或る青年のささやかな苦悩を綴った物語。

※ネタです。
 本作で取り上げた人物、組織、団体はフィクションです。実在の人物および団体等とは、一切関係ありません。
 また、作品中で取り上げた「転成魔人学園 ぼくはまじゅつし」は架空の物語です。タグにつきましては、実際に存在したものをいくつか取り上げ、アレンジしたものです。
※繰り返しますがネタです。


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※ネタです。
 本作で取り上げた人物、組織、団体はフィクションです。実在の人物および団体等とは、一切関係ありません。
 また、作品中で取り上げた話は架空の物語です。タグにつきましては、実際に存在したものをいくつか取り上げ、アレンジしたものです。
※繰り返しますがネタです。



炭酸爆発と如月びくとりー

[登場人物]

A 大学二回生(♂) 1浪

B 大学一回生(♀) 現役 美少女

マスターの孫(♀) 高校二年生

 

▽ 本編

 喫茶ハーメルソ。

 大学から歩いて五分、Aの自宅である安アパートから歩いて一〇分の場所にある。私鉄の無人駅から一〇分の好立地だ。マスターはさる大企業の元エンジニア。不景気のあおりで早期退職を求められて真っ先に手を挙げ、ハーメルソの雇われ店主として生計を立てている。

 Aはハーメルソの扉をくぐった。レトロな内装と言えば聞こえはよいが、築八〇年を超えており、戦前から建っていたと噂されている。一九四五年当時は農村で、今よりももっと人が少なかった。

 

「席、好きなところで」

「人を待たせてるんで」

 

 アルバイトの店員は燕尾服を身につけていた。近所の高校生で、れっきとした女子だ。マスターは孫だと言い張っているのだが、まったく似ていない。

 マスターの孫がにやにやと目線を送ってきた。Aはうんざりとした気持ちを隠そうともしない。

 

「あれと俺はそんな関係じゃねーよ」

 

 チノパンのポケットに手をつっこむ。Aは背が高く、二週間ほど続けたアルバイトのおかげで肉体労働者の体つきになっていた。

 

「せーんぱい」

 

 頭の悪そうな、舌足らずな声だ。Aは唇をとがらせたまま振り返る。

 Bだ。いかにもお嬢様といった出で立ちで、ぱっちりした目を輝かせた。

 

「約束。ちゃーんとまもってくれたんですねー」

 

 首をコテンと倒し、足をもじもじとさせながら何度も目を逸らしては見つめた。

 特に反応を示さずに向かい合って座る。

 

「それで。俺を呼び出したのはなに。……××学部のBさんだっけ」

「あのですねぇ。炭酸爆発さんに見てもらいたいものがあるんですよぉ」

 

 今、なんと言ったのか。

 

「よく聞こえなかった。もう一回」

「炭酸爆発さん」

 

 Aは頭のなかが真っ白になった。「炭酸爆発」はWeb小説投稿サイトハーメルソにおける仮の名前である。

 背筋に冷たいものが流れる。どうしよう。誰にも言ったことがなかったのに。

 ……この女いつ、知った? Aは疑惑の目を向け、羞恥心に負けまいと拳をにぎりしめる。

 

「炭酸爆発さん。わたし、わたし、わたしのことわかりませんか?」

「幼なじみとか?」

 

 自分でもバカなことを言っているとわかっていた。つい二、三年前までは男子高校生だった。男女のあれやこれやを夢想する年頃で、小さい頃別れた幼なじみが美少女になって戻ってくる……などと想像したこともある。

 Bは頬をふくらませる。

 

「先輩の小説を読みましたよお。おもしろかったです。こむずかしくてよくわかんなかったです。まる」

 

 Bはリンゴパッドを取り出し、あるWebページを開いた。

 

私説・遠雷(作者:炭酸爆発)

 

 マスターの孫がアイスコーヒーを置きながら、チラとリンゴパッドに目を走らせる。

 背を向けるやいなや「ぷっ」と噴き出した。

 最悪だ。Aはマスターの孫にまで趣味を知られたことを悟った。

 Bは感想欄を開き、ある投稿を指さす。

 

「き、昨日答えたやつだな」

 

▽

 

投稿者:如月びくとりー

20YY/MM/DD NN:MM (Good:0/Bad:0)

おもしろかったです

こむずかしくてよくわかんなかったです

まる

 

-追記-

「遠雷」ってどうよむんですか?

 

返信:炭酸爆発 20YY/MM/DD NN:MM

ありがとうございます!

初めて感想を書いていただいて、感謝の極みです!

しかもお気に入りにまでしてくださって感謝御礼万々歳!もし、お時間があればほかの作品も見ていってください!

 

>こむずかしくてよくわかんなかったです

できればどのあたりか、具体的に書いていただけませんか?

 

-追記-

「えんらい」です。

 

▽

 

「き、如月びくとりー」

「正解ですよー」Bが手をたたく。

 

 Aは目を泳がせた。

 「如月びくとりー」はWeb小説サイト・ハーメルソの常連投稿者だ。活動開始は今年の三月頃。ちょうど入試が終わった時期だった。原作リスト上位作の二次創作を執筆し、投稿作品は三つにおよぶ。全作品の第一話は「登場人物設定」のため、Aは即座にブラウザバックしていた。

 

「……男だと思っていたよ……はは」

 

 Aは何とかこの状態から脱したかった。後輩が同じ趣味の持ち主で、しかも可愛いときている。共通の話題で盛り上がるのではないか? 答えは否である。恥ずかしさのほうが勝った。

 

「まさか先輩が炭酸爆発さんだとは思いませんでしたよー」

「……で、何が望みだ? 俺を脅迫するつもりなんだろ?」

「へ?」

 

 Bが首を傾げる。

 「炭酸爆発=A」だと証明し、サークルにたれ込めば瞬く間にお先まっくらだ。学生生活に暗雲が立ちこめるのは間違いない。B以外にも現実で炭酸爆発呼ばわりする輩が出てくるに違いなかった。

 

「そんなことしませんよぉ。先輩にぜひ相談したいことがあって、今日呼んだんです」

「何だ」

「ぜひコラボさせてください!」

 

 Aの気管にアイスコーヒーが流入する。涙が出てきた。

 

「そんなにうれしいんですか!? 私も感激です」

 

 むせながら何度も首を振る。BはAを気遣うふりを見せながらも、ひとりで盛り上がっていた。

 カバンから一冊の文庫本を取り出す。ライトノベルだ。

 

「この作品でコラボしたいんです!」

「……」

 

 可愛い後輩に言い寄られていい気がした。硬派を気取って女っ気のない生活。かたやBは控えめな化粧だが、目鼻立ちがくっきりとした容貌。先日の新歓コンパでは、彼女と親しくなろうと群がる男どもを見たばかりだ。

 だが、こいつは如月びくとりーなのだ。

 うっかりコラボをしたばかりに駄作者のレッテルを貼られたくない。「遠雷」すら読めないやつが俺の文学をわかるはずもない。Aは言葉を選んだ。

 

「……まずは、Bの作品を読んでみようか」

 

 一読すれば文章力がわかる。その上で丁重にお断りするつもりだ。

 

「はい! よろしくお願いします!」

 

▽

 

転成魔人学園 ぼくはまじゅつし

作者:如月びくとりー

原作:■■■みせられないよっ!■■■

タグ:R-15,オリ主,神様転生,残酷な描写,アンチ・ヘイト,駄文,作者は豆腐メンタル,XXX(技、武器のみ),台本形式,アンチ・ヘイトは保険

 

如月天膳は神さまの手違いで死んだ。神さまはお詫びに天膳を望む世界に転成させ、望む特典を与えた。彼は異世界で何をなすのか!?

 

登場人物設定

プロローグ

設定

第1話 異世界に転成しました!

……

 

▽

 

「うっ……」

 

 Aは頭が混乱した。選び取るべき言葉が思いつかなかったのだ。

 

「どうです? 何回も日刊ランキングに載ったことがあるんですよ!」

「ふーん。すごいな」

 

 生返事で相づちを打つ。

 問題は山積みである。AはBを流しみる。そのまま無言で評価を確かめる。

 

「平均3.86……か」

 

 緑バーだ。評価者は20名程度。一部が8点以上を加点し、10点が3人もいる。高得点がついた反面、総評価数とくらべて低得点がとても多い。

 おそるおそるプロローグを開いた。

 

「ぐっ……」

 

 見るに耐えない。破壊力がすさまじい。本当に大学生が書いた文章なのだろうか。

 

「Bは入試の成績を開示してみたか?」

「もちろんですよー。そうだ。まだカバンにいれっぱなしだった……」

 

 カバンから茶封筒が出てきた。

 

「見てもいいか?」

「どうぞ。どうぞ」

 

 茶封筒を受け取り、三つ折りの紙を取り出す。

 中を見た。

 

「……返すわ」

 

 バカな。

 Aは心のなかでののしった。少なくともAより成績がよかった。いや、高得点ばかりだ。確かに国語の成績が見劣りがするとはいえ、Aよりも点数がよかった。

 どこからつっこんでよいのかわからない。話が通じるかどうかさえ怪しい。

 

「……こ、コラボはな」

「はいっ」

 

 きらきらとした目線が痛い。Aは妙な視線を感じ、カウンターを視線を振れば、マスターの孫が意味深な表情を浮かべている。

 お前だって女子高生に告白されてたじゃないか! Aは叫びたい気持ちでいっぱいになる。

 だが、できない。

 再び顔を戻す。子犬のような視線で見つめられ、Aは現実をつきつけたほうがよいのか迷った。

 

「……まあ、先輩後輩のよしみだ。本を貸してみろ。ちょっと書いてみるから」

 

 Aは作風の違いを見て、納得してからでも遅くはないと考え直す。娯楽小説を書いたことはなかったが、少なくともBよりはまともな作品を生み出せるはずだ。

 

「コラボ決定! なんてかっぽーに書くなよ。まずは俺が書いた話をさわりだけ読んでから、決めてくれ」

 

 Bは無邪気に喜び、マスターの孫はAに憐憫の視線をなげかけてきた。

 

▽

 

 後日。

 Aは原稿用紙五〇枚の作品を書き、Bにワープロ原稿を手渡した。

 

「ほら。このまえ言ってたやつ」

「あ。ありがとうございます。先輩!」

「二次創作は初めてだから……うまく書けているかどうかわからないんだ」

 

 三〇分経過。

 Bは美しく整えた眉を寄せて、うんうんうなっていた。作品を他人に読んでもらう経験がなかったAは、後輩の様子をほほえましく見つめる。ようやく読み終わったのか、原稿の向きを変えて差し出してきた。

 

「で?」

「こむずかしくてさっぱりわかりません!」

「……あん?」

「台本形式で書いてないじゃないですか。コラボは無理ですね。……今回はあきらめます」

 

 

 

(おわる)


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