レストラン白玉楼   作:戌眞呂☆

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一人旅を1日延長します!!
 


第41話 山彦と、守矢の神と、温泉と!?

 

 椛さんとにとりさんを含めた5人で楽しく弁当を食べ終え、再び妖怪の山を登り続けていく。家族3人そろって弁当を作ることが非常に楽しくて、気がついたら大量のおかずを作ってしまったが、5人で食べたのであっという間にきれいに平らげてしまった。そのおかげで一番大きな荷物であった弁当が非常に軽くなったし、さらに

 

 

「欧我、文!早く行こうよ!」

 

 

 小傘の元気が回復してくれたことも俺の荷物が軽くなった要因のひとつだ。もう小傘をおんぶしなくてもよさそうだからね。

 

 

「ほら、2人で仲良さそうにして!」

 

 

 一段高くなった岩の上に立ち上がり、カメラのレンズをこちらに向けてきた。どうやら写真屋としての仕事を忘れてはいないようだ。

 小傘が写真屋として一人前の仕事をこなしているということが元師匠として非常に嬉しくて、あれ、目の前が霞んで…。な、泣いてなんかいないんだからなコノヤロー!!

 

 

「もっとくっついて!」

 

 

 小傘の指示に従い、文と肩を組みながら両手でピースを突き出した。文も頭をこちらに少し頭を傾けながら左手でピースを作る。2人が満面の笑みを浮かべたところで、辺りにシャッター音が鳴り響いた。うん、これでまたひとつ旅の思い出ができたよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ねぇ!」

 

 

 守矢神社まであと少しという所で、小傘が何かを見つけたようだ。右手の人差し指を突き出しながら、しきりに手招きをしている。一体何を見つけたというのだろうか。

 

 

「わぁ!」

 

 

「素敵ね」

 

 

 小傘が見つけたもの、それは幻想郷一帯を見渡すことができる絶景ビューポイントだった。九天の滝の上とはまた違った景色を見ることができるこの場所は、うっそうと茂る木々の葉によって隠され、パッと見ただけでは見つけることができなかった。やるなぁ小傘。

 

 そうだ、ちょっとやってみたいことがあるんだった。

 肺に思いっきり空気を吸い込んで…

 

 

「やっほーーーーー!!!」

 

 

 口の両端に手を当てて、大声を張り上げる。すると…

 

 

「ヤフーーーーー!!!」

 

 

 と、やけに発音がいい返事が返ってきた。

 俺がやりたかったこと、それは山彦…ではなく響子ちゃんとの会話だ。

 

 

「そーーーなのかーーー!!!」

 

 

 再び空気を吸い込んで大声を出すと、

 

 

「そーーーなのだーーー!!!」

 

 

 と、響子ちゃんの大声が帰ってきた。

 

 

「私も私も!」

 

 

 と、小傘も同じように空気を吸い込むと大声を張り上げる。

 

 

「おどろけーーー!!!」

 

 

「おどろかないよーーー!!!」

 

 

「ぐぬぬ…」

 

 

 だが、帰ってきたのは小傘の期待していた返事とまったく違っていたので悔しそうな表情を浮かべた。

 

 

「文もやってみたら?」

 

 

「私?そうね…」

 

 

 文は何かを考えているようなそぶりを見せると、おもむろに大声を上げた。

 

 

「1+8は!?」

 

 

「……」

 

 

 ありゃりゃ、どうやら計算問題は苦手だった様だ。今頃響子ちゃんは涙目で体中をブルブルと震わせていることだろう。ここから見えないのが残念だ。

 

 

「それにしても、どうして1+8なの?」

 

 

「それはですね…()()で答えは文です!」

 

 

 そう胸を張って答えた。

 うーん、そんな(バカ)な問題があるかよ。…まあいいや。

 

 

「さあ、守矢神社まであと一息ですよ!」

 

 

「だね。でもその前に…」

 

 

 命蓮寺のある方角に向かって大声を張り上げる。

 

 

「響子ちゃーん、ありがとーーー!!」

 

 

「どーいたしましてーーー!!!」

 

 

 今までで一番明るくて元気な山彦を背に受けながら、3人で山道を登り始めた。守矢神社はもうすぐだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着いたー!!」

 

 

 守矢神社の鳥居を潜り抜け、大きく伸びをする。俺は常に浮かんでいるから疲労は溜まっていないが、文と小傘は空を飛ぶことも無く、ずっと歩いていたので疲労が溜まっている

ようだ。呼吸も若干激しく、そして汗を流している。

 

 

「文、小傘。お疲れ様」

 

 

 2人に水筒を渡しながらねぎらいの言葉をかける。

 

 

「ありがと、欧我」

 

 

「うん、ありがとう…」

 

 

 2人はお礼を言ってその水筒を受け取り、中に入っているお茶をゴクゴクと飲み干した。

 休憩をしてだいぶ落ち着いたところで、さあお参りをしようと参道をまっすぐ進んでいくと、突然目の前に何者かが飛び出してきた。

 

 

「あれ、欧我に文じゃないか!」

 

 

「諏訪子ちゃん!」

 

 

 目の前に踊りだしたのは、守矢神社の二柱のうちの一人、神様の洩矢諏訪子であった。

 

 

「諏訪子様ー!?どこに行ったのですかー!?…あら?」

 

 

 諏訪子ちゃんの後を追いかけるように守矢神社の影から現れたのは、風祝であり現人神の東風谷早苗さんだ。でも、普段の格好とは少し違って緑色の艶やかな髪をすべてポニーテールに纏め、小脇に黄色の洗面器を抱えている。

 早苗さんは俺たちの存在に気づいたようで、笑顔でこちらに近づいてきた。

 

 

「あ、欧我さんに文さん!そして小傘さんも!家族そろってようこそ守矢神社へ!」

 

 

 相変わらずの元気な挨拶と笑顔。これを見ていると、なんか幸せな気分になるな。でもまあ何度も言うけど、文の笑顔が一番だけどね。…しつこいかな?

 

 

「ねー、みんなはどうしてここに?」

 

 

「家族の思い出を作ろうと思って、山を登ってきたんだ」

 

 

 諏訪子ちゃんの質問にそう答えた。

 

 

「思い出作りですか。仲睦まじくて羨ましいですね」

 

 

 俺の返答を聞き、早苗さんが声を発した。

 でも、どうして洗面器を抱えているのだろうか。まあ、その辺のお話は参拝を済ませてからにしよう。

 

 

 賽銭箱の前に移動し、懐から小銭を取り出す。そして賽銭箱に5円を投げ入れた。そして鈴を鳴らすと二礼二拍手一礼をして心の中でお願い事を唱えた。

 文と小傘も参拝を終えたところで、恒例のトークが始まってしまった。

 

 

「ねー、欧我は何をお願いしたの?」

 

 

「俺?そりゃあもちろん『ずっと家族で幸せに暮らせますように』だよ。文と小傘は?」

 

 

「私は、『欧我の隣にずっといられますように』って。それと、『文々。新聞の購読者が増えますように』」

 

 

「私は、『もっと多くの人が驚いてくれますように!』って!」

 

 

 2人とも個性豊かなお願いをしたんだね。文のお願いは聞いて嬉しかったけど、人の驚いた感情を食べる小傘からしたら意外と死活問題なんだね。

 

 

「お参りが済んだら、守矢神社名物のおみくじをやっていかないかい?今ならサービスで全部大吉にしてあげるわ」

 

 

「神奈子さん!?」

 

 

 驚いた、背後からいきなり声をかけないでよ。

 それにしても、必ず大吉が出ると分かっているおみくじをやる意味はあるのだろうか。

 

 よし、じゃあそろそろ早苗さんに聞いてみよう。

 

 

「あの、早苗さん。その黄色い洗面器はもしかして…」

 

 

「あ、これですか?実は今から博麗神社のそばに沸いた温泉に行こうとしていたところです」

 

 

「温泉ですか?」

 

 

 ああ、そういえば以前地霊殿異変のときに博麗神社のそばから間欠泉が噴出したんだったな。その異変のおかげで博麗神社の傍らに巨大な露天風呂ができた。ここ、前から行ってみたかったんだよなー!

 

 

「そうだ!もしよかったら皆さんも一緒に行きませんか?」

 

 

「やったー!!」

 

 

「お言葉に甘えましょう。汗を流してサッパリとしたい」

 

 

 文と小傘も温泉に行きたいようだ。もちろん俺も以前から行ってみたかったので断る理由もなく…

 

 

「ええ、行きましょう!」

 

 

 早苗さんの提案を快く引き受けた。

 

 しかし、まだ俺は気づかなかった。

 自然に形作られた温泉のため、男湯と女湯に分かれていないという重大な問題に。

 




 
え?
なぜ温泉のネタを持ってきたのかって?

そりゃあもちろん今別府にいるからです。

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