実は、7月15日新たに新作を投稿いたしました。
題名は「幻想のテクノフィリア」です!
この作品では特別な能力を持たない、人一倍手先が器用なだけの青年の幻想入りを主題として書いていきます。
ぜひ読んでください!
ちなみに、主人公が幻想入りしたのは欧我のいる幻想郷です。
つまり、「レストラン白玉楼」と「幻想のテクノフィリア」はお互いに連動し合います!
今回投稿した話でもさっそく連動しています。
ちょっとした連動ですが、この連動が欧我と文の関係を大きく変えてしまいます。
詳しく知りたい方は、「幻想のテクノフィリア」の第4話を読んでください。
それでは、どうぞ。
料理教室の当日…
早朝から一人で白玉楼の台所にこもり、今回使用する大量のクッキー生地を作っている。生徒の人数はそれほど多くは無いのだが、料理教室を見学に数多くの親御さんが来る可能性がある。その親御さんたちも一緒にクッキーを作れば、それだけで十分思い出が作れるだろう。しかも、前日に文がばらまいた新聞で料理教室の事が大々的に報道されたから、関係のない人も現れるんじゃないだろうか。いや、そもそも寺子屋の生徒たち向けだからそれは無いか。
それにしても…。
その時の新聞で読んだけど、まさか新たに幻想入りした人がいるなんてな。しかも俺と同じ妖怪の山に。確か名前は…
昼近くなり、ほとんどの生地が完成を迎えようとしていた所で、台所に誰かがやってきた。
「お邪魔しまーす。」
この声だけで、誰が入ってきたのかが分かった。そう、文だ。
笑顔で挨拶を返すと、文も俺の大好きな笑顔を浮かべてくれた。相変わらず元気な笑顔だ。文に駆け寄り、ぎゅっと抱きしめあう。やっぱり、この瞬間が一番幸せだな。
その後、生地を作りながら今日の料理教室の取材や段取りなどについて話し合った。午後から始まる料理教室では文と小傘が取材に訪れるようだ。小傘はブン屋の助手として来るらしい。ブン屋の助手兼写真屋…。その響きに懐かしさを感じる。小傘も立派になったな。
一通り話を終えて生地づくりを再開したところで、急に文が真剣な面持ちで話し出した。
「あの、欧我に言いたいことがあるのですが…。」
「うん、いいけど。でもどうしたの?急に改まったりなんかして。」
生地を混ぜる手を休めずに、首だけを動かして文の顔を見た。真剣な表情をしているのに、赤く染まった頬によってその印象は薄れてしまっている。一体どんな話なんだろうと思っていると、文は意を決したように口を開いた。
「欧我。わ、私と。け、けっ…」
どうやら文はなかなか言い出せそうにないようだ。
顔を真っ赤に染めたまま、「けっ…」という言葉を連呼している。何が言いたいのか分からないまま首をかしげ、混ぜている生地に視線を戻す。その刹那…
「けっ、結婚してください!」
という文の声が聞こえた。
「え…?」
その、あまりにもいきなりで予想外の言葉に、俺は思わず腕の動きを止めた。いや、正確には体中の動きが止まった。それなのに、心臓だけはやけにバクバクと激しく脈を打ち、体中に血液を送り込んでいる。
文は顔を熟れたトマトのように真っ赤に染めながら、じっと俺の顔を覗き込んでいる。
「私、今の関係が嫌なんです!指輪を交換し、キスをして、プロポーズもされた。なのに、なのに今の恋人同士のままじゃあ嫌なの!だから、私とっ!私とっ…。」
「文…。」
文がそんなことを思っていたなんて、夢にも思わなかった。俺は心のどこかで、今のままでも十分幸せだと思っていたに違いない。だから、文の気持ちに気づかず、そのせいで苦しい思いをさせていたのかもしれない。
ごめんな、文…。
文の肩に手を置くと、引き寄せてぎゅっと抱きしめた。
「文…ありがとう。」
「欧我…?」
気付いたら、俺は涙を流していた。
いきなりで驚いたけど、最愛の人からされたプロポーズ。それはとても嬉しくて、ありがたくて、そしてとっても幸せだった。
脳裏に、永嵐異変解決の宴会の様子が思い浮かんだ。そう言えばあの時、ファーストキスも文からだったな。本当は俺の方から行くべきだったのに…。でも、まあいいや。
「うん、よろこんで。」
「欧我っ!」
「文。こんな時になんて言えばいいのか分からないけど、俺は文を心から愛している。だから、俺と、結婚しよう。」
「うん!欧我…わぁああああん!」
感極まってしまったのか、声を上げて本格的に泣き出してしまった。文が落ち着きを取り戻すまで、俺はしっかりと抱きしめ続けた。
まさかいきなりこんな所で告白されるとは思わなかったが、これで、正式に文と結ばれることができた。文をしっかりと抱きしめながら、溢れだす幸せと喜びを噛みしめていた。
「それにしても、どうしてこんな時に告白したの?」
「実は…。」
抱きしめあったまま、文はこれまでの経緯を話してくれた。
何でも、2日前に幻想入りしたばかりの潤さんから告白するように勧められたらしい。欧我は絶対に断らないと励まされ、今日告白することを決意したというのだ。
「どうやら、潤さんに借りができちゃったみたいだな。」
「そうね。」
「まあでも、今は結婚式の事よりもこの後の料理教室に集中しないとね。」
そう言うと、文は頷いて両手を離してくれた。
未だに心臓のバクバクは収まらないが、まずは料理教室を無事に終わらせないと。そのために気持ちを切り替えて最後の仕上げに移る。能力を発動して空気で密封。さらに酸素濃度を操って生地の腐食の時間を止めた。よし、あとはこれを冷蔵庫で30分ほど寝かせれば準備完了だ。
大きく伸びをしていると、いきなり背後から文が抱き着いてきた。
「わっ!?どうしたの?」
「ふふっ、何でもないわ。あなた。」
なっ、なんだってんだよー。
文のその一言が、治まりかけた心臓の拍動を加速させてしまった。
もう、これはしばらく収まりそうもないな…。