レストラン白玉楼   作:戌眞呂☆

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今回はちょっと文章がおかしいかもしれません。
良い文章が思い浮かばなかったです。

スランプなのでしょうかね…。


第52話 襲撃

 

 まさか新聞に書き続けていたなんてね…

 壁に身体を預け、ぼおっと空を見上げる。傍らにある新聞を握りしめ、恥ずかしさに顔を真っ赤に染めながら。どうして今このような気持ちになっているのかというと、原因は今涙を流しながらニラレバ炒めをもしゃもしゃと食べている文だ。まさか、文が文々。新聞に俺への愛だとか魅力だとかを書き連ねていただなんて…。それが大勢の人々に読まれているところをイメージすると…ああ、穴が有ったら飛び込みたい。

 

 

「全く、このお惚気ブン屋が…」

 

 

「うう、ごめんなしゃい」

 

 

 大きくため息を吐き、もう一度目を通す。一面のトップには『餃子特集』という文字がある。この前乱入してきたチルノちゃん達と一緒に餃子を作った時の記事だ。あの時文は熱心にメモを取っていたし、取材も受けたからこれはまあ普通だ。そして書き出しを読むと「笑顔が素敵な…」はいアウト!これじゃあお惚気新聞と呼ばれても仕方ないよ。この一段落を読んだだけで、記事に何の関係もない俺の魅力が3つも出てきた。この一段落で読む気を無くしてしまったのでこれ以降は読んではいないのだが、このほかの記事やほかの新聞には一体どんな事が書かれているのだろうか。

 

 

「ただいま帰りましたー!」

 

 

 するとそこに妖夢がお使いから帰ってきた。妖夢は相変わらずニラレバ炒めを掻き込んでいる文とそれを見てにやにやと笑いながら同じくニラレバ炒めを食べている霊夢さんを一瞥して怪訝そうな顔を浮かべた。その後何かを思い出したかのように「あっ」という声を漏らした。

 

 

「霊夢さん来てくれたんですね!」

 

 

「ええ、あんたに呼ばれたからね。それで呼んだのは夫婦のラブラブを見せるためなの?」

 

 

「えっ?」

 

 

 驚いた顔を浮かべて妖夢は俺と文の顔にキョロキョロと視線を向けたので、あまりの恥ずかしさに同時に目線を逸らした。

 

 

「い、いえ、違います。あの、幽々子様が白玉楼に怪しい妖気が満ちてくるのを感じ取ったので、霊夢さんに原因を調査してもらおうと思いまして」

 

 

「そう言う事ね。確かにわずかに不穏な空気を感じるわ」

 

 

 幽々子様と霊夢さんが感じ取った不穏な空気って一体どんなものなのだろうか。文の様子を一瞥してみたが、どうやら妖気を感じ取れてはいないようだ。いや、そもそも感じ取れるような状態じゃないか。ちょっと酷い事をしちゃったかな?そう言う俺はというと、幽霊になりたてだからなのかは分からないがいつもの雰囲気と全く変わらない。

 

 

「欧我、白玉楼に怪しい人物がいないか見てくれるかしら?」

 

 

「あ、はい。分かりました」

 

 

 霊夢さんに言われ、目を閉じて白玉楼内の空気に意識を集中させる。感知できる範囲は限られており白玉楼の全域を見ることはできないが、感じ取れる範囲内の空気の流れや動きを読み、不審な人物がいないかを探る。どうやら、ここにいる俺達4人と幽々子様の部屋にいる1人、おそらく幽々子様を除いて他には誰もいないようだ。

 

 

「欧我、どう?」

 

 

「特にこれといった怪しいものは見られないですね」

 

 

 空気を読んだ結果を霊夢さんたちに伝えた。妖夢と文はその返事にほっとしたような表情を浮かべたが、霊夢さんは未だに表情を崩さない。まだ何か引っかかることはあるのだろうか…。

 

 

「じゃあ、白玉楼の外は?」

 

 

「外…ですか?」

 

 

 感知できる範囲には限界があって、今いる場所から外の空気を探知することはできない。周りを見回そうと上空に上がった途端、目の前の光景に我が目を疑った。これは空気で感知するまでもない。今まで経験したこともない事態に出くわし、思わず戦慄し呆然としてしまったが一気に警戒レベルを引き上げ、真下にいるみんなに向かって大声を張り上げた。目の前から迫りくる脅威は、そうせざるを得ない理由として十分すぎるほどであった。

 

 

「まずい…。妖夢!今すぐ幽々子様の護衛に!霊夢さんは戦闘準備を!文は俺が護る!」

 

 

 3人は俺の放った言葉に驚きを隠せていない。目を見開き、じっと俺を見つめている。ただ、霊夢さんはその直後に納得したかのように頷くと食器を置いてお祓い棒を握りしめた。

 

 

「ねぇ、一体何があったというの!?外に何か…」

 

 

「防空『空の城壁』!!」

 

 

 事態を把握しきれていない妖夢の声を遮るようにスペルカードを発動させ、巨大な壁を作り出した。その直後その壁に1本の包丁が突き刺さったかと思うと、大量の凶器がドスドスという激しい音を立てて空気の壁に打ち込まれていく。どうやら間一髪だったか。

 

 

「今の音は!?」

 

 

「襲撃を受けている!大量の凶器が、白玉楼目がけて飛んでくる!早く…」

 

 

 ガラスが割れるような轟音がとどろき、空気の壁が粉々に砕け散った。空気の障壁を突破した凶器は再び自由を取り戻し、白玉楼の敷地内へと雪崩込んできた。この空気の壁を突破するなんてこりゃあ普通の凶器じゃないな…っていうか感心している場合じゃないだろ!早く守りを!

 

 

「早く幽々子様の護衛と戦闘準備を急いで!」

 

 

「わ、わかった!」

 

 

 指示を出した直後に弾幕を放ったので下の様子を見ることはできなかったが、空気の動きから推測して妖夢は慌てて幽々子様の部屋へと向かったのだろう。それよりもこっちだ。こいつら、まるで弾幕の来る場所が分かっているかのように動いていとも容易くかわし続けている。

 こうなりゃ全体攻撃で一気に…

 

 

「欧我!」

 

 

「霊夢さん!?」

 

 

 霊夢さんが放った御札の弾幕が死角から迫ってくる包丁に命中し爆発が起こった。その包丁はそのまま御札による封印を駆けられ、まるで天井から吊り下げている糸が切れたかのように真下に落ちていった。この現象から察するに霊夢さんから渡された封印の御札は効果があるようだ。

 

 

「気を抜かないで。ただの道具だからって侮っちゃダメよ」

 

 

「空中に浮かんでいる時点でただの道具じゃないんですが…まあいいや」

 

 

 霊夢さんに言われた通り、ここは慎重に行こう。普通に考えて道具がひとりでに空中にふわふわと浮かぶことは有り得ない。人形劇のように、裏で糸を引く人形師が必ずいるはずだ。おそらくその人物が今回の異変の犯人であり、白玉楼の蔵で生まれた手鏡の付喪神だろう。どうして白玉楼を襲撃するのか、その理由が全く分からなかったがその人物はここに来るだろう。とりあえず空気での感知は続けておくか。

 それにしても、何なんだよ一体。次々に迫りくる凶器をかわしながら御札を貼り続けていくが、凶器の数は減るどころか逆にどんどん増えている。今はもう白玉楼の周囲をぐるっと取り囲み、次から次へと襲いかかってきた。

 

 

「キリが無いな…これ」

 

 

「口を動かす暇が有ったら身体を動かしなさい!」

 

 

「はいはい…。空縛『エアーズ・ロック』!!」

 

 

 スペルカードを発動し、凶器の周りにある空気を固めて動きを封じた。その数約40。すかさず霊夢さんが御札を投げ凶器に宿った意思を封じ込めていく。しかしこれはほんの一部。まだまだ凶器はたくさん残っている。よくもこれだけの数を集めたなぁと感心しつつ、次々と封印をしていった。

 

 

「っ!?」

 

 

 次々襲い掛かる凶器に気をとられて一番大切なことを忘れていた。文は!?病み上がりで思うように動けないはず!文にもしものことがあったら…

 

 

「えっ…」

 

 

 文は葉団扇を片手に襲いくる凶器を吹き飛ばしている。特に目立ったような傷が見当たらなくてほっとしたが、それ以上に目を引いたのは背中から伸びる1対の黒く大きな翼。文に、翼が…?そんな、今まで一度も見たことが無いぞ!?

 

 

「翼って…あるの?」

 

 

「文は鴉天狗だってことを忘れたの?翼は普通にあるわよ」

 

 

 ボソッとつぶやいた言葉を聞き逃さず、霊夢さんがそう答えた。確かに言われてみれば鴉だから翼が有るのは可笑しくは無いけど、今まで一度も見たことが…

 

 

「いや、違う」

 

 

 見たことが無いんじゃない、見せていなかったんだ。出会った時から今まで、ずっと。でも、どうして?そんなことは後回しだ!

 

 

「虹線『ドラゴライズシュート』!」

 

 

 限界まで圧縮した空気を一気に解放し、虹色に輝く光線を放つ。それは天駆ける龍のごとく突き進み、文の周りにある凶器を一気に吹き飛ばした。

 

 

「文!大丈夫!?」

 

 

「欧我!?…ついに見せちゃったわね」

 

 

 文は目の前に降り立った俺の姿に驚くと、背中にある翼を一瞥してそう呟いた。

 

 

「うん。でも、どうして今まで隠していたの?翼があるなんて聞かされていなかったけど」

 

 

「それは…」

 

 

「もしかして、見せたら嫌われると思ったから?」

 

 

「えっ!?う、うん…」

 

 

 そっか。翼を見せてしまったら嫌われてしまうのかもしれない。そう思ったから今まで俺に翼を見せていなかったのだろうか。でも、それは間違っている。

 

 

「まったく、そんなことで俺が嫌いになる訳が無いじゃないか」

 

 

「本当に?」

 

 

「ああ。翼が有ろうが無かろうが、文に変わりはないでしょ。それに、包まれて眠ったら幸せな夢が見れそうだしな」

 

 

「もう、欧我ったら!でも、ありがとう」

 

 

 笑顔で笑いかけ、うんと頷いた。文もにこっと笑顔になって頷いてくれた。やっぱり何度見てもこの笑顔は世界で一番輝いて見える。本当に…

 その直後、空気の流れに大きな変化が起こった。蔵の方角から何者かが白玉楼に潜入してきた。これは異変の犯人に違いない。なぜなら、背中に大きな手鏡の形をした何かを担いでいる。

 

 

「どうしたの?」

 

 

「白玉楼に何者かが侵入した。今から迎え撃つけど、文は一人で大丈夫?」

 

 

「もちろんよ!私がか弱い少女に見えるの?」

 

 

 そう聞くと、文は胸を張ってそう答えた。

 

 

「見えるよ」

 

 

「あややややっ!?」

 

 

「好きな人は何時も守っていたくなるもんだよ。じゃあ、行ってくる」

 

 

 文の頭を優しく撫で、上空に飛び上がった。

 

 

「気をつけてね!」

 

 

「もちろん!俺が弱い少年に見えるのか?」

 

 

「ええ、見えるわ!」

 

 

「全く…。文も気を付けてね!」

 

 

 手を振り、蔵のある方角へと向かった。

 

 

 

 

 

 どうやら侵入者は見つからないように物陰に隠れながら移動しているようだ。でも、姿を隠せても空気の流れを隠すことはできない。人が動くと必ず空気も動く。空気に囲まれている以上、俺から逃れる術は無い。

 空気の流れを読み、侵入者の行く手を遮った。その姿は、文のメモ帳に残されていた犯人の特徴と一致した。真っ白なキャスケットを被ったピンクの長髪にオレンジ色の服、子どもくらいの身長に、身長とほぼ同じ大きな手鏡。水色に輝く眼は、見つかったことに対する恐怖と驚きの色が浮かんでいる。この子が、蔵で生まれた付喪神…。

 

 

「ここに何のようだ。こんな異変を起こして何がしたい」

 

 

 苦手な威圧と殺気のオーラを全開に出し、じっと侵入者の少女を見下ろす。俺から沸き起こるオーラに押され、少女の顔には恐怖の色が浮かぶ。しかし、その恐怖を振り払おうと声を上げた。

 

 

「邪魔しないでよ!私を暗く狭い場所に閉じ込め続けた幽々子に復讐をするのよ!」

 

 

 なるほど、そう言う事か…。やっとすべての謎が繋がったように感じる。ここに襲撃をかけた理由も、異変を起こした理由も、そして幽々子様に抱く怒りも…。この子、小傘と同じかそれ以上に辛く悲しい経験をしていたんだ。

 

 

「そっか、辛かったんだね…」

 

 

「分かるならどいて!私は必ず幽々子に復讐を」

 

 

「でも!」

 

 

 その少女の言葉を遮り、声を上げた。

 

 

「そうと分かった以上、なおさらここを通す訳にはいかないな」

 

 

「どうして!?あんたは一体誰よ!?」

 

 

 その少女に聞かれ、勢いに任せて生まれて初めての啖呵を切る。まさか俺が、こんなセリフを言うなんて思いもしなかったよ。

 

 

「俺か?俺は西行寺幽々子様にお仕えする専属料理人、名を葉月欧我!我が主に仇なすと言うのであれば、俺がこの場で料理する。さあ、食材になる覚悟があれば全力でかかってきなさい!」

 




 
さらっと文さんの翼を出しちゃいましたが、これ以外に方法は思いつきませんでした。
ごめんなさい。

でも、俺も文さんの翼に包まれて眠ってみたいですね。
これが本当の羽毛布団…ってか?


あ、ごめんなさい!謝りますから拳を振り上げないで!
ごめんなさい!ごめ(ピチューン!

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