レストラン白玉楼   作:戌眞呂☆

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最近小説内で欧我と文をイチャイチャさせていなかったら、無性にほのぼのラブラブイチャイチャシーンを書きたくなってきます。これって禁断症状なのでしょうか。

もしそうだとすると、俺確実に末期だよなぁ。


そんなわけで前半に欧我と文をイチャイチャさせてますが、文字数が多くなり過ぎないように控えめにしました。

堪えろ、レストランが完成したら思いっきり甘えさせるんだから。
それまでの辛抱だぞ。

えっと…長くなりましたがそれではどうぞ。


第66話 メニューが決まらない!

 

 リフォーム開始から早くも3週間が経過し、レストランは徐々に形になってきた。解体は2週間ほど前に終了し、今は柱や梁の補強、耐震構造の組み立て、床、壁へと工程が移っている。にとりさんから調理器具の開発が終了したという報告を受けたから、それをレストラン内に運び込んでカウンターやソファの設置に取り掛かろう。それよりも…。

 目の前に置かれた紙に視線を落としはぁと大きなため息をついた。レストランは今勇儀さんや萃香さん、ヤマメちゃんをはじめ手伝い志願者や見物人たちが協力して設計図通りに改装が行われている。その改装に付き添って協力したいが、今取りかかっているこの作業も手を抜く事が出来ない大切な作業だ。だが、その作業は今行き詰っており、そのことに俺は頭を悩ませている。

 

 

「あーもー全然決まらねぇ!」

 

 

 頭を押さえながら、あおむけに倒れ込んだ。もう、一体どうすればいいんだ…

 

 

「考えるのを止めた…寝よ…」

 

 

「あやや、もう諦めたのですか?」

 

 

 その声と共に、文が俺の顔を覗き込んできた。なぜそんな勝ち誇ったようなニヤニヤとした表情を浮かべているのかが気になったが、今はその疑問を解決したいという気持ちよりも寝たいという生理的欲求の方が強かった。今の時間は午後1時30分ごろ。大量の食器を洗い終わった疲れがあるし、ポカポカと気持ちのいい陽気でものすごく眠い。

 

 

「なんだ、文か…。ごめんな、俺は今から寝る」

 

 

 そう言って目を閉じると、文の少し苛立ちがこもった声が響いた。

 

 

「もぉ~!寝るんじゃないわよ!俺もメニューを作るから文も一緒に原稿の執筆を頑張ろうと言ったのは欧我の方じゃないの!」

 

 

「そうは言ってもねえ、メニューを考えるのはとっても難しいんだよ。ずっと考えてもぜんっぜん決まらないの」

 

 

「そうなの?ただ作りたい料理を書けばいいんじゃない?ちょっと見せて」

 

 

「いいよ~」

 

 

 返事をして再び目を閉じた。テーブルの上からメニューの紙を持ち上げる音が聞こえ、その後に文の「ふーん」と言う声が聞こえたが、その2つを聞き流し思案を巡らせる。レストランで出す料理を決めるというのはイメージしていた以上に難しい作業なんだと言う事が痛感させられる。ただ自分が作りたい料理を並べても自分本位のレストランにしかならず、これではお客様としてやってくる皆に恩返しがしたいと言うレストランを始めた当初の目的が達成できない。かといってみんなが大好きな料理を出そうとしても、それがいったい何なのかっていうのが今一はっきりと分からない。俺が料理を提供するのは人間ではなく妖怪がメイン。その他にも僧侶や魔法使い、犬に猫にネズミと多種多様だからいちいち取り入れて行ったら国語辞典も顔負けしちゃうくらいのページ数になってしまうだろう。

 

 

「ねえ、この絵は何?」

 

 

「え?」

 

 

 文の方に視線を向けると、メニューの中に描かれた小さな絵を指さしている。ああ、それね。その絵は白い犬と黒い猫、そして僧侶を表すマークの3種類がある。

 

 

「それは注意書きをよく見ればわかる」

 

 

「注意書き?」

 

 

「そうだよ。幻想郷にはいろんな妖怪がいるでしょ。中には犬や猫の性質をもったり、またその物だったりする妖怪や、修行僧で肉や魚を食べない人だっている。そう言った人達が間違えて料理を食べないように、玉ネギやチョコなど犬や猫にとって有毒な物、そして肉を使った料理はこれですよーと示すためのものなんだ」

 

 

「なるほどね。その絵が完成しているのなら料理だってすぐ決まるんじゃない?もう少し頑張ろうよ」

 

 

「嫌だ、もう寝る。文、膝を貸してくれないかな?」

 

 

 文の提案に即答で拒否し、冗談交じりで膝枕を頼んでみた。文は新聞の執筆があるしどうせ断るだろう…

 

 

「いいよ、おいで」

 

 

「えっ!?」

 

 

 慌てて目を見開き、文の方を向いた。文は畳の上に腰を下ろし、優しい笑顔を浮かべながらおいでおいでをしている。その状態に呆気にとられて見ていると、文はぷくっと頬を膨らませる。

 

 

「来ないの?」

 

 

「いや、行きます」

 

 

 

 文の膝の上に頭を乗せ、目を閉じて身体を休ませる。いや、休ませようとしているのに心がやけにドキドキして全然落着けない。更に文が頭をよしよしと撫でたりほっぺたをツンツンと突っついてきたりするので尚更落ち着けずドキドキに拍車をかける。頭を必死に働かせて考えることは、どうして文は膝枕をしてくれたのかと言う事だ。いつもなら原稿の執筆が大切だからと断るはずなのに。それに頭をなでてくる行為に幸せを感じてしまって上手く頭を働かせる事が出来ない。

 

 

「あやや、もう寝ちゃった?」

 

 

 心の平静を保とうと目を閉じ、文にドキドキを悟られないようにしていると、その声と共に突然ほっぺたをグイッとつねられた。その不意を突かれた行為に驚きのあまり飛び起き、つねられた頬を押さえて文の方に顔を向ける。目線があった途端笑顔を浮かべ、

 

 

「おはよう」

 

 

 と言うセリフを口にした。そのセリフと笑顔の理由が全く理解できない。ああもう混乱しそうだ。

 

 

「いや、おはようじゃなくてさ!何してるの!?」

 

 

「何って、膝枕よ」

 

 

「そうじゃなくって!…いや、そうだけどさ。どうして頬をつねってきたりするの?」

 

 

「それは…」

 

 

「それは?」

 

 

「気分転換よ。原稿の執筆に行き詰ったから欧我で遊んでみようかなと」

 

 

「俺は玩具なんかじゃねぇよ!」

 

 

「まあいいじゃないの。それよりもほら、おいで」

 

 

 そう言って自分の膝をポンポンと叩きながら手招きをしているので、再びごろんと寝転がり文の膝に頭を乗せた。って、いやいや何当然の流れみたいに寝転がっているの!?

 

 

「まあいいや、なんか心が落ち着くし…」

 

 

「ふふっ、嬉しいわ。私も欧我の顔が見れて幸せな気分よ」

 

 

「もう、文ったら」

 

 

 そして2人で笑顔になり、笑いあう。何もしていないけど、文と一緒にいるだけでものすごく幸せを感じる。

 

 

「ところで、文はレストランが出来たら何が食べたい?」

 

 

「私?うーんと、欧我が作る物なら何でも食べたいわ」

 

 

「それは無し。メニューを考えるときの参考にするから」

 

 

「そんなぁ。えーっとうーんと…甘い物が食べたい」

 

 

「甘い物か、完全に予想通りだな。じゃあ、餡蜜にケーキにプリン…みたらし団子」

 

 

 甘い物の名前を挙げていくと、文は頭の中で食べているシーンをイメージしているのか思いっきり笑顔になったので、冗談交じりで「太るよ」と言うと無言でおでこをペチンと叩かれた。痛い。

 

 

「ねえ、丁度今レストランリフォームのためにたくさんの人が集まっているのよね。その人たちに聞いてみたら?」

 

 

「それだ!」

 

 

 そうかその手があったか!自分でどうしようもできないときはみんなに聞けばいいんだ。みんなの希望の料理を聞いてそれをメニューとして取り入れればレストラン白玉楼にふさわしいメニューになるのではないか。

 

 

「そうと決まったら早速聞きに行こう。行くよ文!」

 

 

「ええあなた!…あれ、カメラと帽子はどこに置いたっけ?」

 

 

 

 

 

 文と一緒にレストランリフォーム現場に来てみると、作業はどうやら順調に進んでいるようだ。最初は自分一人でこつこつと作って行こうと思っていたのだが、自分ではできないことがたくさんある。そんな時に力になってくれたのはここにいる妖怪たちだった。こんなにも協力してくれるなんて本当にうれしかった。そんなみんなにお礼を伝えた後、ここに来た目的を説明し本題に入る。

 

 

「みんなの好きな食べ物を教えてくださーい!」

 

 

「肉!人肉!」

「酒だなー」

「馬刺し美味いよね」

「キノコ!」

「キュウリ!キュウリ!」

 

 

 集まってくれたみんなに向けて好きな食べ物を尋ねると、口々にいろんな食べ物の名前が飛び出してきた。

 

 

「みんなバラバラねぇ。これでメニューが思いつくのかしら…」

 

 

「なるほど…。肉ならステーキとか焼くだけでもいいし、煮込むのもいいよな。酒と馬刺しって案外合うし、酒もアサリの酒蒸しとかで活用するのもありか。ふむ、キュウリはサラダはもちろんごはんで巻いてかっぱ巻きに。キノコは肉やベーコンと一緒にバターでソテーしてみるのも美味そうだ…」

 

 

 脳とイマジネーションをフル稼働させ、食材の名前から作る事が出来る料理を次々に連想していく。こうやってたくさんの料理を思いつく事が出来るのも幽々子様のもとで毎日いろんな料理を作ってきたからだろうか。

 

 

「すごいわね欧我。流石料理人よ!」

 

 

「伊達に専属料理人やってないからね。よし、この調子ならメニューもできそうだ」

 

 

 その後、みんなの好きな食べ物を聞きながらレストランのメニューとして出せそうな料理をメモに書き留めていく。これを活用すればメニューもできるかもしれない。

 

 

 

 

 

 十分情報収集が出来たのでメニューを形にしようと机に向かった。文も新聞のネタが出来たようでカチカチとキーボードで記事を打ち込んでいく。お互いに何も話さず、部屋の中はパソコンのキーボードをたたく音しか聞こえなかった。

 その部屋の外で、中の様子をうかがう幽々子の姿があった。障子の隙間から部屋の中を覗き、黙々とパソコンに向かう2人の表情を見てふふっと小さく微笑んだ。

 

 

「この家族に任せればレストランも絶対に成功するわね。邪魔をしちゃ悪いし、アレを渡すのはもう少し後でいいかもしれない。うふふ、完成が楽しみだわ」

 

 

 そう呟くと自室へと戻って行った。

 




 
最後の幽々子様が言っていたアレって一体何なんでしょうか…。


では次回もよろしくお願します。
感想待ってますねー。

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