レストラン白玉楼   作:戌眞呂☆

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感想の数が、文写帳を超えました!

なんか、嬉しいような悲しいような不思議な感じですが・・・
いつも感想を書いてくれてありがとうございます!
これからも頑張って更新していくので、よろしくお願いします!
 


第24話 楽しいということ

  

白玉楼へ帰り、台所に立つ。

疲労が回復しきっていないけど、とにかくできることをやろう。

 

 

「さて、作ろうか。」

 

 

「そうですね。今日の食材は…。」

 

 

大量の油揚げ。

脇役としての働きが多い油揚げだけど、メインとして使っていくには…。

肉詰めと餡かけを行ってみよう。

 

油揚げと青梗菜(チンゲンサイ)を一口大に切って、油揚げと青梗菜の根元を油を敷いたフライパンで炒める。

その間に麺つゆと水溶き片栗粉を混ぜ合わせて餡かけの素が完成。

いい感じに火が通ったら葉の部分を加えて炒め、油がなじんできたら餡かけの素を加えてとろみがつくまで炒めれば…

『油揚げと青梗菜の餡かけ炒め』の完成!

 

 

そして…。

ひき肉にみじん切りにしたピーマンや玉ねぎを加え、塩こしょうで下味をつける。

それを粘り気が出るまでこねたら、油揚げの中に詰めて形を整える。

油を敷いたフライパンで片面ずつ焼き、大匙一杯の酒をかけてふたを閉じて蒸し焼きにすれば…。

『油揚げの肉詰め』の完成!これは…醤油やポン酢が合いそうだな。

 

 

「よし、まずはこれで。」

 

 

「もうできたのか、早いな。」

 

 

「ふぇっ!?」

 

 

突然聞こえた妖夢以外の声に驚いて、思わず変な声を出してしまった。

慌ててあたりを見回すと、いつの間にか台所に藍さんの姿があった。

ああ、来ていたんだ。料理に夢中になっていたから気付かなかったよ。

 

 

「どうした、そんなに驚いて。」

 

 

「いえ、何でもないです。それよりも、もう起きたのですね。」

 

 

「ああ、風邪をひかないように毛布を掛けてくれたらしいな。ありがとう。」

 

 

そう言うと藍さんは深々と頭を下げる。

いや、そこまでしなくても。

 

それに、こちらこそお二人の可愛らしい寝顔を見せていただいてありがとうございます。

 

 

「いえいえ、こちらこそ。それよりも夕食を作りましょう。今日は油揚げづくしですよ。」

 

 

そう言って、再び下ごしらえに向かった。

しかし、藍さんの「その前に。」という言葉によって俺の動きは止まった。

 

後ろを振り返ると、藍さんが真剣なまなざしで俺を見つめていた。

 

 

「なんですか?」

 

 

「お前…料理は楽しいか?」

 

 

「料理?…はい、楽しいですよ。」

 

 

俺の反応を見て、藍さんはため息をついた。

 

 

「そうか。そのようには見えないんだがな。」

 

 

そのようには見えない…と言う事は、俺は料理が楽しくないということ?

そんな…そんなことって…。

あり得るのだろうか。

いや、ありえないはずだ。

俺は食材に向かって、脳内に浮かんだイメージに従って料理を…あっという間に…

 

あっという間に、自分一人で、ただ黙々と…。

 

 

藍さんが何かを話しているが、その声も届かないほど俺は自分が弾き出した答えにショックを受けていた。

 

俺は、藍さんの言った通り料理が楽しいとは思っていないのではないか。

脳内に浮かんだイメージに沿って両手を動かしているだけで、あっという間に料理が完成する。しかも一人で、その間周りの物は入ってこない。

この状態では、俺は本当に料理が楽しいと思っていると言えるのだろうか。いや、言えないだろう。

 

 

「これじゃあ…料理人失格じゃないか。」

 

 

口をついて、その言葉が飛び出した。

料理が楽しくないようじゃ料理人とは言えないじゃないか。

 

 

「欧我…。」

 

 

藍さんの言葉を受け、うつむく俺を心配して、妖夢が肩にポンと手を置いてくれた。

 

 

「全く…お前は少し大げさに考え過ぎだ。楽くなかったのなら、今から楽しめばいいじゃないか。」

 

 

「今から…?」

 

 

「そうだ。今すぐに楽しむことができる方法が思いつくか?」

 

 

今すぐに…楽しめる?

どうやって?

 

どれだけ頭を働かせても、俺の持てるイマジネーションを総動員してもその答えは見つからなかった。

ううん、と首を横に振ると藍さんの優しい声が聞こえてきた。

 

 

「では、顔を上げて前を見ろ。」

 

 

藍さんに言われるがまま顔を上げる。

目に飛び込んできたのは、心配そうに俺を見つめる妖夢と腕を交互の袖の中に隠してじっと俺を見つめる藍さんの姿だった。

 

 

「私たちがいるだろう。」

 

 

「藍さんたち…ですか。」

 

 

「そうだ。お前は何事も一人だけするからな。私たちと一緒に作れば、料理を楽しむことができるだろう。レストランで客に出す料理を作っているときは一人のほうが効率がいいかもしれない。だが、何も無い日の料理ではもっと妖夢の存在を感じ、協力して一緒に作ってはどうだ。きっと楽しいぞ。」

 

 

「そうですよ!みんなで作ればきっと楽しめますよ!それに、私も欧我と作る料理を楽しみたいです。」

 

 

「藍さん…妖夢…。」

 

 

そうだよね。

うん、そうだよね。

藍さんの言った通り、みんなで協力しながら、笑いあいながら料理を作れば思いっきり楽しめるはずだ。

 

どうしてそれに気づかなかったんだろうな。

おそらく俺はすべての動作をイマジネーションのみに従っていたからかもしれない。

これからは、一緒に料理する時だけイマジネーションを抑えよう。

 

そして、楽しくやっていこう。

 

 

「では、みんなで一緒に料理を作ろう。今日は私自慢の油揚げ料理を伝授しようかな。」

 

 

「はい!」

 

 

うん、俺も目一杯楽しもう!

 

 

「はい!お願いします!」

 

 

俺の声に、藍さんと妖夢は笑顔でうなずいてくれた。

 

 

「じゃあ、まずは芋の皮をむいてくれ。」

 

 

藍さんの指示のもと、俺達は笑いあいながら料理を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ~。」

 

 

いつもより時間がかかってしまったが、無事に大量の油揚げ料理が完成した。

あれだけあった油揚げをほとんど使ってしまったが、その分大量の料理を作ることができた。

 

それに…。

 

 

「なんか、いつもより気持ちよく料理ができた気がします。」

 

 

すがすがしいというか、すっきりしたというか…。

仲間と一緒に料理を作るだけで、こんなにも楽しいとは思わなかったな。

 

俺は藍さんから大切なことを教えられた気がする。

藍さんは俺に、料理の楽しさを再確認してくれた。

そのことに関してお礼を言ったら、笑顔で「油揚げのお礼だ。」と言ってくれた。

 

 

「これからも一緒に作っていきましょう!」

 

 

「うん、そうだね。妖夢。」

 

 

妖夢と向き合い、笑い合った。

これから100年間、よろしくお願いします!

 

藍さんも含めて談笑していると、台所の入り口が開く音が聞こえた。

その方を見ると、お腹を押さえた幽々子様が立っていた。

 

 

「ねぇ~、お腹減って我慢できない。」

 

 

「あ、はい!すぐ用意します!」

 

 

しまった、すっかり忘れていた。

 

3人で廊下を何往復もし、食堂に料理を運ぶ。

今日の料理は、いつもより美味しく感じられた。

 




 
感想でいろいろ指摘を受けたので、少し書き直しました。
料理を楽しむのではなく、料理が楽しいという風に。

指摘をしてくださった方々、ありがとうございました。

 

えっと、この章は以上で終わりです。

次の章ではレストランにお客様がやってきます。
そして、あの人と2回目のコラボです。
そのために更新が遅くなるかと思いますが、それまでお待ちください。
 

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