魔法科高校の煌黒龍   作:アママサ二次創作

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第20話 ハプニング

 委員会本部を出て早速巡回に行こうとしたアルバだったが、達也がそれを引き止める。

 

「アルバ、エリカと一緒に回ろうという話をしていたんだが良いか?」

「俺は構わないが、風紀委員と一緒に回るというのは問題ないのか?」

 

 達也に尋ねられて、アルバはそれを肯定しながらも疑問を投げかける。アルバの聞く限りでは、風紀委員とは厳格な役割のように思えた。それが他の生徒と一緒にいても良いのか、という問いかけである。

 

「一緒にいるぐらいは大丈夫だろう。エリカも巡回するのと一緒でいいと言ってくれたからな」

「そうか。なら俺は構わないぞ」

 

 達也の説明にアルバも了承を示し、2人はひとまず達也の教室の前に向かう。そこで達也とエリカは待ち合わせをしていたらしい。

 

 が。行ってみるとエリカの姿は無かった。

 

「いないぞ」

「……どうやら先に行っているようだ」

 

 端的なアルバの状況説明に、携帯端末を取り出して確認していた達也が答える。そこには敷地内の平面図と、その中を移動する赤点が表示されていた。

 

「待ち合わせていたのではないのか?」

「……行こう。場所はわかってる」

 

 アルバよりもエリカとの交流があり彼女の奔放な性格を知っている達也は、それが彼女の悪戯のようなものなのだと気づく。おそらくは達也と一緒に回る気が無くなったのではなく、探しに来るのをあてにしているのだろう。その証拠に彼女はあまり離れたところにおらず、移動もごくゆっくりとしたものだ。

 

 首を捻るアルバを促して達也はエリカを探して移動を始める。

 

 移動の間、2人は魔法の技術や知識に関する話をする。アルバから投げかけられる魔法に関する質問と、それに達也が答えたりヒントを与える、というのが、この2人の会話の流れになりつつあった。雑談をするような仲ではない、というよりは2人ともそちらの方が性にあっているのだ。

 

「それで、今日は何の話があるんだ?」

「む、そうだな。では今日は……飛行魔法についてで良いか?」

 

 アルバは、様々な魔法に関することについて人と話したいと思っている。それはこの半年間で1人現代魔法について学ぶ中で更新されてきたものであり、また毎日のように更新されていっているものでもある。そんな事情を雑談から一部知っている達也は、2人きりの今ならばと自分から話を振ってくれた。

 

「飛行魔法か。加重系魔法三大難問の1つだな。流石にそれは俺に聞かれても良い答えを返せるものじゃないんだが……」

 

 これまで数度行われたこうした会話では、アルバが尋ねる話はサイオンの特性に関してや基本的な現代魔法の条件などに関する確認などであったのだが、今日になっていきなり話題の難易度が跳ね上がった。

 

 飛行魔法は、加重系統三大難問と呼ばれる現代魔法において様々な問題から実現されていない魔法の1つだ。BS魔法師と呼ばれる現代魔法では実現が困難な魔法に特化した超能力者のみがそれを使用可能とされている。

 

 現代魔法を利用した移動自体は、普通に可能である。先日アルバが九重寺を訪れる際に使用したように、一方向に向けて移動魔法をかければ空中を直進することが可能だ。

 

 だがここで難問とされている飛行魔法は、『自由な飛行』をゴールとしたものである。つまり先日アルバがしたように、『あらかじめ決められたルートで移動する』というのは飛行魔法とは言えないのだ。アルバはそれをした際に持ち前の人並み外れた干渉力の高さで強引に進路変更などを行ってみせたが、それは人間には不可能なことだ。

 

 通常自分の魔法であれ他者の魔法であれ、すでに魔法が働いている事象に対して更に魔法をかけるにはより大きな干渉力が必要となる。例えば干渉力を数値化して考えると、干渉力が10の人間が自分に魔法をかける場合、最初に1の干渉力で魔法をかけると残った干渉力は9となる。次に前の魔法の効果が残った中で更に魔法をかけるには、少なくとも2の干渉力が必要となる。そしてその場合、残される干渉力は7になる。

 

 これを繰り返すと魔法の発動に必要な干渉力は加速度的に増加していってしまい、すぐに限界が来る。大まかに言ってしまえば、これが飛行魔法の実現における最大の問題点だ。明確に終了条件が設定される現代魔法において、途中で思いのままに進路変更をするというのは原理的に不可能なことなのだ。

 

 そんな現代魔法として体系化されたがゆえの問題が、飛行魔法の実現を阻んでいた。言ってみれば、現代魔法学の初期から研究者、魔法師達の頭を悩ませてきた難問だ。

 

 それを一学生である自分に言われても困る、と達也は言う。達也の隠された実績を考えれば実際はそんなことはないのだが、少なくとも今ここにいる司波達也は、アルバの疑問に対する明確な答えを持っているはずがなかった。

 

「む、そうか。……では別の魔法」

「いや、一応聞かせてくれ。もしかしたら答えられることかもしれないからな」

 

 だが一方で、達也はその話題に興味を示してみせる。確かに答えることは出来ないが、議論を交わすこと自体有意義なことだ。むしろ達也にとって、アルバの質問に答えるだけのこれまでの会話よりもアルバの意見を聞けそうなこの話題の方が有意義だった。例えすでに達也が答えの欠片を持っているとしても。

 

「ありがとう。いくつか論文などを読んでみて疑問だったのだが、飛行魔法に対するこれまでの研究は……なんというか、方向性を間違えているのではないか?」

 

 少しばかりこれまでの研究を酷評するのをためらったアルバの言葉に、達也は興味深そうな目線を向ける。

 

「どうしてそう思うんだ?」

「うむ。先日移動魔法を使って空を飛んでみたのだが、その時に気づいてな。あの時は飛んだと言っても直線方向だったが。結局のところ、飛行魔法の難点はあらかじめ魔法で設定したルートから外れるために魔法を重ねがけすると干渉力の限界に到達してしまう、ということだろう?」

「……そうだな。概ねその認識で間違っていない」

「ならば、ルートをあらかじめ設定しなければ良いのではないか?」

 

 アルバの言葉に、達也は一瞬考えこんだものの、すぐにそれに対する反論をする。

 

「それは現代魔法の原理に反することになるぞ。終了条件の定義は魔法発動においては絶対だからな。それを超えるには基本コードを発見するしかない。この場合は加重系統のプラスマイナス両方のコードがあれば可能性もあるが」

「すまん、言葉足らずだった。つまり、こう、移動ルートに節を設けて考えればいいのではないか?」

 

 アルバの言葉に、今度こそ達也は興味を装うのではなく、真剣に興味を示した。それはまさしく、達也が見つけている答えに近づくものだった。

 

「もう少し詳しく説明してくれ」

「一般的に考えられているのは、長い移動ルートを設定した後に何らかの方法で途中から別のルートを上書きする、という方法だろう? そしてこの時に前のルートと後のルートが重なってしまうから干渉力の限界が来る」

「ああ」

「ならばもっと小さな単位、それこそ50センチや1メートルごとに魔法の終了条件を設定しておいて、そこで次の魔法を発動する、というふうにすれば良いのではないか?」

 

 アルバが言っていることが、達也には完全に理解できた。つまり、円を書く時に最初から『円』を描くのではなく、無数の短い直線を用意してそれをつなぎ合わせて円形に並べてしまえば良いのではないか、とアルバは言っているのだ。無数の直線のつながりである以上、それはやろうと思えば正方形にも正五角形にもなりうる。

 

 これまで飛行魔法に対して取られてきたアプローチは、旅行先で自由に行動するといいながらも先に行動の予定を立てて行動しているようなものだった。そこで、立てる予定をわずか数分先までのものとしそれを繰り返すことで、擬似的に自由を再現しようというのである。

 

「……面白いアプローチだと思うが、果たしてそれだけの魔法を処理し続けれる人間がどれだけいるかが問題だな。50センチ単位で設定するとして、人のダッシュの速度に合わせるなら一秒間に8メートル移動する必要が出てくる。そうすると一秒間に処理しなければならない魔法の数は16だ。深雪やお前でも処理が追いつかないだろうな」

「む、そうか……確かに遅い歩みでは意味がないか」

「だが発想自体は非常に面白いと思うぞ」

 

 アルバのアイデアの穴をつきながらも、達也はその発想力に感嘆した。それは、自分がこれまでの魔法師達の研究の上に積み上げようやく完成した理論だ。粗はあるものの、詰めれば、そしてアルバがもっと魔法だけでなくCADなどのデバイスに関する知識を得れば、その先に到達しうる。先を越されてはたまらないのでそれを教えることはないが。

 

「アルバは研究職が向いているかもな。それだけの魔法力があれば魔法師でも十分以上に活躍できるだろうが、発想力も相当にいい」

「……あまり人の常識を知らないから普通は思いつかない考えに至るだけだろう」

「それも発明には重要なものだ」

 

 と。そこで達也が昇降口でエリカを見つけ、2人の話は終わる。

 

 達也とエリカが会話を交わしている間、アルバは後ろで1人達也の答えについて考えていた。

 

(CADを使わないで魔法式を構築できれば俺には出来そうだが……結局は俺の問題ではなくデバイスの問題か。かといってCADを使わなければ魔法式を作れぬからな)

 

 魔法式の処理速度に関する人の常識はアルバには当てはまらない。魔法師は無意識下に存在する魔法演算領域で起動式に変数を入れて魔法式を生成している。その魔法演算領域の出来が、アルバと人では全く違うのだ。そもそもが脳みその構造も精神の構造も全く違う龍だから当然ではあるのだが。

 

「それで、なーんでアルバがいるの?」

「む? 機嫌は治ったのか?」

「別に機嫌悪くない!」

「すまない。何やらもめていたから勘違いした」

 

 つい先程まで達也にからかわれて疲労していたエリカは、アルバの答えに更に疲労がどっと増したのを感じる。達也から風紀委員会で1年生はペアで活動することが決まったと説明されたが、本人曰く『性格が悪い』達也と、天然で痛いところをついてくることのあるアルバ。アルバの言葉は達也にも向けられるが、達也はアルバをターゲットにはしないだろう。1人で相手するのは御免被りたい2人が揃ってしまったことに、エリカは大きなため息を吐いた。

 

 

 

******

 

 

 

「それにしても、随分と見られているな。やはりエリカか?」

「いやアルバでしょ。成績優秀者のあんたを部活に誘いたいけど、風紀委員だから荒っぽいことが出来なくて困ってるんじゃない」

「そうなのか?」

「3人それぞれに注目される理由のあるメンバーが集まっているんだ。注目されるのも当然だろう」

 

 会話に割って入った達也にアルバとエリカが疑問の視線を向ける。達也としては2人が話しているならそれはそれで良かったのだが、立ち位置的に2人に挟まれる形になっているために話に混ざらないとやってられないのである。

 

「どゆこと?」

「新入生の首席に何故か風紀委員章をしてる二科生、学年トップクラスの美少女。3人共それぞれ注目を集める要素があるってことだ」

「ちょ、またそんなこと……!」

「なるほど。そう言えばそれもそうか」

 

 達也の発言にエリカが頬を赤らめ、アルバがなるほどと納得した様子で頷く。そんな3人に向けられる注目は各部がテントを出している校庭に近づくほど増えていって。

 

 

 

 気づけば3人は、勧誘の群れに呑まれていた。

 

 正直な話、達也はたかが学校のクラブ活動と甘く見ていたし、アルバはそもそもこういう状況になるものだとは想像していなかった。校庭を埋め尽くすテントとテントの隙間にみっちりと人が詰まって人垣ができていて、その中にアルバとエリカは完全に囚われてしまったのである。

 

 男子生徒であるアルバの周囲には男女問わず上級生が集まり、風紀委員という事を一応考慮してか身体には直接手をかけていないものの取り囲んで圧をかけているように見える。

 

 そしてエリカに至っては上級生の女子生徒に取り囲まれ、その手足があちこちから引っ張られている。足にまで手をかけられているというのが、どれだけこの勧誘が激しいかというのを如実に示しているだろう。

 

 唯一勧誘という意味ではターゲットにされていなかった達也が遠巻きに見ているのを確認しながら、アルバは状況を整理する。アルバの前には人の群れ。話を聞く限り、全て魔法競技系のクラブの勧誘らしい。おそらくは首席であるアルバの魔法の実力が自分たちのクラブに欲しいということだろう。各魔法競技に関する話を聞いていること自体は楽しいのだが、風紀委員としての活動には支障が出てしまっている。

 

 一方エリカの周りに集まっているのは非魔法競技系の運動部のようだった。おそらくは彼女の実力がほしいから、などではなく、その客観的に見て可愛いといえる容姿が欲しいと思っているであろうことはアルバにも想像できた。

 

 アルバ自身はまだ理性的な、というと言い過ぎかも知れないが多少まともな勧誘を受けているだけなので良いとして、エリカの方はかなり荒い扱いを受けているのが感じられる。具体的には彼女の肩を掴んでひっぱりあってみたり後ろから抱きつくような形で引っ張ってみたりとまさに同性だからこそ出来る獲物の奪い合いが行われている。同性でもセクハラ認定されそうなものだが、生憎とアルバにはその知識は無かった。そしてまた同性であるが故に、エリカは自分を取り巻いている彼女らを蹴散らすことができずにいるわけだが、それにもまたアルバは気づいていない。流石にあれほど囲まれると厳しいか、と考えるばかりである。

 

 どうしたものかと、自分やエリカを囲んでいる生徒たちを物理的に蹴散らすことを含めてアルバが考えていると、魔法が発動されようとしている気配がした。

 

 魔法式を破壊する用意をしつつ視線をそちらに向けて誰が使おうとしているのかを確認すると、CADを起動しているのは達也である。その目的は、エリカを救助することであるようだった。起動式を読み取ってそれに気づいたアルバは、その発動を妨害せずに達也の行動を見守った。

 

 達也が魔法を発動し地面を蹴りつけると同時に、そこから発生した振動が魔法式によって増幅され、更に指向性を与えられてエリカと彼女を取り囲んでいる上級生の足元を揺らす。アルバの方に向けられていないのは、アルバがエリカほど切羽詰まっていないというのもあるが達也の魔法力ではそこまで広範囲に魔法を広げられないからだ。

 

 足元を揺らされたことで気づかぬうちに平衡感覚を失っていたエリカの周囲の生徒たちは、達也に軽く手で押されることで簡単に尻もちをつく。魔法自体は強力なものではないが、人間の身体機能にうまく影響を与える魔法だとアルバは感心しつつ。自分もまた周囲の生徒達の間を体術だけですり抜けて彼らの後を追った。光波振動系の魔法で幻影を残すことや達也同様の手法を使うことも考えたのだが、エリカという救助対象がいた達也と違ってアルバは自分のために魔法を使うことになりそうだったためにそれらを断念したのである。

 

 それでもアルバの体術で容易く人混みをすり抜けることができた。流石に後ろから魔法で追ってくるものがいなかったのは、相手が風紀委員だからという理性が残っていたからだろう。

 

 

 

******

 

 

 

「見るなっ!」

 

 達也とエリカの後を追ってアルバが校舎の影へ向かっていると、そんな叫び声が聞こえる。叫び声の主はエリカだ。達也だけがエリカと一緒にいるのは気配でわかったのだが、そうすると一体何を見るなと叫んでいるのかわからない。

 

 疑問に思いながらもアルバが2人のいる側に進むと、ちょうどアルバの来た方向を向いて服を整えているエリカと、その向こうで背中を向けている達也が目に入った。

 

 何をしているのだろうかと足を止めたアルバと、足音は聞こえなかったものの視界に入った靴を見て顔をあげたエリカの視線が交差する。

 

「なっ、なっ、なっ」

 

 少し赤かった顔を真赤にして胸元を抑えるエリカにアルバは一瞬疑問の表情を浮かべるが、『見るな』という先程のエリカの発言を思い出して背中を向ける。それでも一瞬の間があったのでエリカにとっては、アルバが自分の痴態を凝視しているかのように感じられたが。

 

 と。

 

 直後に後頭部に何か硬いものが飛んできて激突する。

 

「いつまで見てんのよあんたはー!!!! ってこっち振り向くな! あっち向いてろ!」

 

 後頭部に向かって投げつけられた何かを拾おうとした振り向こうとしたアルバだが、エリカの言葉に静止されて再度背中を向け直す。

 

 後からやってきたアルバは知らないが、アルバが来る直前、もみくちゃにされていたせいで制服がはだけてしまっていたエリカの胸元を達也が見てしまうという事故が発生していたのだ。アルバが到着したのはその直後、エリカが服をちゃんと着直そうとしていたところだったのである。

 

 アルバとて、女性の胸や下着などを見るのが良くないことだというのは理解している。というか、最低限の常識として八雲に教えられた。そしてもし何かの状況で見てしまった場合、例えどんな状況でも悪いのは男の側である、とも。それが男性の見せるべき誠意だそうだ。両性具有とも言える煌黒龍とは言え、アルバが今現在男性の身体を取っている以上それは変わらない。

 

 基本的に悪意自体は無いといっていいアルバが人間関係で非常識ぶりを発揮するのはまだ良いとして、そうしたハプニングは一発で人間関係を壊滅させることにつながる。それを危惧した八雲のアドバイスだったのだが。

 

 いきなり遭遇した場合にすぐにその知識と状況を結び付けられるかというのは別の話である。

 

 やがて着替えが終わったのか、エリカがアルバへと投げつけたものを拾いに来る。もう振り向いても大丈夫だと判断したアルバが振り向くと、無事制服を着たエリカがすぐ後ろに立っていた。手に携帯端末を持っているのを見ると、おそらくはそれをアルバに向かって投げつけたのだろう。

 

「……見た?」

「何を見るなと言っていたのかが検討がつかんのだが……見てはまずいものがあったならすまない」

 

 下から睨むように見上げているエリカの顔はまだ若干赤い。それに対してアルバは、正直に何を言っているのかわからないということを伝える。完全に服がはだけているのを見てしまった達也と違って、アルバが来たときにはエリカはすでに服装を整えつつあった。そのため見てはまずいもの自体は、女性が服を整えている場面を除いては見ていない。

 

 それはエリカにもわかっていたことだ。正面から来たアルバに思い切り叫んでしまったが、実際はあのときには取り敢えず見られてはまずいものは隠せていた。

 

 とはいえ、である。女性が着替えている、というわけではないが服を整えているところをまじまじと見るのはいかがなものだろうか。それも、この男には悪意も照れる様子も欠片も無いからたちが悪い。本当に悪いと思ってないのがわかってしまうのだ。

 

 とはいえ、一言言ってやらなければ気がすまない。

 

「普通女の子が服を整えてたら目をそらすものなの。あんた凄いにぶそうだから言っとくけど、私じゃなかったら絶縁されてもおかしくないからね? わかった?」

「む……わかった。すまない」

「……よし」

 

 アルバが取り敢えずの理解を示した事を確認したエリカは、アルバに背を向けてもうひとりの男の方に歩いていく。アルバよりも問題はこの男だ。こいつには確実に見られていた。どう制裁を下してやろうかと思案しながら、エリカは声を発した。

 

「見・た?」

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