重頭脳級掲示板   作:なぐ@沼

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前回のあとがきの詳細回

本編もスッカスカだったけどこの話は本編以上にスッカスカな内容でカシュガル落ちると思う
そこまでいけばですが


【速報】イッチ、ガチでいくえ不明

1:名無しの重頭脳級

わかっている情報

・最後に目撃されたのは香月博士の部屋

・部屋から出た記録なし

・当日、香月博士は深酒のため記憶なし

 

2:名無しの重頭脳級

博士にしては珍しいミスじゃない?

 

3:名無しの重頭脳級

そら人類全体で苦節50年の待望の勝利確定飲みやぞ記憶も飛ぶやろ

 

4:名無しの重頭脳級

そんな飲みのお相手に選ばれるイッチくんさぁ

 

5:名無しの重頭脳級

BETAサイドの事情知ってるっていうかその本人だから機密を気にしなくていいからしゃーない

 

6:名無しの重頭脳級

博士の部屋から出てないってのはガチなんか?

 

7:名無しの重頭脳級

ガチやで。元ハイヴやから、一応抜け穴ないかを捜索中や

 

8:名無しの重頭脳級

イッチやからなぁ。多少の壁ならぶち抜けるから

 

9:名無しの重頭脳級

なぜ壁をぶち抜いている可能性を考慮しなければならないのか

 

10:名無しの重頭脳級

イッチだから……

 

11:名無しの重頭脳級

イッチが通れるくらいでかい穴があいてるならすぐ見つかるのでは?

 

12:名無しの重頭脳級

イッチ無駄に几帳面なところあるから通った後穴を塞いでいる可能性が

 

13:名無しの重頭脳級

あいつほんま……

 

14:名無しの重頭脳級

香月博士が珍しくかなり焦っている横でクッソ冷静な後輩君

 

15:名無しの重頭脳級

博士はそら焦るやろ現在第一容疑者扱いやで

 

16:名無しの重頭脳級

いくえ不明になるときは一人で勝手になろうね!!!

 

17:名無しの重頭脳級

人に迷惑をかけてはいけない(戒め

 

18:名無しの重頭脳級

そもそもいくえ不明になるな(真理

 

19:名無しの重頭脳級

博士の監視下でもいくえ不明になるとは、プロやな──

 

20:名無しの重頭脳級

もう首輪つけといたほうがいいのでは?

 

21:フィア

過去にやったことがあるのですが、気が付いたら外で突撃級を乗り回していましたので

あまり効果は期待できないかと

 

22:名無しの重頭脳級

 

23:名無しの重頭脳級

実施済みは草

 

24:名無しの重頭脳級

イッチさぁ…

 

25:名無しの重頭脳級

突撃級乗り回すの楽しいのわかる(小声

 

26:名無しの重頭脳級

わかってはいるがわかるわけにはいかん(現場猫

 

27:名無しの重頭脳級

ちきうとかいう激オモロ星にたどり着きながらちきう救済のため今までずっとまじめにやってきたわけだしちょっとはっちゃけるくらい多少はね?

 

28:名無しの重頭脳級

せめて連絡をしろや!!

 

29:名無しの重頭脳級

ガチで死んだ説あった最初の二回以外のいくえ不明で後輩くんが妙に冷静だった理由に涙が止まらない

 

30:名無しの重頭脳級

冷静(諦観

 

31:名無しの重頭脳級

慣れは万事を解決するんやなって

 

 

 


 

 

 

「なるほど、ねぇ」

 

 一通りの話を聞き終え、香月夕呼はため息をついた。

 3周目。00ユニット。箒型の命令伝達系統。オリジナルハイヴ。司令塔たる重頭脳級。

 よくできた作り話、というにはあまりにも異質で完成されている。

 そして何より、話をしているその当人の変化が、ことの異常さを物語っている。

 

「信じて、もらえますか?」

「そうね……」

 

 正直なところ、大筋は信じてもよいだろうと香月は判断していた。

 つい先日までそこまで特別さを見せない一衛士でしかなかったのが、姿を消したかと思えばまるで別人のようになって表れたのだ。

 体格も一回りよくなって、立ち振る舞いも明らかに圧が違う。まるで歴戦の戦士を顔だけすげかえたようではあるが、これだけの変化がありながら違和感がない。

 あまりにも適当でちぐはぐで雑なやり方だ。裏があるにしてももう少しやり方というものがあるだろう。

 とはいえ、話を鵜呑みにするわけにもいかない。

 ここが白銀の言う通り三周目だったとして、前の二周であったことがこの世界でも起きるとは限らないことが一つ。

 そしてもう一つ。すでに、明確な違いが存在している。

 

「いいわ、ある程度は信じてあげる」

「本当ですか!?」

 

 白銀は心底安堵したように胸をなでおろす。それは、信じてもらえたこともそうだが、かつての関係性に一歩近づけたという喜びでもあった。

 そんな白銀の様子を観察しつつ、ただし、と香月は言葉を続ける。

 

「前の知り合いと"再会"しても、ちゃんとこっちでの対応をとりなさい。前の世界を知ってるのはアンタだけ、いいわね?」

「あっはい、それは気を付けます」

 

 図星をつかれたような顔で頭をかく白銀。おそらく、前の時も似たようなやらかしがあったのではなかろうか。

 それはともかく。

 今は、前との違いをきっちり摺合せしておくことが重要だ。

 

「それで、ですね。もう一個、とんでもない話がありまして」

 

 先手を取ったのは白銀だった。

 

「なによ、まだトンチキな話が残ってるっていうの?」

「いやあ、俺としてもまだ信じられない話なんですが、どっちかというとこっちの話の方がやばい話で」

 

 歴戦の衛士然とした雰囲気から一変、とんでもない課題を出されて困っている生徒のような顔をしていた。

 なんとなくだが、香月は嫌な予感がしていた。

 正直に言えば、現時点でもだいぶんお腹いっぱいなところがあるのだ。本音ではもう今日はお風呂入って寝て、明日ゆっくり考えをまとめたいのだ。

 悲しきかな人類にそんな贅沢は許されず、香月もまた困難から目を背けるような人間でもなかった。

 

「それで、そのやばい話ってのは?」

「なんか俺ともまた違う世界から来たっていう重頭脳級が仲間になりたそうにこっち見てきたんですけどどうします?」

 

 さすがに本日は解散にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 香月は激しく後悔していた。

 あれから一晩考えを整理したがさっぱりまとまらず、とりあえず会って考えようということになった。なってしまった。

 あまりにも浅慮極まる選択だったが、実際BETAがこちらと交流したいというのであればすぐにでも会う必要があるのは事実だ。

 すぐにでも会う必要はあるのだが、それにしてもあまりにも浅慮すぎる。

 

「もうすぐです、あっちで隠れてもらってます」

 

 白銀の先導に従いついていく。

 そこは、崩壊した市街地の居住区があったところだった。

 そういえば、白銀はこのあたりの住人だったか、とどこかで見かけたプロフィールが脳裏をよぎった。

 崩壊した中ではまだ形を保っている家に入る。それなりの広さだ。人間大サイズの何かが隠れるにはうってつけだろう。

 家の中の、扉が閉じられた一室の前に立つ。

 

「白銀だ、Mr.ONE」

「……どうぞ」

 

 扉越しとはいえ、知らない声だった。

 年若い青年の声だろうか。理知的で澄んだように聞こえる声質は、聞き心地の良いものだ。

 発音といい違和感はない。まるで人間の声そのものだった。

 

「おお、白銀さん! 香月博士を連れてきてくださったのですね!」

 

 だから、出迎えてくれたそれの姿にさすがの香月も一瞬体が強張った。

 人間ほどの大きさの、深海にでも住んでいそうな異形の姿。

 この瞬間まで現実を正しく認識できていなかったが、今この瞬間、生殺与奪は完全に握られてしまっていると考えていいだろう。

 それほどまでに、人間とBETAには力の差があるのだ。

 

「……ふむ、その表情。初めてあったころを思い出しますね」

「……一応、初対面だと思うけど?」

「おお、そうでした。これは失礼」

 

 困ったように笑いながら頭をかく、という姿を幻視した。

 

「改めまして、各星の管理代表を務めております、地球での分類ではBETAの重頭脳級、個体名をMr.ONEと申します」

「私は国連太平洋方面第11軍・横浜基地副司令官、香月夕呼です。初めまして、宇宙からの来訪者さん」

 

 そっと伸ばされた触腕を、一瞬戸惑いつつも握り返す。

 知性ある宇宙人と手を結んだ瞬間だ。

 あらゆる背景をなかったことにしてみれば、世界史に残る歴史的瞬間だろう。

 

「それで、今現在も我々と絶賛生存戦争中のBETA様が私に何用で?」

「いやはや手厳しい。完全にこちら側に非があるので何も言い返せないあたりが特に」

 

 がっくりと肩を落とす、様に見える。

 

「目的としましては、この世界で人類と敵対しているBETAの停止です。我々は創造主様より生命体の絶対保護を命じられており、それは別世界だろうとも変わりありません」

「生命体の保護、ねぇ」

 

 現在地球で大暴れしているBETAの行動とはかけ離れている。とても信じられるものではない。

 しかし、目的を果たすためBETAを停止すると明言した。

 もしある程度はその言葉に従って行動するのならば、使い方によってはメリットを見いだせるかもしれない。

 冷静な目で観察してくる香月に、重頭脳級は向きなおった。 

 

「ひとまず、前の世界での私の経緯をお話しさせてください。かなり恥も多い話ではあるのですが」

 

 そうして、重頭脳級──Mr.ONEの話が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

「──そうして、現在は残ったハイヴの掃討戦に入っている状態です。こちらに来る前の計画では、1年もかからず地球上からBETAはいなくなる予定です」

 

 私と後輩の2体を除きますが、とその重頭脳級は付け加えた。

 なるほど、なんとも夢のあるばかげた話だ。宇宙からある日突然BETAがやってきたように、ある日突然人類に味方する宇宙人がやってくる。巻き込まれた人類はたまったものではない。

 香月は、しかし話の内容そのものより、話し手であるMr.ONEの様子にこそ戦慄していた。

 なぜなら、あまりにも人間を理解しすぎているのだ。

 人類がBETAと曲がりなりにも戦いになっているのは、人類がBETAを研究し、BETAが人類への対策をろくにうっていない関係性があるからだ。

 もしBETAが人類を理解して本気で殲滅するために動き始めたら、人類は一か月も持たないだろう。

 だからこそ目の前の重頭脳級は、人類の絶望そのものと言っていい。

 今、人類は完全に詰んでしまっているといっていい。どうにかして、希望を残さなければならない。

 背筋を冷や汗が伝うのを感じながら、香月はきっかけを求めて周囲を見回し──そこで、何やら考え込む白銀に気づいた。

 白銀自身の話が本当なら、今の重頭脳級の話は少々受け入れがたい類のもののようにも感じるのだが。

 

「白銀?」

「ん、ああ……すみません」

 

 親しい人を犠牲につかみ取った勝利を小ばかにされた──そう受け取っても仕方がないように思えたが、白銀は何かを思い出すように、慎重に言葉を紡いだ。

 

「今の話ですが、記憶にあるといいますか……自分のものでない記憶が、頭にあるといいますか」

「おや、白銀さんもですか? 私も、こちらの世界の出来事がうっすら記憶にあるんですよね」

 

 二人そろって腕を組み、うむむとうなる。なんだこいつらと思いつつ、香月の冷静な部分が思考を回す。

 白銀の話によれば、白銀はこの重頭脳級に導かれてこの世界に来た。因果の狭間、存在が不安定になっている状態で触れ合うことで何が起こるかはわからないが、情報状態と化しているのなら情報──つまり記憶の共有が起きることはさほど不思議ではない。

 こうなってくると白銀もグルでは?という疑念も浮かぶが、それはそれとしてここまでの話は大きく否定する要素はないということだ。

 あまりに都合がいい話ではあるが、だからと言って頭から否定するのも冷静な判断ではない。

 どのみち、現状詰んでいるのだ。ほころびが見えるまでは、向こうのペースに乗っておくべきだろう。

 そう切り替えた香月は、二人(一人と一体?)に、因果の狭間であれば起こりうる現象であることを説明した。

 なるほど、と納得している風の二人を眺めつつ、根本的な疑問を香月は口にした。

 

「そもそも、Mr.ONEはどうやってこの世界に? そう簡単に移動できるようなものではないはずだけど」

 

 ピタリ、とMr.ONEの動きが止まる。ギギギ、と油の切れたロボットのような挙動で香月の方へと向き直り、こいつ本当に人間臭いな、などと香月は感想を抱いた。

 

「怒らないで聞いてほしいんですが」

「私があなたを怒る理由がないと思うんだけど」

 

 それなら、とMr.ONEが天を仰ぐ。

 

「発端は、私と香月博士が博士の部屋で宴会をやっていたことが始まりです」

「ちょっと待って、すでにもう雲行きが怪しいんだけど」

「世界のBETA掃討に目途がついて、香月博士も肩の荷が下りたタイミングだったので。特に取り繕う必要のない相手ということで光栄にも私が選ばれました」

「世界でいちばん取り繕うべき相手だと思うんだけど?」

「いい感じに盛り上がりまして、かつてないほどに香月博士がご機嫌になったころ合いでした」

「あー……」

「何よ白銀その何か知ってる風な相槌は」

「『この世界ではうまくいったけど、違う世界はどうだろうか』みたいな話になりまして」

「まあ、タイミング的にはわかる話題だけど」

「『何とかその世界の力にもなりたい』と申しましたら、『違う世界に移動した前例あるからやってみる?』みたいな流れになりまして」

「そんなノリでやっていい事じゃないんだけどそっちの私?」

「よくわからない装置に入りまして、香月博士の『頑張ってらっしゃい!』の掛け声とともに景色がゆがみまして、どうしたものかと困っていたら白銀さんの声が聞こえまして」

「ああ、それであの時…」

「皆を助けたいというその声に感銘を受け、必死でその声を手繰り寄せ、今に至ります」

「今に至ります、じゃないのよ」

 

 香月は頭を抱えた。

 これはひどい。何がひどいって、正直ないとは言い切れない展開なのがひどい。

 完璧な理屈を並べて説明されるよりよっぽど納得してしまっている自分が憎い。

 なんだろう、もう信じてもいいんじゃないかな。

 そんな誘惑と、香月は必死に戦うのだった。




犯人:香月博士(あっち)
被害者:香月博士(こっち)
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