1ページに収めたいあまり、気づいたら3700文字も書いていました。
俺も欧我から料理を学びたいです。
「みんな、準備はいいですか?」
食材をすべて7等分し、分配する。しかし調理器具は人数分無かったので、空気を固めて包丁とまな板、そしてボウルを作り出した。あ、もちろん清潔面や安全面は考慮していますよ。消毒は済ませてあるし、もし手を切りそうになったら霧となって消滅するようにプログラムしてありますから。
「はーい!」
みんなの準備が整ったことを確認すると、次の指示を出した。
「まずは、キャベツを細かく切っていきます。まずは芯の部分を…」
空気を固めた包丁を握りしめ、分かりやすいようにゆっくりとキャベツを細かくみじん切りにしていく。芯の部分を切り落としたら、細く千切りにしていく。
「千切りが終わったら向きを変えて…」
千切りが終わったら、90°向きを変えて2~3㎜の幅で細かく切っていく。
俺の包丁さばきを見て「すごーい!」という声が聞こえるが、まあ、これくらいは普通にできるからな。
「これくらいの大きさになったら、包丁を持つ手とは反対の手で包丁の頭を支え、握る手だけを動かしてこんなふうに…」
包丁の先端を固定して手元だけを動かすことで、より細かく刻むことができる。
「このみじん切りの大きさは、それぞれ好きな大きさでいいですよ。シャキシャキとしたキャベツの食感を残したいのであれば大きめに、逆にそれが嫌ならより細かく切ってください…っと。できた!」
俺は食感を楽しむ方が好きだからみじん切りも少し大きめにした。みんなが「おー!」とか感心して見ているけど、これをやるんだからね。みんな。
「まずはここまで。さあ、次はみんなの番だよ。始めてください!」
号令に合わせて、みんなが一斉に包丁を手に取って作業に取り掛かった。芯を切り落とすところまでは良かったのだが、千切りにする段階でそれぞれの個性が出始めた。一回ずつ慎重に包丁を入れているのは文と大ちゃん。千切りの幅もほぼ同じくらいになっており、この2人は見ていなくても安全にできそうだ。
「いい感じだけど、肩に力が入りすぎているよ。もう少しリラックスして、リズムに乗って行こう」
「「はい!」」
ルーミアちゃんにリグルちゃん、そして小傘の3人は千切りの幅を気にせずに自分のペースでどんどん切り刻んでいく。この3人は、まあ大丈夫だろう。
「添える方の手は、指先を握りしめない程度に軽く曲げてね。そうすれば安全にできるから」
「そーなのかー」
「あ、そっか!ありがとう!」
「うーん、難しいなぁ」
そして、予想通りなのかチルノちゃんは「アタイったらさいきょーね!」と言わんばかりに得意げにどんどん切り進めている。包丁さばきは見ていて危なっかしいし、キャベツが辺りに飛び散っている。
「あっ!?」
「あー、今確実に指が飛んでいたよ。もっとゆっくりとやらないと」
チルノちゃんが握っていた包丁は跡形もなく消滅していた。つまり、指を切りそうになってしまったと言う事。うん、こうなるだろうとイメージできたから本物の包丁を握らせたくなかったんだ。
「ほら、こんなふうに…」
チルノちゃんの背後から腕を伸ばし、包丁を握る手にそっと添える。そして、チルノちゃんの動きを促すようにゆっくりと動かした。
「ゆっくりと、落ち着いて行こうね。そうしないと怪我していたよ」
「うん、わかった」
チルノちゃんの手に添えた腕を離しても、俺の教えたペースを守ってゆっくりと慎重に切り進めていくチルノちゃんの姿を見て、俺は感心しっぱなしだった。これなら見ていなくても十分やってくれるだろう。
みんなのみじん切りが終わったところで、みじん切りにしたキャベツをボウルの中に移させた。ここに塩を一つまみの半分くらい入れて絞ることで、浸透圧の関係でキャベツの中にある水分を出すことができる。
「面倒かもしれないけど、このひと手間のおかげで見違えるほど美味しくなるんだ。料理に手間と愛情は欠かさずにね」
「愛情?誰に?」
「あ…えっと、それは…」
不意にされたリグルちゃんからの質問に、思わず顔を赤くして動きを止めた。切り替えようと咳払いをしようとしたが、慌てたため盛大に咳き込んでしまった。
「もう、恥ずかしがらなくてもいいのに」
「欧我って恥ずかしがり屋なんだねー」
「素敵ですね、愛って」
そんな俺の様子を見て、文とルーミアちゃん、そして大ちゃんがそんなことを呟いたが、それによって一層顔の赤みが増した。
「も、もういいでしょう!次に行きますよ!」
恥ずかしさを紛らわせるため、どんどん作業を進めていった。
ニラのみじん切りではみんながキャベツの時と同じように上手に包丁を動かしていたので、思っていたよりも早く仕上がった。
次の工程では、豚肉に調味料と卵を入れて、粘り気が出るまで混ぜ合わせる。
「こんな感じで、全体がピンク色になる感じになればオッケーだよ」
先にお手本を見せ、次にみんなに作業を促した。豚ひき肉の触感に驚き、四苦八苦しながらも必死に手を動かしているみんなを見ていると、なぜか嬉しくなってきた。子ども達を教えている慧音さんはいつもこんな気持ちなんだろうか。
「欧我さん、こんな感じですか?」
「どれどれ…」
流石と言うか、しっかり者の大ちゃんは呑み込みが早い。今までの作業もほぼ完璧にこなしている。
「上手いじゃない!でも、少しムラがあるから万遍なく…」
「あむっ!」
「ひゃいっ!?」
突然何者かに人差し指を噛まれ、その直後に温かいベトベトしたものに包まれ、さらに奥に吸われる感覚が指を襲った。その一連の刺激が脳を襲い、一瞬パニックに陥って変な悲鳴が口をついて飛び出した。
慌てて手を確認すると、ルーミアちゃんが指にしゃぶりついて美味しそうに指を、いや、指に付いた豚ひき肉を食べている。どうやら無意識の内に指にひき肉をつけたままルーミアちゃんの目の前でゆらゆらと動かしていたみたいで、それに釣られてしまったらしい。もう、面倒くさがらずに洗っておけばよかった。
「ルーミアちゃん、離してくれるかな?」
「んー、やっぱり人間の時の方が美味しいよ」
「知るかよっ!」
予想外の展開に語気を強めて言ってしまったけど、まあ仕方ないよね。突然指を舐められるなんて絶対にありえないことだから誰だってそうなるよね!
はぁ、死ぬかと思った…。気を取り直して、と。
「で、では次の工程に!」
ってなんでみんなニヤニヤしているの!?もう!
十分に練り終わったら、そこにキャベツとニラを加えて混ぜ合わせる。ここのポイントは、混ぜすぎないこと。気合を込めておりゃーって混ぜてしまうと、ぐちゃぐちゃになってしまうし野菜から水分や旨味がにじみ出てしまう。
さあ、これで餃子の餡が完成した。この次は、餃子作りで最も難しい「包む」という工程だ。
「まず餃子の皮に餡を乗せて、縁に水を付ける。そして優しく皮を重ね合わせ、波を作りながらくっつけていくよ」
正直に言ってこの工程はあまり得意ではないのだが、案外上手くできた。
「上手に作る上で気を付けることは、餡を入れすぎないことと力加減の2つ。餡を入れすぎたら上手く包めないし、力が強すぎたら破れてしまうんだ。ここが難しい工程だから、慎重に行こう」
「「はーい!」」
元気な返事とともに作業を始めたはいいものの、あまりの難しさに上手く仕上げることができていない。餡が多すぎて包み切れなかったり、逆に少なすぎたり、波が形作られていないなど、かなり苦戦しているようだ。四苦八苦しながらも、どんどんと作られていくいびつな餃子、そしてどんどん破れていく皮。
教え方が悪かったのかな?
「いい?量は大体こんな感じ。このスプーン2杯くらいね」
と、空気でティースプーンを作り出し、みんなに手渡した。
「この量は覚えてね、そうすれば簡単にできるから。そうしたら、全体の2/3の範囲に水を塗って張り合わせるよ。この時に、まずは右手の親指と人差し指で右端をつまんで、左手で皮を寄せてひだを作るよ」
左手の人差し指で皮を手繰り寄せ、右手の人差し指でひだを押さえる。指を離せば、簡単に波が出来上がるというわけだ。
「あとは最後までこの工程を繰り返し、手前側を押して形を整えれば…餃子の完成!さあ、失敗を恐れずにやってみよう!」
簡単なコツを教えると、さっきまでの状態と打って変わって非常にうまく作ることができている。失敗する回数もぐんと少なくなり、わずかだがペースも早くなっている。
ゆっくりと時間をかけながら、とうとう餃子を作り終えることができた。案の定餡が余ってしまったが、これは形を整えればハンバーグに生まれ変わる。材料や味は違うけどね。
それにしても、何だこの達成感。真剣に取り組むみんなの表情を見ているだけで、もうお腹一杯だ。
「さあ、後はこれを焼けば出来上がりだよ。この工程は俺がやっておくから、みんなは白玉楼にいる妖夢を捕まえてテーブルとかの準備をしておいてね」
「「はい!」」
ドタドタと騒がしく台所の外へ飛び出すみんなを見送った後、大きめのフライパンを火にかけて油を敷く。しかし、どうやら文とリグルちゃんは台所に残ったままだ。
「どうしたの?」
「私は焼く工程も学びたいの。こんな経験初めてだから餃子特集を組もうと思って」
「わ、私は幽香さんに作ってあげたいから、だから一人で作れるようになりたいの!」
「そっか、分かった」
そんな2人ににっこりと笑いかけ、フライパンに向かい合った。
「じゃあ、授業を再開します!」
餃子食いてー!!