(仮題)ブラウニーの特異個体として扱われています 作:セレンディ
サプレッサー付きのライフルで、遠距離からナイトチックのボディを貫く。
ハーベスターのコア部分をふっとばし、ナイトチックシールダーをシールドごと貫通させ、ビッグチックも問答無用で射殺。
本来、ブラウニーはF2060ARを使うので交戦距離はかなり近いものとなるようだが、武装にとらわれない私はそんなことはない。遠慮なく、遠距離から狙撃してぶち抜いてやる。時折、反撃かあるいは制圧射撃のつもりか、いくらか銃弾が飛んでくることもあるが、こちらの位置を捉えきれていないのか少しずれた所に飛ぶので避けずとも掠りすらしない。
そうやって、進路上の鉄虫をなぎ倒し、時に弾薬節約のために貰ってきたチタンカタナ(そう、魔法少女マジカルモモの装備である)でスパっとやったり。
私の戦闘能力もそうだが、この鉄虫すら切断できるカタナは一体どうなっているんだ……?
さて、それはともかく、鉄虫に乗っ取られた廃工場、地下通路、渓谷に隠された研究所、とあんまり覚えていないが確かキーワードだったよな、特に最後。とはいえ、もはやほぼ覚えていないに等しい。
ので、IFFにて強めに信号をぶちまける。ちなみに、認識情報はマリー3号の旅団所属時のままのものを使用した。
これで応答があればいいのだが……。
◆ ◇ ◆
「っ!?」
マリー救出作戦の最中、突如グリフォンが驚いた顔をした。
「どうした? グリフォン」
気になったので問いかけてみると、
「ちょ、ちょっと人間!? 鉄虫の群れの反対側に、スチールラインの旅団員の信号が現れたの!? どういうこと!?」
?
こちらが聞きたい。
「どういうことだ? スチールラインの旅団員ということは、マリーの信号か? それとも援軍か?」
「隊長の信号じゃないわ! えっ、これ、しかも、60年前に壊滅した旅団のIFFじゃない! どういうこと!?」
だからこちらが聞きたいが、正体不明存在、一応推定援軍と考えていいのか?
「……マリーの救出作戦を遅らせるわけにはいかない。一応友軍として考えるが、欺瞞情報だった場合の備えをしておいてくれ」
「了解よ!」
「かしこまりました、ご主人さま」
現状の現場リーダー、コンスタンツァの返答を以って指示通達完了として、救出作戦を進める。
信号の位置は、プレデターの推定位置とも違う角度で動いている。ちょうど、救出部隊、プレデター、信号の位置で三角形が描ける感じだ。
「正体不明……敵か、味方か……」
俺以外誰もいない発令所に、つぶやきは消えていった。
適宜指示を出しつつ、救出作戦は続く。邪魔な鉄虫を排除しつつ進むが、信号方面からの鉄虫の圧力が低い。
これはひょっとして本当に援軍なのか? と考えているところで、ついに信号の主と接触する。
「信号、接触しま……」
「ひいぃぃぃぃぃぃっ!?」
突如、ブラウニーが悲鳴を上げた。
「どうした!?」
「れ、レッドフード大佐っすか!?」
「……い、いえ、大佐のチャリオットですが、乗っているのは違います! あれ、は……えっ、ブラウニー!?」
映像が回されてくるが、確かにあの顔はオルカにいるブラウニーと瓜二つだ。一方で、見たこともないチャリオットに乗り込んで縦横無尽に走り回りつつ鉄虫を片付けていく。こちらに攻撃してくる様子がない以上、援軍と考えてよいのだろう。
「……とりあえず敵ではないようだな。鉄虫の排除を続けてくれ」
◆ ◇ ◆
「ひいぃぃぃぃぃぃっ!?」
よくわからないが、接触した瞬間向こうのブラウニーが悲鳴を上げた。
「れ、レッドフード大佐っすか!?」
「……い、いえ、大佐のチャリオットですが、乗っているのは違います! あれ、は……えっ、ブラウニー!?」
あー。
隣のレプリコンも引きつった顔をしているが、あれか。一種の最上級鬼上官らしいからな、レッドフード。
とはいえ、話をするにはまだ状況はゆっくりしていられるものではない。
「援護する。話は後だ」
「りょ、了解っす!」
「了解しました! 援護に感謝します!」
さて。後は後ろは彼女らに任せて、チャリオット搭載のミサイルで薙ぎ払い、撃ち残しをARで始末する。無論、彼女らとて黙ってみているわけではなく、時折グリフォンのミサイルが鉄虫を吹き飛ばし、あるいはボリ(コンスタンツァが連れている犬)が突撃して足止めを行ってくれるのは素直に助かる。
……さて。
本来の戦力でも成功が約束されている状態で、他のバイオロイドに指揮は出せないが自分で作戦立案みたいなことをして自分で動けて火力もそれなりにあるやつ(つまり私)が加わったら、作戦成功率はどうなるでしょーか?
答えは反撃をもねじ伏せるオーバーキルである。
「隊長~~~!!!」
ココがホワイトシェルから飛び出し、マリーに抱きついて喜んでいる一方、マリー本人は大声を出すなとかよくやったとか喜んでる二方、ヤニが足りなくなってきたので一服する私。
「そこのブラウニー……ブラウニーなのか? 随分と雰囲気が違うが……」
「そうよ、あなた何者? 私達の部隊にあなたみたいなのいなかったわよ!?」
マリーの言葉に反応して、こちらに誰何の声を上げ始めるグリフォン。
まあ、戦闘前にタバコ吸うわけにも行かなかったので禁煙していたせいでヤニが足りなくなったのを我慢できなかった私も悪いが……ということで、携帯灰皿にタバコを消して入れて。
「っと失礼。元、マリー3号麾下旅団所属のブラウニー8846です。現在はスチールラインを退職し、拾得、あるいは再生品を使っての資源回収業を営んでおります。有り体に言うと、ブラウニーの特異個体のよう……自分ではよくわかりませんが」
「で、そのスカベンジャーさんが何の用で、私達を援護したの?」
……なんだろうこのツンデレ疑り深いな? ここまできたら答えなんぞ一つだと思うが……
「そりゃ、人間様が見つかったなんて通信で言ってたら、合流しに来るに決まってるでしょう?」
『知ってたのか』
人間男性の声がする。ホログラフィ表示はない(こちらに投影機器がないからだろう)が、彼が最後の人類、司令官ということだろう。
一応は警戒してこちらに声が聞こえないようにしていたのだろうか? 警戒感を持つことは悪いことではない。
「ええ、それは。なんで知ってたかは後でお話します。私がなぜ特異個体と言われるかにも関わっているので」
『うん……? まあいい、わかった。一旦帰還してくれ。補給と次の作戦の準備をするぞ』
「そうだな。私も、司令官に報告したいことがある。あの異形の鉄虫の誕生理由など、な……」
と、いうことで、私は無事オルカに合流を果たしたのだった。