(仮題)ブラウニーの特異個体として扱われています   作:セレンディ

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レアに付きまとわれてそれからの話

 さて。

 あれから、ちょっとしたいたずらをしている。

 どういうものかというと、司令官とアクア、あとあの3人に怒ってますよというポーズをして対応を素っ気なくすることである。

 アクアにだけは、本当に怒っているわけではなく、司令官が助けに来なかったことに対してのお返しであるので気にしなくていい、司令官の様子が見てられないようであればばらしても構わない、と伝えてある。特定ワード(ブラナッハ様最高!)を言ってくれればやめるとも言ってあるのだが、司令官がそのワードを言ってくるような様子が無いのでアクアは黙っていてくれているのだろう。

 司令官を含む4人が謝ろうとしてか何かはわからないが、そんな感じで近づいてきた場合はさっとその場を去るか、方針会議などで去れない場合は後にしてくれとだけ素っ気なく。

 オロオロしている4人が愉快である。この間の報いを受けるがいい。

 

 

 ■ ◇ ■

 

 

 さてさて。

 

「ですからー、相談に乗ってくださいよー」

「いや、無理だって、司令官に話したほうが……」

「その司令官からのご推薦なんですよ?」

 

 オベロニア・レアに今現在付き纏われている。

 なんと、つい先日このオベロニア・レアと、あろうことかティタニア・フロストが二人セットでこのオルカにやってきたのである。ゲームとしての実装時期は随分と離れていたが、この2人の開発時期は非常に近く、それもあってオベロンとティターニアのがモデルであるこの2人は、フェアリーシリーズの中でも双子に近い扱いだったと記憶している。が、ティタニアは失敗作とされ、意図的に性格を陰気かつ剣呑なものにされており、極端な言い方をするとにくすべ勢。

 とはいえ、性能が本当に失敗作と言えるかと言うと否。レアのような戦略兵器級の性能を期待していたとしたら、確かにそうだが、レアとアリスのように相互確証破壊を成立させてしまうと逆に出撃できなかっただろうから、これでいいのでは? と思わなくもない。

 そんなティタニアをレアは構い倒していたようだが、当然ウザがられてついには逃げられ、どうにかして仲を逃げられないレベルまで持って行けないか、という相談を持ちかけられて今に至る(構いたがりの姉を名乗る存在と、陰気かつ剣呑で素直じゃない妹、というとどこかで見た気もする)が、んなもん根気よくアプローチを続けて心を開いてくれるのを待つ以外無かろう、というのが私の結論だ。そういうことであれば、私やレアよりも司令官のほうが適任である。

 そういえば、酒を飲ませればいくらか素直になったような気もするが、それとてそれまで積み重ねた信頼、好感度があってこそ。下手に急げば失望させるだけだし、何よりお酒は司令官とこういう条件では致命的に相性が悪く、99以下ではいかにマジ●ンがあろうとも無理にコマしてもは0になって憎悪を募らせるだけである。

 

「あのねえ。だから、急いだって碌なことにならないって。根気よく話しかけ続けて、心を開いてくれるのを待つしかないってば」

 

 レアにも根気よく諭し続けるしかないのだろうか……?

 そんなことを考えていた時だ。

 

「あ、いたー!!」

「?」

 

 後ろから掛けられた声に振り向いてみれば、向こうからトリアイナが走り寄ってくる。

 ただし、いつもの競泳水着風の格好ではなく、バニーガール姿の。

 そう、ただいま満月の夜想曲の真っ最中である。最初にモモが探索をしたいと言って実行し始めてから、しばらくは空振りが続いたと記憶していたが……まあ、ティタニア・フロストが既にいる辺り、私の記憶もそろそろ当てにならないのかもしれない。

 

「何か用?」

 

 ともあれ、トリアイナだ。バニー姿でこっちに来るということは、もう白兎は見つかって、アプローチに一度失敗したとかなのだろうか?

 

「何かじゃないよ、ブラナッハも次の探索交渉チーム入りしてるんだよ! 招集がかかってるのにこの隊長のところに来ないとはどういう了見さ!?」

「?」

 

 確かに、本当に招集が掛かっていたのなら一大事だが、私は今日は休暇である。昨日にその白兎の探索のために、チャリオットであっちこっち移動したからだ。無論、緊急招集も無いわけではないので通信端末は携帯している。そちらを取り出してログを見てみたが、招集が来たログは無い。

 

「招集ログは無いけど?」

「昨日ポストに入れたじゃないか!」

「……なんでポスト? 電子連絡にしてよ、使ってる方が稀なやつじゃん……」

「そこはロマンだよ!」

 

 笑顔で言い切るトリアイナ。こいつ悩み少なそうだな顔してんなぁ……なんて私の内心も知らず、トリアイナは私の腕を掴むと、

 

「ほら、ぼさっとしてないで、それじゃブリーフィングして出発だよ!」

 

 と、走り出そうとする。まあそうなると当然、

 

「ちょっと待ってください、こっちが先約ですよ!?」

 

 レアが止めに入るわけだ。

 

「え、レア、でも今日、白兎が捕捉できたから、探索から追跡と仲間になってくれるように交渉するのに変わったんだよ?

 用が何か知らないけどこっち優先じゃない?」

 

「む、むぅ、それは確かに……わかりました、それじゃあ私も同行します!」

「部下が増えたよ、やったね! あ、でも、レアは大丈夫かな?」

「というと?」

「白兎が頑固だから、みんなも魔法少女になろう、ってことになったんだ。でも、レアって少女って歳じゃないじゃん」

「……」

「魔法少女っていうより……魔法淑女? 魔法大学生?」

「……」

「落ち着け、トリアイナに悪意はないし貶してもいない」

 

 静電気が俄に辺りに充満し始めているが、トリアイナはそれに気づかず、地雷原でタップダンスを踊り始める。

 

「ていうか、レアってどっちかっていうとおばむぐっ!?」

「やめろ!? それ以上を口にするんじゃあない!? うぉわっ!?」

 

 足元でバチッと青白いものが弾けた。

 

「トリアイナさん?」

 

 にっこり笑顔だが目が笑ってねぇ……。

 

「落ち着け、落ち着けレア、びーくーるびーくーる……トリアイナみたいな外見年齢世代からすると、20代は須く相当の年上に見えるもんだ、私も含めてな?」

「がるるるるるる」

 

 ……ふざけてくれるということは、それなりに落ち着いてくれているのだろうか?

 

「はあ……トリアイナさん、後でお説教です、逃げないように」

「はひ! あ、でもブラナッハはどっちかっていうと年下に感じ」

「お前もう喋んな」

 

 

 ■ ◇ ■

 

 

「なんで私まで……」

 

 ぼやく私の姿はバニースーツ。

 あれからトリアイナに連れられて執務室まで訪れれば、流れるようにオードリー・ドリームウィーバーに引き渡され、あれよあれよという間に採寸が始まり気がつけば私はバニーガールコスチュームを身に纏っていた。

 

『グッド。機能性が高い、という理由でいつもあのビスマルク製作業ツナギを好んでいるのは存じていますが、それはそれとしてあのような洒落っ気の欠片もない衣装は認められませんわ』

 

 というのが当のオードリー・ドリームウィーバーのコメント。

 あまつさえ、魔法少女らしくない、という理由で今回の探索ではチャリオットの使用を禁止されたため、エアボード(ドクターによる出力・強度の魔改造済み品。某何とかセブン的な機動力を出せる。そうだよ私はギドンヒョンだよ)での出撃である。いつものF2060ARではバランスが取りにくいため、どこで見つけたかも忘れたハンドヘルドタイプのチャージ式ブラスターと、チタンカタナを引っ張り出してきた。

 ……ん? もしかして私が呼ばれた理由コレ? 確かに普段からチタンカタナは使ってるからなあ……。

 なんてことを考えつつ、遭遇した鉄虫をバッサリ、あるいはブラスターで吹き飛ばしながら、森の中をエアボードで駆け抜ける。樹上に上がってしまうと、枝葉で下が見えなくなってしまうので高度を上げられない。

 隣にはレアも並走している。天候操作マイクロボットだといささか破壊範囲が大きすぎるので、話し合って樹木保護も兼ねてとりあえず私が少数であれば即切り倒し、それが不可能な大群と遭遇したら雷を落としてもらうことにしていた。

 ……ていうかレアのバニースーツサイズあってなくね? ていうか名札を止めてる安全ピン、もしかしなくても乳首貫通してない? 大丈夫? 私すごく心配……。

 

 ともかく、次第に撃破された鉄虫の残骸やら、マジカルピンクムーンライトの余波と思われる木々への抉れたような痕やらが増えてきたので、白兎も近い……と思いきや。どうやらココ最近の白兎の活動経路を逆走していたらしく、

 

「これは……最近までここにいましたが、鉄虫に嗅ぎつけられたので移動した、という感じですね……」

 

 レアの言う通り、放棄された白兎の拠点らしきものが見つかった。ほぼ同時に、モモ達が白兎に接触したという通信が入る。

 

「……戻りますか」

「……戻りましょうか」

 

 双方の結論である。

 ただ、戻る前に残された物資などがあれば回収していこう、ということで家探しをしていたところ……

 

「あのぅ……」

「おや、ポックル大魔王」

「ひぇ、わ、私のことをご存知なんですか……?」

 

 そう。ひょこっとポックル大魔王がやってきたのである。

 

 

 

「そ、そうなんですよ白兎ったら酷くて、わかってくれますか……?」

 

 殺意を持って自分を追いかけ回してくる相手がいる、という状況のストレスやいかんばかりか、という様子で、オルカに連れていく間もポックルの愚痴の嵐。レアが呆れた顔をしているのも無理もない。

 さて、オルカに連れて行くにあたって、白兎と鉢合わせしては元も子もないので、この辺はまずは連絡を取らねばなるまい。

 

「モモ、ちょっと相談があるんだけど、今大丈夫?」

『ブラナッハさん? はい、大丈夫ですよ、どうしましたか?』

「うん、まず、近くに白兎がいるなら聞かれないようにしてほしい」

『あ、はい、マジックジェントルマンに挨拶してませんものね。出力を切り替えるのでちょっとまってくださいね……はい、大丈夫です』

 

 この辺、さっと察してくれるあたり、モモは本当に頭がいいのだなあ、と思う。

 

「オッケーありがと。というのも、ポックル大魔王を保護してオルカに連れて行ってるところだから、白兎と鉢合わせさせたくなくてね」

『あ、そういうことでしたか。私達はあと10分ぐらいで着きますから、お願いしますね』

「りょーかい」

 

 後は、時折位置情報を送ってくれるので、それを見ながら鉢合わせしないようにポックルを司令官のところへ連れて行ってミッションコンプリートである。

 とはいえ、白兎がポックルの命を狙っている状況は変わっていないのでどうしたものか、という問題は残っている。

 一旦別室に隠れ、白兎が司令官と話をして今度はポックルを探しにモモたちと出撃するのを待ち、司令官と合流して話し合うも、結局良い案は出てこない。

 元にもあった、ポックルの角による洗脳は一時的なものだし知能に悪い影響があるということで却下。

 当然、ドクター発案の記憶をいじっちゃおう、はネオディムの大反対により却下。

 

「どうしたものかな……」

 

 司令官のつぶやきは、全員の内心を代弁するものであった。

 結局、死んだと思わせることは、今後ポックルがオルカに同行できなくなるため使えない。かと言って白兎を説得するのは難易度ルナティックであることがポックル自身によって証明済みである。

 正直、私はめんどくさくなってきており、ここまで元の通りであるならば、これからもそのようにしてしまえば良いのではないか? と思えてきて、モモだったかの手柄を横取りしてしまおうかと考えていたところ、

 

『ブラナッハさん』

「んお?」

 

 そのモモからの通信である。

 

『白兎ちゃんが、急に、「ポックル大魔王の気配がする!」とか言い出してオルカに戻っていったんです!』

「マジかよ!?」

 

 おどれはポックル探知機か何かか!? と悪態を付く間もなく、

 

『通してください! ポックル大魔王の悪しき魔力の気配がします!』

 

 いきなりの入室はさすがにコンスタンツァかだれかが止めたのか、ロックが解除されていないドアがガコッと音を立てる。

 

『白兎さん、いきなりはいけませんよ? 今ロックを解除しますから、少しお待ち下さいね』

 

 そして猶予はなくなった。

 ので、ポックルの手を引いて司令官の机の下へ強引に押し込み、元の位置に戻るにももう時間がないのでそのまま私も机の下に潜り込む。

 

「ちょ、ブラナッハ!?」

 

 もうこのまま原作の流れになーあれ、と思っていたのだが……

 

「……」

「あ、あの……こ、こちらの知らない方はどなたですか……?」

 

 机の下にいたのは、共振のアレクサンドラではなく、ブラックリリスだった……。

 

 

 ……結局、あの後の流れは原作とそう変わりはない。

 めんどくさくなった私が、偽装捕縛からの改心コースを提案し……たところ、濡れ場を邪魔されて怒り心頭だったらしきブラックリリスがその場でポックルを椅子に縛り付けてマテバを突きつけたのである。

 そこへ、ジャミング不可能なポックル探知機と化した白兎が乗り込んできて、一方ガチ泣きしたポックルが白兎へ助けを求め。それまでのモモ達による説得+キレたブラックリリスによる暴力+ガチ泣きして助けを求めるポックルの姿によるあわせ技で、なんとか白兎にもポックルがすでに敵対する存在ではないことをようやく理解できたらしい。

 手間を掛けさせるものである……というかキレたリリスこえー……。

 

 まあ、白兎関連の騒ぎが終わったわけだし、後は日常の資源回収任務にでも明日から出るか。

 

 

 ■ ◇ ■

 

 

 ……などと、ぼんやり考えつつ、その日の晩御飯を終えて、部屋に戻ろうと通路を歩いていたところ、不意にくらっときた。

 

 待て、今日は配膳のアクアもダフネも、怪しい素振りは一切なかったぞ……?

 

「いいえ。今日はわたくしですわ。わたくしがあなたの食事だけに薬を仕込んだのですわ」

「……そ、そわ……?」

 

 この短時間で呂律すら回らないとは相当強力な薬を仕込んでくれたらしい、ソワンだった。

 

「ええ、わたくしですわ。あなたのせいで、ご主人様にお仕置きされて躾けられたソワンですわ……」

 

 のろのろとしか動かない身体を動かして、見上げてみれば、うっすらと笑みを浮かべながらこちらを見下ろしている。

 

「お、おま、うぇ……」

「強力な弛緩剤ですが、バイオロイドであればしばらく動けないだけで済みますわ。そして、こちらの用事はそれだけの時間があれば十分」

 

 そのまま、両腕を捕まれ、ずるずると廊下を、不自然に誰もいない廊下を引きずられる。

 やばい、殺される……

 と、思ったものの、引きずられていく先は、廃棄物処理区画ではなく、居住区画。もっと端的に言うと、司令官の部屋だった。

 

「うぇ……?」

 

 私の疑問のうめき声にも何も反応せず、ソワンは私を司令官のベッドに寝かせると、離れていった。ドアの音がしなかったので、室内にはいるらしいが……。

 

「ブラナッハ」

 

 のろのろと声の方を向けば、どうにも「おこ」な様子の司令官。その後ろに壁際には、例のヤンデレ三人衆が壁際に控えている。

 

「アクアから聞いたぞ。別に怒っているわけではなくて、単に仕返しと面白いからやっていた、とな」

 

 ……あっ。もしかしなくてもこれは最悪のバレ方をしましたね?

 

「お前にもお仕置きが必要なようだな?」

 

 ちょ、八つ当たりックスの二度目はご勘弁願いたいんですけどねえ!?

 

 ジィィィィ、と音を立てて、まだ着ていたバニーの背中のファスナーが降ろされる。

 ……その後のことは、よく覚えていない。




ヤッチマッタナー
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