(仮題)ブラウニーの特異個体として扱われています 作:セレンディ
今更だけどまとめてしまっても良かったかもしれない。
「なんとまあ……」
イフリート331が持っていた雑誌(中性紙化処理済み)を読んでもらい、マリー3号が半分冗談ながらも提示した可能性――死亡したタイミングで入れ替わる異世界転生という筋書き――が、最も状況に説明をつけてくれる、ということに司令官は感嘆の声を漏らした。
「念の為添えておくと、それが正しいと信じろといっているわけではありませんよ?」
「そうなのか?」
「何を以って信じろというのです? 確かに私はブラウニーの特異個体ではありますが、それはこの事の根拠にはなりませんよ? というか、証明などできませんから、私はLRLのような言動を心底信じ込んでいるような、あるいは伝説エンターテイメントのような現実と設定を混同させられているようなタイプかもしれませんよ?」
「スチールライン、ひいてはブラックリバーにそんなブラウニーを製造したという話は聞いたことがないな」
証明しようがない話に、極端な例を挙げて話を終わらせようとしたところ、同席していたマリーが口を挟んでくる。
「……まあ、証明などできないしするつもりもないということが言いたいのです。オルカに合流する意思はあるし作戦行動上で協力するつもりもあります。ですが一般的なブラウニーと性格が異なるので、スチールラインの指揮系統に入るとトラブる可能性があるため独立個人系統として取り扱ってほしい、ということです」
「後半は初耳だが」
「申し添えようとしていたんですよ」
……なんかよく話の腰を折られるな。
「個人的に得意と自負してることは、廃墟都市を探索して資源をかき集めて回収してくることと、斥候ですね。機動型のような探索は効率で劣りますが、鉄虫に見つからないように物資とか情報とか集めてくることは得意ですよ……どうしました?」
「いや……うちのブラウニーと随分と違うんだな、とね」
「呼称上の区別がほしいのであれば、別言語呼びのブラナッハとか、あるいは転生のとかの枕詞をつけるとか……奇跡のトモみたいな」
「ブラナッハで行こう。枕詞は慣れると結局使わなくなる。みんな、マリーは『不屈のマリー』『4号』だがそう呼んでいるのを聞いたことがない」
「了解いたしました」
ということで私はブラナッハとなった。
「ところで奇跡のトモってなんだ?」
「あー……」
口が滑ったな。まあいいか、過去の特異個体に目を向けて調べればすぐ判ることだし、キリシマスキャンダルというどデカイ事件にも関わってるし。
「080機関のトモは代名詞がバカなぐらい頭が悪いですが……いや、親しみやすさとか学生に溶け込むためにと意図的にそうなっているのですけれどね、突然変異で物凄く頭の回転が早くて思慮深い性格になった個体がいるんですよ。回収されたその個体を元にして新たなバイオロイドが製造されたりした経緯がありまして、なかなかに有名でした」
「ほう……詳しいな」
「単なる雑学ですよ。私がブラウニーの特異個体だというのも納得していただけましたか?」
「……そう……だな……そうだな、認めざるを得まい。正直、単独での資源回収などという危険極まりない任務につかせるぐらいなら、希望を無視してでも私の指揮下に加えたほうがいいと思っている」
だからか、やたらと関わってくるのは。
「ブラウニーとは性格がまるで違うので指揮系統に馴染みませんし、逆に分隊長とかに据えられても指揮能力なんてありませんよ。総じて部隊行動に向いていません」
「ブラウニーの歴戦個体が私の副官を務めていたこともある。できるさ」
「あー……有名でしたね、彼女は。とはいえ奇跡のトモがバカさ加減で溶け込むことができないように、私に軍隊行動をさせても雑兵以下にしかなりませんので」
「だがな、」
「……マリー、そこまでにしておこう。やる気が無いものを無理に引き込んでもお互い不幸になるだけだ」
「……はい。閣下がそうおっしゃるのならば」
バレないようにため息をつく。
良くも悪くも部下を見捨てられないのはマリーの長所であり欠点でもある。3号の死因もおそらくは部下をかばって、だろうからなあ……。
ともあれ、司令官の介入でようやっと諦めてくれたようだ。
さて、ここからは自由にやらせてもらうとしよう……。
さらに、さて。
さっきも述べたように、本来の戦力でも勝利できる所に、私があの手この手で支援すると仮定しよう。するとどうなるか?
キム・ジソクの墓所を制圧するまで非常にサクサクとオーバーキルできたということだ。