まさしく嵐のような、と形容するのが相応しい新入生勧誘期間も終わりを迎え、忙しく動き回っていた風紀委員の活動にも一区切りがついた。これからも風紀委員の通常業務として放課後の巡回はあるもののそれも毎日ではない。
毎日のように攻撃を受けながら、と言っても途中からは一切攻撃を当てられないままに全員が確保されるのでアルバを狙ってくる相手は減っていたのだが、それでも忙しく活動していたアルバもまた、束の間の休息を与えられていた。
「アルバ、今日も委員会?」
委員会がないので帰って起動式のコードでも書こうかと考えていたアルバは、そう声をかけられて荷物をまとめていた手をとめる。
「今日は仕事は無い」
「あ、じゃあ一緒に帰らない?」
必要最低限のアルバの返答に、もう慣れた2人は自分たちから話を切り出す。
「2人は部活は無いのか?」
「私達も今日は休み」
「そうか」
「一緒に帰らない? 深雪は生徒会だって言うし」
「そうだな。では、駅までは共に行こう」
雫とほのかは、早い段階でSSボード・バイアスロン部に入部する事を決めていた。出回っていた成績優秀者の名簿から自分たちがターゲットにされることを怖がっていたほのかと雫だが案の定目をつけられ、そこから助けてもらったついでに少々強引な勧誘を受けた結果入部を決めたのである。その際に彼女らを勧誘したOGが示した実力に雫が魅入られたというのも大きな理由だ。
「風紀委員の活動お疲れ様」
「逮捕の現場見たけど、凄かったね」
連れ立って校舎出口に向かいながら、雫とほのかは風紀委員としてのアルバの活動を労ってくれる。初日は友人たち皆で一緒に帰ることが出来たものの、それ以降はそれぞれに部活動に参加したり委員会の活動があったりと、時間のあったものだけが集まって帰る日が続いていた。その中でも、やはりA組、E組のメンバーはそれぞれ互いに声をかけやすいために集まりがちであった。逆に達也と深雪がいると、2人に合わせて自然とA組E組それぞれのメンバーが集まりやすくなる。
「大したことはしてないと思うぞ」
「……そんなことない。大活躍だった」
「凄い噂になってるよ! 1年生に凄いのがいるって! アルバと達也さんの2人とも」
アルバからしてみれば風紀委員の仕事を全うしただけなのであるが、それでも1年生が上級生に対してそれを出来るというのは凄まじいことである。更に途中までとはいえ、様々な魔法競技系の部活の選手らに攻撃の対象にされて、それをすべて捌いた上に1人も逃していないのだ。
「俺よりも達也の方が多く対処していただろう?」
逮捕記録を思い出しながら答えたアルバに、ほのかがわずかに顔をしかめ、雫も無表情ながら不機嫌な雰囲気を漂わせる。
「どうした?」
「……あのね、アルバにも聞いてほしいんだけど」
そう言ってほのかが話し始めたのは、新入生勧誘期間に達也へと向けられた敵意だ。
アルバと達也が、魔法の不適正使用をした剣術部の桐原と、その後2人に襲いかかってきた剣術部員らを圧倒したという噂はすぐに学校中を駆け巡った。2人の1年生風紀委員がそれを成し、そしてそのうち一方はなんと二科生だった、と。
それを聞いた上級生達、特に一科生の敵意は、最初は一科生と二科生を平等に扱おうとする生徒会に対する建前や二科生に対する恨みを表に出すのは誇りある一科生のすることではないと言ったくだらないプライドなどもあって、アルバと達也2人に向けられていたそうだ。揉め事に見せかけて攻撃を仕掛けている時点で生徒会に対する建前も一科生としてのプライドも何も無いのだが、往々にして理不尽な怒りを抱くものというのは論理的な思考ができなくなっているものだ。
そうしてアルバと達也に対して攻撃をしかけた結果、達也の方ではある程度撹乱が出来たものの、アルバの方では全員が逮捕されるという結果になった。これは達也が本気を出せない一方でアルバが魔法を制限せずに鎮圧に使ったためである。アルバが邪魔しようとする相手に対して魔法の不適正使用者を最優先で逮捕しようとしたために妨害が意味を為さなかったというのも大きいだろう。
つまり下級生の態度としては達也の方がまともであったのだ。達也が妨害を目論んでいる相手の話でも一応聞こうとするのに対して、アルバはそれらをひとまず無視して、時には身体を張ってアルバを止めようとした相手を轢き倒すような形になってでも魔法の不適正使用者を逮捕し、その後に妨害を目論んでいた相手の話を聞こうとしていた。上級生に対する態度としてどちらが正解であったかは言わずもがなである。
だが、風紀委員としての職務を全うしようとした相手に対して逆恨みをぶつけるような上級生が、そんな事を分析して考えられるわけもなく。
次第に、妨害が意味をなさない上に全員逮捕されるアルバを狙うのをやめて、ターゲットを達也1人へと絞っていった。もともと二科生の達也の方が理不尽な恨みの対象にされていたため、そちらにターゲットを集中するのは彼らの望むところだったわけである。そのためにアルバは新入生勧誘期間が後半になるほど逮捕件数が減り、逆に達也は忙しくなっていった。
「それが許せない、か」
「そう! 達也さんが二科生だからって攻撃するなんてひどいよ! 風紀委員の仕事をしてるだけなのに。生徒会にも写真撮って送ったのに―――」
「ほのか」
感情的になって自分たちのしたことを口走りそうになったほのかを雫がたしなめるが、すでに手遅れである。それを判断した雫は、感情を昂ぶらせるほのかの手を握りながらアルバへと話しかける。
「生徒会に何かしたのか?」
「アルバ、この後時間は?」
「空いているか、という意味であれば空いている」
「わかった。じゃあついてきて」
そう言って雫は、アルバを以前皆で行った喫茶店へと連れて行った。あまり一高生に聞かれたい話ではないのだ。
******
「それで、話とは?」
席につきそれぞれに飲み物を注文した後、アルバの方から話を切り出す。話をするためにここに連れてきた、というのは容易に予想が出来た。
尋ねかけるアルバに対して、雫が端末を操作して1枚の写真を表示する。
「良いの? 雫」
「……アルバには言っていいと思う。でも、他の人には、特に深雪と達也さんには言わないで欲しい」
「……わかった」
アルバが頷くのを確認して2人は、新入生勧誘期間に2人と、そしてその友人になったという明智英美、通称エイミィがしていたことについて説明してくれた。
アルバと達也が攻撃を受けているのに気づいた3人は、その犯人が『2人を最初から狙っていた』という証拠を掴むために、2人、特に途中からは達也の事を見張っていたそうだ。
魔法を使用した者の意図はどうでも良いアルバも、厄介なことになりたくない達也も、明らかに自分たちを狙って放たれた魔法に対して一度も被弾をしていないためにそれを“ただの”魔法の不適正使用として扱っていた。それを明らかにすることで、処罰を増やしたり、生徒会や風紀委員会から何らかの対応を引き出したい、というのが3人の思いだったらしい。達也やアルバがそれを望んでいるかは別として、正義感と、友人に対する思いやりが混じった結果の行動だろう。
だが。
「……なるほど。理解はした」
「うん」
「だが……もし次この男を見張るようなことがあるならば俺にも声をかけてくれ」
言いながらアルバは雫の端末に表示された男を指差す。そこに映っているのは体育用のジャージに身を包んだ男。雫とほのかによると、達也が他の不適正使用者を取り締まっているところに横合いから魔法で攻撃をしかけ、その後逃走したことで逮捕されなかった生徒らしい。その写真自体も、それだけを見ればただ走っているだけのものに過ぎず、特に魔法の不適正仕様の証拠となるものはない。
「アルバも手伝ってくれるの?」
「良いの?」
「良い、とは?」
「風紀委員として」
雫は、自分たちの活動が何の権限も無い中での勝手なものであるということには気づいている。その上で、風紀委員や生徒会が対応出来ていない事を自分たちがしようとしているのだが、そこに風紀委員であるアルバが混ざっても良いものなのか、ということだ。
だが。アルバにとっては、そのレベルの話ではない。昨晩八雲から聞いた話を考えてしまえば特に。
「俺がどうであろうと、2人はまだ何かをする可能性があるのだろう? ならば、そこに俺も呼んでくれれば良い」
八雲に口止めされているために、2人に事情を説明することは今はしない。だから自分が一緒にいて、危険を退ければ良いと考えたのだ。
そのアルバの口調に感じるところがあったのか、喉を鳴らしたほのかと相変わらず無表情な雫がそれぞれ頷く。
「わかった。アルバも誘う」
「ありがとう」
「でも、なんで? その、アルバそういうの気にしない、って言ってたよね?」
ほのかの問いかけに、アルバは一瞬考える。正直にその男子生徒の所属する団体について言うことは出来ない。そう考えた結果、アルバは曖昧な言葉を使うことにした。
「勘だ」
「勘? なんとなく、っていうこと?」
「そう思ってくれていい。必ず、呼んでくれ」
アルバのその答えに、腑に落ちない様子ながらも2人は申し出を了承してくれた。いずれタイミングが会えば、エイミィという新しい友人にも紹介してくれるそうだ。特段感じられない災いの気配に、大事にはならないだろうとアルバは楽観的な感想を抱いた。
******
アルバの昼食は、日によってその場所があちこちへと変わる。普段は雫とほのかと食堂で共に食事を取ることが多く、時にはエリカやレオ、美月が合流してくるときもある。一方で、深雪を通して達也に声をかけられたり何故か風紀委員長から誘われたりして生徒会室での食事会に参加することもある。実を言えば達也や摩利、真由美などからは毎日来たらどうかと言われているのだが、特に重要な用事があるわけでも、摩利に対して風紀委員として用事があるわけでもない日は、食堂と生徒会室で半々で食事を取るようにしている。
そして今日は、生徒会室で食事をする日だった。アルバの他に来ているメンバーは、主催者の真由美と摩利に、あずさ、深雪と達也である。いつの間にかここで行われている食事会では皆それぞれに弁当を持ってくるようになってきていたようだが、料理を知識としては知っていてもしたことのないアルバが弁当を持ってくるはずもなく、彼1人だけがダイニングサーバーを使う状況になっていたが、そこに遠慮や気まずさを感じるような可愛い性格はしていない。
「ところで達也くん」
多少の雑談を交わしつつ、深雪の隣に座ったアルバが主に聞きに徹していると、対角線の位置に座った摩利がそう話を切り出した。話が途切れたところでさり気なく切り出したつもりなのだろうが、口元から溢れる笑みを隠しきれていない。
「昨日2年の壬生をカフェで言葉責めにしていたそうだが、本当かい?」
摩利の言葉に、場に沈黙が降りる。
壬生、と聞いてアルバが思い出すのは、壬生紗耶香だ。新入生勧誘期間の初日に達也とアルバが対応した現場で、魔法の不適正使用をした桐原と何らかの試合を行っていた対戦相手。あの時何故剣道のルールで勝負がついていないのに勝負がついたかのような言い方をしていたのか取り押さえた桐原に尋ねてみたが、自嘲気味に笑われただけで答えは返ってこなかった。
それだけでなく彼女には少々気になる部分があったのでアルバの記憶にもよく残っている。と言ってもアルバはこれまで見てきた小さき者はすべて覚えているのだが。
「先輩も年頃の淑女なんですから『言葉責め』などというはしたない言葉は使わない方が良いと思いますが」
「ハハハ、ありがとう。私の事を淑女扱いしてくれるのは達也くんくらいだよ」
淑女、と。単語の意味を頭の中に思い浮かべたアルバは疑問の声をあげそうになるが、寸前で思いとどまる。女性のそういう話に何か口を出すと、大抵の場合は深雪に怒られるような結果に陥るのだ。達也がいるここで本気で怒られる様なことは無いだろうが、それでも何らかの注意を受けるとわかっていて口を出すのはやめておく。
「そうなんですか? 自分の恋人をレディとして扱わないとは、先輩の彼氏はあまり紳士的な方ではないようですね」
「そんなことは無い! シュウは――」
しまった、という顔で摩利が口を塞ぐが、もう途中まで言葉は放たれてしまっている。
「シュウ、とは?」
思わずそう口にしてしまったアルバは悪くないだろう。もともと、疑問に思ったことに対しての口はかなり緩い。知らない用語が出てきたときに反応してしまうのは仕方の無いことだ。斜め前に座る生徒会長の笑いを堪えるような表情や、隣からの責めるような視線はこの際無視をすることにする。
だが、尋ねられた本人である摩利は頬を微妙に赤に染めつつも、答えようとしない。代わりに答えてくれたのは、笑いを堪えていた真由美だった。
「彼氏さんよ。摩利の。とっても仲が良いのよ。ね? 摩利」
助け舟を出しているように見えて、その表情はにやにやとしたものである。アルバは何故そんな笑っているのか、あるいは楽しそうなのかと疑問に感じたが、真由美はこの機会に久しぶりに摩利をからかってやろうと考えていた。
「そ、それはどうでも良いだろう!?」
「言い出したのは摩利じゃない」
攻めの手を緩めない真由美に、摩利は表情を赤らめながらタジタジになっている。そこから復帰するまでに数分かかった。真由美はホクホクしているが、いじられていた摩利は疲れた様子をわずかに見せる。
「……それで、剣道部の壬生を言葉責めにしたというのは本当かい?」
再度仕切り直す、というよりはそれまでの話をなかったことにしたかったであろう摩利の発言は、最初の質問と同じ形を取る。それに対して達也は、これ以上話が長引いてはかなわないと正直に答えることにする。
「そんな事実はありませんよ」
「おや、そうなのかい? 壬生が顔を真赤にしているのを目撃したものがいるんだが」
摩利の言葉の直後、アルバの隣に座る深雪から、強力な干渉力とそれによって冷気が放たれるのを感じる。そして咄嗟に、それに上書きする形で自分も干渉力を広げ、冷気に包まれそうになっていた空気をわずかに空気の流れが発生する状態へと変えた。
「お兄様……? 一体何を……!?」
達也に対して詰め寄ろうとしていた深雪だが、自分の干渉力が上書きされたのを感じ取り、信じられないという視線をアルバへと向ける。一方のアルバは、いつもの癖で周囲の環境変化を抑制する形で、人に出来る限度を考慮したとはいえ力を行使してしまったことを反省していた。エリアの寒冷化や乾燥、温暖化など洒落にならないレベルで干渉をする奴らに対するのと同じノリで力を使ってしまったのだ。
「すまん。余計なことをした」
「い、いえ……大丈夫、です」
「ま、魔法……?」
余計な事をした、と謝罪したアルバは宣言通りに干渉力を引っ込め、深雪も抑え込まれた驚きから周囲を冷凍庫以上に冷やしつつあった干渉力は弱まり、せいぜいが心地良い涼風程度になっている。
だが、魔法に対して鋭敏な感覚を持つ者達にとっては、結果発生した事象が小さなことでもそこに起きた事を読み取ることは容易いことだった。
「凄い事象干渉力ね……」
「落ち着け、深雪。説明をするから」
現代魔法において起動式などを使用せずかつ無意識に魔法を使用してしまうということは基本的にありえることではない。無意識領域で魔法式が構築、あるいは処理されるとはいえ、それは『無意識領域で処理しよう』と考えてのことであって、本当の意味で無意識で、一切の意図無く魔法が発動されることはないのだ。CADなしでも魔法を使えるとはいえ、そのための魔法式の構築は欠かせないことなのである。
その上で、今の深雪、そしてアルバがしたことは、いわば超能力の名残のようなものであった。現代魔法師は、体系化された多数の魔法を使用するためにより特化している可能性のあった超能力を捨てている。多数の魔法式を操るということは、それだけその使い方、あるいは体系化された現代魔法に精神を適応させているということを示しており、必然、現代魔法師は超能力に対する適正を失っているといえる。1つに特化した能力である超能力に対して、複数を操るための技術である現代魔法が、無意識で放出されたところで超能力のように特定の意味ある形を取りづらい、というのもその要因の1つだ。
そんな中での、深雪とアルバの攻防。攻防というほどでもない瞬間的なものであったとはいえ、干渉力が相当以上に強くなければ事象干渉力が魔法使用の意図無く外に漏れ出すということはなく、当然ながらそれ以上出なければそれを上書き出来るはずもない。
少し場が騒然とするもののすぐに落ち着き、代わりに達也が紗耶香との間で行われた会話を再現してみせる。彼によれば、風紀委員会の活動は何らかの『点数稼ぎ』として反感の対象となっているらしい。検挙者を好き勝手にかさ増しすることで、それを犠牲に評価を獲得している、というのが紗耶香の言い分だった。
しかし、今説明をした達也と深雪が言うようにそんな事実は存在しない。むしろあれだけの混乱にあって風紀委員の活動は優しいとすら言えるのだ。
「それは壬生の勘違いだ。そう思い込んでいるのかもしれないがな。風紀委員会は全くの名誉職でメリットはほとんどないぞ。生徒会役員ならそういうこともあるかも知れないが……」
「けど高い権力を持っているのは確かなのよね。そのせいで、現体制に不満を持っている生徒からしたら権力を笠に着た走狗に見られてるみたいなの。まあ体制側の秩序維持のための機関なんてそんなものなのかも知れないけど、うちに関しては、印象操作してる人がいるのよね」
第二次大戦後の日本における政治活動などでも言われた話だ。警察は権力の走狗である、と。体制を嫌う者達にとって、体制に従い体制のために働く者は皆等しく敵と見なされるのである。
そしてそれが、この第一高校でも起きている。それはつまり、この第一高校において体制と反対派の中に明確な壁がある事を意味していた。
「正体はわかっているんですか?」
「え? ううん、噂の出どころなんてそう簡単に特定できるものじゃないから……」
「張本人を突き止めれば、やめさせることも出来るんだがな」
達也の質問は、真由美と摩利にとっては思いがけない質問だった。その前の、印象操作をしている人、という部分も、口を滑らせてしまった部分であり、そこを三巨頭から外に出すつもりは無かったのであるが。
真由美が達也の少し真剣になった視線から顔をそらしていると、それまで黙っていたアルバが口を開いた。
「ブランシュ、という組織に心当たりは? あるいはエガリテ。反魔法国際政治団体、だったか? それらが第一高校に関与している、という話を聞いたのですが」
反魔法国際政治団体『ブランシュ』。魔法師が政治的に優遇されている現代の行政システムに対して、魔法能力による社会差別を根絶する事を目的に活動する、というのが目的の団体だ。
だがそもそも、アルバが調べる限りでは魔法能力による政治的な優遇等存在していない。高ランクの魔法師の収入が多いなどの事実は存在するが、それは優遇などではなく正当な評価だ。むしろそうした魔法師の収入が民間人以下であるとすれば、それは明確な冷遇であると言える。
ブランシュとは、そうやって『虚構の差別』をうたい、体制を崩壊させようと試みる組織である。
そしてエガリテはその下部組織であり、政治的な色を嫌う若年層を聞こえの良い言葉で取り込むための受け皿のようなものだ。
それがアルバが八雲から聞いた話である。自分で調べる伝手はもたないが、アルバを怖れる八雲が真実だと言っている以上アルバはそれを信じるのが正解だろう。
「なんでその名前を……」
アルバの質問に、硬直する摩利と真由美。それは報道規制が敷かれている情報であり、一般人が知っていることではない。
だが少なくとも、この場にいる1年生は皆ただの一般人ではなかった。
「俺も同様の事をお聞きしたいです。最も、アルバとは違ってお二人がご存知であることは確信していますが」
疑問の形を取っていたアルバとは違い、断定する口調で問いかける達也。彼もまた、このブランシュという組織が第一高校に関与してきている事を懸念していた。
達也のその問いかけに、真由美達は情報の隠蔽を諦めて、自分たちがそれについて知っていることを認めたところで、昼休みの終わりがやってきた。
生徒会室から退出した1年生3人は、連れ立って教室へと向かう
「アルバは、どこでブランシュについて聞いたんだ?」
なんでも無いように探りを入れる達也に、アルバは特に気にせずに答えを返す。
「知人から警告を受けた」
「警告?」
「その2つがこの高校に何か仕掛けてくる可能性があるそうだ」
「その知人というのは?」
「……知人、としか言えないな」
「そうか」
一応とは言え、報道規制がされた情報であり、知っているということは何らかの機関、あるいは魔法の名家に関係がある者だと考えられる。それを容易く明かすことはないだろう。そう考えた達也は素直に引き下がる。
そんな2人を、深雪が心配そうに見つめていた。