魔法科高校の煌黒龍   作:アママサ二次創作

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第1話 目覚め

 長い。永い時を眠った。ごく僅かに。断片的に封印の隙間から流れ込む景色が。

 

 かつて生きた者達の荒廃と。新しい複数の者達の隆盛と荒廃を示していた。

 

 小さな生命の息吹が。我らにまで届くほどの勢いを得て。

 

 そしてやがて、その命が尽きるかのように消えていく。

 

 そしてまた新しい小さな者達が生まれ。

 

 今度は我らに至るほどの息吹を持たぬまま潰えていく。

 

 そんな悠久とも取れるときを、まどろみの中に過ごしてきた。

 

 

 

 だが。この世界に永遠は存在しない。例えば複数の文明にまたがって存在し続ける程の封印であっても。そこに限界は必ず訪れる。明確に時を超える、あるいは無視する術に。小さきものたちは一度もたどり着いていない。

 

(む……。開くのか)

 

 開くのではない。壊れるのだ。もはや、更新されなくなって久しい封印は、その力を失っていた。

 

 そして。

 

 ガチり、と。封印が解き放たれるとともに、その姿が現実世界へと顕現する。

 

 無数の角が寄り合わさって出来上がった2つの巨大な角は頭部から前方へと張り出し。大地を踏みしめる4本の足は他に類を見ないほど力強く。体を覆うほどの翼はしなやかに伸ばされ。全身を覆う逆立った鱗はその怒りを端的に示す。その体全体は、青から赤。そして黒へと絶えず移り変わりを示す。

 

 かつて小さき者達に。

 《闇夜に輝く幽冥の星》《黒き光を放つ神》などと呼ばれ恐れられた、絶対的破壊の象徴。

 

 眠りから目覚めた《煌黒の龍》は。

 

 小さき者達への憐憫と。己の目覚めの喜びを込めて。天高くへと咆哮を上げた。

  

  

  

******

 

 

 

「おや?」

 

 不意にゾクリと。背筋をついた嫌な感覚に、九重八雲は振り返る。

 

 振り返ったところで何かが見えるわけではない。そもそもその感覚は背筋をゾクリとさせただけで、背中の側から来たわけでもない。

 

 だが、振り返らずにはいられなかった。

 

 それほど、得体のしれない気配だった。

 

「……少し、遠出してくるよ」

 

 弟子たちにそう一言告げると、他に言い起きを残さないまま、彼はその場から姿を消した。普段の彼らしくはない拙速な行動。だが、勘、とも言えない何かが告げているのだ。

 

 今動き出さなければ、取り返しのつかないことになる。

 

 そうして彼は気配に導かれるままに。日本アルプス山脈の山奥へと足を向けた。

 

 

 

******

 

 

 

 目を覚ました煌黒龍は、その姿を、小さき者達と同じものへと変化させる。かつて己が誕生し、争いあった時代の小さき者達や。それに続く、小さく、けれど確かに爪と牙を持つ者達の時代には出来なかったことだ。長い時を渡る中で、彼らは。古の龍たちは力をつけ。身を隠すということを覚えた。

 

「こんなものか」

 

 時折垣間見えた映像に合わせた彼が身につけたのは、いわゆる和服、なんて言われる服装だ。彼が最後に小さき者たちの社会を垣間見たのは、彼自身は気づいていないが遥か数百年以上昔のことなのである。

 

「ふむ。漏れていないな。おそらくはコレで大丈夫」

 

 彼がその姿を人間のものへと変えた理由は2つ。1つ目は、先程も述べたように小さき者達の中へと容易に紛れ込むため。かつてすべてを拒絶していた時とは違い、彼は些細な好奇心で他者と関わるようになっていた。

 

 そしてもう1つの理由。

 

 それは、溢れ出す力を抑え込むこと。小さき者達の姿へと身をやつすことで、その力は最低限まで抑え込まれる。そして最低限まで弱くなれば、それを制御する術を身に着けた煌黒龍にとっては、完全に己のうちにとどめてしまうのは容易なことだった。

 

 と。

 

「ところで、そこにいるのは何者だ?」

 

 煌黒龍は、変化させた体に合わせて身だしなみを整えた後に、木々の中へと向かって問いかける。つい先程から彼に側にいる気配。それは明確に、彼へと注意を向けていた。

 

 待つことしばし。一方的に見られているというのは、例えその隠れ方が中途半端であり煌黒龍の側から見えているとはいえ気に入らない。逃げようとするのであれば捕らえようと考えていたが、彼を観察していた者はその姿を現した。

 

「初めまして、でいいのかな?」

「何者だ?」

「僕はしがない坊主、さ。ところで、君の方こそ何者だい?」

 

 九重八雲、と。そう名乗った小さき者は、煌黒龍の言葉に答えたあと、今度は問を投げかけてくる。

 

「何故、それを我に聞く?」

「その言葉」

 

 言葉、と。九重は言った。正確には、言葉ではないそれ。

 

「君の口から出ている言葉は、僕の全く知らないものだ。その音は、一節すら意味が理解できない。発音も難しいだろうね」

 

 ―――なのに。君が何を言いたいのか理解できる。

 

 ふむ、と。煌黒龍は喉に手を当てる。確かに、目の前の男が発している言語は煌黒龍の聞いてきた言葉とは大きく違うように思える。最も、小さき者達はその息吹が途絶えるたびに、いつも似たような姿をしているのにいつも全く異なる言語を生み出す。全く持って奇妙で。

 

 だからこそ愛おしい。

 

「なるほど。この時代の言語も学ばなければならない、か」

「何者、なんだい? さっきまで恐ろしい気配がしていたのに、それが僕が来る直前に途絶えた」

「取引だ。我は我の正体と……小さき者達の運命について我の知ることを伝えよう。代わりにお前は、我にこの時代の知識をよこす」

 

 煌黒龍の言葉に、九重は一瞬考える。

 

「……断ったら?」

「む。我が困る」

「暴れようとは思わないのかい? 君は……人ではないだろう?」

 

 先刻の気配や未知の言語にも関わらず意思を伝えるという特性から、九重は煌黒龍が人間ではないと看破した。だから、それが暴れないのかと尋ねたのだ。

 

「わざわざ暴れる理由がない。暴れなくても情報を得るぐらいはできるだろう。我は行く。さらばだ」

 

 九重が取引に応じるつもりが無いと思った煌黒龍は、その場を歩いて後にしようとする。

 

「待ってくれよ。まだ断ると言っていないさ」

「む?」

「取引に応じる。ついてきてくれるかい?」




魔法科高校と他の作品のクロスオーバー(SCP、鋼の錬金術師 など)を読んで影響を受けて書こうと思いました。
現在魔法科高校の劣等生の小説が手元に無いので設定などがわかりません。進むのはちょっと遅くなるかな。



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