抹消ヴォイスのヒーローアカデミア   作:M.T.

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Another U.A.Quest
U.A.Quest


 その昔、世界は魔王に支配されていた。

 人間は長い間虐げられ、立ち上がる気力さえ奪われ、魔王のいいように搾取され続けていた。  

 しかし、その長い絶望の日々に終止符を打ったのは、勇気を振り絞り立ち上がった人間達だった。

 いつしかそんな人間達は勇者と呼ばれ、その想いは受け継がれ、そしてとうとう偉大な勇者オールマイトが魔王を倒し、世界に平和をもたらした。

 勇者達は人々の憧れの存在になった。

 

「やあっ!!」

 

 黒いマントとワンピースに身を包んだ少女賢者ヒナタは、手に持っていた杖を人喰いゴブリンに向け、音魔法を発動した。

 するとゴブリンは、耳を塞ぎながら怯んだ。

 その隙に、黒いフード付きのマントを纏った盗賊の少年ヒトシは、投げ縄をゴブリンに巻き付けて拘束した。

 ヒナタとヒトシも、勇者に憧れる冒険者だった。

 産まれた時から魔王軍の残党に奴隷として飼われていたヒナタは、とある勇者に助け出され、その勇者に修行をつけてもらい、賢者としての才能を発揮し、勇者見習いとして魔獣から村人達を守っていたのだ。

 そしてヒトシも、日銭を稼ぐために盗賊をやっていたが、本当はオールマイトのような勇者に憧れる少年だった。

 ヒトシは、ある日魔王の手先に襲われていたところを、ヒナタに助けられ、そのままヒナタのパーティーに加わったのだ。

 冒険を重ねていくうちに二人は意気投合して交際しており、将来結婚する約束もしていた。

 ゴブリンを退治したヒナタとヒトシは、嬉しそうにハイタッチをした。

 

「やったね、ひー君!」

 

「ああ」

 

 二人は、そのままゴブリンの洞窟の奥へと進み、ゴブリンに攫われた人々を保護した。

 二人が保護した人達を村へ連れ帰ると、村人達は泣いて喜んだ。

 

「ありがとうございます…勇者様…!」

 

「いえ、そんな…僕達はまだ見習いですから」

 

 村人達が泣いて喜びながら礼を言うと、ヒナタは照れ臭そうに謙遜した。

 村人達からは食糧や金貨を、村の占い師の少女ユウカから薬草やポーションを貰い、二人はトアル地方へと足を進めた。

 実は、ここ最近トアル地方で勇者が次々と姿を消しており、その中にはオールマイトや、ヒナタの父親も含まれていた。

 勇者見習いであるヒナタは、ヒトシと一緒に父親を助ける為に旅をしていたのだ。

 二人で地図を見ながら旅をしていると、ちょうど魔法使いの少女オチャコと、甲冑を着た騎士の少年テンヤに会った。

 代々続く騎士の家系のテンヤは、ヒナタとヒトシ同様トアル地方の勇者失踪の原因を調べに、魔法使いのオチャコはテンヤの家に雇われてついていくという。

 話しているうちに意気投合した4人は、一緒にトアル地方へ向かう事にした。

 

「えっ、じゃあヒナタちゃんは最年少で賢者の採用試験合格したって事!? すごっ、エリートやん!」

 

「そんな事ないよ。まだ勇者見習いだし、親の脛齧りだし…家計支える為に魔法使いやってるオチャコっちの方が凄いさ!」

 

 オチャコが驚くと、ヒナタは恥ずかしそうに笑った。

 魔法使いや僧侶の上位職である賢者は、魔法使いや僧侶の中でも選りすぐりのエリートしかなれない職業で、賢者に転職するための試験は全世界の魔法使いにとっての登竜門なのだ。

 

「ヒトシくんは勇者を目指しているのか! 良い盗賊もいるものだな!」

 

「日銭稼ぐためにやってただけだし…俺、本当はオールマイトみたいな勇者になりたかったんだよね」

 

 4人で談笑しながら歩いていると、道に迷っている少年、イズクを発見した。

 

「あっ、あの子迷子みたいだね。声掛けに行こっか」

 

 ヒナタが額のあたりに手を翳してイズクを遠目で見ながら言うと、三人が頷いた。

 ヒナタ達4人は、道に迷っているイズクに声をかけた。

 するとイズクは、オールマイトに弟子入りをするため、オールマイトに会いに行くところだったと話した。

 それを聞いた4人は顔を曇らせる。

 

「オールマイトは行方不明らしいぞ」

 

「えええっ? 一体どういう事!?」  

 

「それはね…」

 

 ヒナタは、事情をイズクに話した。

 ヒナタから事情を聞いたイズクは、4人と一緒に行く事にした。  

 しかし、トアル地方は遠い。

 5人の食料はいつのまにか底をついてしまった。

 

「おかしい……食料は十分足りるように持ってきていたんだが……」

 

「俺も…村の人達から食糧貰ってたはずなんだけどな」

 

「あっ、ごめん! 僕がごはん分けてもらっちゃったから」

 

「いや、まさかの時のために余裕をもってきたから、それでも大丈夫だったはずなんだが……ん? オチャコくん、ヒナタくん。なんだかほっぺがふくよかになっていないか?」

 

「……ごめん! 魔法使うとおなかがすいてつい!!」

 

「回復魔法って体力使うんですわ…すんません」

 

「そうだ、魔法で食料出せばいいんじゃ?」

 

「……そんなん出せたら、今頃雇われ魔法使いなんてしてへんわ」  

 

「回復魔法使って魔力が残ってないのにどう出せと?」

 

「あ、なんかごめん」

 

 オチャコの家の家計はいろいろ切羽詰まっているようだ。

 そしてヒナタもヒナタで、高度な回復魔法は相当体力と魔力を消耗するらしく、他人の食糧を食い尽くしてもなお腹から音を鳴らしていた。

 やさぐれるオチャコとヒナタに、イズクは謝った。  

 しかし、腹が減っては力も出ない。

 5人がとぼとぼ歩いていると、立派な実がなっている木をみつけた。

 こんな時は自然の恵みにあずかろうと、5人は実をもぎり食べる。

 

「おお、これはうまいな!」

 

「モチモチしてて、きなこと黒蜜の味がする!」

 

「ソーイ粗茶といただきたいね! 父ちゃんと母ちゃんにも食べさせたい!」  

 

「んーまぁ! プルプル食感がクセになる! お土産に10個、いや、20個くらい頂いて…」

 

「いいぞヒナタ。クズモチの実は美味い上に高く売れるからな。その調子でどんどん貰っちまえ」

 

 ヒトシは、盗賊らしく悪い笑みを浮かべながらクズモチの実をもいでは鞄の中に詰め込んだ。

 5人がその実を堪能していると、炎の模様の鎧を着た警備隊がやってきて叫んだ。

 

「エンデヴァー様のクズモチの実を食べたのは貴様らか!」

 

「クズモチの実を食べた者は死刑だぞ!」

 

「「「「「えええ!?」」」」」 

 

 あわてて逃げだす5人。

 だが警備隊はしつこく追ってくる。

 とうとう崖に追い詰められてしまった。

 絶体絶命。

 だがその時、警備隊の後ろから一人の少年が現れた。

 

「その5人から手をひけ」

 

「ショート様! いくらご子息でも、そんな横暴は許されませんぞ!」

 

「うるせえ、さっさと去れ」  

 

 警備隊が去り、5人は少年にお礼を言う。

 すると少年は苦々しそうに吐き捨てた。

 

「別にあんた達を助けたわけじゃない。クソ親父への当てつけだ」  

 

 ショートはこの地を治める悪名高い領主エンデヴァーの息子らしい。

 あの木はこの地方にしかない珍しいクズモチの木で、エンデヴァーの大好物だという。

 

「あのクソ親父があんな木を大事にするせいで、お母さんは愛想尽かして出ていった。そんなに大事ならあの木と結婚でもしてりゃいいんだ……俺にも後継ぎとして、クズモチの木を増やせとかぬかしやがる……あいつの思いどおりにさせてたまるか」  

 

 ケッと吐き出すショートは親の仇でも語る顔だ。

 実の親なのに。

 イズク達はなんだか不憫になった。

 

「まあ、こんなに美味しい実のなる木なら大事にしたくなるのもわかるけどさ。だったら尚更皆で仲良く食べられるようにしてくれたらいいのにね!」

 

「…おぉ。そうだな」

 

 ヒナタがショートに声をかけると、ショートは僅かに目を見開く。

 本物の勇者なら、美味しいものは皆で分け合おうとするはずだ。

 ヒナタの言葉を聞いて、ショートは、自分もそんな勇者になりたいと思った。

 ショートは、ふとヒナタの隣にいたヒトシに目を向けじっと見つめる。

 

「ん? どうかした?」

 

「…お前、ウチの屋敷に侵入してきた事あったよな。クソ親父のクズモチの種を盗んだのはお前か?」

 

 ショートは、ヒトシに単刀直入に尋ねる。

 するとヒトシはニヤリと笑みを浮かべる。

 実はヒトシは、エンデヴァーの屋敷に侵入して盗みを働いた事があったのだ。

 クズモチの種は宝石よりも高価で取引される高級品であるため、ヒトシはエンデヴァーの屋敷に侵入してクズモチの種を盗んだ事があったのだが、たまたまそれをショートが見ていたのだ。

 

「あー…バレてたんだ。どうする? 捕まえる?」

 

「いや、むしろもっとやってくれて構わない。あいつはあれくらい痛い目見た方がいい」

 

「ははは…」

 

 ショートがキッパリと言い切ると、ヒトシは苦笑いを浮かべた。

 

「……あのさ、僕達これからオールマイトとか消えた勇者を探しにいくんだけど、もしよかったら一緒に──」

 

「行く」  

 

 エンデヴァーから離れられるならと、即決したショートだった。

 かくして6人になった旅路は続く。  

 6人は、トアル地方へと向かっていたはずだったが、いつのまにか迷子になってしまっていた。

 周りは岩だらけで、今にも噴火しそうな火山のふもとだ。

 

「待って、僕、探知魔法で何とかしてみる!」

 

 そう言ってひなたは、足元に魔法陣を展開し、詠唱を始める。

 

「風よ、我等を導きし声と為れ! ウィンドウィスプ!!」

 

 するとひなたの頭の中にトアル地方へのルートが浮かび上がる。

 

「こっちだよ!」

 

 ひなたは、探知魔法を使ってトアル地方へのルートを指した。

 すると突如、炎が行く手を塞いだ。

 

「誰だ! このカツキ様の住処に入りこんできた命知らずどもは!?」  

 

 火を吐く赤いドラゴンの上から、そう威嚇してきたのは毛皮のついたマントを裸の上半身に纏った勝気そうな少年カツキだった。

 

「ここを通りたけりゃ俺様を倒して行けや!」

 

「ドラゴンを従えてるなんて……あかん! 引き返そう!」

 

「引き返すだぁ!?」  

 

 すると少年はドラゴンに合図し、引き返そうとしたイズクたちの前に再び立ちふさがった。

 そして好戦的に笑い挑発する。

 

「俺様を倒してから行けや!」

 

「ヒェッ」

 

「どうやっても戦いてぇみたいだな」  

 

 ドン引きするヒナタと身構えるショートの隣で、それまで何か引っかかっていたようにカツキをみつめていたイズクがハッとした。

 

「もしかして……昔、隣に住んでたカッチャン!?」

 

「あぁ? ……てめェ、デクか!」

 

「うわあ、懐かしいな! おばさんたち元気?」

 

「二人でよろしくやっとるわ! クソが!」  

 

 イズクとカツキは昔、近所に住んでいた事があるらしい。

 テンヤはホッと安心する。

 

「それでは、イズクくんの幼馴染という事で道を譲ってもらえるだろうか」

 

「誰が譲るか。デク! いい機会だ。てめェはいつかぶちのめしてやりてぇと思ってたんだよ!」

 

「だいぶ拗れてんなこいつ」

 

 カツキが言うと、ヒトシがツッコミを入れ、ヒナタはこっそりヒトシの後ろに隠れた。

 

「そんな、どうしてカッチャン……!」

 

「てめェ、自分がした事忘れたとは言わさねえぞ……?」  

 

「う~ん?」

 

 怒りに震えるカツキの前でイズクは思い出すように首をひねる。

 

「もしかしてカッチャンがおねしょしたの僕のせいにしようとした事を、カッチャンのお母さんにバラした事? それとも洞窟に探検に行った時、腰抜かしたの見ちゃった事? それとも引っ越しの時くれた宝物、うっかり落として壊しちゃった事?」

 

「全部だわ、クソ野郎が!!! こいつとタイマンだ! 誰も手ぇ出すなよ!!」 

 

 火を噴く勢いで怒髪天を衝くカツキ。

 二人の勝負が開始された。

 

「幼馴染もいろいろあるんだねぇ……」  

 

「動機がちっさくない?」

 

「ヒナタ、人がキレるのは大抵小さい事の積み重ねなんだよ」

 

 ドラゴンが火を噴きながら文字どおり熱く応援している横で、オチャコ達もハラハラ見守る。

 途中、火山が噴火したが、それにも気づかないほどイズクとカツキは全力で戦った。

 そして結果は、僅差で積年の恨みが爆発したカツキに勝利の女神が微笑んだ。

 

「ハッ、俺の勝ちだな!」  

 

 カツキは悔しそうなイズクを勝ち誇った顔で見下ろしてから、オチャコ達に言い放つ。

 

「これでてめェらは俺の奴隷だ!」

 

「はぁ!? そんな事一言も言ってないやん!」

 

「勝ったもんの言ったもん勝ちなんだよ、丸顔!」  

 

「奴隷……」

 

 カツキが言うとオチャコが反論するが、カツキが勝ち誇ったように見下ろしながら反論した。

 奴隷経験のあるヒナタは、ヒトシの後ろでビクッと肩を跳ね上がらせていた。

 テンヤが困ったように言う。

 

「確かに勝負は君の勝ちだ。だがしかし、俺達はトアル地方にオールマイトを、勇者を探しにいかなければいけないんだ……!」

 

「あ? どういう事だ」  

 

 かくかくしかじかとテンヤは簡潔に事の次第を説明した。

 それを聞いたカツキはしばし考えこむと、きっぱりと言い放った。

 

「俺も行く。勇者が消えるってよっぽど強えヤツがいるって事だろが。そいつと戦って俺は勝つ!」

 

「えええ!?」

 

「いや行くのはかまわないが、このドラゴンも一緒なのはちょっと……」  

 

 すると、話を聞いていたドラゴンがボンッと少年の姿に変身した。  

 

「えええ〜!!?」

 

 またしても驚くイズク達に、赤髪の少年がニカッと笑った。

 

「俺、ドラゴンと人間のハーフでエイジロウっつ ーんだ。この姿なら問題ないだろ? これからよろしくな!」  

 

 男気あふれるさわやかなエイジロウもタイマン勝負で負け、カツキの奴隷になっていたらしい。

 かくして8人になった旅路は続く。  

 8人は魔獣の脅威のなか、生死をかけた野宿を繰り返し、やっとトアル地方の町にたどり着く事ができた。

 栄えているはずの町はすっかり荒れ果てて人も少ない。

 

「おい、敵はどこだ! 敵がいねえじゃねえか!」

 

「う~ん……とりあえず情報を集めなければ動くに動けないな」  

 

 情報収集なら人の集まる店だということで、町で一軒だけやっていた食堂兼宿屋『躍るおたまじゃくし亭』にやってきた。

 可愛らしいカエル顔の少女が8人を出迎える。

 

「いらっしゃい。こんなにたくさんお客様が来てくれるなんて久しぶり。私の事はツユちゃんと呼んで」  

 

「うん、ツユちゃん! あ、僕、ウミヘビの丸焼きとスープ、あとツユクサのキッシュ食べたい!」

 

 食堂の客は、シャープな目つきの少女と黒いフードを被った小汚そうな男がバラバラに座っているだけだ。

 テンヤ達は早速消えた勇者の事で何か知っている事はないかと訊くが、ツユは困ったように首を振る。

 この町にやってきていた勇者達は、いつのまにかみんないなくなってしまったのだと言う。

 

「……………」  

 

 そんな話をシャープな目つきの少女がじっと聞いていた。

 

「とにかくこの地から勇者が消えている事は確かなんだ。この土地を調べてみよう」

 

「じゃあとりあえずメシ食おうぜ!」  

 

「だねぇ。僕回復魔法使ったからもうお腹ペコペコ〜!」

 

 8人は久しぶりの食堂の料理を堪能する。

 どれもこれも美味しく、全員が何度もおかわりし満腹になった。

 

「ごちそうさま、ツユちゃん君。とても美味しかった! お会計を頼む」

 

「しめて3万トアルよ」  

 

 袋からお金を出そうとしていたテンヤの手が止まった。

 そしてガクガクと震える。

 

「どうしたの、テンヤくん!?」

 

「金がない……! 袋の底が破れていたようだ……っ」

 

「えええっ! 財布の紐も、袋の底もしっかりしとかな!!」

 

「みんなっ、すまないがお金を貸してくれ!」  

 

 そう言うテンヤに皆の顔がサッと曇る。

 

「えっ、僕、500トアルしかない」

 

「俺は現物主義者なんだよ!」

 

「すまねえ! 俺もドラゴンだから」

 

「雇い主の財布が私の財布」  

 

「ごめん、持ってきたお金は全部服と食べ物に消えちゃった」

 

「同じく」

 

 最後の望み、領主の息子のショートに皆の視線が集まるが……。

 

「わりィ、あのままついていく事にしたから財布持ってきてねえ」  

 

 望みが断たれ、がっくりとする一行。

 その後ろで瞬きもしないツユの視線が刺さる。

 

「金になりそうなもん……そうだ!」  

 

 カツキがイズクのバッグからオールマイトの人形を取り出す。

 

「このオールマイトの人形売れや! ちったあ金になんだろ」

 

「はぁ!? 絶対やだよ! 返して!!」  

 

 イズクはいつになくきっぱりと言いきり、カツキからオールマイトの人形を奪い返す。

 

「この人形は僕に勇気をくれるんだ! この人形を拾った日から、オールマイトが夢に出てきて言ってくれるんだ。君ならきっと勇者になれる。強い心と、勇気を持った君なら──って」  

 

 そして大事そうに人形をバッグにしまう。

 イズクにとって、これはただの人形ではなく、もはや自分の一部のように大切なものになっていた。

 

「てめェ、んな事言ってる場合じゃねえだろが!」

 

「これだけは絶対ダメ!!」

 

 カツキとイズクが言い争いしている間に、小汚そうな男が「ごちそうさん」とお代を置いて出ていった。

 シャープな目つきの少女がその男をじっと見送って、何やら考えていたそのとき、外から大きな鳴き声がした。

 

「なんだ!?」  

 

 あわてて外に出てみると、赤く目を光らせた大きな獣が数十匹店を取り囲んでいた。

 普通の獣ではなく背に黒い翼が生えている。

 

「これは……魔獣!? でもどうして?」  

 

 危機を前にしても疑問に首をかしげるイズクにショートが言う。

 

「イズク、考えんのはあとだ」  

 

 魔獣がいっせいにイズク達に襲いかかる。

 しかし、度重なる生死をかけた野宿生活ですっかり鍛えられた8人はあっというまに魔獣を片づけた。

 

「ハッ、こんなんが敵!? もの足りねえな!」

 

「まぁまぁ」

 

 吠えるカツキをエイジロウが宥める。

 

「ねえ、魔獣って食べられる……?」

 

「火を通せば大丈夫だよ多分。僕の炎魔法で…」

 

「やめておけ、おなかを壊してしまうかもしれないぞ、オチャコくん、ヒナタくん」

 

 参戦しようとしていたシャープな目つきの少女が、「あんたたち、すごいね……」と呆気にとられた。  

 ツユは魔獣を片づけてくれたお礼として、ごはん代をタダにしてくれたばかりか、今夜の宿を提供してくれた。

 久々の風呂に入り、8人は清潔なベッドで寛ぐ。  

 シャープな目つきの少女はキョウカという名で、数日前から一人でここに泊まっているという。

 自分達の部屋に呼び、オチャコとヒナタはうきうきとキョウカに話しかけている。

 

「お仕事は何してるの? 私は雇われ魔法使い!」

 

「僕は賢者だよ。勇者見習いなんだ! よろしく!」

 

「ウチも雇われみたいなもんかな……」  

 

 しかし、さっきからキョウカは言葉を濁すようにハッキリとは答えない。

 

「そっか ー、雇われはつらいよね! ところでなんの雇われ?」

 

「いや、それは……」

 

「もしかして国家に雇われた諜報部員だったりしてー」

 

「あっはは、まっさか〜」

 

「えっ、なんでわかったの!?」  

 

「いやマジなんかい」

 

 オチャコの当てずっぽうに動揺しまくりのキョウカ。

 なんと本当に国王直属の諜報部隊の一員だった。

 国王もこの事態に危機を感じ、地方に諜報部隊を送り情報を集めているのだという。

 目的が同じイズク達にキョウカは話しだした。

 

「ウチは、勇者が消えたのは魔王のせいじゃないかと思ってるんだ」

 

「魔王!? オールマイトが倒したはずじゃ」  

 

 驚くテンヤにキョウカは冷静に続ける。

 

「地下深くに埋めたはずの亡骸が、いつのまにかなくなっていたらしい」

 

「そんな……」

 

「さっきの魔獣がいい証拠だね……」  

 

 愕然とするオチャコに沈痛な顔で呟くイズク。

 

「自分が支配するのに邪魔な勇者を密かに消しているんじゃないかとウチは睨んでる。そして勇者が消えているのはここだけじゃない。今、残ってる勇者を探す方が難しいよ」  

 

 イズク達は唾を飲みこむ。

 勇者がいない今、魔王に襲われたら……。  

 魔王の支配から解放された後の平和な時代に生まれたイズク達だったが、その恐ろしさは寝物語に聞かされている。

 またそんな時代になってしまうのかと思うと、一同は重い空気に包まれた。  

 その時ドアが開いて、さっき店にいた小汚そうな男がやってきた。

 

「……表の魔獣をやったのはお前たちか」  

 

 怪しい風貌に思わず身構えたテンヤ達に、男はフードを取ってみせる。

 その顔を見たイズクはハッとした。

 

「無造作に伸ばした髪に無精ひげに首元の包帯……もしかして勇者アイザワ!?」

 

「え、誰?」

 

 きょとんとするみんなに、イズクは興奮したように言う。

 

「あまりに姿を現さないから本当はいないんじゃないかって噂されたくらいの珍しい勇者だよ! うわあ、こんなところで本物に会えるなんて!」  

 

 興奮するイズクにアイザワはニヤリと笑った。  

 するとその時、ヒナタがガタッと席から立ち上がる。

 

「お父さん!」

 

「えええ!?」

 

 ヒナタがアイザワに駆け寄ると、イズク達が驚いた。

 何とヒナタは、勇者アイザワの娘だったのだ。

 

「ヒナタちゃん、アイザワの娘だったの!?」

 

「うん…! 奴隷だった僕を、この人が助けてくれたの。僕の命の恩人で、師匠なんだ。でも、魔王討伐に向かったはずじゃ…?」

 

「ああ、それなんだがな…」

 

 アイザワによると、魔王の復活に気づき密かにアジトを探していたという。

 

「魔王のアジトは突き止めてある。もうここまで魔王の力が及んできてるとなると、一刻の猶予もない。俺は一人で乗りこむ。諜報部員、お前は国王に事の次第を伝えてくれ。残りのお前達は、それぞれ周囲の国に知らせて協力を求めてくれるか」  

 

 アイザワにそう言われ、イズク達は奮い立つ。

 中でもカツキはやる気満々だ。

 

「魔王なんざ俺が倒してやるよ!」

 

「ああ、俺は勇者になりに来たんだ」

 

「俺達は俺達の役割を果たさなくては! さぁみんな今夜のうちに旅立とう!」  

 

 テンヤの声に皆一斉に立ち上がる。

 だが、早速店を出ようとするイズクをアイザワが引き留めた。

 

「オールマイトの人形を貸してくれ。手がかりがあるかもしれない」

 

「! そ、それなら僕に任せてください! オールマイトの事ならスリーサイズから好きな屋久杉の場所まで知ってます!」  

 

 目を輝かせ、鼻息荒くするイズクをアイザワは黙って見下ろしていたが、小さく息を吐き言った。

 

「……わかった、ならお前は一緒に来い」  

 

 森の方へと向かう二人の後ろ姿を見て、キョウカは眉を寄せる。

 

「イズクだけ勇者に呼ばれたけど、何の用だろうな」

 

 ヒトシが怪訝そうな表情を浮かべる中、ヒナタもアイザワの後ろ姿をじっと見ていた。

 一方、アイザワとイズクはというと。

 

「勇者アイザワはオールマイトと共闘した事あるんですか! 本物のオールマイトってどんな感じですか!? やっぱり画風が違いますか!?」  

 

 アイザワとオールマイトの武勇伝を聞いて、イズクは大興奮だ。

 そんなイズクをアイザワは無気力そうな目で見下ろす。

 あきれていると思ったイズクは「あっごめんなさい!」とあわててバッグからオールマイト人形を取り出し、月の光を頼りにじっと観察する。

 

「人形ですよね……でも変わったところはとくにないと思うんですけど……う~ん」

 

「……そりゃそうだ」

 

「え?」  

 

 薄く笑ったアイザワの声に、イズクは違和感を感じた。

 だが見上げるアイザワに変わりはない。

 

「それ、貸してくれ」

 

「あ、はい……」と人形を渡そうとしたそのとき、イズクの頭の中に力強い声が響いた。  

 

 

 

 ──私を渡してはいけない、少年!! 

 

 

 

「え……」

 

「どうした、ほら早く」

 

「で、でも……」  

 

 響いてきた声と、手を差し出し迫るアイザワに戸惑うイズク。

 アイザワは無気力そうな目をスッと冷たく細めた。

 

「……あんまり大人をからかうんじゃない。こう見えても無駄な殺生は嫌いなんだ。せっかく穏便にすまそうと思っていたんだがな……それを渡せ」

 

「ヒッ!」  

 

 アイザワの目が赤く光ったのを見て、イズクはダッと逃げだす。

 その瞬間、アイザワの包帯が生き物のように伸びイズクを捕らえ、ギリギリと締め上げる。

 

「どうして逃げる? 俺はお前の憧れの勇者なんだろう?」

 

「そっ……うでした……でも何か……」

 

「さぁ人形を渡してもらおうか」

 

「いっ、いやだ……! あっ!」  

 

 アイザワは包帯の隙間から人形を取り出す。

 満足そうな様子にイズクは考えこんだ。

 

「どうしてその人形をそんなに……ハッ、もしかして勇者アイザワもオールマイトのファンなんですかっ? それならそうと早く言ってください!」

 

「違う」  

 

 嫌そうに顔をしかめ、アイザワはイズクをじっと見下ろす。

 

「夢でオールマイトから勇者になれると言ってもらったと言ってたな。勇者の卵か……ならば、今潰しておこうか──」

 

「ぐっ……!」  

 

 包帯がギリギリとイズクを締め上げる。

 だがその時、炎がそれを阻止した。

 

「炎よ、邪悪を浄化せし聖なる業火と為れ! セイントフレア!!」

 

 ひなたが詠唱すると、青白い光を纏った火球がアイザワに降り注いだ。

 

「大丈夫か! イズクくん!」

 

「みんな!!」  

 

 テンヤ達があわてて駆けつけていた。

 ツユもいて、エイジロウはドラゴンに変身している。

 イズクは何とかみんなの元へ駆け寄った。

 

「お前達、報告に行かなかったのか」  

 

 面倒くさそうに頭を搔くアイザワに、キョウカが言う。

 

「ずっとおかしいなって思ってたんだよね。勇者アイザワは一度消えたはず……それってつまり、あんたは別人の可能性もあるってことでしょ」

 

「残念ながら本物だ。ただし……魔族として生まれ変わって戻ってきたんだよ……!」  

 

 アイザワがそう言うと、周りから数えきれないほどたくさんの魔獣や魔人が現れ、テンヤ達を取り囲んだ。

 

「お父さん…どうして…!」

 

「あのまま素直に報告に行っていれば見逃してやったのに……しかしまぁやるなら一度ですますほうがいい。合理的にな」  

 

 ニヤリと笑うアイザワが巨大な魔族へと変化した。

 その姿はドラゴンのエイジロウよりはるかに大きい。

 10人は愕然としながらも、強大な敵にザッと身構えた。

 

「だぁあああ!!」

 

「くっ!」

 

「はぁっ!!」  

 

 テンヤ、ショート、イズクが剣を振るい次々と敵を倒していく。

 

「ふっ!!」

 

 ヒトシは、投げ縄と短剣を使って軽い身のこなしで敵を倒した。

 その近くでカツキが敵をちぎっては投げちぎっては投げ、叫ぶ。

 

「かかってこいやぁ!!」  

 

 ヒナタは、足元に何重にも魔法陣を展開し、杖を構えながらブツブツと呪文を呟いていた。

 

「元素よ、我等に加護を与え給へ!! グレイトエレメントトルネード!!」

 

 ヒナタがカッと目を見開いて叫ぶと、全属性の魔法を複合した極大魔法が発動し、周囲にいた敵が吹き飛ぶ。

 エイジロウが炎とその巨体で敵を一気に減らし、キョウカは身軽な身のこなしで短剣を使い、ツユは伸びる舌で敵をブンブンとぶん投げている。

 驚くオチャコ。

 

「ツユちゃん、舌すごいね!?」

 

「ええ、昔サーカスでちょっとね。私の一族の特殊技能なの」

 

「私も負けてられへんわ!」  

 

 オチャコはおなかいっぱいでエネルギー満タンなのか、精霊の力をフル稼働させて敵を一気に減らしていく。  

 そしてあっというまに魔獣や魔人達を倒し、残るはアイザワだけとなった。

 

「君達の力を見くびっていたようだ。一応訊くが、こちら側につく気は?」

 

「ありません!!」

 

「あるわけねえだろ!!」  

 

 きっぱりと言うイズク達にアイザワは、フッと笑って長い爪をクイクイと挑発するように動かす。

 

「だろうな。じゃあまとめてかかってこい」

 

「うおおおおおお!!」

 

 イズク達は一斉にアイザワに襲いかかった。

 ヒナタの強化魔法と回復魔法によって、イズク達のパワーとスピードは何倍にも強化された。

 だがそれでもアイザワの身体に傷一つつけられず、巨体に似合わぬ俊敏な攻撃に返り討ちにされてしまう。

 それでも諦めずに何度も攻撃を仕掛けたが、結果は同じだった。

 

「どうした、もう終わりか」

 

「っ……」  

 

 つまらなそうな声に反論もできぬほど、イズク達の体力は底をつき、もう立ち上がることさえできそうにない。

 

「う、うぅ……」

 

 だがそんな中、唯一ヒナタだけは腕にグッと力を込めて立ちあがろうとしていた。

 ヒナタは、体力が底を尽きた身体に鞭打ってアイザワに歩み寄る。

 

「お父さん…お願い、元に戻ってよ…! 僕の知ってるお父さんは、厳しいけど、優しくて、誰かが困ってたら助けてくれる…僕に勇気をくれる、カッコいい勇者なんだよ…! こんなの、違うでしょ!? いつものお父さんに戻ってよ!!」

 

 ヒナタは、杖で身体を支え、涙を流しながらアイザワを説得する。

 だが魔族と化したアイザワにはヒナタの声は届かず、アイザワはヒナタを殴り飛ばした。

 

「キャア!!」

 

「ヒナタ! お前…!」

 

「何を言い出すかと思えば…俺に娘なんかいない」

 

 ヒトシがアイザワを睨むと、アイザワは二人を見下して冷淡に言い放った。

 

「では、さっさと終わりにしよう」  

 

 アイザワは無感情にそう呟き、イズク達に近づいてくる。

 踏みつぶしてしまうつもりなのだ。

 アイザワが大きな足を持ち上げてもイズクたちは動けない。

 だが、足を踏み下ろす直前、アイザワはふと立ち止まった。

 

「そうそう、冥途の土産に教えてやる。俺がオールマイトのファンだと勘違いされたままなのは嫌だからな……この人形は、魔王の呪いで人形にされたオールマイト本人なんだよ。だが鳥がイタズラで持っていっちまってなぁ、俺はそれを探していたというわけだ」  

 

 それを聞いたイズクの脳裏に、謎の声……オールマイトの声が再び響いた。  

 

 

 

 ──少年!  私と同じ平和を愛する心を持つ君なら、私は君と一つになれる……! 

 

 

 

「オールマイト……!」  

 

 次の瞬間、イズクの身体にオールマイトの途方もない力が流れこんできた。

 

「さぁ今度こそ終わりだ……っ……!?」  

 

 踏み下ろしたアイザワの足下から間一髪イズクが抜け出した。

 皆が何事かとハッとする。

 剣を構えるイズクから陽炎のように揺れるオーラが現れた。

 その姿は偉大なる勇者オールマイトだ。

 

「終わりになんてさせない……平和な世界を守るんだ……!!」

 

「なん……だと……!?」

 

 イズクが剣を構えながら言うと、アイザワが目を見開く。

 するとその時、ヒナタも立ち上がった。

 

「僕だって、負けない…! 世界の平和を守る、勇者になるんだ…! 僕を助けてくれた、お父さんみたいに!!」

 

「何だ、その力は…!?」

 

 ヒナタが白と黒のオーラを滾らせながら叫ぶと、アイザワは思わず怯んだ。

 実はヒナタは、かつて魔王の手によって滅ぼされた国、ソナタ王国の王家の末裔だった。

 ソナタ王国は、聖なる力と魔族の力を両方使える珍しい種族が住む国だった。

 その珍しい体質に目をつけられ、赤ん坊の頃に魔王軍の残党に攫われて奴隷にされていたのだ。

 

「うわああああああ!!」  

 

 イズクはオールマイトの力が宿る腕で剣を振り下ろし、ヒナタは今自分にできる渾身の魔法を発動させた。

 

「くっ……あああ!!」  

 

 剣と魔法を受け、倒れるアイザワ。

 その巨体がみるみる小さくなり、元の姿のアイザワに戻っていく。

 オールマイトの力は再び人形の中へ戻った。

 

「あああ、オールマイト! まさかこんな姿で会えるなんて思ってませんでした!」  

 

 あわてて人形を大事そうに拾い上げ、興奮して話しだすイズクにオールマイトは頭の中で話しかける。

 

 

 

 ──それより少年、アイザワくんの様子を見てあげて。魔王に呪われてあんなんなっちゃってただけだから。

 

 

 

「あっ、そうだ!」  

 

 恐る恐るアイザワに近づくイズク達。

 アイザワはパチッと目を開けた。

 

「ん? 何だ、お前ら」  

 

 今までの記憶がなくなっていたアイザワに事の次第を説明すると、アイザワは「悪かったな」と謝った。  

 するとヒナタが、涙を流しながらアイザワに駆け寄る。

 

「お父さん…!」

 

「ヒナタ…」

 

 ヒナタが話しかけると、アイザワはヒナタの方を見た。

 ヒナタは全身ボロボロになっており、顔からも血を流していた。

 アイザワは、痛ましい愛娘の姿を見て、そっと頬に手を添えながら謝った。

 

「ヒナタ、すまなかった。俺のせいでこんな怪我を…」

 

「ううん、いいんだよ…! 僕は、お父さんが無事なら、それで十分だから…!」

 

 アイザワが娘の傷に心を痛めて謝ると、ヒナタは泣きながらアイザワに抱きつき、アイザワもヒナタを愛おしそうに抱きしめた。

 アイザワとオールマイトによると、やはり勇者たちは魔王によって呪いを受け、記憶をなくし、魔族にさせられているとの事だった。

 そして、呪いを解いて彼らを元に戻すには、魔王を倒さなければならないらしい。

 

「つまり、これから魔族に変えられた勇者が敵としてやってくるかもしれないという事ですか……」  

 

 テンヤが深刻そうに呟く。

 世界の危機はこれからだという事だ。

 だがカツキがハッと強気な笑い声をあげる。

 

「上等だ! 強いヤツじゃねえと倒す気にならねえ!」

 

「お前が行くなら俺も行くぜ! それに世界の危機はほっとけねえ!」

 

「もちろん俺もだ! オチャコくんもついてきてくれ!」

 

「うん! 支払いはまたあとで相談で!」

 

「もちろん僕も行くよ! オールマイトの呪いを解かなくちゃ! ショートくんは……」

 

「行く。クソ親父のとこには戻らねえ」

 

「ウチも。情報集まりそうだし」

 

「私も行くわ。平和じゃないとお店も潰れちゃうし」  

 

「僕も行く! 他の勇者達がお父さんみたいにされてるんだとしたら、放っておけないよ!」

 

「ヒナタが行くなら俺も行くぜ。俺だってオールマイト達助けたいしな」

 

 息巻くイズク達にアイザワが言う。

 

「お前ら、行くのはいいがどこに魔王がいるのかわかってんのか」

 

「あ」  

 

 初めて気づいたイズク達にアイザワは呆れたようにため息を吐いた。

 

「子供だけじゃ危ねえだろ。俺についてこい」  

 

 頼もしい引率者に、「やったぁ」と喜ぶイズク達。

 

「なんか学校の先生になった気分だな……」  

 

 まんざらでもなさそうに呟くアイザワ。

 イズクはドキドキしながら人形のオールマイトに話しかける。

 

「呪いが解けたら、その……弟子にしてください!」  

 

 

 

 ──何を言ってるんだ、少年。もうとっくに君は私の弟子だよ。改めてこれからよろしくな!  

 

 

 

 頭の中に響いてきた声にイズクは満面の笑顔になった。

 

「は、はい、オールマイト! 僕、がんばります!! 呪いが解けたらサインください!」  

 

 かくして12人になった旅の一行。

 魔王を倒すその日は近い……かもしれない。

 

 

 

 

 




U.A.Questのオリジナルキャラ

ヒナタ
勇者見習いをしている賢者の少女。
高度な攻撃魔法と回復魔法の使い手で、魔法使いと僧侶の上位職である賢者に最年少で転職した天才。
かつて魔王軍の残党に奴隷として飼われていたが、アイザワに助けられてからは勇者を目指して冒険している。
冒険中に出会ったヒトシとパーティーを組んで行動を共にするうちに相思相愛の関係に。
聖魔法はエネルギーを消費するらしく、小柄な見た目からは想像できない大喰らい。
実は、魔王に滅ぼされたソナタ王国の王家の末裔で、聖魔法と闇魔法を両方使える珍しい種族。

ヒトシ
ヒナタと共に冒険している盗賊の少年。
食い繋ぐために盗賊をしていたが、根は優しく、本当はオールマイトのような勇者に憧れている。
魔獣に襲われていたところをヒナタに助けられてからは行動を共にしており、相思相愛の関係に。
ミスディレクションや逃げ足などの盗賊としてのスキルはかなり高く、戦闘では投げ縄を使った捕縛術と、ナイフを使った暗殺術を得意とする。
実はエンデヴァーの屋敷にも侵入して盗みを働いた事があり、エンデヴァーの息子のショートに見つかっているが、父親を嫌っている彼にとっては好都合だったらしく、運良く見逃されている。

ユウカ
シソ村の占い師の少女。
薬草やポーションを売ってくれるがどれもぼったくり価格。
しかし彼女の薬屋に10回以上買い物をし常連客になれば、商品を安くしてくれるだけでなく、客にとって一番有益な情報をタダでくれる。
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