と戦車道を頑張って、推薦で見事、合格を勝ち取ったの!推薦の過程で、日本文学の面白さもわかってきたよ!私にはぴったりなのかも!
日本文学を学んで、やまとなでしこになる。それだけでもモテモテになりそうだけど。それだけじゃなくて、水戸大学は共学なの!共学で偏差値が高い大学ってことは......、頭のいい男の人がいっぱいいるってことじゃん!これはつまり...、頭のいいイケメンさんにモテモテになれるってことだね!?さらには、イケメンで賢い未来の旦那さんを大学生活でゲットしちゃったりー?!
そうと決まれば、入学式から私を売り出していこう!
そんなわけで、今日の私は完璧だよ!いつもより気合が入ってる。
ふわっふわの髪は、念入りにブローとブラッシングとヘアオイルを付けたよ!入学までの時間をたっぷり使って練習した、かわいく見えるメイクをしてみたし!
服装はリクルートスーツとしても使えて私の髪色が良く映える上下紺色のスーツに、ピンクのフリルのついたブラウスを着ているよ。そして、足首が一番キレイに見えるって店員さんにおすすめされた、7センチのパンプスを履いて、もうばっちり!でも、試し履きとして、長時間履くと足が痛くなったんだよね。ちょっとショック。
でも、今日は替えの靴もA4が入る新しいバッグに備えてあるから安心だね。用意周到さもアピールしないと!
るんるん気分で歩いていたら。大学の門が見えて来たよ!いっぱい人だかりができてる!
わーー!男の人がたくさん〜!私、大学生になったんだ!なになに?パンフレットを配っているよ。
「バレーボール部、マネージャー募集してまーす!」
「落語研究会に入りませんかー?」
「11月の水戸祭で運営委員として、ぜひ一緒に活躍しましょう!!」
「水戸大学混声合唱団、夕方18時から新入生歓迎会やりまーす!新入生はお食事代無料です~!」
すごーい!これが、サークルの新入生勧誘ってやつ!?とりあえず、パンフレットをいっぱいもらってみるよ。どこも素敵なパンフレット!迷っちゃうな~。
「君、かわいいね!新入生?」
おお?!呼び止められたよ!しかも「かわいい」だって!
「はい!そうです!」
「元気がいいね〜!ぜひ、入学式の後に、うちのサークルの説明会に参加してよ!」
「おいおい~!抜け駆けか~?うちのバトミントン部もよろしく!マネージャー枠空いてるよ!」
「テニスもいいよ!よろしく!」
わ~~!!私の周りに男の人がいっぱい!しかもみんな私の入部を求めてくれてるみたい!!さっそく、モテモテだ〜!あっちはマネージャーで、こっちは試合に参加できるんだ~~!どこにしようかな~、ますます迷っちゃう!!
「おいおい、男子ども。この子はうちの戦車道部に入ることが決まってるんだよ。さあ、のいたのいた」
え??誰?そう思う間もなく、私は肩を叩かれた。誰?
振り返ると、そこにはショートボブの利発そうな女の人が。この人が私の肩を叩いたみたい。後ろには、いつかのダージリンさんみたいに髪の毛を編み込んだ女の人と、一つ三つ編みを肩に流した方も。
って、今何て言った?!「戦車道部に入ることが決まってる」???周りの男の人たちもタジタジし始めた?!
「なんだよ~、戦車道部かよ~。でも、講義とかなにか困ったことがあればいつでも相談してきな!俺はあそこのサークルで、経営学科の○○ ○!よろしくね!あ、せっかくだし、LINE交換しない?」
「ちょっと!うちの貴重な期待の1女ちゃんに近づかないでくれる?他をあたりなよ」
「ちぇ~~、またね!」
あれ?退散しはじめちゃった!?
「武部沙織さんだよね?大洗女子学園での武勇は、かねがね聞いているよ。私は東堂レナ。戦車道部の隊長だよ」
「はい、武部沙織です。それで、今何とおっしゃったんですか?」
「戦車道部に入ることが決まっている、かな?これのこと?」
「え?もう決まっているんですか?!」
「???あれ?知らなかった??戦車道枠の推薦入試で入ったんだよね?戦車道の推薦入試で入った人は、最低でも1年間は戦車道部に入部して、戦車道にまい進するって決められていなかったっけ?郵送の入学資料に戦車道部の案内が入っていたはずだよ」
「私たちは戦車道推薦で入った、新入生の名簿と顔写真を大学からもらっているんだ。それで声をかけたってわけ。そうそう!この後のガイダンスには必ず参加してね!」
えっ?!!うそ!!すっかり忘れてた!!ってことは、他のサークルに入れないじゃんっ!!サークルのマネージャーとしてモテモテになるビジョンがもうなくなっちゃった!!?
ううん。戦車道は女の子ばかりだけど、大学生だから、男の人との交流も絶対あるはず!
なにより、私は期待の新入生みたいだし!そしたら、テレビカメラも、戦車道を見に来てくれてるイケメンさんも、私に注目してくれるんじゃないかな〜?
戦車道、学科、バイトでモテを挽回して、イケメンの彼氏を作ろう!そうしよ!
それに、戦車道は高校でやっていたから経験あるし。ほどほどに頑張ろう!おーー!!
———半年後。
入学式で決意を新たにしたのに〜。あれから彼氏はまったくできなかったよ......。女の子の友達はいっぱいできたから、毎日が楽しいけど!でもやっぱりイケメンの彼氏はほしい!どうしよー。
戦車道はほどほどに頑張ろうって決めていたのに!なかなかに予定や練習、人間関係がハードだった!
先輩との上下関係は大変!試合はあったけど......。先輩が優先されちゃって、テレビにはまだ写れてないよ〜。
あと、新入生だからってことで、私のアイディアが通りにくいんだ。大洗女子の時にやっていた、戦車内でホワイトボードとマグネットを使って位置確認をする方法。あれも認めてくれるまで、時間かかったし.....。先輩方も優秀だから、逆らえないのは仕方ないけど。もう少し自由にさせてくれてもばち当たらないよ!
それに、週3回の講義後の練習は必須参加、しかも休日練習もあって。そんなわけで、予定もカツカツ!
「勉強や他のことなど、やりたいことがあるので、辞めたいです」と言ったこともあるけど......。「1年間は続ける決まりで入学しているから、残念だけど許可できない」とか。「ムードメーカーとして、通信手として頼りになるから、いてほしい!お願い!」って言われちゃったんだよね......。
戦車道、楽しくないって言ったら嘘になるくらいには楽しいのもあるから。もう少し続けてみようかな?あと、就職にも有利になるみたいだし!
あと、練習が多いおかげで、バイトも週1日だけに選択肢が狭められて。子どものお世話をするのが好きだったから、保育園バイトを始めたよ。そこが週1日の勤務を許してくれてよかったかも。
他にはデータ入力のバイトもやってみたかったけど…。最低でも週3日は出ないといけないところしか募集がなかったんだよね…。うう〜残念。時給が良くてパソコンの早打ちも上達したから、やってみたかったのになあ。
だけどね、男の人へのアプローチは順調かも!男女の比率が3:7ってことを知った時は不安になっちゃったな。だけど、自分で言うのもアレだけどね。けっこうモテモテみたいだよ!
講義で隣に座れたし!2人で一緒に学食も食べたりしたし!あっちから声をかけてくれた人たちで、優しくて気配り上手!そして、イケメンなの!!
そんなわけで、彼氏さん候補になっている人が、3人できたかな?家で作った肉じゃがやお菓子を大学で振る舞ったりしたよ。服装では男の人を魅了させちゃう、ニーハイソックスにミニスカートのコーデをよく着ちゃったり!こんなふうにモテテニクックを実践した結果だね!
もっと友達の範囲を広げて、モテテクニックを「撃って撃って」撃ちまくろう!
でも、あれ?彼氏さん候補の1人がなかなか来ない。30人くらいが受けてる学科のこの講義を一緒に受けて、お話ししたりしてたのに......。
なにより、さっきから視線や周りの人がひそひそ話をしているのを感じるなぁ。気になったから、あとの戦車道部で杏子に聞いてみよう。
んで、その人は結局来なかった。
そして、部活の休憩時間に、友達で、同じく国文学科1年生で、アンツィオ高校出身の宮本杏子にね。「学科のみんながよそよそしいんだけど、理由がわからない」って尋ねてみたら…。
戦車の弾が命中してきた時みたいな、衝撃的な返事が返ってきたんだ......。
「沙織ちゃん、とても言いにくいことなんだけど......。いろんな男の子と仲良くしてて、事ある毎に「モテたい」「彼氏募集中」って言ってるよね?私は沙織ちゃんがそんな人じゃないことを知ってるから、そんなこと、思っていないけど......。学科の中で「ビッチ」とか「ぶりっこ」とか、いろんな噂が立ってるよ」
!!!!??!うそでしょー!!?
お仕事、お勉強など、今週もお疲れさまです。
ところで、牡蠣が美味しい季節ですね。色んなお店のカキフライが猛烈に食べたい今日この頃を、くりすてぃーぬは過ごしています。
皆さまのおすすめのカキフライを、ご感想欄で教えていただけると嬉しいです。日本全国津々浦々、どこでも構いません!
教えていただいたカキフライは、可能な限り、食べに行ってみます。