ライザのアトリエ2 ~小さな旅人と姉妹の絆~   作:ウルハーツ

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第6話

 エルネスタ廃坑。王都の南方にある嘗て採掘が盛んだったそこは今、魔物達が蔓延る人の居ない危険な場所に変わり果てていた。

 

 職人区の錆び付いた門を開き、無事に王都南方へ向かう事が出来たライザ達は合流したパティともう1人、何かを遺跡と廃坑で探す様子を見せる新たな仲間を連れて遺跡へ向かう為に廃坑の中を歩き続ける。嘗ての名残か壁に吊るされたランタンが未だに光っており、魔石の力に寄るものの様で、何年も輝き続けていた事が伺える。

 

「……!」

 

「ちょ、パティ!?」

 

 ランタンのある場所は比較的歩き易いが、無い場所に関しては足元が悪い事もあって非常に危険である。そんな中で何かに気付いた様子で走り出したパティにタオが慌てて追い掛け、ライザ達は驚きながら2人の後を追った。……すると、微かに開けた場所へ出たライザ達の上空を何かが通過する。

 

「お姉様!」

 

「?」

 

 高台に位置する場所へ降り立ったのは、レティシアだった。パティの声に気付いて着地した場所から見下ろす様に顔を見せたレティシアの姿に嬉しそうな声を上げるパティ。同じくレティシアの無事を確認出来た事でライザ達が一様に安堵する中、レティシアはライザ達の中に何時の間にか増えていた仲間達。クリフォードともう1人の人物を見て僅かに目を大きく開いた。

 

「やっと、見つけたわ」

 

「なるほど、道理で聞き覚えのある名前だった訳だ」

 

「? 2人とも、どういう事?」

 

 レティシアの姿を見て呟いた2人の言葉にライザが首を傾げる中、高台から飛び降りたレティシアは一行の前へ着地する。途端にパティが自分よりも小さなレティシアの身体を覆う様に抱き締めてしまった。恐らくしばらくの間、共に過ごせなかった事が原因の反動なのだろう。簡単には離れそうに無かった。

 

「いやな、俺も彼方此方宝を探して旅をしている訳だ。そうなると、色々な出会いをするもんでな」

 

「もしかして、レティシアと旅先で出会った事があるの!?」

 

「まぁ、そういう事だ」

 

「久しぶり」

 

「あぁ、元気そうで何よりだ。……上手く使い熟してるみたいだな」

 

「ん。便利」

 

 トレジャーハンターとして生きるクリフォードはその職業柄、宝を探して世界を飛び回る様に移動している。そして同じく旅をしていたレティシアとは、偶然にも出会った事があった。そして彼の言葉に天井へ伸ばした鋼糸を巧みに手元へ戻しながら、クリフォードへ見せつける様にして頷いた。……ライザはそれを見て嘗て島では見なかった鋼糸を使うレティシアに察する。冒険具の扱いに慣れているであろうクリフォードとの出会いに、彼女の使う鋼糸は関係があるのだと。

 

「随分と帰って来なかったから、心配したわ。夢中になり過ぎるのは危険よ」

 

「ごめん」

 

「えぇ。でも、無事で良かったわ」

 

「セリさんもなんだ……」

 

「あれ? でも、帰って来なかったって……?」

 

「そのままの意味よ。彼女と私は同じ宿、同じ部屋を借りているの。王都へ来たのも私を見送る為、だったわね」

 

「ん。でもコールが無くて、帰れなかった」

 

 続いてつい先程共に行動する様になった人物、セリとレティシアの接点を知る事になったライザ達。セリの探していたものの1つがレティシアの存在だと分かると同時に、彼女との接点やレティシアが王都に居る理由を今初めて知る事になった。

 

「つまりレティシアが顔を隠しながらも王都に居たのは、セリさんが居たからなんだね」

 

「そういう事になるわね」

 

「再会できたのは嬉しかったけど、何か喜んじゃいけない感じの理由だね……」

 

 まさかお金が無くて帰れなかったとは思わなかったクラウディアは何とも言えない表情を浮かべる。すると、パティに抱きしめられたままライザの元へ近づいたレティシアが何処からともなく袋を取り出した。中には沢山の鉱石や原石、他にも魔物の素材などが入っている。……ここに籠って集め続けた物だろう。

 

「まだある」

 

 かなりの量があるにも関わらず、そう言って明後日の方向へレティシアが視線を向ける。彼女の視線に釣られて全員が其方を見れば、器用に頭の上で袋を跳ねさせながら自身も跳ねて近づいて来る青ぷにの姿があった。嘗て出会った事のある人物が集まっている事もあり、その存在を見ても誰1人として驚く事は無い。やがて青ぷにがレティシアの足元に到着すると、彼女は袋を受け取って再びライザの前に置いた。

 

「足りる?」

 

「えっと、十分と言うか……十分過ぎると言うか……」

 

「なら良い。余りはあげる」

 

「えぇ!?」

 

 まさかの言葉に驚きを示したライザを置いて、「アトリエに運ぶ」と言って今までライザ達が通って来た道を戻り始めたレティシア。

 

「お姉様を守る為にも、ここで失礼させていただきますね」

 

 必要かは分からないが、少なくとも武器の無いレティシアを心配してかそう言ってパティも一行から外れる事となった。

 

 取り敢えずレティシアの無事を確認出来たライザ達はその事に安堵する。セリはもう1つの探し物をする為にそのまま同行する事になり、ライザ達は再び遺跡を目指して廃坑を進むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後。無事に遺跡の探索を終えたライザは新たなる情報が手に入るまでの間、レティシアとした約束の刀を作る為に錬金釜の前で思考を巡らせていた。

 

「……よし!」

 

 完成形を想像して気合を入れたライザが錬金を開始する。それから長い時間を掛けて作成を続ける中、遂に完成したそれを手にすると同時にアトリエへ来客を知らせるノックの音が響いた。

 

「はい、どうぞ~!」

 

「失礼する」

 

「ヴォ、ヴォルカーさん!?」

 

 やって来たのはパティの父親であるヴォルカー・アーベルハイム。今現在ライザがアトリエとして王都で借りている部屋の大家でもあり、当然ながらレティシアの父親でもある。彼は嘗て部屋の家賃を免除する代わりにと注文した品をまた作って欲しいとライザへ頼みに来た様で、ライザはそれを快く承諾。……すると彼女の持っていた武器、刀を見てヴォルカーは目を見開いた。

 

「! ライザさん、それを何処で?」

 

「え? あ、えっと……と、友達からお願いされて作ったもの、です」

 

「……」

 

 普段から威圧感を何処となく漂わせるヴォルカーの様子が更に険しくなった事で、ライザは焦りながら答える。正直にレティシアの事を話すのは彼女本人の為にもまだ良くないと思っての配慮だった。ジッと刀を見つめ続けた彼はやがて「いや、済まなかった」と謝罪をしてからもう1度依頼について触れた後にアトリエを後にする。

 

「ふぅ……怖かったぁ。そういえば、パティの剣はヴォルカーさんからって話だったけど、レティシアは違うのかな?」

 

 何気なく感じた疑問を抱きながら、ライザは改めて完成した刀を何時でも渡せる様に包んで置いておく事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。ライザのアトリエへパティと共に足を運んだレティシアは、お願いしていた新しい刀を受け取る。錬金術の代金についてレティシアが触れようとすれば、余りに余った素材をタダで貰えるから要らないとライザは答える。……そして手に不思議と馴染む刀の真っ白な鞘から僅かに刀身を抜いた。青白く光る刃は嘗て使っていた物より数段鋭さが伺え、品質で言えば間違い無くアンペルの作った物以上だろう。それは間違い無く、ライザの錬金術に関する腕が途轍もなく上がっている事を示していた。

 

「ん。ありがとう」

 

「いえいえ。……それで、これからレティシアは一緒に冒険に行ってくれるの?」

 

「そのつもり。でも、すぐは無理。勘を取り戻す」

 

「暫く触れていなかった分、少し衰えてしまっているかも知れませんからね」

 

「そっか。あ、パティはどうするの?」

 

「私ですか? お姉様が行くなら、勿論ついて行きますけど?」

 

 『何を当たり前の事を聞いてるんですか?』とでも言いたげなパティの言葉にライザは苦笑いを浮かべながらも、新たな冒険の仲間に内心で心を躍らせる。

 

 その後、ライザのアトリエを出たレティシアは刀の試し切りも兼ねて王都の外へ出る事にした。当然、パティも一緒である。

 

「あら、何処へ行くのかしら?」

 

「武器、試す」

 

「そう。ついて行っても?」

 

「ん」

 

「……」

 

 道中でセリとも出会って共に行動する事になり、パティが微かに警戒の色を見せる中。王都の外で青ぷにとも合流したレティシアが向かったのは、数日前にライザ達が冒険をした遺跡……古代マナ工房。その最奥の部屋には大きな騎士の魔物が居るとライザ達から聞いていたレティシアは、それを試しの相手にしようとしていた。

 

 道中の魔物は軽々と刀を抜く事も無く退ける事が出来、遂には逃げだしてしまう始末。やがて何事も無く辿り着いたそこに立っていたのは、周囲を徘徊する騎士の倍以上はある大きさの騎士、グレートガーティアンだった。

 

「1人で」

 

「なら、危なくなったら加勢するわ」

 

「頑張ってください、お姉様!」

 

 騎士は3人の姿に気付いて構えており、レティシアはそれに1人で近づき始めた。外されたフードの中に入っていた青ぷにも邪魔にならない様にと離れる中、ゆっくりと姿勢を僅かに低くしてレティシアが構えれば、騎士がレティシア目掛けて走り出す。やがて大きく振り上げられた剣が振り下ろされた時、レティシアはそれを微かに横へ身体を流す様にして躱すと共に鞘から刃を抜き放った。

 

「……」

 

『……』

 

 行動だけを見れば、振り下ろされた刃を避けたレティシアが騎士の前で回転しただけ。しかし静寂の後に騎士の剣がその刀身の半分から折れて床に落ちれば、兜が。胴体が。足や手の鎧が複数に切られて床へと落ちる。中身の無い鎧はそのまま地面に伏し、レティシアは改めて鞘から刃を僅かに抜いた。

 

「……切れ過ぎ」

 

 ライザの作った刀の切れ味は、レティシアの想像を遥かに上回っていた。




第6話のアイテム紹介

【真・同田貫】作・ライザ
※レティシアの4段階目の武器。

ライザの錬金術に関する腕が格段に上がった事で作る事が可能になった刀。
折れず、曲がらず、鋭い切れ味を持つが故に扱いには細心の注意が必要。下手をすれば持ち主も怪我をする。
頭の中でレティシアが振るう刀をライザが想像した上で作成した為、元のモデルは特に無い。だから名前も特になく、レティシアが命名する事となった。名前の理由は「何となく」。

材料
『クリミネア』・『ゴルディナイト』・鉱石・燃料

特性『危険な切れ味』
攻撃力、クリティカル率が上昇する。



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