生暖かく許して下さい
「たしかに、この世界で最も古いあいつを知っているのは私だよ」
けだるげに椅子に座る金髪の少女は目の前の女に淡々と告げる。
「今の私を作ったのはあいつで、もしあいつがいなければもっと違う私になっていただろうな」
そしてどこか懐かしむように笑みを浮かべた。
「もっとも、今会ったなら何度かぶちのめさないと気が済まんがな」
くくくと少女は笑った。それはどこかいたずらっ子の印象を女に与える。
「貴様には全て話してやろう。なに、興が載ったに過ぎない。今回限りだ」
「あ、ありがとうございます」
真剣な表情に変わった少女に女は身構える。
「では、『闇の福音(ダークエヴァンジェル)』といった異名をもつ聖少女(・・・)、エヴァンジェリン・AK・マクダウェル氏にとって、かの世界最悪の賞金首は……何者ですか?」
「ふん、あいつはただのお人よしで諦めの悪い、底無しの平和主義者さ」
そのことばに女はうんうんとうなずく。
「もっとも貴様もそれは分かっているだろう朝倉和美、貴様らはあの時、あいつの全てを知ったのだからな」
少女エヴァンジェリンがそう言うと頭をかきながら、
「エヴァちゃんが言うからこそ意味があるんだよ。世界が認める最高の治癒魔法使いがさ」
「私が言ったとしてもそう変わるとは思えんがな。それほどまでに大きいんだよ。『人間災害(ヒューマノイドタイフーン)』ヴァッシュ・ザ・スタンピードの名はな」
これは
「オラオラオラアアア! ぶち殺されたくなけりゃどけええええ!」
「吸血鬼の私を、助けてくれるの?」
国をも滅ぼした世界最悪の賞金首の物語
「おいヴァッシュ! こいつの治癒は私がやる! だから」
「大丈夫さ、この身にかけてエヴァ達には、指一本触れさせないよ」
600億ドラクマの男
「復唱しろ! もう勝手に突っ走りませんとなぁ!」
「ハイエヴァサマ、モウニドトツッパシリマセン」
約500年前に現れ、姿の変わらない種族不明の男
「おいヴァッシュ!」
「ごめん、エヴァ……」
彼現れるところに騒動がおき
「魔法世界、ここが」
彼現れるところ争いは止まる
「なかなかやるじゃねぇかおめえ」
「ちょちょちょとと!!!」
そして彼の元に人は集まる
「へ、てめぇが『人間台風(ヒューマノイドタイフーン)』ヴァッシュ・ザ・スタンピードか!」
「あははは、暴力は好きじゃないなあ」
やがて彼は歴史の波に飲まれ
「っしゃぁつぎ行くぞ! えーと……雷の暴風!」
「っく! っっちょやめてくれ!」
英雄と共に立つ
「この戦争に……こんな裏が」
「そんな……こんなの、許されはしない」
しかしかれは大きな失敗をし
「っ! 止まらない! みんな! 逃げろおおおおおおお!」
「魔力が……消滅していく」
国を滅ぼす
「魔力消失が止まりません! これが、ヴァッシュが使ったA・ARMの力!」
「絶対に、犠牲だけは!」
かようにしてオスティアは滅び、彼は世界最悪にして最高額の賞金首になる
「……」
「……」
世界全ての罪を一身に背負い、しかしながら彼は挫けず諦めない
「みんな、もう大丈夫だよ」
「おじちゃん、だぁれ?」
魔法世界中にて伝説になる
「そこまでだ! 俺はかくも有名な『人間台風(ヒューマノイドタイフーン)』! ヴァッッッッシュ・ザ・スタンピィィィィィィィド! 死にたくない奴は隅に縮こまって」
「600億ドラクマだ! ぶっ殺せええええ!」
「ちょまあああああああああああ!」
紅いコートにトンガリ金髪
「もう大丈夫だよ、両親の元へ返してあげるからね」
「弱いおじちゃん、ありがとう!」
周りをかき乱す大犯罪者
「みぃつけたぁ……我名において命じる! あのバカを生け捕りにしろ!」
『はっ! 聖少女マクダウェル様!』
彼の周りには笑顔は絶えず、彼の周りに不幸は無い
「みんな僕の後ろに!」
「すごい、一瞬で悪魔が六体も還された」
「ヴァッシュ、お前がいなかったら、間に合わなかったよ」
ドが付くほどの平和主義者
「ネギのことは任せた」
「ナギィィィィィィ! 何してんの!?」
ドが付くほどのお人よし
「麻帆良で警備員かこれもネギのためだ」
「よくやったジジイ。私にいて欲しければ奴を逃がすな」
そしてその身に
「……エヴァ、話せば分かる」
「死んどけぇ! えいえんのひょうが」
深い悲しみを知る男
「自立種のプラントが何でこの時代ニ!?」
「超君は、なんでプラントを」
しかし今日も彼は
「大丈夫、これで、魔力枯渇の心配は、無い。何十年、何百年でも魔力を持ってくるよ」
「やめろおおおおおおおお!ヴァァァァァァァァァァッシュ!」
誰かを助けようと
「あんなに人助けが好きなエヴァがどうしてこうなった!?」
「全部貴様のせいだあああああ! 凍てつく氷棺!」
笑顔で大騒動を巻き起こす
「ヴァッシュさん、地には愛を、そして慈しみを。ですね」
「っと言ったところか。朝倉、これはあいつも目にするのか?」
「うーん努力はしますけど、彼は未だに行方不明ですので。では最後にエヴァちゃん、ヴァッシュ・ザ・スタンピードに一言」
長い長い彼の半生を語り終えたエヴァンジェリン。その表情はどこかスッキリしたものであった。
「……おい、大馬鹿者。まだ生きてるか? ……私の元に、帰ってこい」
「ただいま、今は雪姫だっけ?」
「何十年たっとると思ってるんだ貴様はあああああああ!」
電波受信して一気に書き上げてしまいました。
長編投下は行われません