(仮題)ブラウニーの特異個体として扱われています   作:セレンディ

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リーゼとソワンとリリスに縛られてた話

 さて。

 唐突だが、私は今椅子に縛り付けられている。

 鋼鉄ワイヤーも編み込んであるタイプの荒縄で、なおかつ濡らされているので縄抜けも難しい。バイオロイドとしての膂力を十全に発揮すればもしかしたら引きちぎれるかもしれないが、その場合はこちらを見ている3人のうち誰かもしくは複数に取り押さえられることだろう。

 

 そう。

 

 私を椅子に縛り付けている下手人どもは、

 

「くふふっ、くふふふふふふふっ」

 

 リーゼと、

 

「……(無言でナイフを研いでいる)」

 

 ソワンと、

 

「いいえ、私達はちょっと協力していただければ、すぐにでも解放するつもりですよ?」

 

 リリスである。

 

 なお、同室のブラウニー(レベル100フルリンク)とブラウニー×2(モジュール撤去済み艦内作業員)も同じように椅子に縛り付けられている。

 

「なななななななんなんっすかぁー!?」

「はなせっすぅー! 暴力反対っすぅー!!」

「ほ、捕虜への虐待は条約で禁止されているっすよぉー!?」

 

 非常に喧しい。

 とりあえず私も一般ブラウニーの振りをしておくべきか。ついでにジタバタしておく。

 

「ていうかなんで自分達は縛られてるでありますか!? 説明を要求するっすぅー!」

 

 なんと言おうか、縛られる段階の記憶がない。気づいたら椅子に縛り付けられていたのである。

 

「だって、害虫のせいで害虫が2匹、増えたでしょう……?」

 

 うわ、私のせいか。ていうか、まあ、簡単に想像できた事態ではあるわな……。

 

「ですので、私達にも協力してもらいませんとね?」

 

 ……笑顔なのに怖いリリスマジコワイ。

 

「ブラナッハのアホー!! マジキチ三人衆のトリガー引くとか何考えてんっすかー!!」

「文句はブラナッハに言えっす、自分じゃないっす!」

「合法的に戦闘から逃れられたけどイフリート伍長に八つ当たりされるし襲われるし散々っすー!!」

「だーかーらーなんで自分達は縛られてるでありますかー!!」

「うふふ。明日からは、配膳のミスで何かが入ったのかもしれませんので気をつけないといけないですね」

 

 マジかよ、そこまでするか。

 晩飯の配膳の時に、アクアが水をこぼしてやたらと、過剰な具合に謝ってきていたが、もしかして実行犯は(リーゼに脅された)彼女か? よくよく思い返してみれば、顔色が青いしいささか挙動不審だった気もする。

 

「それで、ブラナッハさんはどなたでしょう?」

「自分じゃないっす!」

「自分でもないっす!」

「自分も違うっす!」

「私はモジュールがあるので確定で違うっす!」

「あー! 戦闘能力があるんだから自分達を救えっすー!」

「へるぷみー!」

「みすてるのはんたーい!」

 

 ずばぁん!

 

 私の足元に向けて、リリスがマテバのトリガーを引きやがった!?

 

「うるさいですねえ……素直に誰がブラナッハさんなのか白状してくれませんか? 出ないと私、引き金を思わず引いてしまいそうです」

「いや、今引いたっすよね?」

「引いたっす引いたっす」

「死にたくないっすぅー!」

「ああ、安心してください、暴徒鎮圧用ゴム弾なので痛いだけです、死にませんよ?」

 

 それは死ぬほど痛いけど死ねないの間違いじゃないですかねえ……。

 

「……」

 

 と、それまでずっと無言だったソワンがふっと進み出ると抜刀というか抜包丁して、私の首筋にぴたりと当てた。よりにもよって私に! 鉄虫相手にも使うあの包丁を!

 

「あなたですわね……ブラナッハさんは」

「ち、違うっす、ちがうっすよぉ……」

「いいえ、あなたですわ……元がブラウニーだからでしょうか、ブラウニーの演技がとてもお上手ですわね、わたくしでも見分けがつきませんわ……でもあなた、以前わたくしが厨房の手伝いをさせようとしたら、喫煙者が厨房に入っていいのか、と断ったでしょう……?」

 

 げっ

 ソワンは、顔を近づけ私の首筋の匂いをすんすんと嗅ぐ。

 

「タバコの匂いがしますわ……」

 

 ジャキッ

 ガシャッ

 

 次の瞬間、私の頭にマテバ、首筋逆側にリーゼのハサミが押し当てられる。二人とも表情がクソ冷たくて怖い!

 つーかまあ、縛られていた段階で詰んでいたと言えなくもない。

 

「はぁ……わかったわかった、協力させてもらうよ、力になれるかどうかはわからんけど」

「わからないじゃなくてなるのよ害虫!」

 

 こわっ!?

 

「いや、そうじゃなくてね、あー、もー……とりあえず話しにくいからコレ解いてくれない? 他の3人も解いてあげて?」

 

 

 ■ ◇ ■

 

 

 縄を解かれたブラウニー達は、ものの20秒ぐらいで逃げ去っていった。

 

「ブラナッハのことは忘れないっすよぉー!!」

 

 とか言い残して。縁起でもねえ!!

 

「はぁ……まあ、さっきも言ったけれど。謙遜とか言い逃れとかそういうの関係なく、私の助力なんてあなた達にはいらんのよ」

 

 改めてソワンが淹れてくれた紅茶を4人で囲みつつ、私は3人にそう告げた。

 

「どういう意味でしょうか?」

「今から説明する。基本的にあなた達は単品では……完全にとは言わないが、少なくとも司令官にとってはなんら問題がない。むしろ好ましい部類に入ると思ってる」

「でも……ご主人様は私を寝室に呼んではくれないわ……」

「そりゃそうだ。司令官への執着が確かに目立つかもしれないが、あなた割りと、メイと一緒で随分と乙女趣味というかなんというか。まあともかく、普段の落ち着いている時のあなたを見ていればそれぐらいわかる。で、私たちの個人個人を大事にしてくれる司令官が、その辺りのことを無視してベッドに呼ぶと思う?」

 

 興奮状態が去って、落ち着いてきたのか沈んだ声で言うリーゼに私はストレートにそう告げる。

 

「……」

 

 ……無言で照れるんじゃありませんよリーゼ。

 

「では、私は?」

「あなたは純粋にタイミングがないだけ。警護隊長なんてしてるから普段から近くにいるけど、その分こういう潜航移動中でもない限り気が抜けないし、仕事中に逢引の約束を持ち出せないぐらいには真面目だし……コンパニオンシリーズの姉妹の面倒を見ているから余計に時間がない」

「む、むぅ……」

 

 言い淀むリリス。

 

「では、わたくしは?」

「……あー、すまん、あなたならちょっとは助言ができるかも。あなたは譲歩という名の協調性を覚えて。オルカの乗船人数がまだ少ない今ならまだしも、今後ずっと司令官を独占なんてできるわけがない。特に、あなたじゃないソワンが今後何十人とやってくるだろうしね。嫌な言い方だけど、その中に譲歩ができて協調性の高いソワンがいないとも限らないでしょ? おうそこでナイフ出すのはやめーや」

「ですが……厨房を私以外に任せるなんて考えると、絶望に沈みそうですわ……」

「分担しろよ……あなたはシェフ。世の中には他にもパティシエだのバーテンダーだのバリスタだの板前だの色々いるじゃない」

「……」

 

 完全に納得はできないだろうが、とりあえずソワンは黙った。

 

「あと」

 

 ここからが本題である。

 

「あなた達には1つ、ものすごく大きな問題がある」

 

 3人に視線で促されて、続きを語ろう。

 

「お互いに足引っ張るんじゃないよ」

「……は?」

「この間、唆されたのもあるが抜け駆けしようとして水着をカットしちゃったな? リーゼ。リリスはリリスでオードリー・ドリームウィーバーに一服盛ろうとしてたし、そもそもリーゼを唆したのはソワンで一服盛る薬剤の出所もソワン」

 

 一拍おいて続ける。

 

「ぶっちゃけ、あなた達が互いに足引っ張りあったりしなければ、余裕で全員司令官に抱かれる余裕はあったと思うぞ。足の引っ張り合いしなければ!」

 

 自覚があるのかなんなのか、反論は飛んでこない。

 

「そんで? 私が協力してどーにかしろと? まーネオディムは私と司令官が両方大ポカやらかした結果だけど、メイはちゃんとメイ自身が努力した結果だぞ? というか、お前ら私が司令官に何か言って、それが理由で司令官に抱かれるとかなんとも思わないわけ?」

「……ぐうの音も出ませんね。ですが、その場合私達はどうすればいいのでしょう? このままではまた足を引っ張り合い、膠着している間にまたネオディムやメイのような輩が出てくるのは判り切っています」

「……頭のいいあなた達が気づかないとは思えないから、認められないだけだと思うがなー。積極策で言うなら共同戦線。3人で連れ立って司令官の部屋に夜に突撃してこい。もちろん穏やかにな、穏やかに。あるいは日中にアポ取っとけ。それが無理だって言うのなら、消極策……この場合は非戦条約だな。全員が一回以上抱かれるまで、お互いがお互いのやることに口や手を出さない。どれだけお互いが気に食わなくても。……と言っても、3人の中で自分以外が司令官のところに行く、とかそう考えたぐらいで腑が煮え繰り返るんでしょ?」

 

 おう、3人とも別ベクトルで顔がこえーよ。

 

「……ああもうめんどくせえ、このまま、ついていってやるから、このまま司令官の部屋に突撃でもして抱いてとか言ってこい。なんだっけな、伝説のあった日本の言い回しで、昼間は淑女、夜は娼婦のように、なんてものがあったんだよ。男の理想像みたいな触れ込みでな。……歌謡曲だっけか……? まあいいや」

 

 紅茶を一口。頬杖ついて、ジト目を向けながら私は問いかける。

 

「で、行くの? 行かないの?」

 

 

 ■ ◇ ■

 

 

「いやほんと、いい歳……いい外見年齢したバイオロイドが雁首揃えて司令官の部屋に行くことすらできないって、幼体固定バイオロイドですか全く……」

「お前はそう言うけどね……! こ、こんな時間にご主人様のところに押しかけるなんて……!」

「……今日だけはその乙女思考は封印しておきなリーゼ……」

「ですが……わたくしも、司令官様の所に抱いてくれと抱いてくれと言いに行くのも、その、ハードルが高いですわ……」

「つーても、そういう恥じらいも割と賞味期限近いんじゃないかな」

「?」

 

 また3人の視線がこちらを向く。

 

「今はいな……あー、いるか? まあ、そう言うのに積極的なのは今でも一応バトルメイドプロジェクトの子にいるわけだからさ。そのうち、人類再興も兼ねて毎日3人もか4人ずつ抱く時が来るとしたら、もはや埋没するわけだよ。だから、早めに手を出しておいてもらう、というのも大事なんじゃないか、ってね」

「……すでに抱かれた事がある側としての余裕ですか?」

「そんなんじゃないよ」

 

 話しつつ、最後の角を曲がり、司令官から(肉体関係持ちにいつでも来ていいと)配布されているセキュリティカードを通して艦長室のドアを開ける。やべ、何そのカード、って視線が後ろから三つ。

 

「司令官、いきなりですみません、少しお話とお願いが……」

「ごしゅじんさまあああああああぁぁぁぁぁぁぁ…………」

「。」

 

 あろうことか。

 

 艦長室の休憩、応接、談話スペースのソファの上で、司令官に対面座位の形でしがみついているのは……なんとアクア。くっついているだけかと思ったら、部屋に篭る独特の匂いに、2人の混合体液でデロデロの股間が見える(「バイオロイドってマ●汁すげぇんだぜ!」のセリフが頭をよぎる。もしかして私もか?)

 くったりしている辺り、ちょうどフィニッシュ?

 

 ……なんて少しだが思考があらぬ方向を彷徨ったのがいけなかった。

 

 ずばぁん!

 

 リリスがノーウェイトでマテバをぶっ放しやがった! 言を信じるならゴム弾のはずだが、アクアの髪の毛をいくらか引きちぎると、向かいの壁に傷をつける。

 

「あくあああああああああああああああ!!」

 

 激昂したリーゼが突進し、ソワンもそれに追従しようとした……よう、だが……

 お前らもしかして気づいてない?

 やべえ、司令官様、多分激おこ……

 

「お前ら全員止まれ」

 

 ぴたりと、私含めて、4人全員が動きを止めた。

 

「ブラナッハ、ドアを閉めて鍵をかけてコンソールの電源を落とせ」

「はい!」

 

 無論、我が身可愛さに従うのみである。

 

 

 ■ ◇ ■

 

 

 ガクガク震えながらアクアと抱き合って目の前の惨劇から目を逸らしつつ、現実逃避していたところを新手の悲鳴に呼び戻される。

 そんなことを繰り返した忌まわしき夜が明けて、気がついたら全裸で白濁塗れの3人(シザーズごめんなさいマシーンリーゼ、ブラックもうしわけありませんマシーンリリス、ソワン・ザおゆるしくださいマシーン)がイきくたばっており、司令官は司令官で彼のベッドで寝息を立てていた。とても目の前の惨劇を作った張本人とは思えない。

 

 が、現実は現実である……。

 私のせいか? ゲームで見た司令官とはこういうところで性格が違うなあ。

 

 ところで、なんでアクアが? と言うことについては、アクアの話ではリーゼに脅されて一服盛ってしまった事について自首しに来たところ泣いてしまい、慰められているうちにいつの間にか、だそうである。本人曰くネオディムから聞いて色々と知った所に抱きしめられて慰められてで抑えが効かなくなったということだが……私の司令官への好感度は少なくとも半減である。

 いや、リーゼ達が私に何かするつもりだって知ってたのなら助けて欲しかったよ……。




早くもネタ切れの危機
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