ん…あれ?
俺、寝ちゃったのかな?
空を見上げると、まぶしい太陽がさんさんと輝いている。
頭がさえるにつれ、辺りの状況がだんだんとつかめてきた。
白玉楼の縁側に腰を下ろし、壁にもたれ掛ってぐっすりと眠っていたようだ。
「ん~…」
「ふぁい!?」
思わず変な声が漏れた。
俺の太ももを枕にして、文がぐっすりと眠っていた。
仰向けに横たわり、太ももに頭を乗せて、幸せそうな表情を浮かべている。
ふふっ…。
しょうがないな。
文が目を覚ますまで、その寝顔をずっと堪能させてもらうよ。
左手で、そっと優しく文の頭を撫でる。…気の精かな、文が少し笑ったような気がした。
「可愛いなぁ、全く。」
寝ているから…聞こえないんだよね。
恥ずかしくて、面と向かってはっきりと言う事ができないから、今言うよ。
「文…本当にありがとう。」
頭を撫でながら、そう小声でつぶやいた。
最後まで俺を信じ、想い、一緒に戦ってくれた。
文のその気持ち、心。俺にとってそれは、文からもらった最高のプレゼントだった。
「もしかしたら、文が隣からいなくなったら生きていけないのかもな。」
いつもそばにいて、俺を慕い、支えてくれる。
そんな文の存在は、いつしか俺の中で大きくなっていた。
文と一緒にいられるから、俺は毎日を楽しく生きてこれたんだと思う。
文と一緒にいられるから、記憶を失った恐怖に打ち勝つことができた。
文と一緒にいられるから、俺はたくさんの仲間に出会うことができた。
文は寝返りを打つと、庭の方に身体を向けた。
右手を文の肩に乗せ、左手でそっと頭を撫でる。
「俺は文から、感謝してもしきれないほどの、たくさんの幸せをもらった。だから、これからもずっと俺の隣にいてほしい。それに…」
「欧我ー!おはよー!」
「小傘!?しーっ!」
塀を飛び越え、小傘が中庭に飛び込んできた。
そんなことより、文が起きちゃうよ!しーっ!しーっ!
そう身振り手振りで、文を起こさないように静かにすることを小傘に訴えたが、小傘は予想外の一言を口にした。
「でも、もう起きているよ?」
「えっ!?」
俺の体の動きが止まる。
え…もう起きているだって!?でも、寝てたじゃないか!?
「ばれてしまいましたか。もう少し幸せなひと時を満喫できると思ったのですが…。」
その声と共に、今まで眠っていたはずの文が上体を起こした。
まさか狸寝入り!?寝たふりをしていたということ?
「…いつから?」
「そうですねぇ、欧我が起きるずっと前よ。」
俺が、起きる…?
かぁぁぁぁっと顔が赤くなるのを感じる。
と言う事は…。
聞いちゃった?
「もう、欧我ったら私がいないと何にもできないのね。」
「わぁぁぁぁ!?」
言うな!言うなぁ!!
文はそんな俺をお構いなしに、両手を自分の頬に沿わせた。
「私を可愛いって。それに、欧我に頭を撫でてもらえたぁ。」
は…恥ずかしい。
小傘も何ニヤニヤしているんだよ。
…え、カメラ?どうしてカメラなんか取り出して。
あの…文?どうして再び俺の太ももに頭乗せているのですか?
パシャッ!
撮るなぁぁ!!
ああ…恥ずかしすぎて死にたい。(※死んでます)
外で行われていた宴会は、日付が変わった今でも盛大につづけられていた。
紅魔館のメンバーや命蓮寺の皆さんの姿は見えなかったが、霊夢さんや魔理沙さん、萃香さんなど、宴会や酒が好きな人たちはまだ残っていてお花見を楽しんでいる。
まあいいや、俺は自分の仕事をこなすだけ。幽々子様に朝食を作らないと…。
文たちと別れ、一人台所に向かった。
台所には、すでに妖夢の姿があった。
「おはようございます。」
「ああ、欧我さん。おはようございます。」
妖夢はまぶしい笑顔で挨拶を返してくれた。
すでに妖夢は何かを作っているようだった。両手を動かし、せっせと調理を続ける。
「ところで、幽々子様の朝食はいつもどのようなものを出しているのですか?」
「朝食…ですか?今は昼ですよ。」
えっ!?
もう…昼?
「仕方ないですよ。だって昨夜は文さんと一緒に夜遅くまで話していましたからね。」
と、妖夢は笑顔で言った。
確かに夜遅くまで文と喋っていたけど、まさかそのせいで昼まで眠っていたということ?
「さあ、一緒に昼食を作りましょう。幽々子様もお腹を空かせて待っていますよ。」
「あ、はい!」
出来上がった料理を食堂に運び、文と小傘も含めて5人で昼食を食べはじめた。
みんな俺の作った料理を美味しそうに食べてくれることがとてもうれしかった。
「うん、やっぱり欧我の作った料理は最高ね!」
幽々子様の食欲に驚きながら食事を終え、今は食後のお茶を飲んでのんびりとしている。
今なら、相談ができるかもしれない。
「あの…幽々子様。改まって相談したいことが。」
「まあ、何かしら?改まって。」
幽々子様は笑顔でそう聞いてきた。
「実は…。ここでレストランをオープンしたいのですが。」
「レストラン…?」
みんなの視線が俺に集中する。
「はい。お客に食べたい料理を提供して、代わりにお金をもらう場所の事です。」
簡単に、レストランについての説明を行う。
「そうね、面白いと思うわ。でも、お金をもらったとしても白玉楼の大切な食材を使わせるのはさすがにね。」
「そうです!それに、大勢のお客が押し寄せたら、うるさくて静かに暮らすことはできません。」
幽々子様と妖夢から、このような返事が来ることは予想できた。
だから、調理中にこの問題点の解決策を考えていた。
どうすれば、白玉楼の食材を使わずに料理を提供できるのか。そして、どうすれば幽々子様たちの生活を壊さずに済むのか。
自分なりに、解決策はできている。
「お客が持ってくるのは、お金ではなく食材です。その食材を使えば、白玉楼の食材を使うことはありません。それに、お客を招くのは昼と夜の2回、一組だけです。俺は、料理で皆さんに恩返しがしたい。だから、お願いします!」
床に手を突き、頭を下げる。
しばらくの間沈黙が続いた。
誰も言葉を発さず、幽々子様の返事を待つ。
やはりダメかと諦めかけていたら、パチン!と扇子を閉じる音が聞こえた。
「いいわ、好きにやってみなさい。」
「え!?」
「なんだか面白そうだし。それに、貴方が何かを成し遂げたいのなら、それを見守るのが主というものですわ。」
「幽々子様・・・ありがとうございます!!」
良かった、認めてもらえた。
ほっと安堵のため息を漏らす。
「よかったわね、欧我!そうと決まればさっそく取材よ!行きますよ、小傘さん!」
「はい!」
その後、俺は文から質問攻めにあった。
上手くできるのか、それは全く分からない。
でも、俺はみんなのために、ここで精一杯料理を作り続ける。
それが、俺のできる恩返しだ。
文々。新聞 号外
≪レストラン白玉楼オープン≫
冬の影鬼異変で命を落とした葉月欧我(18)が昨日、白玉楼に帰ってきた。(そのニュースについては別の記事を参照)この度、欧我さんは共に戦ってくれた仲間たちに恩を返すため、白玉楼でレストランというものを開く。お客が持ってきた食材を基に、欧我さんが秘められた才能を発揮して美味しい料理を作ってくれる。詳しい内容は別紙の広告に記載してあるのでそちらで確認してください。欧我さんの料理はとても美味しく、言葉が見つからないほど「美味しかった」。毎日のように料理を頂いてきた私にとって、欧我さんの料理は楽しみの一つになっている。欧我さんは私たちの取材に応じ、「皆さん、本当にありがとうございました。これからも俺を、そしてレストラン白玉楼をよろしくお願いします!」という元気いっぱいのコメントをしてくれた。時間と食材に余裕がある方は、一度足を運んでみるといいだろう。
新聞のように文章を書くのは難しいね…。