作者の戌眞呂☆です。
今回、幻想郷文写帳の続編としてこの物語を書き始めました。
再び、欧我君の活躍をお楽しみください。
不思議と、笑みが漏れる。文と分かれたのに、身体に、唇に文の温もりがまだ残っている。3ヶ月ぶりに会えた嬉しさからなのか、今はとても幸せな気分だ。舞い落ちる桜吹雪が、俺達を祝福してくれているかのような感覚を覚えてしまう。それほど、俺は幸せに包まれていた。
文は小傘に知らせるために一旦家に帰った。小傘とも再会できるとなると、うれしさと楽しさが混ざったような気分になる。3カ月ぶりに再会できる嬉しさと、どのような成長を遂げたのかという楽しさ。そして何よりも、一緒に暮らした2人の可愛い笑顔を見ることが何よりも楽しみだ。
今になって分かった気がする。笑顔フェチだ、俺。可愛い笑顔を見ると、ドキッとしてついカメラを向けたくなる。カメラを失った今、どのような行動に出るのだろうか…。
まあいいや、俺は白玉楼に戻ろう。俺の新たな生活場所であり、新たな職場でもあり、新たな主が待つ館へ…。
「こんにちは」
白玉楼の門を潜り抜け、中庭に向かった。ここに行けば、幽々子さん…いや、幽々子様に会えるような気がして…ん?なんだろう、何やら目の前からものすごい勢いで…
「があっ!?」
「欧我さーん!!」
ものすごい勢いで鳩尾にタックルしてきたのは、銀髪の女の子、妖夢ちゃんだ。妖夢ちゃんは俺にしがみつき、涙を服にこすり付けてくる。…じゃなくて、泣いて再会を喜んでくれていた。
「よかった…。死んだと聞いた時は…っ。でも、会えてよかったです!」
「うん、ありがとう」
頭をよしよしとなで、そして優しく抱きしめた。妖夢ちゃんも俺を抱きしめる腕に力を込めた。
「あらあら、文が見たら嫉妬しちゃうわね」
不意に聞こえた声。この声は…。
「「幽々子様!?」」
声がした方に目を向けると、縁側に座り、こちらを楽しそうに眺めている幽々子様の姿があった。
「あら、欧我は何故私に様をつけて呼ぶの?」
「俺はここで働きますから、必然的に幽々子様は俺の主ということになります」
「そうなの?別に呼び捨てでも構わないわ」
「私も呼び捨てで構わないですよ。…それよりもなぜ私は「ちゃん」なのですか?「さん」じゃなくて」
「妖夢ちゃんは子供っぽくて小さいからね」
俺の返事を聞いた妖夢ちゃんは、頬をぷくっと膨らませる。そして楼観剣の柄に手をかけた。
「…斬りますよ」
「おお、こわいこわい。でも、分かったよ妖夢」
「えっ?」
不意に呼び捨てで呼んだことに、妖夢は驚いた表情を浮かべる。頬もなぜか赤みを帯びてきた。
「何?妖夢」
「いえ、なんでもないです。でも、なんか嬉しくて…」
目線をそらし、恥ずかしそうに答える。
「あーもー、やっぱり可愛いな、もう」
「ふにゃっ!?」
あまりの可愛さに、思わず妖夢の頭をわしゃわしゃと撫でる。妖夢は慌てて俺の手を払いのけようと腕を動かすが、それを避けるかのように腕を動かし、撫で続ける。俺の手を払いのけようと、妖夢があたふたと両腕を動かす光景が面白くて撫ですぎてしまい、ついに半泣き顔で楼観剣で斬りかかってきた。
…限度ってもんはやっぱり大事なんだね。
「あら、文たちが来たみたいね」
妖夢に謝り、縁側に座ってお茶を飲んでいると、唐突に幽々子様がそう呟いた。耳を澄ますと、確かに文と小傘が話し合う声が聞こえてきた。
あ、そうだ。少し驚かそう。
「小傘、驚いてくれるのかな?」
立ち上がり、姿を見えなくした。これは幽霊になったことで新しく手に入れた俺の能力だ。…いや、能力かは分からないが、一応能力としておこう。
姿を見えなくし、文と小傘が現れるのを待つ。話し声がだんだん大きくなり、中庭に文と小傘が入ってきた。
小傘は少し髪が伸びたような印象だが、子供っぽい笑顔は前とちっとも変わらなかった。
「欧我ー!」
文が名前を呼んだが、俺は姿を現さなかった。音もなく移動し、2人の背後に移動する。
「いないの?せっかく驚かそうとしたのに」
やっぱり俺を驚かすつもりだったんだね。
…よし、行くぞ。能力を解除し肺一杯に空気を吸い込んだ。
「うらめしやー!!」
「「きゃああああ!?」」
大声を上げると、2人は同時に悲鳴を上げ、飛び上がった。いやはや、まさか文まで驚いちゃうとは…。
「って欧我!?びっくりさせないでよー」
「えへへ。ごめんね、文」
…ん?
ふと小傘の方に視線を向けると、小傘の目からは大粒の涙が零れ落ちていた。
「欧我…欧我ぁ!!」
涙を流し、小傘は俺に抱き着いてきた。俺もしっかりと小傘を抱きしめる。小傘の温もりは、前とちっとも変らなかった。
俺の腕の中で、小傘は延々と泣き続けた。その間、俺は頭を優しく撫で続ける。文が2人を包むかのように俺と小傘の背中に腕を回し、包み込むように優しく抱きしめた。
2人に会いたいという念願が叶い、俺の心が幸せで満たされていく。…あれ、視界がかすんで。ああ、俺泣いているんだね。
小傘が落ち着きを取り戻し、みんなでお茶を飲みながらワイワイと話していると、突然文があるものを差し出した。
「あ、そうだ。これ」
そう言って文が取り出したものは、指輪とネックレス、そして長年連れ添った俺の相棒のカメラだった。それらを身に着けると、以前の自分を取り戻したかのような感覚になった。
「どうするの?これからも写真屋はやる?」
じっとカメラを見つめていると、文がそう聞いてきた。この質問の答えは、すでに決めていた。
「いや、俺の写真屋はこれで閉店する。それに…」
一旦言葉を区切り、小傘にウィンクした。
「写真屋なら、もう立派な人がいるからね」
「えっ?」
「小傘。あなたはもう写真屋の助手なんかじゃない、一人前の写真屋だ。大丈夫だよ、小傘の腕はかなり上達している。これからは、自分の思うとおりに写真を撮り続けるといいよ」
「師匠…!」
小傘に俺のカメラを差し出した。カメラを受け取ると、小傘はそれを首から提げた。こうして、二代目写真屋の多々良小傘が誕生した。
その様子を見ていた幽々子様が、何かを思いついたのか手を叩いた。
「そうだ、今夜白玉楼で宴会を行いましょう。欧我の復活と文との再会、そして新しい写真屋の誕生を祝って」
「おお、いいですね!」
「そうと決まれば私は皆さんに知らせてきます!小傘さん、行きますよ!」
「うん!」
文と小傘は立ち上がり、みんなに知らせるために空へと飛びあがった。
「じゃあ、私たちは宴会の料理を作りましょう」
「そうだね、妖夢。…あ、幽々子様、つまみ食いはいけませんよ」
「むぅ~」
妖夢と一緒に、白玉楼の台所へと向かった。