異界と世界が交わる街、ヘルサレムズ・ロット。僕の名前はレオナルド・ウォッチ、異常が日常のこの街で秘密結社『ライブラ』のメンバーとして活動している眼が凄いだけの一般人だ。その『ライブラ』の執務室に訪れてみると朝から先輩が煩く喚いてるのが見えた。
「はぁ!?異界の調査の協力をしろだぁ!?」
「まあ、端的に言えばそう言う事だが……正確に言えばヘルサレムズ・ロット全体の観測を手伝う事でそれ以降は自己責任でやるとのことだ」
「『牙狩り』本部の連中は耄碌して自殺志願者の援助なんて始めたんすか?」
「まあ、そう言いたくなる気持ちは分かるが、依頼者が依頼者だ」
「単身で異界に乗り込もうとしてる奴なんて狂人としか思えないっすね!!」
『牙狩り』、ヘルサレムズ・ロットが現れる前よりも存在する吸血鬼を相手とする組織でクラウスさん達を含め、ライブラのメンバーはそこ出身の人が多い。
異界と言うのはこの世界と昔から隣り合わせにあった世界の事でそちらに誘拐されかけたり、街の中心、向こう側と通じている『永遠の虚』の中を覗き込んだ事のある僕としても単身であちらと事を構えるというのは無謀に聞こえる。
「出てきたのは最近だがお前らの師匠と並べられるだけの実績を持つ人物だと言ったら?」
「はぁぁ!?クソジジイと!?ありえねぇだろ!?」
「師匠と!?」
ザップさんとツェッドさんが扱う斗流血法の創始者で”血闘神”なんて二つ名を持ってる人が二人の師匠なんだけど、その人の凄さはライブラの全員が知って居る。人間のゴミである兄弟子の叫びを完全無視を決め込んでいたツェッドさんもそれを聞いて目を見開いている。
「『牙狩り』からもそうだが、『人狼局』からも遠回しに依頼されててね。断る訳にもいかないんだよ」
「ああ!?なんでクソ犬女の小屋が関係してんだよ?って!?いてててててててて!?テメェどきやがれ!!」
「あら、居たの?どうでも良すぎて気付かなかったわ。あ、これ『人狼局』からの資料です」
いつの間にかチェインさんがザップさんの手のひらに乗っかっていた。それに対して謝罪することなくそのままスティーブンさんに資料を手渡している。うん、いつもの光景だし、先に悪口をいったザップさんが全面的に悪いだろう。
「ああ、ご苦労様、チェイン。それで『人狼局』が関わってる理由だったか、それは『牙狩り』以前にその人物が”人狼”だからだよ。まあ、関わりはあるが『人狼局』で仕事はあまりしてないらしいがね」
そこまで言うとスティーブンさんはザップさんとの話を切り上げ、貰った資料に目を通しながら仕事に戻った。騒がしい空気を気にせずに遠くではクラウスさんとギルベルトさんがその依頼人さんの歓迎の準備を進めている。
まだ事件も起こっておらず、比較的平和にも思える時間だが、ライブラに客が来る時なんて何かヤバい事の起きる前触れみたいなものだ。吸血鬼対策としてやってきたエイブラムスさんやギルベルトさんの手伝いにフィリップさんが来た時がいい例だ。せめて自分が巻き込まれない事を祈るしかない。
「あ、観測に神々の義眼の力を借りたいと依頼者直々にご指名があった。頼んだぞ、レオ」
「え?えええええええええ!?」
ついでとばかりにそのお客さんの出迎えも頼まれてしまった。師匠クラスの実力者と聞き、ザップさんとツェッドさんも付いて来る事になった。これ僕行かなくても良いんじゃないかなぁ?と思いもしたがスティーブンさんに逆らう事も出来ず、僕も写真を片手に駆け出した。
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ふうん、ここがヘルサレムズ・ロットか……一般的な常識からは外れた光景が広がっているが、まだこちらの世界に歩み寄ってくれているだけマシな方だろう。だが、こちらに漏れ出た怪異の類でなく、完全な異界でもなく、混ざり合った境界に興味は湧く。
「おい、なんか息苦しくねえか?」
「あぁ?言われればそんな気もしなくもねえが、いつも通りだろ」
おっと、少し気分が上がって制御が落ちたか?いや、結界の中に全て運び込むのに苦労したし、結界や異界の影響によるものかな。ライブラの方たちに合流するまでにならしておかないとね。
「
ふむふむ、問題はなさそうだね。さて、とりあえずは集合地点に向かうとしよう。