(仮題)ブラウニーの特異個体として扱われています 作:セレンディ
ネタ切れとなんか書けねえタイムは強敵でした。
さて……なんかこの導入多い気がするな。
あれから、資源回収やら出撃やらの任務の終わり際とか、あるいは非番でオルカ艦内を歩いている時に、不意に司令官に物陰に引きずり込まれることが増えた。精神年齢が幼い組は巧みに隔離されているようだが、言い換えればそれ以外は別に隔離されていないということである。物陰を覗き込まれれば当然見えるし、無音無臭でもない。
いや、確かに、最初に半分いたずらで仕返しを仕掛けた私も悪いが、コレはちょっとやりすぎではないのか……?
なんて内容をアルマン枢機卿に愚痴ったところ、
「陛下は……ある意味、あなたに甘えてらっしゃるのですよ。羨ましいことに」
「……は?」
いや、私に? 前世持ちを公言していて(そのせいかLRLが時折仲間を見る目を向けてくる)、母性なんぞ欠片もない私に?
「ご存知ですか? 人間様としての感覚をお持ちなのは、陛下とあなただけです」
「……う、うん?」
「良きにせよ悪きにせよ、あなたを除くバイオロイドは、バイオロイドとしてしか陛下に接することができません。……一部、子供みたいなのもいますが、根底の部分は変わりません」
真面目くさった顔で、アルマンは私に言う。
「普段はどうにもこうにも上下関係を意識せざるを得ない陛下が、バイオロイド出現前の人類同士の接し方をするため上下関係がない……とは言いませんが意識しなければいけない度合いがまるで違うので、接するのが気楽なのだそうです」
「そうですって、司令官がそんなこと言ってたの?」
「はい。この間、ブラナッハさんへの扱いがひどいのではないか、と談判したことがありまして」
「おお、素晴らしい」
「『俺がやられたんだ、怒ってるふりしてもいいだろう?』とのことでした」
「あー……」
乾いた笑いしか出ない。
「けど、発端は、あの3人から助けてくれなかったことへの抗議だよ?」
「その場合は『やられたらやり返す、倍返しだ!』とのことでした。回り込まれてますよ?」
クスクスとアルマンが笑う。とりあえず、自分は苦虫を噛み潰したような顔をしていることだろう。
「銀行員のドラマなんだけどなそれ……よくアーカイブ見つけたね?」
「後は……『あそこまでされて悦ぶドMは今の所ブラナッハだけだから』ともおっしゃってましたね」
「嘘だッ!!」
■ ◇ ■
嘘だと言ってよ
我ながらボケにもキレがない。
うっそだあ、私ドMなんかじゃないやい、と抗議したものの、アルマンからは「何を言っているのでしょうか、この方は」という視線を向けられ、通りがかったナイトエンジェルに意見を求めてみたところ、同様の視線を向けられるだけに終わった。
え、嘘、私ブラックリリスよりMなの……?
若干、いや、かなりのショックを受けつつも、なんかもうふて寝するしか、と考え自室……先日も述べたとおり、他にブラウニー3人と同室なのだが、そのドアを開けた瞬間、私に向かって手が伸びてきた。
「うぉっ!?」
とっさに回避を試みるも、素早く伸びてきた手は私の胸ぐらを掴むと部屋内部へと引き込み転がし、慌てて逃げようとした私の目の前でドアが凍結して開かなくなる。
凍結?
下手人が司令官ではない事に気づいた私が、私を引きずり込んだ手の持ち主を見上げてみれば。
「……ティタニア?」
そう、ティタニア・フロストがいた。
「あー、とりあえずコーヒー淹れたよ」
「……感謝する」
ティタニアと、私の前にコーヒーを置く。
なんでも……というよりは、案の定というべきか、ティタニアは私に相談事があるそうな。最近の司令官の私への接し方に、とばっちりを恐れて他のブラウニー3人は地味にこの部屋に寄り付かなくなっている。出くわした時に尋ねてみると、イフリートがやっていたようなダクト内で寝ているとか、あるいはレプリコンの部屋に転がり込むとかしているらしい。ともかく、そういう意味で人が来ないスポットとなっているので、相談事には丁度いいだろう。
……今現在物理的に出入りできないのもあるけど。
「それで、相談って? ああ……何となく分かるけど」
「……」
コーヒーを何故か恐る恐る、といった様子でちびちびと飲むティタニアに何か微笑ましいものを感じつつ、この間のレアの様子から内容は自ずと想像がつく。
「レアがうざい」
「レアが構いすぎ」
うむ、合ってた。
しかし、わかっていたことだが、難しい問題でもある。
同じオルカ艦内で生活し、時に出撃するわけだから、完全な没交渉は不可能だからだ。
そのような点を踏まえ、完全没交渉は現実的に不可能と伝えた上で、どのような落とし所を望んでいるのかを聞いてみた。
「……。……?」
……考えていなかったようだ。
まあよくある。問題をどうにかしたい、という意識だけが先行していて、問題をどう解決したいのかという観点そのものが欠けていることは。イフリートみたいに何も考えずにとりあえず『埋められたくないんだけどどうすればいいかな?』なんて持ち込んでくるドアホもいるが。お前は真面目に任務をやれ。話はそれからだ。
「とりあえず……」
「……?」
「とりあえず、さっきも言ったとおり、完全没交渉は無理。仮に今いるレアに納得させたとしても、これから来るレアに、あるいはこれから来るティタニアにも納得させるのは絶対に無理。つまり、双方の主張が完全に通ることはないから、逆を言えば双方に妥協してもらわなきゃいけない」
「……」
「パッと思いつくところだと、ティタニアはある程度の干渉は受け入れる、具体的に言うと完全に邪険にするのではなくて話ぐらいは多少応じるようにする。逆にレアは、その多少の話で我慢してもらう。ティタニアはティタニア、確かにフェアリーシリーズではあるのだけれど、戦闘能力メインで確か家政能力はまるでなかったよね? そういう差異がある以上部署も別けるべき……私みたいな個人部隊とか」
「……」
「どう?」
「……理解はした。レアを避けきれないことも理解した。だが、今の話をどうやってレアに飲ませるつもりだ?」
「そこなんだよなあ……」
そう、問題はそこである。
相当、ティタニアについて執着があるようで、あるいは家族だからと言って聞かないらしい。
「まあ、私がレアに根気強く説得するしか無い、かなあ……」
あるいは、司令官に相談するかぐらいだろうか……。
と、ぼんやり考えたその時だ。
ガコォン!
「うわっ!?」
「……?」
突如発生した大きな金属音に、そちらを振り向いてみれば、床にダクトのフタが落ちている。
「よいしょ」
そして、そのフタの外れた天井ダクトから、ダッチガールが降りてきた。
「……え、ダッチガール? なんでそんなところから?」
思わず問いかけた私に、彼女はぴっと氷漬けの入口ドアを指差し。
「開かないって連絡が来たから、氷を粉砕しにきた」
「あー……」
言われてみればそうである。
ティタニアも、氷漬けにする能力はあったとしても、逆に解凍する能力は持っていなかろう。つまり、単に鍵をかけたぐらいの感覚だったが、うっかりと言うべきか私達はここに閉じ込められていたのである。
ギャリギャリギャリと音を立てて掘削用ドリルが氷を削る。本来、土や岩盤の掘削の時は冷却が必要だが、そもそも氷が掘削対象であるので、削る端から冷却されていっているようでドリルを追加で冷却したり、一時休止する必要がないらしい。
瞬く間に氷に埋まっていたドアが掘り出され、ドリルで削るまでもないような場所はガンガンと叩いて壊し、最後は力技でドアをスライドさせて氷漬けの戸は開通した。
「ティタニア、コンスタンツァから伝言。オルカ艦内では、危急の場合を除いて何かを氷漬けにするのは禁止だって」
「わかった」
外側からも削ったりしていたらしく、外にもダッチガールがいて。開通したドアを境に、二人はハイタッチをして帰っていく。
「……。……まあ、レアに話をしに行こうか」
こくり、と頷いたティタニアを伴って、部屋を出る……いや、出ようとした瞬間、
がっ
「ぃ!?」
不本意ながら最近馴染みの不意打ちの感覚。
掴まれた方、左を見ればニヤッとした顔の司令官がいる。そのまま私を、私達の部屋に押し込もうと、いや、待って、そこには、ティタニアが、ティタニアがいる……!
ま、まって!?
■ ◇ ■
「なるほど。確かにそれはレアの干渉が過ぎるな……過干渉と言っていい。わかった、そこは聞かせてもらったブラナッハの案で行こう。先にティタニアが譲歩した以上、レアにも譲歩させる。それでも問題が発生するようなら、いつでも俺に相談しにきてくれ」
「感謝する」
「……」
……。
「……ところで」
「ん?」
「ブラナッハがぴくりとも動かなくなっている」
「ああ、大丈夫大丈夫、あれで存外、悦んでるタイプなんだ、ブラナッハは」
「あの激しい性行為でにわかには信じがたいが……」
「おう。ドドドドドMだからな、ブラナッハは」
「それは、今のブラナッハを見れば納得できる」
「とりあえず、レアを呼んで話そう。俺も同席するから、変な暴走とかはないだろうさ」
そんな話をしながら服を着た司令官は、ずっと見ていたティタニアを伴って私達の部屋から出ていった。
嘘、でしょ……?
次のネタ切れもきっと強敵であることでしょう……。