ライザのアトリエ2 ~小さな旅人と姉妹の絆~   作:ウルハーツ

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第6話まで公開します。

ライザのアトリエ3、発表されましたね! 楽しみ!


第4話

 ライザは現在自身がアトリエとしている部屋の扉がノックされた事で、返事をして入室を許可する。すると中へ入って来たのはパティであり、彼女はライザを見て「お邪魔します」と一度お辞儀をしながら挨拶をした。

 

「フィー♪」

 

「ふふ。お出迎えありがとう」

 

 フィーがパティの登場に嬉しそうな声を上げて近づく中、ライザは要件について質問する。パティはそれに少々真剣な表情で、話を始めた。

 

「実は、ライザさんにロープを作って欲しいんです。とっても頑丈で、簡単には解けない様なのでお願いします」

 

「ロープ。それなら出来るけど……何に使うの?」

 

「この前、お姉様を捕まえたんですけど、結局逃げられてしまって。だから今度は逃げられない様に縛り上げてしまおうかと思いまして」

 

「えぇ……」

 

 至ってパティは真剣なのだろう。だが彼女の告げた使用用途にライザはドン引きせずにはいられなかった。

 

 この前パティは本人の言う通り、レティシアの捕獲に成功した。だが隙を突いてレティシアは逃げてしまい、それからはまた以前の様に追い掛け続けていたのだ。一度捕まった事でレティシアの警戒も上がり、簡単には捕まえる事が出来なくなってしまった。だからこそ次に捕まえた時、パティは絶対に逃がさない為の準備をする事にした。

 

「い、一応聞くんだけど……レティシアを捕まえたら、どうするの?」

 

「……本当に、聞きたいですか?」

 

「あ、いえ、結構です」

 

 触らぬ神に祟りなし。ライザは質問を即座に撤回した上で、少し悩んだ末にパティの欲しがるものを作る事にする。レティシアには多少悪いと思うものの、姉と話をしたいと思う仲間のパティを優先して。

 

 必要な素材は適当な場所で集めていた為、十分に揃っていた。パティがフィーと戯れる間、それを作り上げたライザは「穏便にね?」と一応念押しをしながらそれを渡す。お礼を言ってパティがアトリエを後にした事で、安心した様に肩を落としたライザ。……その少し後、再びノックされた扉にライザは返事をした。

 

「……」

 

「れ、レティシア!?」

 

 続いての来客はまさかのレティシアであった。パティに追われるばかりで自由な行動を取れる時間が最近は少ない彼女だが、パティがここに居た時間で少し余裕が出来たのだろう。今頃また王都を探し回っているパティと入れ違いにここへ来れたのは、ある意味幸運であった。

 

「フィー、フィー♪」

 

「煙玉。作って欲しい」

 

「……」

 

 フィーに周囲を回られながらも静かに告げたレティシアのお願い。それを何に使うつもりなのか、ライザは聞く必要が無かった。使用用途について、ある程度の察しがついたからである。彼女は少し悩んでから、了承する前にいっそのことちゃんと話すべきなのではないかとレティシアを説得してみる事にした。だが、パティと話をした方が良いと聞いたレティシアは目を閉じて少し黙ってから首を横に振る。

 

「パティは私を……恨んでる筈」

 

「恨む?」

 

「私は、逃げ出した。だからパティは、私の分もきっと……」

 

 レティシアは嘗て、貴族としての義務という重荷に耐え切れず逃げ出した。自分が逃げだせば、妹であるパティへそれが向けられると分かっていて。だから彼女は妹が自分に対して恨みや憎しみの感情を抱いていると考えていた。……しかしそれを聞いたライザは今までレティシアに関わった際のパティの姿を、今一度思い浮かべる。ある時は嬉しそうに、ある時は楽しそうに。そしてある時は怖いくらいに姉が大好きな彼女に、恨みや憎しみといった負の感情があるとは到底思えなかった。

 

「私が知るパティはレティシアの事が大好きって感じだったけど?」

 

「……」

 

 思えばレティシアは今まで、パティの様子を遠くから1度見たのみで真面な話をして来なかった。それは別の人物からした印象も同様であり、ライザの言葉にレティシアは黙り込んでしまう。そんな様子に改めて「ちゃんと話し合ってみれば?」とライザが告げれば、レティシアは一度目を瞑ってから何も言わずにアトリエを後にしてしまった。

 

「今の様子だと、すぐには難しいのかな。どうにかしてあげたいんだけどね」

 

「フィー……」

 

 ライザの言葉に耳を垂れて同じ様に元気無さげに答えたフィー。結局煙玉を作る事は無くなり、ライザはパティが来る前に行っていた事を再開するのだった。

 

 

 

 

 

 

 別の日。中央区の露天通りを訪れたライザはパティが血相を変えて外へ飛び出していく姿を目撃する。何をしているのかに察しがついたライザは、心配になって後を追い掛ける事にした。

 

 パティを追って辿り着いたのは、王都近郊にある始まりの森と呼ばれる場所。少し離れた場所に鋼糸を使って飛ぶレティシアの姿を目視して、ライザは彼女が飛んで行って場所へ向かった。……やがて狭い穴を通って辿り着いたのは、羽が咲き乱れる広い場所。そしてそこにはパティとレティシアが相対していた。

 

「お姉様、もう逃がしません」

 

「……」

 

 少々危ない雰囲気が漂う2人にライザは取り敢えず様子を見守る事にする。

 

「どうして、そこまで……?」

 

「お姉様と話がしたいからです」

 

「何を話すの?」

 

「私にあった事でも、お姉様の旅の話でも。何だって良い。……お姉様と話が出来るなら、内容は問いませんから」

 

 パティの言葉に、負の感情が籠っている様には思えなかった。だがそれを容易く信じられる程、レティシアは楽な旅をしてきた訳ではない。彼女の中にある疑いの心が、パティの真っ直ぐな心を見え難くしてしまっていた。

 

「……信じられませんか?」

 

「ん」

 

「そうですか。……覚えてますか? お父様や、お姉様が師としていた方は皆、揃って言ってました。振るった剣には持ち主の思いが宿る、と」

 

「……」

 

 柄の長い特徴的な剣を持って構えたパティに、無言で同じ様に刀を構えたレティシア。今正に戦いを始めようとする2人にライザは慌てて飛び出した。

 

「2人とも何やってるの!?」

 

「止めないでください! お姉様に私の思いを伝えるには、きっとこれが一番なんです!」

 

「でも……危ないと思ったら無理にでも止めるからね!」

 

 止める事は出来ないと分かり、ライザは2人の様子を見守る事にして後ろへ下がる。やがてパティが刀を持つレティシアと同じ様に剣の刃を腰の位置で背後に向けて構えた時、合図も無く殆ど同時に2人は飛び出した。

 

 甲高い音が広場に響き渡る。走った2人の間を花弁が舞い上がり、鍔ぜり合う姉妹の姿は危ういと同時にとても美しくライザには見えた。互いに回転して振るう刃が何度もぶつかり合えば、その度に花が散って行く。2人の動きは離れていてもやはり姉妹なのか、とても似ていた。

 

「そこですわ!」

 

「甘い」

 

 踊る様に跳び上がり、上から振るったパティの一撃を軽々と避けたレティシアは一瞬でパティとすれ違う。今まで魔物を倒して来た時と同じ挙動であり、唯一違うのは刃の向きが逆だった事だけ。攻撃をした事に変わりは無く、パティは突然の痛みと共に持っていた剣が宙へと舞い上がった。……だが、彼女はそれすらも利用する。

 

「これで、終わりよ!」

 

「!」

 

 上へ舞い上がった剣を再び跳躍して宙で掴み取り、そのまま前転して落下の威力をも伴った強力な振り下ろしの一撃を放ったパティ。強い風を受けてフードが外れながらもそれを防ごうとレティシアが刃で応戦。しかし、パティの一撃はその刃すら両断した。折れて飛んで行った刀の先がライザの傍へ落ちて彼女が恐怖するのを尻目に、柄の部分から僅かにしか残らない刀の残骸を眺めたレティシア。

 

「私の勝ちですわ、お姉様」

 

 何年も旅を続けて来たレティシアだが、パティだってその間に剣術は教わり続けて来た。最近ではライザ達と共に魔物と戦う事も増え、レティシアから自分の手で掴み取った勝利にパティは堂々と告げた。




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