お久しぶりです、戌眞呂☆です。
今まで更新できなくてごめんなさい。
実は…ネタが浮かばなかったんです!
いや、ネタは浮かんでいるのですが、それらは話が進んでから使いたいネタばかりだったので、ネタがないのと同じって言うか…。
では、昨夜心友と話していて不意に思い付いたネタをお送りします。
それではどうぞ!
第20話 続けざまにお買い物
「さーてと、お買い物~おっ買い物~♪」
上機嫌に空中を一回転したり、ふわふわと浮かびながら人間の里を目指す。
まさかこうも立て続けに買い物を頼まれるとは思わなかったけど、顕界に来れて本当によかった。
「もう、はしゃぎ過ぎですよ。」
隣を飛ぶ妖夢が苦笑いを浮かべる。
でも、100年もの間冥界の外に出ることができないと言われていたのに、まさか短期間のうちに2回も出ることができるとは思わなかった。
離れてみて、初めて顕界に来る事の幸せを理解できた。
さあ、ちゃっちゃと買い物を済ませよう!
「それにしても、まさかこんな物を頼まれるとはね…。」
そう言って幽々子様から渡されたメモを広げた。
そこには、「桜餅、柏餅、わらびもち、団子、アンパン」と書かれている。
どれだけ甘い物が好きなんだよ…。
やっぱり女の子の甘いもの好きは理解できないよ。
甘い物に目が無いといえば、文は元気かな?
最近会ってないような気がする。
…いや、3日前に手紙を受け取りに来てくれた時に会ったっけ。ずっと一緒に暮らしていたから、少し離れただけで心の中が空っぽになったような、満たされないような感じがする。
ふふっ、これが文欠乏症か。
「さて、そろそろ降りるか。」
空を真っ直ぐ飛んでいたら、人間の里がどんどん近づいてきた。
頼まれたものを買う前に、欲しい物があるからまずはそこに行こう。
妖夢にそのことを伝えると、首を縦に振ってくれた。
高度を落とし、人間の里の入り口近くに着陸した。
「こんにちは~。」
目的の場所に移動し、暖簾をくぐった。
すると、店の奥から元気のいい返事とともに、飴色のツインテールと黄色いエプロンをした女の子が姿を現した。
そして、俺の顔を見た途端ぱあっと笑顔になる。
「あー!欧我さん!」
「こんにちは、小鈴ちゃん。」
そう、俺が来たかった場所。それは「鈴奈庵」だ。
ここには昨年の秋に一度来たことがある。文の「秋季特別企画『○○の秋』満喫特集! ~読書の秋編~」で、妹紅さんの自分だけの一冊を探すために訪れた。
その時にもらったあの本は時間の都合でまだ後2冊残っているけど、これを読んでいると昔を思い出して熱中して、気が付けば太陽が昇っていたなんてこともあったな。その後に行った文との取材では必死に眠気と戦っていたけど。
…そんなことは置いておいて。ここに来たのには理由がある。
「あのさ、ちょっと探すのを手伝ってくれないかな。」
そう、あの本を探すために。
「はい、わかりました!」
「ありがとうございましたー!」
無事に欲しい本を見つけ出し、手に入れることができた。
小鈴ちゃんに別れを告げ、鈴奈庵を後にする。
…でも、本を探していたらいきなり抱きついてきたのは何故だったんだろう。
そう言えば死んでから小鈴ちゃんと会うのはこれが初めてだったよな。小鈴ちゃんなりに再会を喜んでいたのかな…。女心ってよくわからないよ。
えーと、妖夢は…と。
確か目の前の甘味屋に…ん?
「え…文?」
「あ~!欧我!」
妖夢の隣に座って、おいしそうにお団子を頬張っている。
俺の存在に気づくと、団子を丁寧に皿の上に置いて駆け寄ってきた。
そして、人目もはばからずに抱きしめあった。
空っぽになっていた心が、愛と幸せと温もりでどんどん満たされていく。
「どうしたの?100年間冥界を出ることができないんじゃなかったのですか?」
「うん、でも買い物のときは条件付きで外に出ることができるんです。」
「そうですか!これで頻繁に会えますね!欧我に会えなくて私…。」
「俺もだよ。文に会えないと心にぽっかりと穴が開いたような感じで、胸がキュンって。」
「あの~、お二人さん?時と場所を考えましょうよ。」
再会を喜びながら抱きしめあっていると、不意に妖夢の声が聞こえた。
辺りをきょろきょろと見回してみると俺たちの周りに人だかりができており、抱きしめあう2人を見つめていた。
途端に恥ずかしくなり、顔を真っ赤にして離れた。
くそっ、見世物じゃないんだよ。だからそんなにニヤニヤするなぁ~!!
「そう、いろいろと大変なんですね。」
「うん、だから何としても5時間以内に冥界に帰らないといけないんだよ。」
文の隣に座り、抹茶の入った器を口元に運ぶ。
やっぱり甘い物は好きじゃないな…。
それにしても、さっきから団子を食べ続けて…。
相変わらずだね。
「ところで、今日はどちらに行く予定ですか?」
あれ?どうしてメモ帳を取り出しているの?
「ここです。」
文の質問に妖夢が答えた。
ここは人間の里でも有名な甘味屋であり、饅頭などの甘い物の販売も行っている。
今回幽々子様から依頼された物は、すべてここで買うことができる。
そのことを説明したら、文はすらすらと手帳にペンを走らせていく。
完全にブン屋モードに移行しているな。
「今日行くのはここだけなんですか?」
「いえ、その前に鈴奈庵に行っていました。」
俺の言葉を聞くと、文はメモ帳から顔を上げた。
「鈴奈庵…ですか?」
「うん、この本を探しにね。」
そして、1冊の本を取り出した。
「抹茶大全集…ですか?」
「そうだよ。料理に関してはイメージで何でもできるけど、抹茶の淹れ方や作法と言った細かいところは知らないからこういう本に頼るしか無いんだよね。」
どうして抹茶の淹れ方を覚えなければならないかというと、近日中にお客様が訪れるからだ。
抹茶が大好きなあのお客様が。
だから、抹茶でおもてなしがしたい。そのためにわざわざ本を手に入れたのだ。
「なるほど。では、その時に私もお邪魔してもよろしいですか?」
キラキラと目を輝かせながらそう聞いてきた。
あー、そっか。最近ネタが見つからなかったんだね。目のキラキラ具合からネタが見つからなかった日数が算出できる…のは嘘だけど。
「うん、食材を持ってきてくれたら料理を作ってあげるよ。」
「ありがとうございます!」
途端に笑顔になり、お礼を言った。
世界一大好きな、とても可愛らしい笑顔だ。
うん、文の取材も終わったようだ。
そろそろ必要な物を買って帰ろうかな。
抹茶の代金と幽々子様に頼まれた饅頭を買い占め、甘味屋の前で文と向き合った。
文とはここで一旦お別れだ。
なんか寂しくなるけど、文の元気な姿を見ることができてよかった。
「それじゃあ、またね。」
「うん、元気でね。」
お互いに挨拶をかわし、後ろを向いて歩き出した。
空っぽになっていた幸せを補充できた。これで当分は頑張れそうだ!
「あれ?」
人里の道を進んでいると、目の前から一人の女の子が歩いてきた。
あれってもしかして!