しょうか   作:くりすてぃーぬ 

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※後半部分にやや不適切な表現があります。苦手な方は読み飛ばして読んでいただいても構いません。


第5話:お近づきのチャンス、到来~!?

 今日は、朝のあの出来事—隣に住む高田くんが、捨てられてた子猫を助けてたこと—が、ずっと頭にいっぱいだった。ずっといっぱいすぎて、1限目の授業に遅刻しちゃったし、その授業も上の空になっちゃうことが多かったなあ。はぁ…、今日は部活がなかったから。夕方には家に帰れてよかったかも。

 

 んで、あの子猫は、遠くから覗き見た感じだと。茶トラのまだ小さい子猫だった。保健所に連れて行かれて、どうなっちゃうのかな。可愛がって、責任をもってお世話してくれる飼い主さんに、出会えるのかな…。そうなるといいけど…。私に何かできること、ないかな…?何もできずに、ただ様子を見ていた私、だけど。どうすれば?

 

 でも…。子猫のことも、頭の中で、もやもやしてるけど…。子猫と向き合っていた高田くんの姿も、頭から離れないの。その光景が何度も頭の中で、繰り返してて。とにかく、すっごく優しい人。そして、人の見えないところを見て、あらゆるもののために動ける人、かも。

 

 前には久々に声かけた私に、ノートを貸してくれて。あと、戦車道の話を聞いてくれて。そして今日は、子猫の対応をして。

 そんな高田くんを思い出すと、なんだか胸が切なくなる。今まで感じたことがない気持ち。ううん。だけど。全然嫌な気持ちじゃない。むしろ、もっと考えていたい、のかも。

 

 …はぁ。今日一日考えても、この気持ちがどこかにすとんと収まらないよ。どーしよう。おかしいなあ。いつもの私なら、これくらい考えたら、すぐに切り替えできるはずなのに。こんな風に頭が何かでいっぱいになるのは…。学科で変な噂を流された時以来、かも。

 あの時みたいに、あんこうチームのみんなに相談してみようかな?でも、もう少し、自分で考えて。自分の中で消化してみよう。それでもだめだったら、みんなに相談しよう、うん。

 んで、今できることは?なんだろう?

 

 あっっ!子猫のこと!あの子猫を、私は、放っておけないよ。高田くんはこの先も多分このアパートや大学で会えるけど…。あの子猫ちゃんは。今何かしないと、2週間先も分からない。あの時何もできなかった私は!ここで動かなきゃだ!それに、見捨てちゃうと、今日の夕ご飯がまずくなっちゃうよ。そんなわけで、私にできることは。やっておかないとね!

 

 とりあえずね、状況を整理しよう。高田くんはあの子猫を管理人さんに預けて、出かけてたよね。急いでいるのにあれだけの行動が出来たのってすごいなぁ…。冷静なんだなあ。…って、また彼のこと考えてるじゃん!…とりあえず、今できること。子猫について、管理人さんに聞いてみよう!

 

 

 

 

 

—約2か月後の8月下旬。

 

 ん?あれ?ここ、どこだっけ?この景色は…、私の家のお風呂場だよね?んで、私は湯船に浸かってる。

 

…あ、そうだった。お風呂に入っているんだった。お風呂に入りながら、高田くんのこととか、入学してからの今までのこと、いろいろ考えてて。長風呂してたら、体が火照って、そろそろ限界。上がらないとね。

 

 お風呂場から出て、洗面所兼脱衣所で、部屋着に着替えてた時。私のスマホからLINEの通知音がしたよ。なになに?私は通知をタップする。そしたら、画面いっぱいに写ったのは、茶トラの子猫の写真だよ。わぁ~~~!かわいい~~!ちょっと見ない間にこんなに大きくなったのね!杏子ちゃん!写真を送ってくれて、ありがとう!

 

 あの日の子猫は、管理人さんが保健所に連れて行く前に、保護先が決まったよ。このアパートはペットが禁止だから、保健所に連れて行くか、保護猫センターに連れて行くかで。見つけた次の日に、私は杏子に話したっけ。そしたら、実家のご両親が、家で猫を飼いたいって言っているからと、確認を取ってもらったの。んで、その子は杏子の実家で暮らせることになって。私にも杏子が、時々写真を送ってくれるんだ。

 

 そして、子猫の次に目に入ったのは。段ボール箱にいっぱいに入った野菜。

そうそう、あの高田くんが、1時間前に持ってきてくれたのよね!久々にお話しできてよかった~~!しかも、これから料理をご馳走できることになったし!るんるん。

ちょっと思い返してみよう。

 

 

 今日は戦車道の練習が終わってから。家に帰って高田くんのことをいろいろと考えていたっけ?ただのお隣さんでしかない、高田くんに、どうアプローチすればいいか、とか。また変な噂を立てられたくないなあ、とか。

 そんなことを考えてたら。インターホンが鳴ったんだ。

 

 

「はい?」

 

「あ、隣の高田です……」

 

「はーい、ちょっと待っててもらえる?」

 

さっきまで考えてた高田くんだ!びっくりした気持ちと嬉しい気持ちが悟られないように。あえて平静をとっさに装ったよ。

 

「どうしたんですか?」

お風呂に入る前で、良かった。

 

「あ、いえ……実家から野菜が送られて来たんですが、なにぶん量が多くて……そちらの都合さえ宜しければお渡しできないかな、と」

 

「いいんですか?」

 

「こちらの冷蔵庫に入りきらないので、できればでいいので……」

 

「冷蔵庫ね。今余裕あるし貰う貰う」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 とりあえず、荷物の野菜を下ろしてもらわないとね。ってことは、私の家に上がってもらうってことじゃん!落ち着け、私。部屋は、いつだれが来てもいいように、綺麗にしてある。ゼクシィが本棚にあるけど、玄関のこっからは死角になるはず!落ち着け、私!

 

 いったん深呼吸してから。

 

「ちょっと一回上がって、玄関に段ボール置いてもらえる?」

 

「……失礼します……」

 

玄関に敷いてあるマットの上に、ゆっくりと段ボールが降ろされた。それを開けて、まず中身の野菜を確認したよ。一目見て、色とりどりの野菜が入ってるのが分かる。

 

「えーっと、中身はピーマンにナスにズッキーニ、あとジャガイモもあるみたいね」

 

「オッケーオッケー、このくらいなら全部入る入る。これだけ送られるって、高田くんの実家って農家?」

 

「いえ、ごく一般的なサラリーマンです」

 

「じゃあ、これは……」

 

「親父が大学生でも野菜食っとけって意味で送ったんだと思います。けど、単にこれだけ送られてもと……事前に連絡もなかったですし」

 

「やっぱ野菜って下拵えいるしね〜」

 

「これの3倍くらい来たので如何したものかと、と思いまして……」

 

「3倍⁉︎ これで全部じゃなさそうだとは思っていたけど……」

 3倍!?大量の野菜、だめになる前に、何とかできるのかな?

 

「残りって……高田くんが処理するの?」

 

「一応やって袋にでも詰めて使おうかと」

 

「料理するんだ」

 

「まぁ、人並みでしょうけどね」

 

気が付くと、とっさに聞いてたよ。

「どういう料理するの?」

 

「ほぼ汁物……あとカレーです。早いですし量作れますしそもそもコンロが一つしかないので」

 

「夏場も?」

 

「夏場は氷作っておいて入れたりしますけど、基本的には大量に汁作って捌いてます。ブイヨンとか鶏ガラとかはまとめて業務用買い込んでますので……」

 

 ちょっと考え込んでから、高田くんが言う。

「今夜はこの野菜捌きたいのでカレーにします」

 

「やっぱり男の子ってカレー好きなんですか?」

 肉じゃが、じゃないんだね。

 

「好き、というか手っ取り早くたくさん食べれるんで。だいたい飯に汁系一品です」

 

「他のものも食べた方がいいよ」

 

「とは言いましても……」

 

 

「じゃあさ。私が時々、料理を作って持ってきたら食べてくれる?私、趣味が料理で、人が美味しく食べてくれると嬉しいんだ」

 

「悪いですよ、そんなの」

 

「いいのいいの!自分のついでだし!遠慮せずにどーんとね!」

 

「…お気遣いありがとうございます。」

 

「とりあえず、今日はカレーを作るんだよね。高田くんの夕食の予定もあるから、持っていくときは、早めに持ってく!」

 

 そういう感じで、会話も終わって。それぞれの部屋に戻ったんだよね。

 

 

 

 

 

 う~~~!上手く話せたか分からないよ!しかも、ちょっと強引だった?

 でも、これから手料理を持っていくっていう口実で、話す機会が増えそうだよ!ナイス私、かも。

 

 でも、とっさに、悪い記憶が、頭に浮かんでくる。1年生の時、学科の男の子に料理やお菓子を振舞って。それが、私の悪口に繋がったんだった。杏子が見せてくれたLINEのスクショは、私の悪口で盛り上がっていた。

 

 あのあばずれ!ビッチ!私たちが黙って見てたらいい気になりやがって。

 どうせ男だったら誰でもいいんだろ。

 あのお菓子や料理に何か仕込んでんじゃない?!

 学科の男どもはあいつにぞっこんになってるよ!

 最近、彼ぴっぴに「お前も武部さんみたいになってほしいなぁ」って言われたんだよね(´;ω;`)

 え?!それ彼氏さんも許せんけど、あのくそビッチ、ますますむかつく!

 一度痛い目見させてみよ!

 

 

 女子だけじゃなくて。学科の男の子の何人かからも。嫌がらせが、沢山あった。しきりに2人きりで飲もうと言ってきて。んで断ると「他の男にはやってるくせに」って捨て台詞を言われたり。あとは、すごく下品な質問をしてくる人がいた。その度に、華や杏子を頼るわけにもいかないし。私が蒔いた種だもん。忘れたいけど、思い出してしまうんだ。

 

 私はけっしてビッチじゃない。あの時、悪い噂を流される前までに、よく接してた男の人達には。今考えると恋愛感情なんて無かった。彼氏が欲しくて、攻略が簡単そうな人にアプローチしてただけ。その、撃って撃って撃ちまくる戦法は。周りから見てて、気分が悪かったかもしれない。だけど、私は誰でもいいわけじゃなかった。高田くんへの恋で、気づいたんだ。

 

 高田くんは私のことを悪く思う、そういう人じゃない。と信じたいよ。だって、私が心から好きになった人だもん。だけど、今は。簡単に踏み出せそうじゃない。周りの目を気にしているのもあるけれど…、大事に思い始めた人、だから。

 

 

 そう思って。私は今日も自分のために。料理を作ることにしたんだ。高田くんが好きな料理を想像しながら、ね。




今回の第5話を書くにあたって、『ようかい』四から、高田青年とさおりんの発言を多数引用しました。
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