レストラン白玉楼   作:戌眞呂☆

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ついに、レストラン白玉楼がオープン!

記念すべきお客様第一号は誰でしょうか。


第1章 初めてのお客様
第5話 お礼のフルコース


 

台所に浮かび、せっせと両手を動かす。

今日の昼、レストランがオープンして最初のお客様がやってくる。

そのお客様に丹精込めた料理を提供する。そのために、一人台所に入って料理を作っているというわけだ。

 

このレストランの仕組みはちょっと複雑だ。

まず、白玉楼宛に手紙を出す。その手紙を先着順に並べ、その順に俺が日時を指定した返事を書く。その返事の手紙を受け取ったら、俺が指定した日時に食材を持って白玉楼にやってくる。

こういった少し手間のかかるやり取りを経て、ようやくお客を迎えることができる。

どうしてこのような過程になったのか。それは、妖夢と幽々子様との長時間の相談によって、条件として決まったことだ。

 

…え?郵便配達員はどうするのかって?

ご心配なく。とある方が名乗り出てくれました。

 

 

「欧我、調子はどう?」

 

 

おっ、噂をすれば何とやら。

その人が来たみたいですよ。

 

 

「まあまあだよ、文。」

 

 

はい、文です。

何故自ら志願したのかというと、「私は幻想郷最速のスピードを持っているから!」だそうです。

 

でも、俺はその本心は違うことを知っている。

ついさっき小傘が「少しでも長く欧我のそばにいたい。」と文が言っていたことを教えてくれた。

その言葉を聞いた時、ジーンと胸にこみ上げてくるものがあった。

少しでも長い時間を一緒に過ごすためには、白玉楼に来る必要がある。

郵便配達のためにここを訪れれば、その分2人が会う時間が増えるというわけだ。

 

 

「わぁ、どれも美味しそうね!」

 

 

完成したばかりの料理を見て、文が目をキラキラと輝かせる。

今日のメニューは食糧庫の中にあるものから選び抜いた食材を用いた、独自のアレンジを加えたフルコースだ。

前菜に筍と胡瓜の梅肉ソース、サラダは季節野菜の和風サラダ、スープには和風出汁の利いたかぼちゃのスープ、魚料理は…魚が無いから飛ばして、肉料理はポークステーキのフルーツソースがけ、デザートには抹茶ケーキ、そして最後にコーヒー…まあ飲めない人には緑茶を出そう。

 

使いたい食材を選んでいたらこんなまとまりのないメニューになってしまったが、どれも美味しくできたと思う。自信を持って言えないけど、絶対に喜んでくれるだろう。

 

 

…え、お客様が食材を持ってくるんじゃなかったのって?

今日来るのは、俺と一緒に能力を活用して戦ってくれた4人の仲間たちだ。各地に現れた手下達を倒してくれたことは、非常に嬉しかったし、非常に頼もしかった。そんな大恩人たちには無料で食べてもらいたい。

だから、幽々子様にお願いして、特別に食糧庫の食材を使わせてもらうことになったのだ。

 

 

「あれ、どうして5人分あるのですか?今日来るのは4人のはずなのに…。」

 

 

並べられた料理を見て、文が首をかしげる。

確かに招待したのは4人だけど、一緒に戦ってくれたのはもう一人いるでしょ?

 

文に笑顔を向けると、言葉を発した。

 

 

「それは文の分だよ。」

 

 

「えっ、私の?」

 

 

「もちろん。文も、俺と一緒に戦ってくれた。あの時どれほど心強く感じたか。だから、文にも感謝の気持ちを込めて作った料理を食べてほしいんだ。」

 

 

そう文に笑いかけた。

文が隣にいる。たったこれだけのことが、どれほど心強くて頼もしいものだったか。

そんな文に料理で恩返しがしたい。だから、今回のフルコースは文を含めた5人分用意をした。

 

 

「欧我…ありがとう。」

 

 

「どういたしまして。」

 

 

よし、そうと決まれば仕上げに入ろう。

最高の料理を提供するため、一瞬たりとも気が抜けない。

 

 

「あの、取材してもいい?」

 

 

いつの間にか文はカメラとメモ帳を取り出していた。

取材か。料理に集中すると周りが見えなくなるからな…。

インタビューに答えることはできないだろう。

 

 

「写真だけならいいよ。」

 

 

「はい、わかりました!それでは欧我さん、よろしくお願いします。」

 

 

文はそう笑顔で答えた。

俺に敬語を使っていると言う事は、完全にブン屋モードに入っちゃっているな。

まあいいや、こっちも料理人モードに入ろう。

 

 

「うん、こちらこそよろしくお願いします。」

 

 

台所に向かい、調理を再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、気付いたら12時近くになっていた。

もうすぐで約束の時間、12時になる。

 

料理の方は、あと少しの仕上げをすればすぐに出せるようになっている。

初めのうちは大まかなイメージしかなかったが、とうとうここまで形にすることができた。これを喜んでくれるといいな…。

 

 

調理も一段落し、台所を出て縁側でお茶を嗜む。

壁にもたれ掛り、お茶の香りを楽しみながら何もせずぼーっと中庭を眺める。

料理の時に酷使した両腕を休ませながら、お客様の到着を待つ。

常に浮いているから、両足の疲れは皆無なんだけどね。

 

やっぱり、緑茶は最高だ。

抹茶よりも緑茶派だな、俺は…。

 

 

「欧我さん、欧我さん!」

 

 

「…ん?」

 

 

「インタビューの途中なのですが。」

 

 

「・・・あ。ごめんなさい。」

 

 

そうだった、文…いや、ブン屋からインタビューを受けていたんだった。

いやはや、緑茶には人を和ませる程度の不思議な能力が秘められているな。その能力に惑わされてしまったよ。

 

それよりもインタビューだったね。

 

 

「それで、今日のお客様に…」

 

 

「おーい、欧我ー!」

 

 

この声は…!?

とうとうお客様のご来店だ。

 

俺が招待した4人。

それは、エレメントを駆使して共に戦ってくれた大恩人。

 

そう。にとりさん、屠自古さん、天子さん、そして妹紅さんだ。

 




 
俺もこんな感じのフルコースを作りたい。
 

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