レストラン白玉楼   作:戌眞呂☆

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このページの話は、この小説に実際に書き込まれた感想をもとに書いてみました。
詳しくは、6月7日に書かれた感想を見てください。


…え?どうしてこんな話を書いたのかって?
たまにはいいじゃん。たまには。
 


第12話 ドッキリの後 ~お礼の茶葉~

 

「ぐすっ…えぐっ…ううっ…幽々子様ぁ…」

 

 

幽々子様に抱き着き、妖夢はさっきから泣き続けている。

あの後、全員で白玉楼を飛び出した妖夢を探し続け、10分後桜の木の陰で泣いているところを発見した。

白玉楼へ連れて帰り、今回のドッキリ大作戦について文たちから説明を受けて今に至る。

 

恐怖から解放され、幽々子様に抱き着いて泣き続けている。

 

 

「よしよし、もう大丈夫よ。」

 

 

幽々子様は背中を撫でて妖夢を慰める。

 

 

「しかし、まさか幽々子様までこのドッキリに加担していたとは。」

 

 

俺の言葉に、幽々子様はふふっと笑った。

 

 

「小傘の気持ちを知ったら、協力してあげたいなって思ったからよ。」

 

 

「小傘の…気持ち?」

 

 

そう言って小傘の顔を見下ろした。

 

小傘は今、正座した俺の膝に頭を乗せてぐっすりと眠っている。

お腹と心が満たされたような、幸せいっぱいな寝顔だ。

指でほっぺを突っついてみた。わぁ、ぷにぷにで柔らかい♪

 

それにしても、小傘が俺を驚かせるためにこんなに大きなドッキリを仕掛けていたなんて。

しかもそれに賛同するかのようにアリスさんたちが小傘に協力してくれたなんて。

 

 

「本当に、ありがとうございました。」

 

 

その気持ちが嬉しくて、みんなに頭を下げた。

 

 

「いや、お礼なんていらないぜ。私たちはただ小傘の協力がしたかっただけだ。」

 

 

そう魔理沙さんが言ってくれた。

 

 

「それにしても、欧我の驚きっぷりは面白かったわ。」

 

 

と、数枚の写真を眺める文。

 

…え?写真?

まさか、今まで全部撮られていた!?

 

ああ、こりゃあ絶対に新聞に載るな。文ならやりかねない。

もう恥ずかしいったらありゃしない。

 

まったく、小傘ったら…もう。

小傘は未だに夢の中だ。

でも、久しぶりに小傘に驚かされて、まさか幸せを感じていたなんてな。

 

 

 

「おっ、この緑茶美味いな。」

 

 

小傘の寝顔をじっと見つめていたら、妹紅さんの声が聞こえた。

顔を上げて妹紅さんの方を見ると、湯飲みを片手に目を輝かせていた。

 

 

「ああ、それ。頂いたんですよ、見知らぬ人に。」

 

 

「見知らぬ人?」

 

 

「ええ、そうです。あれは確か、俺が台所にいた時…」

 

 

 

 

 

~回想シーン~

 

「えーと、今日は何を作ろうかな…。」

 

 

「こんにちは。」

 

 

「はいっ!?」

 

 

不意に聞こえた男性の声に驚いて後ろを振り返ると、そこには見知らぬ男性が立っていた。

障子を開ける音は聞こえなかったのに、どうやって台所に入ってきたんだ?もしかして閉め忘れた?

入り口の障子を確認してみると、障子は閉まっていた。じゃあ、いったいどこから!?

 

その男性は優しい笑顔を浮かべると、「驚くのも無理はない。」と言った。

 

 

「僕はただ君にプレゼントを届けに来ただけだ。だから、警戒しなくていいよ。」

 

 

「プレゼント…ですか?」

 

 

その男性が抱える小箱に目を落とす。

普通の段ボール箱だし、何か細工がしているわけではなさそうだ。

 

 

「ああ、そうだよ。旨い料理を見せてくれた礼だ。」

 

 

「礼…ですか?」

 

 

釈然としなかったが、その小箱を受け取る。

うん、重さから考えると、何かがいっぱい詰まっている。

でも爆弾とかではないようだ。

 

 

「開けてみても?」

 

 

「どうぞ。」

 

 

段ボールを開けてみると、中には緑茶や紅茶、そして抹茶など色々な種類の茶葉がぎっしりと詰められていた。

これって、しかも全部最高級品じゃないか!

 

 

「機会があれば食べにくるよ。その時は美味い料理を食べさせてくれ、欧我君。」

 

 

「っ!?待って、なんで俺の名前を…。」

 

 

しかし、目の前には誰もいなかった。

 

 

~~~~~~~

 

 

 

 

 

「…と言う事があって。」

 

 

「ふ~ん…。不思議なこともあるもんだな。」

 

 

俺の話を聞き、みんなはじっと緑茶が注がれた湯呑を見下ろす。

見ず知らずの怪しい男性からもらった茶葉の数々。みんなが感じているように、最初は俺も疑ったよ、ヘンな物が入ってやしないかって。

 

試しにすべての種類を飲んでみたところ、身体に異変は起こらず、しかも非常に美味しかった。

 

 

「ヘンな物は入っていないので、安心して飲んでください。」

 

 

「ああ…。」

 

 

自分の前に置かれた湯呑に手を伸ばし、口元まで運ぶ。

最高級品だけあって、この香りも最高だ。湯呑の縁に唇を近づけ、ゆっくりと傾ける。

口の中に流れ込んできた緑茶は、滑らかな舌触りなのに緑茶独特のコクと深みがあり、飲み込めば優しくするっと流れて体中に温もりが広がる。

 

最高級品の名に恥じない味わいだ。

やっぱり緑茶って最高。

 

 

 

 

 

「ねぇ、欧我~。」

 

 

緑茶の旨味にうっとりしていると、幽々子様の甘えたような声が聞こえた。

 

 

「なんでしょう?」

 

 

目を開けて幽々子様の方を見ると、お腹を押さえている。

もしかして…

 

 

「お腹空いた。」

 

 

「っ!?」

 

 

そうだった!!

今までいろいろあって忘れていたけど、幽々子様はお腹を空かせていたのだった!

 

そもそもそのために起こされたのに、今まですっかり忘れていた。

 

 

「分かりました、今すぐ作ってきます!」

 

 

慌てて立ち上がろうとしたが、小傘が俺の膝を枕にして眠ったままだ。

これじゃあ立ち上がれないけど、小傘を起こすのは気が引ける。

 

…あ、そうだ。

 

 

「文、小傘のことお願いできる?」

 

 

「ええ、分かったわ。」

 

 

文は一瞬首をかしげたが、その言葉の意味を理解すると「うん。」と頷いてくれた。

 

小傘の頭の下にそっと両手を差し込み、ゆっくりと持ち上げて両膝を抜く。

今まで俺が座っていた所に文が座り、文の膝の上に小傘の頭をそっと乗せた。

 

よかった、小傘は起きていない。

 

 

「じゃあ、今から作ってきます。」

 

 

そう言い残し、急いで台所へと向かった。

 




 
いつもこの物語に感想を書いていただき、ありがとうございます!

これからも皆様が楽しく読めるような物語を書いていきたいと思いますので、これからもよろしくお願い致します。
 

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