魔法科高校の煌黒龍   作:アママサ二次創作

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第6話 入学式・3

 講堂まで並んで移動した達也とアルバは、講堂である光景を目撃する。それは新入生が座るエリアにおいて、前半分が一科生、後ろ半分が二科生と綺麗に別れた新入生の群れだった。

 

 この第一高校において、一科生と二科生の間には厳然たる差が存在する。それは、高校側、ひいては国からかけられている期待度だ。第一高校は高校という教育機関でありながら、『優秀な魔法師を魔法科大学、その他魔法に関する上位教育機関へと排出する』という具体的な目的を持って設立されている。

 

 そのため成績上位者である一科生にはさらなる成長を望み。

 

 成績下位者である二科生には、運良く大きく成長することと、一科生が何らかの原因で潰えた場合には、その代わりとして優秀な魔法師になることを望む。

 

 つまりは、二科生の扱いは究極的に言ってしまえばスペアの確保に過ぎないわけだ。実際二科生のまま卒業に至ったとしても魔法科高校の卒業資格ではなく普通科の卒業資格しか得られず、それを覆すためには何らかの成果を、少なくとも一科生に勝ると示すだけの成果を示さなければならない。

 

 そしてそれは制度の面でも多少現れている。例えば、一科生が魔法実技に関して教師の個別指導を受けられるのに対して、二科生にはその権利が与えられないこと等があげられる。

 

 

 そうした差を、“互いに”意識した結果が、この綺麗に分かたれた席であった。

 

 それを見た達也が内心苦笑しながら席につこうとすると、その隣にアルバも入り込もうとする。

 

「前に行かないのか?」

「目は良いほうだ。それにあまりこういう行事への、なんというんだ……そう、思い入れが無い。だから真面目に聞きたい、見たいと思っている者が前に行くべきだろう」

「いや、そういう問題じゃないんだが……」

 

 既に他の二科生や一科生が席についている手前大きな声をだしてはっきりと言えないのだが、とはいえ目立ちたくない達也は口ごもる。

 

「どうした?」

 

 そう首をかしげるアルバを端の方へと引っ張っていって、座る場所が分かれているということをそれとなく説明する。

 

「なるほど。つまり俺は前に座れ、と。わかった。迷惑をかけてすまない」

「いや……。アルバと話しているといろんなことが馬鹿らしく思えてきた。こちらこそありがとう」

 

 人の悩みとはときに、知っているが故に生じるものである。知っているが故にそれについて考え、いろいろな選択肢を作り。それについてまた可否を問い一喜一憂し。

 

 だからこそそうしたゴタゴタをシンプルに知らないだけのアルバの話というのはどこか爽快で、スカッとしているように思えた。

 

 差別、とはっきりと言ってしまえば、差別を好む者に対して最も効果的なのは『差別は悪である』と訴えることではなく、『くだらない』と無視することなのだ。アルバの行動は、達也の胸のうちにそんな感覚をもたらしていた。

 

「では、さらばだ達也」

「ああ。また運が良ければ」

 

 アルバが本気で探そうと思えば一瞬でどこにいるかわかるし、更に来ることも出来てしまうのだが、それを知らない達也は一科生の彼と二科生の自分が会うことはもう無いだろうとアルバを送り出した。

 

 そして仲良さそうに話している4人組の隣、端に一席だけ空いている場所へと腰を落ち着けた。

 

 

 

******

 

 

 

 一方達也の言った通り半分より前の方へと来たアルバは、既にほとんど埋まりつつある席の中で端の一席に腰を下ろす。真ん中の方で空いている席まで入るのも面倒だ。

 

 そして、先程達也が言ったばかりの話について考えていた。

 

(小さき者達というのはいつも、階級や階層、差を設けるのが好きだな。最も、だからこそこれほどまでに弱い者が無数に集まって大きな力となっているのだろう。これほど大きな文明になるならばある程度は仕方のないものなのだろうな)

 

 階級、あるいは差というのは、人類が発展の過程で獲得してきたものである。そう、自然発生したのではなく、“獲得”してきたものなのだ。それによって社会は柔軟性とともに意思の統一を見、より強大でより豊かな組織が形成されてきた。現代社会は、巨大な国家を維持しなければ文明を存続させるのが困難なところまで来てしまっている。

 

 だからこそ、そこに当然の如く存在する差、というものには、アルバも理解を示した。

 

 だが一方で。

 

(しかし、座る場所で差を作る意図はなんなのだ? 元から決まっていたとは思えないが……自ら差を作る……優越感の充足のため、か? 面白いな)

 

 思考を巡らせたアルバは、この座り方の問題に関して1つの結論に至る。それは、これが社会システムとしての合理的なものではなく、小さき者達特有の“感情”というものによって生み出されたものだということだ。それは、知性を持ち感情もある程度持つとはいえ、龍には理解できぬたぐいの考え方だった。

 

 少なくとも強さを争いあったような時代では、ただ純粋に強いという事実と弱いという事実があるのみで、そこに感情の介在する余地は無かったのである。

 

 だが、そんな感情というものを、アルバはかつての小さき者達との交流の中で幾度となく見てきた。だからこそ、今回も興味深いと思ってみているのである。

 

 と。

 

「あ、あのー」

 

 思考にふけるアルバに、横から声がかけられる。そちらに視線を向けると、すぐ隣の茶色の髪の女子生徒と、その奥の黒髪の女子生徒がアルバの方に視線を向けていた。

 

「どうした?」

「あの、えと、私光井ほのかと言います」

「北山雫。よろしく」

 

 名前を名乗られている時点でアルバは、これが知り合いになろうという会話なのだと気づく。先程の達也とは流れで名を名乗りあったが、普通初対面の相手同士が知り合いになるにはこういう過程を経るのだと。

 

「俺はトリオン・アルバだ。よろしく」

「よ、よろしくお願いします!」

「ほのか声が大きい。それより、外国人?」

「いや……」

 

 雫と名乗った少女に尋ねられて、アルバは一瞬言葉につまり、すぐに八雲の考えてくれた設定を思い出す。

 

「元、というべきかな。今はもう日本人だ」

「あ、そうなんですね」

 

 初対面の相手に対して会話が続くはずもなく、そこで会話が途切れてしまう。何か話さなければと光井が焦っていたがちょうどよく式典が始まったことでそれぞれが口をつぐみ、意識を正面へと向けた。

 

 

******

 

 

 式典ではやはりと言うべきか、現行生徒会長や、新入生総代だとかいう生徒の長い話があったが、それらもアルバにとっては特に退屈なものではなく、聞いていて楽しいものだった。これまで人の社会で育っていないからこそ新鮮だった、というのもあるだろう。

 

 生徒会長の可愛らしい見た目や、新入生総代の美しさに会場がのまれる場面もあったが、少なくとも人間基準の美醜を感覚的には理解できていないアルバにとっては、『おそらく人気が出るのだろうな』ということぐらいしか認識できなかった。風景に対する美しいという感情はあるので、おそらくはある程度人間に触れて女性に対する感情を育まなければならないのだろう。

 

 その後、新入生は複数の窓口を利用してそれぞれのIDカードを交付される。これが配られることでようやく第一高校の生徒として認められ、施設の利用が可能になるのだ。

 

「トリオン、さん何組でした?」

「俺は……A組だな。それと俺の名前はアルバの方で呼んでくれるとありがたい。敬語もいらない」

「あ、はい。じゃあおんなじですね!」

「私も、A組」

 

 特段言葉を交わしたというわけでもないが、入学式の挨拶からそのままにアルバはほのかと雫の2人と共に行動をしていた。

 

「それにしても、総代の人凄かったね」

「ん、綺麗だった」

 

 IDカードの交付が終わったところで、3人は式典の感想について話しながらその場を離れてあるき始めた。特別どこかを目指しているというわけではないが、IDカードの交付に人が集まっているその場にそれ以上とどまるのは得策ではないと考えたのだ。

 

「アルバはどうだった?」

「あれが美しいというものなのか、と思った」

「何か不思議な感想ですね」

「あまり女性の美醜に関する感覚がわからないんだ。おそらく美しいと評されるだろうことはわかるんだが……」

 

 真剣な表情でそんなことをのたまうアルバに、ほのかは笑い、無表情な雫もわずかに口元を緩ませる。2人にはその様子が、新入生総代の美しさをむしろ高く認めているように見えていた。もっとも本当にアルバは美醜を感覚的につかめていないので、『客観的に見て』美しい、としか言えないのだが。

 

「この後どう、します?」

「ホームルームに行く?」

 

 友人である雫とまだ知り合って間もない、それも男性であるアルバがいるため、ほのかの問いかけは敬語にすべきかどうか悩んだ間を持ったものとなった。先程アルバが述べた『敬語はいらない』という発言はほのかには受け入れがたいものだった。

 

 ホームルームに行く、即ちこれからのクラスメイトと顔を合わせ、交流を深めるか。そう尋ねる雫に対してアルバは首を横に振る。

 

「これから人に会う約束があるから俺は帰る」

「あ、そうなんですか?」

「残念」

 

 新しいクラスメイトもそうだが、アルバのことももう少し知ることができればと考えていた2人は残念そうにするが、生憎と今日は久しぶりに八雲の寺を訪れることになっている。いつもなら八雲の方から勝手にやってくるのだが、高校に合格できたのは戸籍や義務教育修了資格等八雲が用意してくれたものが多いため、それに対する感謝を示そうと考えているのだ。

 

「すまない。また明日からよろしく頼む」

「うん」

「はい! よろしくお願いします!」

 

 その後、2人は取り敢えずホームルームに向かうということになり、アルバとはそこで別れた。

 

 

******

 

 

 

 2人と別れたアルバが外への廊下を歩いていると、何やら人だかりが出来ているのに行き当たる。それ自体は別に良いのだが、あいにくとそれなりの人数が集まって道を塞いでおり、有り体に言ってしまえば邪魔だ。

 

 とはいえ迂回をするというのも面倒なので、アルバは人の群れを突っ切ることを選択する。

 

「すまない、通してくれ」

 

 そう声を掛けながら人の群れを割っていくアルバに群れを作っていた生徒達は迷惑そうな表情をするが、アルバからすればそもそも通るしか無い通路で邪魔になるような群れを作るなという話である。

 

 と。

 

 群れを中程まど突っ切ったところで、人が集まっている原因である一団を見つける。そこにいたのは先程知り合ったばかりの司波達也と、新入生総代である司波深雪という生徒、それに生徒会長の七草真由美らであった。達也とこうしてすぐに再会出来たのは何かの縁と言えるのだろう。とはいえ、人が話している場所に割り込むほどアルバは無粋ではない。

 

 そうして話している3人から少し離れた場所を通り過ぎようとしたアルバだが、何故か当の生徒会長の方からアルバへと声をかけてきた。

 

「あ! トリオン・アルバ君! ちょっとあなたもこっちに来て!」

 

 




シンプルに魔法科高校の劣等生久しぶりに読むと面白くてですね。結果として書くのもどんどんはかどっているわけです。


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