(仮題)ブラウニーの特異個体として扱われています   作:セレンディ

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ラスオリの少ないな……じゃあ私も書くか……そんな駄文

こういうやつがこの時系列にいたら何してるかな、が基本コンセプト
そしてその影響がまさに風が吹いたら桶屋が儲かるが如く転がってゆくやつです

ここから4話はいわゆるプロローグ的なやつ


発端(1/4)

『ザザ……ピッ』

 

 意識が浮上する。

 荒涼とした風が頬を撫で、そこに含まれた鉄と火薬の匂いが鼻をくすぐる。

 

『ザ……ピッ……生命反応……! 第7分隊、誰か生きているのか!?』

 

 目に光が入り、遠くから銃砲の音が響く。

 ざぁっと何かがやってくるような感覚がして、その直後から体の感覚が発生する。いや、復活したと言った方がいいか。

 

『ザザ、ザー……ピッ……第7分隊、応答せよ! 第7分隊! 誰でもいい! インペットでもノームでもレプリコンでもブラウニーでもいい! 生きているなら応答してくれ!』

 

 目を開けば、青い空と瓦礫の山が目に入ってくる。

 体を起こせば、周囲には死体の山。

 不思議と若い娘だけの死体が周辺に転がっていた。というか、この状況で自分も死体の仲間入りしていないのは何故なのだろうか?

 そんな疑問が頭を掠めたが、近くに転がる通信機をつかむ。

 操作は言われるまでもなく解るようなデザインだ。

 

「はい」

『ザッ……ピッ、その声はブラウニーか? ブラウニー……8846番? 第7分隊、全滅したはずではなかったのか? 現状を報告せよ』

 

 凛々しい声。脳裏にマリーという名前が浮かぶ。

 周囲の死体それぞれにも名前が浮かぶ。インペット、ノーム、レプリコンが数人、イフリートが1人、ブラウニーが沢山。自分もブラウニー。ふと、見下ろせばぴっちりした戦闘用スーツのお腹に大穴が空いている。自分が寝ていたあたりには血と内臓がたっぷりとぶちまけられている。

 明らかに致死量の出血と損傷だが、今の自分の体にはかすり傷ひとつない。スーツの破れた、あるいは穴が空いた部分の下に一切の傷がない。

 

そして、ここに至る状況の記憶がない。名前も何も思い出せない。ブラウニーが自分の名前であるようだが、それは自分の名前ではないという確信がある。自分は何をしていた? ただの勤め人ではなかったか? 戦闘用ではないスーツに腕を通し、オフィスのデスクが主戦場。キーボードを叩き、割とその場限りの芸術品をつくりあげるのが仕事だったはずだ。

 

「……現状は報告できる。つい今しがた起き上がったばかりで、周辺にはバイオロイドの死体と瓦礫しかない。見渡す限りで生きているのはわたしだけ。経過報告は不可能。現状認識の開始がつい先ほどだからだ。わたしはなぜここにいる? わたしはオフィスワーカーではなかったか? 私の誕生日は19XX年のはずだが」

『ザザザ……ザー……ピッ……記憶の混乱か? ブラウニー8846。だが今は2113年だ、そしてお前は兵士だ。私の命令には従ってもらわねばならん。今は死にかけのブラウニーですら貴重な戦力なのだからな。残存戦力がいたら取り纏めて指示下に入れて、周辺状況に変化があったら報告を入れろ。そして、HQに群がる鉄虫に攻撃を行え。撤退は許されん』

「……了解した。後で色々と聞かせてくれ」

『ザ……ピッ……この状況を切り抜けられたらいくらでも付き合おう』

「……。ブラウニー8846、殲滅任務を開始する。ブラウニー、アウト」

 

 状況はわからないことだらけだが、とりあえず現状を切り抜けねばならない。

 私のものと思われるライフルは真っ二つだったので、死んでいる別のブラウニーのそれを拝借。予備マガジンも、持てるだけ。服を剥いで即席の鞄を作る。

 レプリコンの軽機関銃と、インペットのRPGも一揃いずつ。きっと役に立つ。

 発泡コンクリートグレネードは品切れだった。むべなるかな。

 イフリートの迫撃砲は流石に持っていけない。重すぎるし、大きすぎる。

 瓦礫の向こうに、レッドフードの死体とチャリオットを見つけた。機動力向上は幸先がいい。

 エンジンにも問題なく火が入った。

 HQとはどこだ、とも思ったが、銃砲の音がする方で間違いあるまい。

 音もなく浮遊するチャリオットに乗り、ハンドルを捻る。バイクとはまた異なる操作感に多少困惑するも、360度移動可能なこれはなかなか便利だ。

 道すがら、発見したチックを搭載火器で始末しながらHQへとひた走る。

 

 それにしても、2113年か。

 確か、人類絶滅の前年だったか……。

 ラストオリジンという単語が頭に浮かぶ。

 そう、ラストオリジンだ。

 ゲームだ。ゲームだったはずだ。

 ムッチムチのボッインボインだったはずだ。

 T1ゴブリンの一件を教訓に、女性ホルモンがマシマシの調整を受けている、だったか……事実、今の私のブラウニーの身体も、前の職場にいれば不躾な視線の集中砲火を連日受けていたに違いない。

 

 レッドフードのチャリオットはとても使い勝手がいい。が、そもそも残弾が少なく、燃料も残り少ないようだ。であるならば、置物となってしまう前に、最後の使い方としてはこうするのがベストであろう!

 トリガーを射撃状態で固定しつつ、ハンドルもフルスロットルに固定して飛び降りる。向かわせる先は鉄虫連結体、確かストーカーといったか……よく狙って、狡猾に後方を狙撃してくる手合いだ。もっとも、インペットのRPGで誘爆させたチャリオットに巻き込まれてもういないが。

 市街地という地形は基本的に攻めている側に不利に働く。移動する側は遮蔽を用意しにくく、守る側はその逆だからだ。よって、攻撃のために姿を晒しており、なおかつそこを後ろから急襲した私にはとても都合の良いことに、レプリコンのライトマシンガンにより丸ごと薙ぎ払えるということになる。

 ガガガガガ、と銃声を奏でるたびに、その先のチックやら何やらが弾けて倒れる。時折誘爆による爆発がさらに発生して、追加でその周辺が薙ぎ倒される。

 

 ……納得がいかん。

 こいつら、非常に脆い。1-X前半代とかそういうレベルの耐久性だ。なぜこんな連中にやられる? 脳波で人間と誤認したか? いや、指揮者がいる以上それはあり得ない。

 疑問は後回しだ。HQ外部はあらかた排除し終えたので、次は内側の虫を排除する。

 ようやくブラウニー本来の武装、F2060の出番だ。今までは遠すぎたりもっと適正な武装があったりで出番がなかった。弾薬庫もあるだろうし、どうせ戦死者からの回収もできる。弾薬節約はそこまで考えず、押せ押せで行くか。

 

 

「もはやここまで……か」

 

 マリー3号はなんとはなしにつぶやいた。

 鉄虫の撃滅作戦のために作られた司令部は、今や風前の灯であった。

 交戦開始から程なくして、互いに凄まじい消耗戦となり、母数が多かった鉄虫側にじわじわと追い込まれ、司令部が包囲され。陣頭指揮を取っていたが、狙撃により重傷を負い、後方の司令室に放り込まれそこから指揮を取るも形勢はちっとも立て直せず。包囲の外側の生き残りをかき集めて攻撃させたが焼石に水。司令室入口の隔壁の向こうから爆発振動が伝わってきて、そこまで押し込まれたかと考える傍ら、ついには出血が多すぎて意識が朦朧としてきた。

 と、司令室の隔壁が開く。破壊されるのではなく、開いたのだ。

 

「誰だ…?」

 

 目を向けた先にいたのはブラウニー。

 だが、その冷たい目と雰囲気は、以前見たブラウニー8846とはかけ離れていた。あまりの目線の冷たさに、死神が姿を借りてやってきたのか、とでも非現実的なことを思ったが、当人はマリーに近寄ると手当を始めた。

 

「いい……もはや致命傷だ。緊急修復材も使い切った」

 

 そう、バイオロイドとしての頑健さでまだ生きているだけのことであり、出血がいまだ止まらない以上、自分の死は確定していることだった。

 

「約束が違うぞ」

 

 ぽつ、とブラウニーが言う。見た目の印象はかけ離れているのに、声は以前と同じだった。

 

「私の話に付き合ってくれるのではなかったのか?」

「それは……すまないな。記憶の混濁ではなく引き継ぎだとすれば、トモの突然変異個体とそれから続く慈悲深きリアンへの継承だが、ブラウニー8846にそのような様子はなかった」

 

 ごほごほ、とマリーは咽せる。

 

「そもそもコードがT2のブラウニーにそんなことはあるはずもない。であれば……だ。いいか、笑わずに聞くといい。お前は異世界転生を果たしたのだ。元の人物……この場合はバイオロイドだが、そやつが死んだ時に完全回復して入れ替わる形でな。でなければ、早期に全滅したはずの第7分隊に生き残りがいるものか」

「……」

「ちなみに……笑うところだぞ? 案元はイフリート311の持っていた雑誌だ」

「……」

「……どうした? ああ、私は自己の存在は、それを認識する自意識が最も確りとしたものであり、コギト・エルゴ・スムということ以外に考える必要は」

「そうではない」

 

 マリーの言葉をブラウニーが遮った。

 霞む目で見上げてみれば、困惑したような、苦笑するような顔をしている。

 

「私の記憶では、2020年少し前程度か、その辺りでは、そのような内容の小説が流行ったのだ。だから……私もまさかとは思っていた。だが、いくらあり得ないようなことでも、状況に合致するならば納得するしかあるまい?」

 

 マリーは絶句した。だが、先ほど自分が言いかけた通り、要は自分がどう思うかだ。

 例え今の時代、胡乱な目で見られようとも、『転生者』というアイデンティティがある事は、マイナスではあるまい。

 早晩、人類は絶滅するだろう。

 鉄虫による侵攻を食い止める手段はもはやないに等しい。メイやレアによる大規模破壊を行なっても、仕留めきれないものは確実に出る。来たるバイオロイドと鉄虫の時代、どう、すべきか。どう、生きられるだろうか。

 まあ、彼女次第だろう。

 

「さて……そろそろ、疲れた。少し、眠る」

「……ああ。おやすみ」

 

 ブラウニーの返事を聞いて、軽くフッと笑うと、マリーは眠った。

 

「……」

 

 ブラウニーはマリーを数秒見つめた後、踵を返すとそこにあった煙草を手に取る。同じくそこにあったライターを使って火を着けると一服。後は「いつも通り」煙草を胸ポケットにしまおうとして、煙草はブラウニーの豊かな胸に弾かれて床に落ちた。

 

「……」

 

 煙草を拾い上げ、机にライターごと置くと、ブラウニーはそのまま司令室を出た。

 

「まずは墓か……」

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