レストラン白玉楼   作:戌眞呂☆

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始めに言っておきます。
キャラ崩壊注意警報発令中。

つまり、やりすぎちゃいました。テヘ


第10話 ドッキリ大作戦 ~前半戦~

 

「zzz…」

 

 

割り当てられた部屋の中、欧我はすやすやと寝息を立てる。

もちろん、小傘達が驚かそうと白玉楼中に潜んでいることなど知る由もない。

 

障子を静かに開け、部屋に仕掛け人の幽々子が入ってきた。

枕元まで移動し、夢の中にいる欧我の顔を覗き込む。

 

 

「ふふっ、かわいい寝顔をしているのね。」

 

 

小さくそう呟くと、すぐそばにしゃがみ込んだ。

 

 

「欧我~。起きて~。」

 

 

そして、欧我の体を揺すり動かす。

しばらく揺すり動かしていると、欧我は重い瞼を開けた。

 

 

「…幽々子様?」

 

 

「あ、起きた。ねぇ欧我~、お腹減った。」

 

 

その言葉を聞くなり、大きくため息をついた。

 

 

「またですか…。夕食を大量に食べたばかりでしょ?」

 

 

「そうだけど…」

 

 

ぐぅ~。

 

幽々子のお腹の虫が、わざとらしく大きな唸り声を上げた。

 

 

「っ!?」

 

 

その音に驚きを隠せない欧我。

慌てて布団から飛び起きると、

 

 

「い、今すぐ作ってきます!」

 

 

そう叫んで廊下へと飛び出した。

 

欧我の部屋に一人取り残された幽々子は、扇子を取り出すと口元に当てる。

 

 

「ふふふっ、お祭りの始まりね。」

 

 

これが幽々子のもう一つの能力、「お腹の虫を操る程度の能力」である。(※嘘です)

 

 

 

 

 

 

 

 

「来た!」

 

 

部屋から飛び出した欧我の姿は、白玉楼中に潜んだ小傘達の目に留まった。

部屋を出たと言う事は、とうとうドッキリ大作戦が幕を開けるときが来たと言う事。

 

それぞれに緊張の色が浮かぶ。

屋根の上に待機した屠自古は、能力を発動させて雷をその身に纏う。

 

 

(行くぞ…。)

 

 

両手を近づけ、その間で一気に放電した。

 

バチバチッ!!

 

 

「わぁっ!?」

 

 

その雷の音に驚いて、欧我は空中で頭を押さえて丸くなった。

欧我の悲鳴を聞き、屠自古はさらに追い打ちをかける。

 

バチバチッ!ドーン!

 

 

「か、雷…?」

 

 

両耳を押さえ、辺りをきょろきょろと見回す。

最初の一発目は不意打ちと言う事もあって非常に驚いたが、2発、3発目になってくると雷の音にも慣れたのかあまり驚かなくなった。

 

 

「はぁ、今ので目が覚めた…。」

 

 

欧我はそう呟くと、空中にふわふわと浮かびながら台所へと向かった。

台所に開いた窓の向こうから、中の様子をじっと窺うアリスと幽々子、そして妹紅。

 

その3人の前に、欧我が姿を現した。

台所に入って流しに向かい、両手をきれいに洗う。

 

 

「さあ、何を作ろうかな…。」

 

 

(今ね…。)

 

 

幽々子が幽霊に指示を出し、欧我の後ろを横切らせた。

 

 

「っ!?」

 

 

何かの気配に気づき、慌てて後ろを振り返る。

その直後、欧我の体は恐怖によって硬直した。

 

目の前に、無数の人魂がゆらゆらと浮かんでいる…。

 

 

(練習した甲斐があったな。)

 

 

間髪入れずに、積み上げられた皿がカチャカチャと音を立て始めた。

これは、皿に向かってアリスが魔法の糸を伸ばし、手を小刻みに動かして音を出している。

 

 

(追い打ちをかけようかしら。)

 

 

包丁に魔法の糸を繋ぎ、空中に浮かび上がらせる。

 

ドスッ!!

 

欧我の目の前をゆらゆらと浮遊した後、真下の床に突き刺さった。

その追い討ちが見事に決まったのか、欧我の顔から血の気が一気に引いて行った。

 

そして…

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

大きな悲鳴を上げ、台所から飛び出した。

 

 

 

今のところ全て上手くいっている。

欧我も予想外に驚いてくれた。

 

少し離れたところから様子をうかがう文と小傘。

 

 

「あれ、小傘さん?」

 

 

「…ぐすっ。」

 

 

目に涙をたたえ、今にも泣きそうな表情を浮かべていた。

 

 

「どうしたのですか?」

 

 

「ううっ…。久しぶりに満たされていくような感じがして、それが嬉しくて…。」

 

 

欧我の悲鳴はここまで届いている。

その悲鳴を聞いて、小傘はお腹と心が満たされていくのを感じている。

久しぶりに感じた幸せに思わず涙がこぼれたのだった。

 

 

「あら、でもまだ自分自身で驚かしてはいないよね。」

 

 

「うん。確かに自分で驚かした方が美味しいしお腹もいっぱいになるよ。でも、欧我の悲鳴は特別なんだよね。」

 

 

「そうですか…。」

 

 

(ふふっ、もしかして私にライバルが現れたのかしら。)

 

 

小傘の発言を聞き、文は心の中でそう呟いた。

 

 

 

 

 

台所を飛び出した欧我は、半泣き顔で廊下を飛び続ける。

その間も妹紅による人魂攻撃は続き、更に幽々子が幽霊を操ってどんどん追い込んでいく。

 

 

「わぁ~~!!」

 

 

悪い夢なら覚めてくれと言わんばかりに、頭を押さえて左右に激しく振る。

しかし、どれだけ強く振ったとしても夢が覚めることはない。なぜなら、これは現実に起こっているからだ。

 

精神的に欧我は追い詰められていた。

真夜中に次々と襲いかかる不可解な出来事。冷静に物事を考えることができずに、ただ喚きながら廊下を飛び続けることしかできなかった。

 

 

廊下の角を曲がった直後、欧我の目の前に人影が現れた。

 

 

「わああっ!?」

 

 

「きゃああ!!」

 

 

同時に悲鳴を上げ、尻餅をつく。

 

 

「あれ?欧我さん?」

 

 

「…え?」

 

 

目の前に現れた人影…それは妖夢だった。

人影の正体が妖夢だと分かり、ほっと胸を撫で下ろす。

 

 

「ど、どうしたのですか!?そんな顔をして。」

 

 

涙が止めどなく溢れ出し、恐怖で青ざめている。

今まで相当恐ろしい出来事に見舞われていたことは明らかだった。

 

 

「よ…うっ…えぐっ…。」

 

 

「と、とにかく落ち着きましょう!深呼吸です!」

 

 

妖夢に言われた通り、目を閉じて深く息を吸い込み、ゆっくりと吐いた。

すると、欧我の心の中を覆っていた恐怖が吹き飛んだような気がした。

 

深呼吸を数回繰り返し、欧我はどうにか平静を取り戻した。

 

 

「それで、今まで何があったのですか?」

 

 

「実は…。」

 

 

今まで起こったことをかいつまんで妖夢に説明をする。

幽々子様に起こされて台所へ向かったこと

廊下を飛んでいたら急な雷鳴に驚いたこと

何かの気配を感じて後ろを振り返ったら大量の人魂が浮かんでいたこと

皿が音を立て、足元に包丁が突き刺さったこと

ここに来るまで、人魂と幽霊に襲われたこと

 

欧我の話を、妖夢は頷きながら聞いていた。

しかし、妖夢の顔からうっすらと血の気が引いている。妖夢も怖いものが苦手なのだ。

 

 

「そ、そんなことはありませんよ。ゆっくりと寝れば大丈夫です。」

 

 

「そんなぁ…。俺と一緒に原因を調べてよ。」

 

 

「わ、私はこの後用事が…。」

 

 

そう言って自分の部屋に逃げ帰ろうとしたが、欧我に腕を掴まれた。

 

 

「頼むから俺を一人にしないでよ!」

 

 

精神的に追い詰められた欧我には、もう妖夢に頼るしか方法が残されていない。

欧我の手を振りほどこうと必死にもがく妖夢。だが、決して離そうとはしなかった。

 

 

「わ、わかりました!一緒に調べますから手を離してください!」

 

 

こうして、半ば(ほぼ)巻き込まれる形で妖夢も驚かされる対象となったのでした。

 

 

後半戦へ続く…。

 




 
もちろん、妖夢は何も聞かされておりません。 
 

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