◆ ◆ ◆
デモニカ。
ガイア連合製霊装の代表格ともいえる装備だが、その本質は鎧の形をしたシキガミとでもいうべき代物であり、着装時の戦闘力は基本的にデモニカ側のレベルに依存する。
このため主な使い道は、レベル上限のある現地民などに使わせる強化装備として用いるのが一般的だが、純魔法特化型異能者の近接対応装備として扱われる魚沼の田舎ニキが使うグリスブリザードなどの例もある。
それ以外にもある種のコレクターズアイテムとして各種デモニカを揃えている幼女ネキのような例もあるが、その辺は例外の類だろうな。
では僕がデモニカを使うとしたら、その理由は何になるか。
グリスブリザードを一つの例として挙げるなら、物理・魔法とどちらもそれなりに使える僕にとって、物理戦闘力を補うという意味でデモニカを使うメリットはあまりない。
にもかかわらずデモニカに手を出してみるのは、使い道を思いついたからだ。
極限状態、たとえば重傷を負ったり何らかの状態異常を受けたりで身体が動かない状況でも、デモニカを装着していればそちらを利用して身体を動かし、行動する事ができる生存用の活動デバイス。
そのために求められる性能は、僕が極限状態に追い込まれた状況でも活動できるだけの性能だけでなく、その状態でもコントロールを維持する事ができる生命維持機能と保護機能だ。
「つまり、死人みたいな状態で動き回り戦えるようなデモニカが必要、と…………悪くないね」
死人、死人ねえ……。
モチーフとして、死人が変身するヒーロー……といったらまず思いつくのは仮面ライダーアマゾンズ、アマゾンシグマだが、これは却下。
佐渡のパピヨンニキがもう作ってる、という以前に、アマゾンズというモチーフがちょっと怖い。
ファイズギアとかそっち系のライダーもあったかな、その辺の原作である仮面ライダー555に登場するライダーシステムは元々、死人っぽい存在であるオルフェノクが変身するための強化装備だ。でもあれはG3系の次に量産されてるモチーフだからな……。
なおデモニカでも、血の繋がっている方の母が送ってきたリビドークロスに関しては、基本使わない……というかスタイルが合わないので。
まあ一部、装備として隠し持つのはアリだ。でも真価を引き出すのは難しいだろう。
そんな事をつらつらと考えながらガイア連合のカタログを開いていた僕は、ページを捲る手を直感で止める。そのページに描かれているのは、それぞれ色合いの違うUSBメモリ型のデバイス────概念霊基情報格納チップ『ガイアメモリ』。
霊装『シュラウドマグナム』や量産型シキガミ『てらほ君』、オラシオニキが使う専用デモニカ『仮面ライダースカル』なんかのシステムに対応するものだ。
「生物系メモリは、結構種類が豊富なんだな……まあてらほ君の強化変身アイテムだから、ある意味当然か。でも、それ以外のラインナップって思ったより少ないんだな」
ぶっちゃけ、使用者があまりいない。
同じ仮面ライダー・怪人変身用のアイテムでもプログライズキーやアストロスイッチなんかは無惨ニキを中心に結構開発が進められていて、数も割とあるのだが……ガイアメモリ自体は、実はそこまで種類がない。
ピーコックメモリみたいに原作にない種類のガイアメモリがちょこちょこ作られていたりもするが、それもあまり大々的に行われている訳ではない。
ライダー系デモニカを作っている人達が、あまり開発を進めていない、というのが実情だ。
「オラシオニキの仮面ライダースカルは、原作でもスカルメモリ一本しか使ってないし。それなりにフォームチェンジをして使用ガイアメモリの本数が多いWは二人で一人の仮面ライダーだから、一人で使うのが基本のデモニカのモチーフにするにはちょっと扱いづらい、と。ガイアメモリ対応型の霊装にはシュラウドマグナムとかあるんだけどな」
そのシュラウドマグナムも、実は案外使用者がいない。この手のガジェットの中では一番か二番くらいに携帯性に優れたガイアメモリを換装する事で、多様な戦況に対応し様々な弾種を使い分けられる……というのがシュラウドマグナム第一の売りだが、これは言い換えるとシュラウドマグナムを使うためにはガイアメモリを複数本所持するのが前提になってるような面もあるから、扱いが結構面倒臭いという一面もある。
経済力に限界がある現地民異能者からすれば、大量のガイアメモリを購入するための金がいくらあっても足りなくなる、という頭が痛い一面もあるかもしれない。
初期に開発された術式内蔵型のガイアメモリなら、それなりに安いんだけどな。
そしてもう一つ。
これまで開発された生物系以外のメモリは、風を操る『サイクロン』とかの属性系なんかはまだいいんだが、そうじゃない場合はベースにする霊基情報を余程苦心して厳選しない限り原作再現が難しい。
例えば山梨の技術部でロード・ドーパントを再現しようとしてロードメモリを試作しようとした際、道を司る神性として聖獣ビャッコの霊基を使用して作った試作型ロードメモリをシュラウドマグナムに装填して撃ってみたら、白いトラの頭を象ったエネルギー弾が出てコレジャナイ案件になり、開発中断となってしまったらしい。
その試作型ロードメモリは関西版スペシャルエディションとして限定販売されたようだが、通常型のロードメモリは未だに流通していない。
そんなこんなで使い手が少なく、需要が減り、作り手がおらず、だから余計に種類が減って使い手が減る、という悪循環、なのだが。
「案外、僕とは相性がいいかもしれない」
そんな風に思いつつ、以前魔導具『閻水』を購入する時に使った宮城支部の霊装カタログを開き、購入するのはシュラウドマグナム、てらほ君1体、そして何よりブランクのガイアメモリ100本。注文してマッカとガイアポイントで代金の振り込みを済ませると、どうやら在庫が余っていたらしく密輸課の手によって3時間ほどで手元に届けられた。
カタログに載ってなかったロストドライバーは、オラシオニキに直接発注して、こちらは部品が余っていたのか他より一足早く、1時間程度で手元に到着した。
どれも黒札仕様の高級品なので霊的素材も相当に良いものを使っているようで、何の霊基や権能も封入されていないブランクのメモリであっても、その半透明の外装にはわずかな霊気を漂わせていた。
「うん、悪くないね。……じゃあまずは試作品から始めようか」
ペルソナ『魔術師 ブリジット』のオーバーソウル【アズュール】が金色の腕環となって手首に装着される。
その力で鍛冶と細工の権能を補強しながら、ブランクのガイアメモリを一本、手元のアトリエ式錬金釜へと落とす。未だ霊気も権能も宿さない無垢のガイアメモリは、溶媒となっている霊水の中へと沈んでいった。
曲がりなりにも電子機器用のUSB端末としての側面を持つガイアメモリを水中に投げ込むとか割と言語道断な気もするが、とりあえず加工に必要な手間なので仕方なし。
同時に僕の背後に浮かんだペルソナ『塔 シュブ=ニグラス』が、そのイソギンチャクかオニヒトデのようなペルソナ体の中心部に位置する口腔から一冊の本────魔晶【黒の書】を吐き出した。僕の掌の上で浮遊する【黒の書】はひとりでにその表紙を開き、頁が高速で捲られていく。
「……ここか」
ページを押さえた抑えた指の先にあるのは────『JOKER』の一単語。
「対になる赤の書が鮮烈な映像的イメージの奔流であるのに対し、【黒の書】は言語によって記述される智慧の濁流────だからこそ、一つの単語にまつわるイメージを力にするガイアメモリとは相性がいい」
余程の例外じゃない限り、単語の一つ程度であれば、“黒の書”の全力を解放せずとも引き出せる。【黒の書】のページから無数の文字が複雑に組み替わっては切れ切れの単語や文章を無数に生み出しながら、竜巻のように踊り狂う。溢れ出す暴力的な情報の渦を、黒札内における認知に加え、手元にある『風都探偵』の漫画本のイメージと合わせて形を整えていく。
作成するのは“切り札の記憶”を宿すジョーカーメモリ。
暴力的に渦巻く情報の乱流がブランクのガイアメモリへと吸い込まれていくにつれ、メモリは落ち着いた色合いの黒紫色に染まり、その表面には道化師の靴にも似て鋭利な『J』の一文字が刻印されている。
「見た目は及第点、だけど……機能の方はどうかな?」
完成した試作ジョーカーメモリをシュラウドマグナムに装填し、中折れ式の銃身を伸ばしてマキシマムモードに変形、その砲口を標的へと向ける。試験用の標的は円形の中心にターゲットマーカーを描いたシンプルな形状だが、これでもアダマス製の頑丈な代物だ。
《JOKER────MAXIMUM DRIVE!!》
シュラウドマグナムの銃身から溢れた黒紫色の閃光は、トランプのそれに似たカードの形状を取って回転しながらアダマスの的の中心に直撃する。標的にはわずかな傷がついているが、その程度……まあ試作品ならそんなものだろう。
とはいえ、これだけだとジョーカーメモリの機能がどれだけ発揮されているかは少し分からないな。“黒の書”を通しての【アナライズ】だと特に問題はなさそうなんだが、実際に機能するか確かめてみない事にはどうしようもない。
今回想定されているジョーカーメモリの能力は大きく二つ『使用者の身体能力・潜在能力を極限まで引き出す』『使用者の感情をマグネタイト変換し出力を限界突破させる』……つまりほぼ原作再現だ。それがどこまで実際にどこまで再現されているものか。
前者は少し分からないが、後者はこのシュラウドマグナムで検証可能なはずだ。
今度は僕の実母であるミナミィネキの顔を脳裏に思い浮かべながら、再び的に銃口を向ける。
母。
色々と複雑な感情を抱いている相手だ。
諸事情あって産まれた時に引き離されたとはいえそれなりにちょくちょく顔を合わせてはいる。
異能者としては尊敬できる先達では、ある。
素行に多大な問題はあるが、しかし色々と振り切ったタイプの問題児の多いスケベ部を束ねている辺り、カリスマ性や管理能力も高いのは間違いなく、そういう部分にも敬意を払うべきだろう。
間違いない。
うん。
ただ、客観的かつ常識的に考えて、どこに出しても恥ずかしいだけだ。
《JOKER────MAXIMUM DRIVE!!》
果たして、シュラウドマグナムの銃口から射出されたカード型のエネルギー弾は、高速回転しながらアダマス製の的を真っ二つに斬り裂いて、その背後で想定以上に大きな爆炎を発生させた。
「少なくとも、感情のマグネタイト変換によるブーストに関しては間違いなく機能しているみたい。潜在能力の解放に関しては……まあ、変身してみるしかないかな」
腰に押し当てたロストドライバーからベルトが伸びて、ベルトバックルが腰に固定される。後はガイアメモリを起動し、ドライバーのスロットに装填するだけだ。
《JOKER!!》
渦を巻くように展開した装甲護符が全身に装着され、黒紫色の細身の体躯を構築する。
普段よりも視点が高いのは、装甲護符で肢体を構築し、体格を補っているため。デモニカをある種のキグルミのように着込んでいるものの、手足の末端には届いておらず、その辺は空っぽだ。
どう考えても足りない体格をある程度補えるのは、展開型デモニカの利点だろうか。
「うーん……まあ、それなり。まだまだメモリの精製が甘いというか、製作技術が微妙に足りてないみたいだ。でも身体能力の増幅……潜在能力を引き出す力に関しては機能してるし、何なら単純な運動能力だけじゃなく、霊才全般を、とりあえずレベルの限界までは引き出せるみたいだ」
性質的には探求ネキの【魂魄精錬法】なんかに近いのか。
ともあれ能力の性質上、このガイアメモリは誰がどんな風に使ってもそれなりのシナジーを発揮する。逆にいえば、捻った感じには使いづらいのだが。
後は……変身機能か。
試験用に購入したてらほ君にジョーカーメモリを突っ込んでみたところ……見事『風都探偵』のジョーカー・ドーパントに変身してくれた。
まあ本来の生物系と違って規格が合わないからか変身を維持できるのはせいぜい数分間、ついでにそもそも新造されたシキガミはショタオジ製の専用シキガミや量産型の簡易シキガミといった種別を問わず大体感情が薄いため、ジョーカーメモリの真価を引き出せず出力も低いままだったのだが。
「でもまあ、これだけ再現できれば十分だろ。とりあえず完成って感じで」
◆ ◆ ◆
ともあれジョーカーメモリの製作に一通りの成功を収めたので、さらに『ロード』のメモリを製作してみて、普通に原作再現ができている事も確認したので、色々とガイアメモリの製作を試していく。
狙いどころは、原作でも登場していた便利そうな能力を持っているものの、それはそれとしてこれまでの技術では今一つ再現が微妙……といった感じのガイアメモリだ。
『アームズ』。
『バイオレンス』。
『マグマ』。
『マネー』。
『スイーツ』。
『ライアー』。
『ナイトメア』。
『ジーン』。
『ジュエル』。
『コマンダー』。
『ズー』。
『パズル』。
『スクリーム』。
『クエスト』。
『シティ』。
『ユニオン』。
他にも色々。
まあアームズとかマグマとかその辺に関しては、今まで似合った技術でも再現するのは難しくなかったろうけれど……シンプルで使い易そうなので、今ここで作っておく。
「でも特にジーンメモリを再現できたのはアタリかな。生体操作に関しては最良のツールだし」
何なら、設定だけあって一度も使われた事のないメモリも作ってみた。
『アップル』。
『ブレッド』。
『ブロードキャスト』。
『コンピューター』。
『ゲイシャ』。
『ハイウェイ』。
『インジャリー』。
『ジャズ』。
『ライトニング』
『ヌードル』。
『ポリューション』。
『レールウェイ』。
『スパイス』。
『ストレス』。
他にも、こちらもまあ色々。
ドーパント変身の実験台にしたてらほ君も、見た事ないけど何かドーパントっぽい外見になってくれた。まあ概念系メモリとの適合性はそのままのてらほ君なので、性能もそんなじゃないし、変身時間は短いままだったが。
調子に乗って、生物系メモリもいくつか作ってみた。
多分これまで存在していなかったはずのカテゴリ……そう、古生物系のガイアメモリだ。
原作で古代生物型に相当するメモリには『メガネウラメモリ』なんかがあって、これは宮城製ガイアメモリのラインナップの中に既に入っているのだが……このガイア連合製メガネウラメモリに組み込まれてるゲノムデータは古代に繁栄していた本物メガネウラじゃなくて“オニヤンマ”なんだよな。だからこれをてらほ君に挿しても、変身するのは普通にオニヤンマ型テラフォーマーだ。
まあ手に入りづらいメガネウラの化石を使うより、現物が生きているオニヤンマを使う方が難易度が低いし、そもそもそれ以前にトンボとしては原始的な身体構造のメガネウラよりも、より進化して飛翔生物として洗練されているオニヤンマを使った方が強くなる、というのも事実……悲しいけどね。
そして何より、てらほ君を素体に再現する以上、原作再現的に考えてもやはりメガネウラ型じゃなくてオニヤンマ型になるのは自然の流れだ。
ともあれ古生物系メモリの製作を開始。
そのためにはまずゲノムデータ……というよりもゲノムを絞る元になる古代生物の遺骸……最低でも化石が必要なのだが。
「……実は化石、あるんだよね」
ティラノサウルスの化石の現物……頭蓋骨丸々一個。
複製なんかではない、ばっちり本物である。
割と何人もいる血の繋がった父親の一人────愛知支部のバッハニキに少し前に提供した【光の処刑】のデータをベースに作った術式が思いの外役に立った、という話で、その対価の一つ……というかついでのお土産として、彼が以前海外で隕石を掘るついでに入手した化石を貰ったのだ。
どうやら、メシア教との抗争で廃墟になっていたどこかの博物館から回収してきたらしい。
その化石に宿っていた残滓から治癒魔法の応用でゲノムを霊基として復元、さらにそれを芯にして“黒の書”から情報を復元しーの、『仮面ライダーW』のDVDと黒札の認知から抽出したイメージも加えて、と。後はアトリエ式錬金釜に沈めた無垢のガイアメモリに、ゲノムデータを封入していく。
よーし、できたぞ『T-REX』メモリ。
ふむ。
古代生物とはいえ生物系メモリの一種であるからして、てらほ君には普通に適合した。巨大なティラノサウルスの頭に、妙に小さな手足を生やしたT-REXドーパントに変身し、さらに周囲の瓦礫……はクラウドセルにはほとんどないが、代わりに近くの“大地の概念を帯びた雲”を吸収して巨大な“ビッグT-REX”に変身もした。
シュラウドマグナムに装填してのマキシマムドライブも、巨大なティラノサウルスの頭を模したエネルギー弾が発射するが、これは爪牙を使った戦技系物理攻撃という扱いになる、が、やはり威力がデカい。
まあティラノサウルスが弱い訳ないので当然といえば当然か。
ティラノサウルス以外にも色々化石があるので、この古代生物系シリーズで作成を試してみる。
『トライセラトップス』。
『ブラキオサウルス』。
『ケツァルコアトルス』。
『アノマロカリス』。
『スミロドン』。
『マンモス』。
『トライセラトップス』。
『トリロバイト』。
……そういえば生物系でも『ホーネット』とかオリジナルのガイアメモリも作られてるんだよな。それに化石の在庫もそれなりに……って事で作成したのがこちら。
『スピノサウルス』。
『ティタノボア』。
『アプソロブラッティナ』。
『カルノタウルス』。
『ディアトリマ』。
『アンドリューサルクス』。
『ブロントテリウム』。
『エリオプス』。
『プテラノドン』。
『サルコスクス』
『モササウルス』。
『シーラカンス』
『カメロケラス』。
『ダンクルオステウス』。
『アンモナイト』。
ゴキブリの古代種であるアプソロブラッティナメモリを使用したてらほ君が、単にやたら巨大なだけのテラフォーマーになったのは割と笑った。……いや、ステータスは上がってるんだけどね。
さて。
ここまでやったところで、話は元に戻る。つまり僕が使うデモニカである。
機体はオラシオニキが使っているロストドライバーをそのまま流用。
このロストドライバーはオラシオニキが今よりまだまだ格段にレベルの低い頃から使っている代物で、何度か素材を追加してバージョンアップを繰り返してこそいるものの、基本的な機能や構造はほとんど変わっておらず、それだけに堅牢で信頼性が高く、極限状態で使うための装備としてはこれ以上ない程に相応しい。
スカルと異なるのは、ガイアメモリだ。
その製造のために、一旦ショタオジのところに行ってハードコースの修行を着けてもらう。現在、ショタオジの下では認知異界と電脳異界を接続して時間加速を行うための研究が行われており、そのお陰で体感時間は一年ほど修行を続けていたものの、修行用の認知異界から出ると外界では数時間程度しか経っていなかった。
そしてベルベットルームで。
監修してくれる約束のショタオジは、深々と溜息を吐きながら口を開いた。
「正直、その力は使って欲しくないんだけど……まあでも、使えるようにならなきゃならないのも事実だ。バックアップはきっちり請け負うから、全力を出すんだよ」
「はい……やってみます」
憂鬱そうなショタオジを余所に、深呼吸すると僕は自らのペルソナを呼び出し、その内部に格納された力を表層意識へと浮上させる。
「魔晶【黒の書】起動。ミックスレイド開始、複合式オーバーソウル【人の心のキーブレード】展開────【黒の書】の全力解放を開始する!」
同時、随行してくれていたシトナイが大きく息を吸った。
その口から響き渡るのは人魚ネキから教わった魂鎮めの【子守唄】だ。主人とシキガミとの絆を通じて魂の底まで染みわたるそれに耳を傾けるだけで、精神へと掛かっていた【黒の書】と【人の心のキーブレード】の負荷が少しずつ和らいでいく。
そして。
ショタオジの監視下なので、遠慮なく【黒の書】の力を解放させてもらう。
僕の眼前に浮かぶ【黒の書】がひとりでに表紙を開き、風に煽られたようにその頁を高速で捲り始めた。
数知れない紙片を連ねた頁の合間から溢れ出すのは、単なるマグネタイトとは次元の異なる超高圧・高密度の情報流。開かれたページから溢れ出す無数の文字が濁流のように乱舞し、書のタイトルに等しい漆黒の渦を作り出す。
ともすればこちらの意識が押し流されそうな程の情報圧を前に、【魄翼】を展開した僕は文字情報の黒渦へと強引に割り込み、空間すら圧し拉ぐ情報圧に物理的な推力とペルソナの強度だけで抗いながら、奥へ奥へと突き進んでいく。
荒れ狂う文字情報の黒渦、その中心に浮かぶ一つの単語こそ、今回僕が求めているものだ。
鮮やかな深紅の護拳が特徴的な【人の心のキーブレード】を掲げ、眼前に浮遊する【黒の書】に向けて側面から小さな枝刃を伸ばした黒い戟刀状の刀身を突き立て、鍵を開くようにして回す。
途端、【黒の書】から溢れる情報圧がその圧力を何倍にも増し、そこから流れる膨大な情報流を汲み上げながら、それを僕は錬金釜に、そしてその胎内を満たす霊水の中に沈んだ無垢のガイアメモリの中へと導いていく。
「……完成だ」
ふらり、と視界が揺れた。
思わず膝を突いた瞬間、駆け寄ったシトナイに背中を支えられる。その温もりに思わず力を抜きそうになりながら、僕は錬金釜に向かって手を伸ばした。
釜の中に溜まった霊水が跳ねて波紋を描き、その中から飛び出して僕の掌に収まったのは、純白の外装を持つ新たなガイアメモリ。その表面に刻まれているのは、果てのない無限回廊を横倒しにしたかのような『E』の一文字。
《ETERNAL!!》
メモリを手にすると同時に響くその起動音は、そのメモリが紛れもなく願った形で完成している事を示していた。
「……マスター、大丈夫?」
「ああ。ちょっと疲れたけど、でも問題ない。無事に使えるよ」
シトナイの手を取って立ち上がると、完成したエターナルメモリをロストドライバーに装填、ドライバーを起動する。
「……変身」
《ETERNAL!!》
◆ ◆ ◆
ここまで完成したら、スカルメモリの稼働データをベースにしつつ、まずは開発当初のコンセプトに従い、黒死ネキの戦闘データなんかを元に【ドロイド】【ネクロマ】を自身に付与する事で、装着者が死んでいても死んだ装着者をコアにしたまま動いて戦い続ける機能をエターナルメモリに組み込んでいく。
これが組み込まれた時点で、仮面ライダーエターナルの変身形態に浮かんでいたファイアパターンが赤から青に変色した。
変身時には僕の耐性をそのまま使用できるマント『エターナルローブ』を着装する他、全身には同じくシュラウドマグナム同様の機構を組み込んだ二十六箇所のマキシマムスロットを装着────胸に『マックスジャケット』、右上腕部には『アーム・マックスベルト』、左大腿部には『サイ・マックスベルト』。
それぞれのベルトには飛行石を核に電脳異界化した壷中天を組み込み、COMPアプリと連動した思考操作によって内蔵したガイアメモリの自動装着や起動を可能としており、また強化型シュラウドマグナムやロストドライバー自体もこの壷中天に格納できるように。
この辺に関しては、ベルト自体を普段の服装に組み込むためのギミックとして、変身してない時でも使えるように設計している。特に僕の場合、太腿のベルトに関してはスカートの下に装着できるので。
さらに製作するのはコンバットナイフ形の専用武器『エターナルエッジ』。機械部分の大まかな構造は既に開発されているシュラウドマグナムの機構を流用して、ガイアメモリ対応型兵装として構築するとして、問題は刀身だ、生半可な強度にはできない。
使用する素材は『ウル』を使用。半終末前に愛知のバッハニキがアメリカで掘ってきた隕石から開発した素材であり、幻想金属の中では脆い部類に入るものの、術式の吸収・保持特性と容量が異様に高く、何なら素材として加工している最中に工具や炉に付与されていた術式を取り込んでしまい想定外の付与が発生してしまうような場合もあり、加工には高い技量と慎重さが求められる。
だが何より特筆すべき最大の魅力は付与に関する容量の大きさで、限界まで付与を重ねる事ができれば、その最終的な性能は低い強度を補って余りある。これを使う。
エターナルメモリに内包された概念データをウルの容量一杯まで注ぎ込んでいくと、やがて金属そのものの性質まで変化していく。それはもはや金属の形をした『永遠』という概念そのものに等しく、ウルの莫大な容量をそれだけに特化した事もあってオリハルコンやアダマスを上回り、それこそファンロン鉱にすら迫る程の強度と硬度を持つ程のもの。
安直だが、名づけるなら『エターナル概念鋼』か。
エターナルメモリの力を増幅してくれるし、エターナルメモリ自体が他のガイアメモリを支配する関係上か、それだけでなくガイアメモリ全般との相性も非常に良いようだ。
これを刀身にする事で、エターナルエッジも完成する。
エターナルエッジを収めるための鞘も組み込み、太腿のサイ・マックスベルトに装着可能に。鞘と掌の間で相互転送を可能にもして、抜き打ちや収納をやりやすくもする。
で、この辺を組み込んでエターナルメモリも完成したので、それに付随してエターナル自体を含むAからZまでの26本のガイアメモリを作成していく。
もっとも原作とはある程度ラインナップを変えてあるから、作成したメモリも違う。
『オーロラ』。
『ブラキオサウルス』。
『クレイドール』。
『ダミー』。
『エターナル』。
『ファング』。
『ジーン』。
『ハングリー』。
『アイスエイジ』。
『ジョーカー』。
『キー』。
『ラーフ』。
『メモリー』。
『ナスカ』。
『オウル』。
『プリズム』。
『ケツァルコアトルス』。
『リアクター』。
『スミロドン』。
『テラー』。
『ユートピア』。
『バイラス』。
『ウェザー』。
『エクストリーム』。
『イエスタデイ』。
『ズー』。
どれもできるだけ強力なメモリを揃えてあるが、重要なのは核となるエターナルメモリを始めとして、ガイアメモリの力を限界まで引き出すエクストリームメモリ、複数のメモリの力を集約統合するプリズムメモリ、マグネタイト生成を行うリアクターメモリ、感情変換による限界突破を行うジョーカーメモリ辺りか。
これら全てのガイアメモリを全身のマキシマムスロットに装着、まとめて最大稼働させるのが仮面ライダーエターナルの真骨頂だ。その際の破壊力は結構なものだが、原作……というか別作品での客演において世界の一つや二つ永遠に破壊しかねないとまで言われたその威力をどこまで再現し切れているものか。
さらに追加装備として、仮面ライダースカルの専用バイクであるスカルボイルダーをベースにしたガイアメモリ対応型シキガミバイク『エターナルボイルダー』と、その換装システムを内蔵した装甲支援車両『エターナルギャリー』も製造……これに関しては宮城のロボ部に委託。同様の換装システムはブロック構造化してウラジオストク支部に送り、次の定期メンテナンスの際にロシアで使用している多脚戦車に組み込んでもらう予定。
◆ ◆ ◆
エターナル概念鋼。
仮面ライダーエターナルの専用装備としてエターナルエッジを鍛造する際に開発した素材であるが、これはウルをベースメタルとして、エターナルメモリが内包する概念データをその巨大な付与容量に一杯まで詰め込む事で開発した。
なら、他のガイアメモリの概念データを突っ込んで対応する概念鋼を詰め込む事も可能なのではないか。
おおむね、正しかった。
概念型ガイアメモリを始めとする様々なデータを突っ込んで、それぞれのガイアメモリに対応する概念鋼へと変化させる事ができた。
だが、問題は一つ。
ウルの素の強度が普通の鋼と大差ないという事だ。曲がりなりにも幻想金属の中では上位に位置するウルだが、その総合力のほぼ全てを付与容量に突っ込んでいるからして、これはかなり弱い部類だ。
だから強度に直結しないタイプのガイアメモリのデータを突っ込んでしまうと、やはり原型となったウルと同じように鋼程度の強度にしかならない。
実際に試作したジョーカー概念鋼やバイオレンス概念鋼なんかはそこそこの、それこそ中~上位の幻想金属に匹敵したが、例えばブレッドやライアーなどの概念鋼の強度や硬度はかなり低いものになってしまった。
この弱点は、割と面白い結果を招いた。
条件付きで強くなる金属が見つかったのだ。
例えばマネーメモリを利用したマネー概念鋼は素の状態では鍛鉄程度の強度と硬度しか持たなかったが、金庫を作ってその中に数千円から最大で数百万円相当のマッカや札束を詰め込んでみると、中味の金額に応じて金庫の強度と耐性が強化された。
またT-REXメモリを利用したT-REX概念鋼は、素の状態では硬度はともかく強度はビックリするほど脆かったが、ティラノサウルスの骨格を模して加工した途端に、異様な頑丈さを発揮した。古代生物系のガイアメモリは、大体がそんな感じで、元となった生物の形をモチーフに造れば、元の生物相応に頑丈になるようだ。多分この辺、ゾイドの素材にしたら愉快な事になるんじゃないだろうか。
もちろん、どれだけやっても強度が上がらない概念鋼もあったが、それはそれで強度硬度に関係ない使い道を探せばいい。
例えば雷電の記憶を宿したライトニングメモリを使って作り出したライトニング概念鋼は強度も硬度も鋼より少し頑丈な程度で、【電撃無効】の特性こそあるものの装甲やフレームなどの素材にするには難しいものだったが、電撃属性対応の属性特化型合金樹というものが初期の頃から探求ネキの手で既に開発されているので、そういうのが欲しければそっちを使えばいいだけの話。
むしろ電撃属性や電磁加速への適性でいえばそれこそ属性特化型合金樹材より上なので、単純にジオストーンの素材にしたり、グレネードやガンパウダーに混ぜる事で電撃属性を付与したり、と使い道は色々ある。
他にも面白い使い道ができるといいのだが。
◆ ◆ ◆
ロストドライバー。
ガイアメモリ対応型デモニカ。
元ネタは『仮面ライダーW』に登場する変身ベルトの一つであり、仮面ライダーWが変身に使用するダブルドライバーの原型となったとされるベルトだ。
で、原作においてはロストドライバーから開発されたダブルドライバーだが、これは仮面ライダーシリーズ史上でも割と珍しい特性を持ったベルトだった。
二人で一人の仮面ライダーに変身するために、二人で使用する変身ベルトだ。一人の使用者が一本のガイアメモリをセットして変身するロストドライバーに対して、ダブルドライバーは二つのスロットを持ち、二人の使用者が一本ずつのガイアメモリを装填し、左右半身それぞれを個別にフォームチェンジさせて変身する。
ぶっちゃけ特殊過ぎて、これまで再現した者がいないのだが……せっかくロストドライバーにガイアメモリまで開発したのだから、という事で記念に作成してみる事にした。
言うまでもなくロストドライバーをベースとし、ガイアメモリ用のスロットを二本搭載した形であり、それぞれのスロットは右半身『ソウルサイド』と左半身『ボディサイド』に対応し、セットしたガイアメモリに応じてそれぞれを個別にフォームチェンジさせる仕組み。
まずボディサイド側を担当するメイン使用者がダブルドライバーを装着すると、そのダブルドライバーのコピー体がサブ使用者の腰へと形成装着。
続いてサブ使用者がコピー体ドライバーにガイアメモリを起動して装填する事で、ガイアメモリと共にサブ使用者の精神と魂をガイアメモリと共にメイン側のダブルドライバーへと転送される。
そうしてそれぞれの側でガイアメモリを使用する事で左右半身を切り替えて二本同時に使用し、展開式デモニカを着装する仕組み。
使用するガイアメモリは現状7本。
ボディサイド3本。
切り札の記憶を宿す『ジョーカーメモリ』。
闘士の記憶を宿す『メタルメモリ』。長棍型のガイアメモリ対応型専用霊装『メタルシャフト』を装備。
銃撃手の記憶を宿す『トリガーメモリ』。シュラウドマグナム・スカルマグナムと同型のガイアメモリ対応型霊装『トリガーマグナム』を装備。
ソウルサイド4本。
魔神ヴァーユの風の権能を宿す『サイクロンメモリ』。
破壊神アグニの火の権能を宿す『ヒートメモリ』。
幻想の記憶を宿す『ルナメモリ』。
そしてサブ使用者の護衛を兼ねた特殊仕様の『ファングメモリ』。
この内、サイクロン・ヒートメモリの二本は、結構前に愛媛の無惨ニキが開発していた権能内蔵型ガイアメモリだ。
ヒートメモリに関しては、シュラウドマグナムが開発された当初に製造された【アギ】系術式が組み込まれた初期モデルもあるんだが、さすがにこれでデモニカを構築するのは難しい。
そして特殊型ガイアメモリである『ファングメモリ』に関してだが。
これはエターナル開発の時に作成した通常型のファングメモリをベースに、ドクターネキのところで造られている量産型のゾイド型簡易シキガミなどのデータを元に設計した恐竜型の小型シキガミボディにメモリを組み込み、独立行動機能を搭載したもの。
そして他のメモリと同様にダブルドライバーのソウルサイドに装填する事が可能だが、これを使う場合は通常のメイン装着者・サブ装着者間の関係が逆になり、メイン装着者の精神・魂をサブ装着者の側に転送、サブ装着者の肉体にデモニカが装着される形になっている。
さらに専用バイク『ハードボイルダー』と、その換装システムを内蔵した装甲支援車両『リボルギャリー』も開発。
ハードボイルダーはホワイト・グリントのVOBのシステムをベースにした使い捨ての外付け式6連装ブースターを装着する他、後ろ半分を着脱・換装する事で、ジャイロを利用した超音速飛行が可能な空戦形態『ハードタービュラー』、水中・水上戦に対応した『ハードスプラッシャー』にも可変できる。その辺の換装作業を行うのがリボルギャリー、という形。
後はマキシマムドライブ可能なガイアメモリ対応型の各種ガジェットも作成。
この辺、原作だと本来は正式なガイアメモリではないギジメモリというアイテムを使用していたのだが、こっちは普通に生物系ガイアメモリを使用。
ガラケーからクワガタ型簡易シキガミドローンに変形する『スタッグフォン』。
ワイヤーや追跡用のビーコンなどの射出機能をメインに、クモ型簡易シキガミドローンへの変形機能、電磁場・気圧・温度・湿度などの環境データ検出センサー等々の機能を組み込んだ『スパイダーショック』。
同じく撮影用の小型カメラからコウモリ型簡易シキガミドローンに変形する『バットショット』。
この辺はメタルシャフトやトリガーマグナムなどダブルの専用装備との合体機能も備えており、スタッグフォンならメタルシャフトからハサミ型のマグネタイト刃を展開したり、バットショットなら高周波震動ユニットや照準装置として機能したりする。
人魚ネキ問題に関連して開発が進められていた音声系異能再現技術を応用し、音響砲としても扱える高機能サウンドレコーダーからカエル型簡易シキガミドローンに変形する『フロッグポッド』。
透視・熱源探知・暗視などの機能が組み込まれたゴーグルからカタツムリ型簡易シキガミドローンに変形する『デンデンセンサー』。
……と、とりあえずこんな具合に色々と作ってみたものの、これ本気でどうするか。
ぶっちゃけメモリガジェットはともかく、僕にはエターナルがあるのでダブルドライバーは基本的に必要ない。
原作で仮面ライダーエターナルが言っていた通り“メモリの数が違う”というのは伊達じゃないのだ。
そもそもダブルドライバーは二人いないと使えないし。
そして二人いないと使えないって事は誰かに渡すにしても、基本的に常に二人一組で活動しているくらいに互いに信頼関係を持っている相手じゃないと使いづらいって事でもある。
シキガミ持ちの黒札に渡すのもいいが、しかしそれはそれで黒札とシキガミのどちらかが行動不能になるって事でもあるし、結構ハイリスクではある。カバーする手段は、割といくらでもあるが。
どうしたものか……と迷いつつ、しばらくお蔵入りにしていたのだが。
◆ ◆ ◆
ダブルドライバー及びその周辺システムが完成し、その一週間ほど後の話。
僕の実家……産みの母であるミナミィネキの根城である悪魔しょうかんではなく、育ての母である尼寺ネキこと『立花祈荒』が運営する北神奈川の尼寺『梵泥寺』へと里帰りした時の事。
シトナイを伴って何の塗装もされていない灰色の石の鳥居を潜り境内と入る。勝手知ったる自分の家、実家である。
一見すれば日本のどこにでもある少し大きなだけの和様の寺に見えるこの梵泥寺だが、そこはスケベ部の手が入っているという事もあり、少し注意深く辺りを見回せば、あちらこちらに微妙に怪しい……性的なシンボルが見受けられるのが分かる。
例えば境内の隅にある池には小便小僧の石像が股間から水を垂らしているが、その股間部分も普通の小便小僧にしては妙に長くて太くそそり立っているのが分かるだろう。
環状列石を象って並べられた柱のような庭石は、よく見れば傘の張ったキノコのような形をしている。
他にも屋根瓦、襖、ガラス窓のすりガラスなど、あちらこちらをよく観察してみれば飾り窓の模様が男根神フレイのシンボルである豊穣のルーンになっていたり、置物がシヴァ神のリンガを象っていたり、異性・同性問わずに絡み合う男女の姿など卑猥なシンボルが描かれていたり、といった具合に色々あるが、どれもこれも全部霊的・オカルト的な意味を持たせた結界の一部だが……性的な意匠ばかりをピックアップして互いにシナジーを引き出しつつ強固な結界を築いているのは、もうスケベ部員の腕の見せ所と言わざるを得ない。
それでいてぱっと見だけは下品になっていないのだから、大したものだ。
「相変わらず、らしい場所よね」
「まあ仕方ない。スケベ部だし」
肩をすくめながら境内を歩いて本堂に向かうと、リズミカルな木魚に合わせて読経らしき女性の声と、そして大勢の人々が集団で啜り泣く声が聞こえてくる。
真っ当な寺社であれば普通の法要と思われる場面であるが────。
「あー、母さんまたやってる」
「あの人も好きよねぇ」
靴を自前の壷中天に収納し、スリッパに履き替えて本堂の廊下を歩いていくと、それに伴って読経と思われた声の中からぽつぽつと内容が聞き取れるようになってくると、やがてその中から拾い上げるようにして「最強チート」とか「ハーレムメンバー80人」みたいな単語が混じっているのに気が付くだろう。
がらり、と戸を開けると、普通の寺社なら法要なんかに使う広間には座布団の代わりにゴツゴツした石板が数十枚ほど規則正しく並べられており、その上には並べられた石板と同数のメシアンが亀甲縛りに拘束されたまま正座の姿勢で似たような石板を膝上に積まれた石抱きの刑のポーズ、そして奥には愛染明王が祀られた本堂の仏壇の前で袈裟姿の美女……言うまでもなく僕の義母である尼寺ネキだ。
彼女が黒歴史ノートを読み上げる度に、捕縛されたメシアン達が苦しげな啜り泣きや呻き声を上げているのは、石抱きの苦痛のせいだけではないはずだ。
「あ、義母さん久しぶり。ちょっと里帰りだよ」
「まあまあアリスちゃん!? 多分割とすぐ終わるから、ちょっと待っててくださいね。今日は晩御飯も奮発しますから。何か食べたいものはありますか」
「うーん、じゃあ肉! 肉が食べたい」
「ふふ、いつものね。なら今日は生姜焼き、大盛りにしますから手っ取り早く終わらせましょう」
義母さんはにこやかにそんな事を言うと、読経代わりの黒歴史ノートに乗った【ハマ】【キャンディボイス】【不吉な言葉】【デビルスマイル】の各スキルの出力が上昇し、それに合わせて拘束されたメシアン達が上げる苦悶の呻き声も一オクターブ高くなる。
中には頭蓋骨がミシミシと軋むような音を立てている者すら混ざっており、ああそろそろ死ぬんだな、と目に見えてはっきり理解できる。
そんな割といつも通りの光景を見ながら広間を見渡すと、割と珍しい事にその場には何人か、メシアン以外の人もいるようだ。
その大半は地元のガイア連合拠点である北神奈川支部のメンバーだが、数時間に渡って延々と垂れ流される“メシアンの黒歴史”という精神攻撃系汚物の怒涛に耐え切れなかったらしく、広間の後ろの方に折り重なって気絶し、痙攣を繰り返している。
その傍らには、彼らのリーダーである北神奈川支部の支部長であるキノネキが静かに佇んでいた。
秋物のハーフコートを折り目正しく着込んだ彼女は、見た目はスレンダーでボーイッシュ系の美少女だが、こう見えて星祭神社で修行した本物の修羅勢の一人でもある。
銃とバイクという趣味を推し進める一方で、高レベルの“俺ら”には珍しく比較的普通の性癖と常識の持ち主────少なくともゼンラーでもドMでもない……であり、そんな真っ当な精神性がメシアンの黒歴史とかいう地獄のオンステージに耐え切れなかったのか、あんぐりと開いた口元から漏れ出した魂がちょうど今、妙にキラキラした輝きに包まれながら穏やかな表情を浮かべてゆっくりと天に昇っていこうとしていた。
「キノネキ、お久しぶりです」
『ああ、アリスニキネキ。久しぶりだけど元気そうだね。今日は里帰りか。もうそんな時期なんだね』
「はい、毎月恒例の。……まあ、それはそれとして魂戻しますね」
口から漏れた昇天寸前の魂だけで振り向いて返事をしたキノネキは割と危篤状態だが、とりあえず一分一秒を争う状態、という訳じゃなさそうなので慌てず騒がず、ぴょーんとジャンプして、バレーボールのレシーブを入れる要領で【サマリカーム】を込めた掌でキノネキの魂を掴み、その口の中へと押し戻す。
『ムググっ…………んガッククッ…………………………あ、危うく昇天するところだった!」
「危ないところでしたね。僕が来なかったら今頃死んでましたよ」
「助かったよアリスニキネキ……まさかこんな馬鹿みたいな原因で死に掛けるとは思わなかった。狂気対策食材は定期的に食べるようにしてたんだけど……」
「ああ、探求ネキ製の。あれ、宇宙的狂気にしか効かないんじゃないですか? 少なくともメシアンの黒歴史への耐性は付かないんじゃないかな、って」
「ガッデム!」
「ゼンラーやドMは割と耐性あるんですけどね。巻き藁ニキとか、心が洗われるようだ~って感動してましたし」
「さすがに、その人達と一緒にはなりたくないかな。仕方ない、もう僕も限界……を通り越して一回死に掛けてるし、とりあえず外に出よう」
復活したばかりで顔色が悪いキノネキやシトナイと協力して、その場に折り重なるようにして気絶している人達を引きずって広間から脱出させていく。何度か広間と外を往復して、ようやく全員を運び終えた。
「実は尼寺ネキに依頼があってね。でも軽い法要があるっていう話だから、後ろで待たせてもらったんだ……そうしたら、これだよ。全然軽くなかったよ」
「……ご愁傷さまです」
「後、どれくらい待てばいいのかな?」
「すぐだと思いますよ」
「何で分かるのさ?」
「捕まってるメシアンの中に、抗議したり悲鳴上げたりする連中がいないじゃないですか。逃げるとか反抗するとか、そういう考えが浮かぶくらいの元気もなくなってるからですよ。だからそろそろ死ぬし、あいつらが全部死んだら終わります」
「……………………うわぁ」
倒れていた面子の大半はキノネキに随行していた北神奈川支部の異能者のようで、見知った顔がちらほらと泡を吹いている。黒札はモロコシニキだけで残りは現地民……モロコシニキは、北神奈川支部の技術開発担当の片割れであるイデニキがバイオマス燃料用として開発したBBエタノールコーンの農場を運営している人だ。
今は大絶賛気絶中だが。
だが、そればかりでもなかったようで、北神奈川支部の所属ではない人もいる。
知り合いだ。
「ぷはっ……また死んでいたのか!」
「ぜーはーぜーはー……危ないところだった!」
「フフ、危ないというか……とっくに心臓が止まっていたがね」
「若守さんに壇出さん、お久しぶりです。前に来た時にはもう一生来ないって叫んでたのに、何でまたウチに?」
ふらつきながらも真っ先に回復して立ち上がったのは若守さんと壇出さん。
本来は福島のリンボニキが経営する探偵事務所の所員さんとして働いているのだが、それが何でこんな北神奈川まで来ているのかといえば。
「何、仕事先で少々、実力不足を感じる羽目になってね」
「犯人のスキルの絡繰りを読み違えたせいで、依頼人を危険にさらしてしまったのさ。そのせいで副所長にも面倒を掛けてしまい……探偵ともあろうものが、フフ……情けない」
「あー……それで鍛え直しに」
「うむ。ああ、それと僕の可愛い妹、るるかは元気かね? 同じクラスだと聞いたが、仲良くやれているかな?」
「ええ。最近は仲のいい友達もできたみたいで……ちょっと寂しいですけどね」
「そう思うならもう少し積極的に構ってあげてくれ。やはり君はあの子にとって特別らしいからね」
「ですか……」
黒歴史公開朗読という色々な意味で恐ろしい処刑法で有名なウチの義母、尼寺ネキこと立花祈荒は、異能者としてはそこまで珍しいタイプではない。
得意分野は破魔・精神系の魔法と素手格闘系、時々銃火器。呪殺属性もそれなりに使えて、後は立川流とかタントラとかそっち系の密教呪術とかも得意。
だが、そんな彼女には別方面の得意分野があった。
異能を使った探査、捜索、情報収集。それこそ修羅勢の巣窟である星祭神社の元締めであるセツニキにすらお墨付きをもらう程に。
だから毎回、その技能を無駄に使い倒してメシアンが隠した黒歴史ノートを発掘しては、こうして公開処刑に使っている、という訳で。
単純に当人の才覚が秀でている、というのもある。
もし彼女がカルト教団に産まれていなかったなら、今頃は警察なんかで敏腕捜査官にでもなっていたか、それともそれこそリンボニキみたいな名探偵か。そんな具合の人物だ。
そして同時に彼女が所属している『殺生院淑女会』という集団。
スケベ部の一派というだけでなく、実は情報収集や捜査活動にも秀でている。
ハニトラネキ・サークラネキが得意とする人対人のコミュニケーションを通じた情報操作。ショタコンネキが得意とするデータベースの発掘とそこから意味ある情報を吸い出す技術。排気口ネキが習得しているハッキングの技術。寝技ネキの専門分野である対人捕縛に使える格闘技能。他にも色々。
それらの技術を互いに共有し、教え合った事で、義母さんもその辺の技能を一通り習得している。
習得した上で、体系化した知識として人に教えられる。
同じ情報収集系といっても、僕の友人である古戸エリカが持っているような反則じみた特殊能力も使わないため、最低限の適性さえあればある程度は誰でも覚えられる。
ちょっと色々な意味でキッツいらしいけど。
それこそガイア連合内でもこれ以上を求めるなら、ショタオジのハードコースで異能それ自体の段階を上げるか、さもなければ星祭のセツニキゼミに参加して鍛えるか、くらいしか選択肢がないくらいに。
どちらもほぼほぼ黒札御用達である事を考えるなら、黒札ならぬ現地民異能者が受けられる捜査系の異能教育としては最高峰といえるだろう。
リンボニキと伯爵ニキもその辺、プロの探偵というだけあって捜査系異能は大得意なはず、なのだが、教えるという一点に関しては義母さんの方が上だ。
やはり変態は強いというのがガイア連合の大原則だけあって、スケベ部員の方が上位に入るのだろうか?
ともあれ、そんなこんなでリンボニキの探偵事務所で事務員やってるキアラネキから殺生院淑女会関連の伝手で紹介を受けてやってきていたのが、彼らだ。
「あ、そうだ」
それはそれとして、といった感じで、ふと、気付く。
いるじゃん。
ある程度信頼関係があって、二人一組。
ちょうど目の前に。
「若守さん、壇出さん。ちょうどいいのがあるんですけど……使ってみます?」
「「はい?」」
ちょうどよく、探偵だし。
◇ ◇ ◇
「……疾寺田さん、貴方が犯人ですね」
どこか遠く、暗雲の向こうに雷が落ちる。
止む気配を見せない雨で暗幕のように閉ざされた洋館の一室で、若守は初老の執事へとその指先を向けた。
「なっ……そんな、濡れ衣です! この私が旦那様を手に掛けたなどと……第一、旦那様は若い頃に私を救ってくださった恩人です! そんな旦那様に危害を加えるような真似に、私が手を染めるわけがない!」
「そうですよ。疾寺田は私が生まれた頃からこの屋敷に仕えていてくれた忠実な使用人です。さすがに彼が犯人だなんて……」
若守は静かに首を振った。
「初日に殺された執事見習いの飯庵さんは、首から上の皮膚を全て剥ぎ取られて殺されていた」
「そ、それがどうしたというのです……っ!?」
「飯庵さんは、疾寺田さんと身長、体格がよく似ていた」
雨に閉ざされた洋館の中、強い風が屋敷のガラス窓に無数の雨滴を叩きつける音が静かに響いている。
そんな中、無言のままの壇出は手にしたカメラ型のデバイス『バットショット』に、ガイアメモリ『ヒート』を装填した。
「殺した相手から剥ぎ取った皮膚を【ディア】で繋ぎ合わせて修復し、それを被って変装する……ああ、【ディア】を使えば被った皮膚を自分の顔と直接癒着させる事もできるな。それで顔の微妙な凹凸も誤魔化せる。メシア教徒の潜入工作員がたまに使う手です。つまり……貴方は疾寺田さんではない」
「なっ、何を根拠に……っ……そんなのは憶測だ! 私は無実だ!」
否定の叫びを上げる執事の声を、壇出を遮り、若守がドアを開けた。
「何が根拠かって…………それはもちろん、初日の内に飯庵さんの死体(=真・疾寺田さん)を【リカーム】で直接蘇生して復活してもらったからね! もちろんこの三日間で君が殺害してきた被害者達も全員蘇生済みさ!! 証言は彼らから全部聞かせてもらった! 特に家主さんを殺害した時にデスマスクを外したのが命取りだったね! あ、皆さん入ってきてくださ~い!」
「なっ、おまぁ…………それは反則だろ!?」
「あぁ……疾寺田、鳴戸、丹羽師、お父様、全員生きて…………!」
殺した時には確かに死んでいたはずの被害者達が、当たり前の顔をしてぞろぞろと部屋に入ってくる。その中には、ちょうど今糾弾されている執事に瓜二つな初老の男性────本物の執事もいた。
「なっ、お嬢様、本物は私です! こいつらはお嬢様を欺こうと……!」
「フフ……偽物かどうかは、こうすればはっきりすることさ……!!」
《HEAT────MAXIMUM DRIVE!!》
機体の左右から小さな翼を展開したバットショットが壇出の手から飛び立ち、そのレンズから放射された熱光が執事の────彼に擬態していたメシアンの顔に貼り付いたデスマスクを一瞬で焼き溶かす。
溶けた皮膚の下にあったのは、初日に殺された事になっていた若い執事見習いの顔だ。
「それとついでに生き返らせたメンバーに手伝ってもらって、君の私室に隠されていた色々とキッツい計画書も全部発見済みだよ」
「せめて推理しろよ探偵!? さっきから全然推理してねえだろお前ら!」
「フフフ……そのついでにベッドの下のエロ同人と、それから天井裏に隠してあった君の黒歴史ノートまで見つけてしまったのは頭の痛いところだったけどね……まさかこんなところでナマモノ同人のレーベルを見つける事になるとは恐れ入る……」
「きっ……貴様ら、それはいくら何でも…………見るな、見るんじゃない! ノートだけはやめてくれ!!」
「感謝したまえ。たとえ黒歴史ノートを見つけても、好き好んで公開朗読する程には我々は鬼ではない。だから大人しく投降するんだ」
メシアンの額から何かが千切れる音がした。
一気に険しくなったその顔が少しずつ赤くなっていくのが目に見えて分かる。
「おのれぇ……こうなったらもはや密室トリックなんて関係ねぇ! 全員ブチ殺して天使様に捧げてくれるわ!! 証拠隠滅じゃぁ~~~~~~~!!!!」
顔を真っ赤にして怒り狂った犯人が懐から取り出したアンプルを首筋に突き刺すと、男の全身の筋肉が隆起して体型が変化し、肉体の変化と変質に伴って背中からは天使の翼が突き出していく。
「薬物投与型の簡易天使兵……通常の天使兵と同レベルの戦闘力がある代わりに、使用者の寿命を削るやつだね。君、それをやってしまったら、もう後がないよ」
「フフ……破れかぶれって怖いねえ」
「何とでもいえ、もう俺には後がねえんだよ!! ここで新しい聖母候補さえ献上できればこんな代償、天使様にいくらでも治してもらえる! だから大人しく俺様の糧になりやがれぇ~~~~~~~~!!」
表情筋すら肥大した結果顔かたちすら変わり果てた犯人の男は、その両眼から血涙を流しながら十字架型のCOMPから召喚した二体の天使エンジェルを捨て駒として突撃させる。使用人や館の主人が娘を守るべく動く中、それを目の前にした若守と壇出の表情に怯えはなく、剣と棍棒を振り回しながら突進してくる天使の顔面に二人の蹴りが突き刺さった。
「こうして見ると哀れなものだな。もっとも天使という悪魔に魂を売った末路としては、まだマシな部類かもしれないが」
「だが犯人に同情して依頼人を危険に晒すのは探偵としては下の下……フフ、分かっているさ」
「感情移入の余地はないがね。……それより」
「ああ、分かっているさ」
蹴られた天使が床に転がり倒れ込む中、壇出が懐から引き抜いたダブルドライバーを腰に押し当てると、その左右から射出されたベルトが壇出の腰を取り巻いてドライバーがバックルとして腰に固定され、同時に若守の腰にも同様のベルトが出現する。
それを確認した二人はベルトのホルダーに固定されたガイアメモリを引き抜いて起動、それぞれの手にガイアメモリを構えた腕が、二人合わせてWの一字を描く。
《CYCLONE》
《JOKER》
「「変身────!」」
翠。
目が痛くなる程に爽やかなエメラルドグリーン。
紫。
重く、硬く、しかし人を縛らず黙してただ盾となるディープパープル。
二色の風が渦巻いて、左右非対称のカラーリングに彩られたスマートな体躯を形作っていく。
右半身、生命と希望を運ぶ風を象徴する鮮やかな新緑色。
司るは『疾風』の記憶、サイクロンメモリ。
左半身、何物にも染まらぬ強固な意志を意味する頑強な黒紫。
司るは『切り札』の記憶、ジョーカーメモリ。
同時に風の渦から意識のない若守の身体が放り出され、近くに待機していたアガシオンにキャッチされて壷中天の中に回収された。若守の意識は既にダブルドライバーを通して壇出の身体へと転送され、ダブルドライバーを中心に完成した『仮面ライダーW』の一部となっている。
「たとえ死者が生き返ったとしても、君がやった事が変わるわけではない。自分の正義を主張するなら、まずはその正義が誰を傷つけるか考えてみるべきだ」
『もう逃げ場はない。見習いとはいえ執事として勤めてきた自分の仕事に誇りを持っていたなら……観念して裁きを受けたまえ、メシアン』
「「────さあ、お前の罪を数えろ」」
「はぁ~~~~~~!!!? メシア教会のために働く俺様に罪なんてあるわけねぇだろうがよォ~~~~~~!!!! それにこんなところで諦めるくらいなら、メシア教徒なんてやってねえんだよ! 死ねぇ、【アギ】! 【アギ】! 【アギ】!」
「おっと、危ないね!」
三連続で放たれる火球を、屋敷に火が燃え移らないように、依頼人や被害者に火の粉が飛ばないように、その手で一つ一つ丁寧に弾いて無力化していく。
「新型のデモニカか……おのれぇガイア連合……!」
『生憎と、君らとの戦いのために戦闘技術は発達していてね。こういうものも生まれてくる。壇出、このままだと面倒だ。メモリを換えよう』
「メモリを……フフ、なるほどこっちか!」
《CYCLONE》
《METAL》
ダブルドライバーのガイアメモリを入れ替えると、Wの左半身が黒から鈍い鋼色へと変化して、その手には鉄棍型の霊装メタルシャフトが握られる。それを鮮やかに数回翻すと、風を纏ったメタルシャフトを縦横に振るい、攻撃を防ぎながら一気に天使兵へと間合いを詰めていく。
「ちぃッ……おのれェ!!」
間合いを詰められた天使兵は、背後の窓を割って空中に飛び出し、背中の翼を大きく広げて上空に舞い上がる。
緞帳のように分厚い雨の幕を掻き分けるように空を飛ぶ天使兵の後を追って、Wも割れた窓を潜って外に飛び出した。その全身に一瞬だけ暴風を纏って空中に浮かぶと、規則正しく屋根瓦が並ぶ屋根の上へと軽い音を立てて着地する。
無数の屋根瓦が交差する屋根の頂点から踏み出すと、Wの靴底が濡れた屋根瓦と擦れて、小さな音を立てる。
「飛ぶ敵とは少し面倒だ。メモリを換えよう」
『そうだな、今度はこちらで行こうじゃないか!』
《LUNA》
《TRIGGER》
今度のWは右半身を鮮やかな金色、左半身を透き通った蒼に染め上げ、胸部にマウントされた拳銃型の霊装トリガーマグナムを抜き放つ。暗雲が分厚く垂れ込めた空の下には似合わない派手な色合いだが、その姿は不思議とその場に調和しているように見えた。
引鉄を引けば銃口から放たれるのは、無数に分身しながら放たれる追尾弾の群れ。鮮やかな金色に燃える光弾の群れを敵は翼を打ち振って回避しようとするが、既に標的をロックした追尾弾は天使兵が左右に軌道を変えようとその都度向きを変えて天使兵に向かって追い縋る。
光弾の回避に必死になった天使兵の注意がこちらから逸れた瞬間、Wは手首に固定されたスパイダーショックをトリガーマグナムに装着させていた。その状態で天使兵へと向けた銃口から射出されたのは、直径2㎜のワイヤーで編み上げられた捕縛ネットだ。
ネットに絡め取られた天使兵は藻掻きながら落下していき、枝の折れる音を多重に響かせながら木立の中へと転がり込んだ。
『そこだ。確実に捕らえるぞ』
「もちろん! メモリを換える!」
《LUNA》
《METAL》
Wの左半身が再び鋼色へと切り替わる。
その手に再び握られたメタルシャフトはゴムのような柔軟性を帯び、鞭のように自在に伸縮するその背にジョーカーメモリを装填したスタッグフォンを接続すれば、シャフトの先端からクワガタの大顎を象った黒紫色の光刃が伸びる。
「行くぞ」
屋敷の屋根を蹴って跳躍しながらメタルシャフトを振るう。
伸縮自在の鞭として一気に伸びたメタルシャフトの光刃が鋭利な大顎を広げ、ちょうど全身に絡み付くネットを振り払った天使兵の背翼の片方をハサミのように断ち落とした。
「ぐ、ギャァアアアアアアアア! 痛い、痛い! 羽根がぁ~~~~おのれ、テメエら、許さねえぞ!!」
両手に握る盾と棍棒を振り翳しながら突進する天使兵だが、Wがメタルシャフトを一振りすると、その先端から伸びるスタッグフォンの光刃が天使兵の握っていた盾を掴み取り、引き剥がすように取り上げて脇に投げ捨ててしまう。
『これでその盾は使えまい!』
「なっ、テメエ卑怯だぞ!」
『生憎と、卑怯もラッキョウも大好物でね! 行くぞ、メモリチェンジで一気に攻める!』
《HEAT》
《METAL》
右半身が燃え滾る炎光に包まれ、紅色に染まる。
その半身には熱き記憶を司るヒートメモリの力を宿し、再び剛性を取り戻し両端には炎を宿すメタルシャフトを円を描くように回転させれば、メタルメモリの剛力で繰り出される連撃には炎の力が宿り、連続して繰り出される打撃が着弾する度にシャフトから爆炎が散る。
長尺のメタルシャフトを活かし、天使兵が握る棍棒より一歩離れた間合いを維持しながら、メタルシャフトの両端を旋回させて放つ苛烈な連撃で敵を押していけば、防戦一方の敵が構えた棍棒が中途から折れ飛んだ。
「クソぉ……天使様! 天使様ぁ! あぁクソ、こうなったらこんな事になる前にもっと楽しんでおけば……!」
「ああ、これは駄目そうだね。フフ……全然反省していない」
『なら、さっさと片を付けてしまおう』
《CYCLONE》
《JOKER》
二人が再びメモリを挿し替える。
右半身は透き通る翠、サイクロン。
左半身は剛健な黒紫、ジョーカー。
最初の姿に戻ったWは、そのダブルドライバーからもう一度ジョーカーメモリを抜き取り、腰サイドに装備されたマキシマムスロットへと装填する。
《JOKER────MAXIMUM DRIVE!!》
二本のガイアメモリに吸い寄せられるように暴風が渦を巻き、降り注ぐ雨粒までが竜巻に巻き上げられ、その中心点に立つWが、その身体を空中に浮かび上がらせた。ゆったりと腕を広げて空に立てば、渦巻く風の頂点で雨雲が掻き分けられ、暗雲の中に青く晴れ渡る空が覗く。
渦を巻く旋風の力が最高潮に膨れ上がった瞬間。
「『【ジョーカーエクストリーム】!!』」
そのまま黒と翠に分かれたWの身体が左右半身に分割され、風の渦によって射出された左右半身が別々に飛び蹴りを叩き込んだ。
天使兵の霊基がその衝撃に耐えられず爆裂四散、爆炎を突き破るように着地したWを中心に巻き起こった旋風が衝撃波を吹き散らし、その爆心地で見習い執事だったメシアンがわずかに身体を起こし。
「せめて、ちゃんと推理して欲しかった…………」
天使変身が解除され、変身前とは別人どころかすでにミイラ以外の何物でもない干からびた姿に成り果てたメシアンは、そのままがっくりと地面に倒れ伏すのだった。
「フフ……どうしたものかな、この男の処遇は……」
『そんなもの、適当にガイア連合にでも引き渡し給え。どこかしらそれっぽい部署があるだろうさ』
とりあえず事件解決で、めでたしめでたし。
若守&壇出のコンビ。
タマヤ与太郎様のところで出てきた二人が、まさかこうなるとは思うまい……自分も思わなかった。
リンボニキと探偵ニキのコンビとどっちがいいか、特にリンボニキは緑だし……と思ったけど、よくよく考えるとどう考えても黒札コンビの方はデモニカ抜きでも普通に戦えるわけで……。
なお途中で出てきているモロコシニキは、前話『永久凍土探索行 アリスと本霊』で登場したコテハン『★生産系ゼンラー』の人。
~割とどうでもいい設定集~
・リビドークロス
血涙鬼・彼岸様『凡庸でありふれた転生者達の小話』、『番外編その7 大丈夫?ミナミィネキの発明品だよ?』より。
スケベ部のトップでありアリスの血の繋がってる方の母親であるミナミィネキが開発したデモニカのシリーズ商品。
『日常時でも服の下から着られるデモニカ』というコンセプトで、コンセプト通りに服の下から問題なく着られる下着以下の露出度の布地に、最低限の霊視能力・身体強化に加えて割とろくでもないスケベ部らしい固有兵装を搭載している。
なお露出度は大抵下着以下、かつ防御性能は露出度相応。
ただし『このデモニカを着た姿を晒す羞恥心ないし性的興奮』のため、真価を発揮するためにはこれ以外の全装備を排除する必要がある露出狂仕様。真価を引き出すためには人としての尊厳を捨てる必要がある代物だが、ガイア連合の霊装には割とよくあるパターンなのかもしれない。
原作とは異なり、別に変態人妻でなくとも問題なく装備できる。何なら男でも。
初期ロットは『Kidnapper(誘拐魔)』『Scatter(ばら撒き魔)』『Slimy(粘液魔)』『Roly-poly(引き篭もり魔)』の4機種で、それに加えて色々な意味で悲惨な暴走事件を引き起こして目下封印検討中の『Pussy cat(寝取り魔)』。
アリスの場合、開発者である実の母親から送り付けられているものの、本人が「これ使い道あるのかな……?」と真面目に首を傾げている事もあり、一つを除いてほぼ使ってない。
なお初期ロットの一つである『Roly-poly(引き篭もり魔)』に関して、ミナミィネキは『本来なら脳缶ニキを中心に豆柴ニキや手羽先ニキみたいな小柄かつ可憐な男の娘に着て欲しかった』という事で、製作発表の際には特にこの機種を推していたが、アリスは普通にスルーした。
・ガイアメモリ
タマヤ与太郎様『【カオ転三次】TS^2ようじょの終末対策』、主に『転生ようじょ、宣伝する。』より。
本来はシュラウドマグナム・スカルマグナム用に設計された、メモリに格納された術式を弾丸に乗せるための拡張パーツだった。
他にもてらほ君の能力拡張・形態変化用である生物系メモリ、孔雀明王の浄化の権能をベースにしたピーコックメモリのような権能封入型メモリなども開発されており、無惨ニキが作成したものの多くはこの権能封入型。
なお元ネタである『仮面ライダーW』とは異なり、怪人用のドーパントメモリではなく、主に仮面ライダー側に使用されるスケルトンタイプの外観で製作されている。
なお開発が難航した本当の理由は原作再現が難しいとかそれ以上に……おそらく開発担当であろうオラシオニキのタスクが多過ぎたから……かもしれない。
トイボックスとか、飛竜戦艦とか、色々と優先度が高い大物を作ってて後回しにしてる内に存在自体を忘れ去ってたり……?
アリスが製作しているメモリは“黒の書”から引き出した各単語の概念情報をベースに『仮面ライダーW』『風都探偵』を元にした認知情報を利用して性質を調整したもので、原作の機能や性能をほぼ再現しているが、それだけにエターナル、テラー、バイラスなど一部の危険過ぎるメモリは非売品になっている。
“黒の書”を利用しているため最初の一本はアリスの手で製作する必要があるが、それ以降はメモリ自体をコピーできるため比較的簡単に製造できる。
・シュラウドマグナム
タマヤ与太郎様『【カオ転三次】TS^2ようじょの終末対策』、主に『転生ようじょ、宣伝する。』より。
元々はオラシオニキが愛用するスカルマグナムのデチューン・量産モデル。
生体マグネタイトを消費する事でエネルギー弾を発射するタイプのガイア銃。エネルギー源は使用者自身の生体MAGを使用する他、MAGバッテリーも搭載されている。
ノーマルモードではサブマシンガンのような連射可能な銃器として使用でき、弾丸は銃撃・魔法複合属性であるため【テトラカーン】ではなく【マカラカーン】で反射される一方、銃撃無効・反射などピンポイントで対銃撃相性を持つ手合いに対しては普通に反射される模様。
マキシマムモードでは連射性能を落とす代わりに一撃の威力を引き上げる事ができ、さらにガイアメモリを装填する事でその性質を反映したマキシマムドライブを発動可能。
また、元から他のガジェットの製作予定そのものは存在していたらしいので、おそらくメモリガジェットと合体させるためのコネクタ自体は初めから搭載されていた。
アリスの場合、これをベースにした強化型シュラウドマグナムを使用する。外装・メインフレームにはエターナル概念鋼を使用して強度を引き上げ、MAGバッテリーだけでなく五行炉とアークリアクターを搭載する事で出力・継戦能力を強化したカスタムモデル。
・仮面ライダースカル
タマヤ与太郎様『【カオ転三次】TS^2ようじょの終末対策』より、初出はおそらく『転生ようじょ、攻略す。①』。
オラシオニキが製作した展開型デモニカ。
このスカルのメインウェポンであるスカルマグナムがシュラウドマグナムの原型となっている。
このロストドライバーの基本設計はアリスの製作した仮面ライダーエターナルにもほぼほぼ受け継がれている。
・ジョーカーメモリ
元ネタは『仮面ライダーW』『風都探偵』。
アリスが最初に製造したガイアメモリ。
『使用者の身体能力・潜在能力を極限まで引き出す』『使用者の感情をマグネタイト変換し出力を限界突破させる』という大きく分けて二つの能力を持つ。
ロストドライバーで変身すると仮面ライダージョーカーに変身可能。
シュラウドマグナムなら使用者の感情の強さに応じて出力を増すカード型のエネルギー弾を発射する。
てらほ君に突っ込むと一応ジョーカー・ドーパントに変身するが、本来対応する仕様である生物系メモリではないため変身の維持時間に限界がある他、単純に能力の関係上、感情の希薄な製造直後のシキガミとは相性が悪い。
とりあえずオラシオニキ辺りが開発するであろうガイアドライバーの完成を待とう。
・仮面ライダーエターナル
元ネタは『仮面ライダーW』。
仮面ライダースカルをベースとしてアリスが開発した展開型デモニカ。スカルとほぼ同様のロストドライバーにエターナルメモリを装填して変身する。
装着者に【ドロイド】【ネクロマ】を付与する事で、装着者が死んでいても魂だけで動き続け戦い続ける、普通に呪われた鎧。
アリスの耐性をそのまま使用可能なマント『エターナルローブ』の他、身体各部にマキシマムスロットが搭載した『マックスジャケット』『アーム・マックスベルト』『サイ・マックスベルト』を装着し、全身のスロットにガイアメモリを装填してマキシマムドライブを発動する事が可能。
メモリは基本、各種装備と共に電脳異界化した壷中天に格納されており、COMPアプリと連動した思考操作によって自動装着や起動、マキシマムドライブの発動を可能としている。これに加えて原作同様に26本のガイアメモリも携行するが、そのラインナップはほぼ原作とは異なっている。
コンバットナイフ型の専用霊装『エターナルエッジ』を装備している他、原作にはなかった装備として換装機構を有する専用バイク『エターナルボイルダー』と、装甲支援車両『エターナルギャリー』を保有する。
・ウル
茅薙様『【カオ転三次】怠惰を求めて』より。初出は『波風』。
半終末前のバッハニキがユカタン半島、チクシュルーブ・クレーターで掘り当てた、長年地脈の霊力を受け止め続けた事で変質し、エネルギー貯蔵に特化した性質を持つに至った隕石を素材として生み出された幻想金属、その片割れ。もう片割れはヴィブラニウム。
付与容量が極めて高いのが最大の特徴にして利点であり、素の強度は通常の鋼程度だが、付与を重ねる事でいくらでも強化ができる。
また術式の保持能力が異様に高いため、取り込んだ術式の構造をそのまま保持する事が可能。このため鍛造に使用する炉の術式をそのまま吸収して不要な付与が付いてしまうようなアクシデントも起きる。
総じて可能性・使用難易度共に上級者向けの高位幻想金属。
・ファンロン鉱
緋咲虚徹様『【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく』より。
探求ネキが開発した幻想金属。
生物データと融合する事で性質を変化させる金属として概念を束ね、ひたすらデータ量を積み重ね圧縮する作業を繰り返していった結果、アダマンタイトをぶつけても傷一つつかない程に堅い一方、おそらく魔法寄りのステータスとはいえ曲がりなりにも黒札の中でも上澄みの高位異能者である探求ネキが一辺10㎝の塊でも持ち上げるのは困難と言い切るだけの重量を持つ。
このファンロン鉱の一部をコピーしたものがクロンデジゾイドメタルとなり、そこから各種派生のデジゾイド合金も製作された。
・エターナル概念鋼
ウルをベースとし、その容量一杯までエターナルメモリに内蔵された概念情報を取り込ませた純白の幻想金属。あるいは金属の形をした永遠の概念そのもの。既にウルとしての性質はほぼ完全に失われている。
非常に強力な『永遠』『永劫』『無限』の概念情報の塊であり、オリハルコンやアダマスを上回り、それこそファンロン鉱に迫る程の硬度・強度を持つ。
またエターナルメモリ自体の性質もある程度引き継いでいるため、ガイアメモリ全般との相性が非常に良い。
仮面ライダー専用装備であるコンバットナイフ型霊装エターナルエッジの刀身は、このエターナル概念鋼で構成されている。
・概念鋼
エターナル概念鋼同様に、ウルに金属としての性質を変質させるまでガイアメモリの概念情報を取り込ませた幻想金属。
付与する概念情報の素になったガイアメモリの種類に応じて多種多様な性質を持ち、特定条件に応じて性質が変化するものもある。一方で、素体となったウルの純粋な強度が通常の鋼止まりであるため、一部には霊装として加工するには強度が不安なものも多い。
具体例として、ティラノサウルスをモチーフにした形状に加工すると強度や硬度が上昇するT-REX概念鋼、金庫として加工すれば中身の金額に応じて強度が上昇するマネー概念鋼、電撃属性と非常に高い親和性を持つライトニング概念鋼など。
・仮面ライダーW
元ネタは『仮面ライダーW』『風都探偵』。
アリスが開発した展開型デモニカ。ロストドライバーをベースに製作されたダブルドライバーに二本のガイアメモリを装填して変身する。
メインの装着者以外にもう一人サブの使用者を必要とし、二人羽織で制御する非常に珍しいシステムを搭載している。
メイン装着者がダブルドライバーを着装すると、そのコピー体がサブ使用者側に展開され、サブ使用者がコピー体ドライバーにガイアメモリを起動・装填すると共にサブ使用者の精神と魂がガイアメモリと共にメイン側のダブルドライバーへと転送。さらにメイン装着者がガイアメモリを装填する事でデモニカが完全起動し、展開される。ただしファングメモリ使用時のみこのプロセスは逆転し、サブ使用者側にデモニカが展開される。
メイン装着者が担当する左半身ボディサイドと、サブ使用者が担当する右半身ソウルサイドに分かれており、それぞれがドライバーに装填したガイアメモリに対応して左右半身で個別にフォームチェンジを行う。
使用メモリはボディサイドに『ジョーカー』『メタル』『トリガー』計3本、ソウルサイドに『サイクロン』『ヒート』『ルナ』『ファング』計4本。
その内、メタルメモリにはメタルシャフト、トリガーメモリにはトリガーマグナムが専用装備として付属しており、一部のメモリガジェットと合体して機能拡張が可能。
またファングメモリはサブ使用者の護衛も兼ねて独立行動機能を搭載した簡易シキガミとして設計された特殊仕様になっている。
なおメタルシャフトは幼女ネキが愛用するドラゴンロッドの設計をベースに、マキシマムドライブやメモリガジェットとの合体機能を組み込んだもの。
他に専用バイク『ハードボイルダー』、装甲支援車両『リボルギャリー』、『スタッグフォン』『スパイダーショック』『バットショット』『フロッグポッド』『デンデンセンサー』といった各種メモリガジェットなどを装備として保有する。
・キノネキ
山親父様『【カオ転三次】世界が終わるまでのバイク旅』より。
今回の被害者担当。
ガイア連合北神奈川支部の支部長を務めるガンスリンガー系黒札のボーイッシュ系美少女。実銃とバイクをこよなく愛している。
銃器に関しては狙撃からクイックドロウ、ガン・カタまでほぼ何でもできる能力を持つ一方、それ以外の武器・魔法その他の戦闘手段が使えない弱点を持つため、銃器使用不可のイベントなどでは時折隅っこで寂しそうにしている姿が見られる事も……。
星祭修羅勢の一人でもあるが、その割に性格・性癖はいたって真っ当でマトモ、ヨゴレ成分少な目な部類の常識人。
実銃愛好部&ガイア連合自動車部のスポンサーで、探求ネキの嫁の一人。
・梵泥寺
ガイア連合北神奈川支部の勢力圏に尼寺ネキが保有する尼寺。立花アリスの実家。
一見普通の寺に見えるが、よくよく見ればスケベ部らしい各種卑猥な意匠があちこちに点在しているが、全て霊的・オカルト的な意味を持たせた結界の一部。
尼寺ネキの趣味でよく法要(意味深)が開かれている他、時折黒札・現地民問わず捜査系異能を扱う訓練のため弟子入りしてくる異能者がいる。
・若守&壇出
タマヤ与太郎様『【カオ転三次】TS^2ようじょの終末対策』、主に『転生ようじょ、関係者がキレる。』より。
ガイア連合福島支部に所属する現地民金札コンビ。リンボニキが経営する探偵事務所の所員であり、ガワはFGOのダンテ・アリエギーリとモリアーティ(ルーラー)。
今回は北神奈川の梵泥寺で修行中。
ちょうどいいところにいた、くらいの理由でアリスにダブルドライバーを渡され、二人で一人の仮面ライダーに変身する羽目になる。
壇出がボディサイド、若守がソウルサイド担当。
なお、ちょっと話に出てきた若守の妹については……探偵で、モチーフがモリアーティで、髪色も比較的近いという繋がりで。
・犯人
今回の道化枠。
とある霊能名家の所有する洋館に見習い執事として潜入し、連続密室殺人を企てるも、ちょうどその場にいた壇出と若守に正体を暴かれ、打倒された。
本来はメシア教会過激派の中では事務員その1くらいの立場だったのだが、天使の雑な無茶振りで降ってきた仕事を、適当な上司に押し付けられた末、単身で聖母候補()を確保すべく洋館に乗り込んで殺人事件を引き起こした苦労人。
ミステリ大好き。
当人がロクな異能を持っていなかった事もあり、本当は大真面目にかなり緻密な密室トリックを練っていたのだが、壇出と若守が「死亡した犠牲者を蘇生魔法で復活させて話を聞く」とかいう非常に雑でミステリーブチ壊しだが実際有効なやり方で台無しにされ、ついでに黒歴史ノートを発掘されてキレる。