(仮題)ブラウニーの特異個体として扱われています 作:セレンディ
さて、端的に述べよう。
あれから、およそ60年ほどが過ぎた。
端折りすぎと我ながら思うが、まあ仕方がない。
スチールラインの旅団1つまるごとを弔った後、私は別のレッドフードのチャリオットを整備して、物資弾薬を積んだカーゴを牽引しながら当て所ない放浪へと身を躍らせた。
いや、本当に当て所などないのだから。覚えている限りの年表でも、鉄の王子が眠ってから次の行で人類はヒュプノス病により全滅、さらにその次の行では2171年で21分隊が主人公を発見する、という内容だったし、その間の内容も実は大したことが無い。いや、エヴァがヒュプノス病対策を見つけていたんだったか? まあいい。
スチールラインの制服は放浪を始めて割とすぐに脱いだ。替えが手に入らなかったのもあるが、私がブラウニーなのはほぼ見た目だけだという自覚もあるからだ。
レモネードは当然のようにこちらに接触してきたが、レモネードはレモネードでもそれがアルファからオメガの間の誰かがわからない。旧人類滅ぶべし的な感覚は変わらないので、相手が万一オメガだったら面倒臭いことになることもあり誘いは蹴った。当然向こうは怒っていたが、知ったことではない。
ラビアタの抵抗軍には普通に接触した。とりあえず、彼女らには私はブラウニーの特異個体として扱われている。集めてきた物資と引き換えに、足りない食糧や健康診断、あるいは私が何者なのかの調査をしてもらったり。つまるところスカベンジャーとしてのライフスタイルを成立させていたのだ。
そこで小耳に挟んだことだが、どうも人類滅亡前は、レベルとリンクの概念が無かったらしい。驚きだ。そして、さもありなん、とも。ノーリンクLv1であれば、それらを大量投入したところで……である。かのスチールラインの旅団が壊滅したのもそれが理由だろうか。
そうだね、バイオロイドには人権もないし、戦争の場では使い捨てだもんね。
とすると、マリー4号の副官だった歴戦個体のブラウニーはレベルとかが上がっていたのだろうか?
ちなみに、診断してもらったところ、私はリンクの形跡はないが、作業効率は推定10リンクだそうである。
「……10?」
と診断してくれたドクターに聞き返してみたが、
「うーん、テスト結果は理論上の最高効率である5リンクをはるかに越えた性能発揮なんだよね、だからそう表現するよりない……という感じ」
とのこと。
「あとね。あなたにはそもそもの運用モジュール自体がないよ」
「……は?」
「体とかはちゃんとバイオロイドブラウニーなんだけど……あるべき軍用兵士としての運用モジュール自体が見当たらないの。ちょうど分解してモジュールを資源にしちゃった後みたい」
「……私が様々な銃器やビークルを扱えていたのはモジュールのおかげだと思っていたのだが」
「こっちもだよ。それなのにあの作業効率だし、試してもらえば試してもらうだけ全部軽々と扱ってくれるし、訓練過程とかどこいったの?」
「持てば使い方が頭に浮かぶので、てっきりモジュールとばかり」
「……なんなの、オカルトかなにかなの?」
「私、何者?」
「だからこっちが知りたいよ!」
とまあ、私の正体不明っぷりがよーくわかっただけで、特にそれ以外の進展はなかったのだ。
で、なんで60年弱が経過したのかがわかったのかと言うと、ここ最近だが、積極的にこちらを襲ってこなかった鉄虫が、行動をいわゆるアクティブモンスターへと切り替えたからだ。関連性は知らないが、主人公が見つかったあたりで、鉄虫が行動を変えたらしい。まあ、人類がいなければ鉄虫からみてまあ大体無害なバイオロイドだが、人類の生き残りがいるのであれば話は変わってくるからであろう。
私自身、何でもかんでもどうにかできるとは思っていないが、逆に戦力としての価値が低いとも思っていない。
そこで、ラビアタの抵抗軍に連絡を取る……取りたかったのだが、そういえば初期はラビアタに連絡がつかないのだったか……? 21分隊の位置を聞きたかったのだが、まあ仕方あるまい。彼女ら、あるいは司令官も含めた彼らは常に戦力増強の要に駆られているはずで、ゲーム上は表現しきれていなかったが勧誘や救出がその下にはあったはずであるので。その電波をキャッチできればこちらからでも出向く事はできるだろう。
……というところで本日の鉄虫の襲撃である。うぜえ。