レストラン白玉楼   作:戌眞呂☆

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サブタイトルが思いつかなかったです。はい。
でも今回の話でちょっとした進展があるのは事実です。

それではどうぞ。
 


第67話 ちょっとした進展

 

 翌日、俺は早朝からレストランの改装に取り掛かっていた。昨日の夜遅くまでかけて何とかレストランで出す料理の種類を絞る事が出来た。メニューが決まると気持ちが引き締まるというか、改装作業に全力を注ぐ事が出来るような感じがする。もちろん幽々子様の朝食の準備は終わらせてある。俺は朝食を食べなくても死ぬことは無い…いや、すでに死んでいるか。

 って言うかなに変な事考えているだろう。それよりも空気を動かさないと。空気の硬度と気流を操って外に用意された沢山の木材をレストランの中に運び込む。レストラン内部の壁はメープル色の腰壁に漆喰と言う組み合わせで少し和風にし、ソファ席が3つとテーブル席が3つ、オープンキッチンとそれに面したカウンター席が7つと言った構成を考えている。外見はオープンテラス席の周りに日本庭園風の光景を作り、木材を使った落ち着いた和風な感じにすることに決めた。白玉楼と言う和風の建物の傍に洋風のレストランを作ってしまってはかなり浮いてしまうし景観を損ねてしまう。だから和風の外見にしつつ内装は洋風に少し近づけた感じにする。

 

 

「こんな感じでいいだろう」

 

 

 レストランの内部に運び込まれた大量の壁材の山を見つめてふぅと息を吐いた。壁材には木材のほかに煉瓦もたくさんあった。俺の好みに合わせ、オープンキッチンの内部の壁は煉瓦を積み重ねて作ることにした。だってなんか煉瓦造りって憧れるじゃない。

 壁に木材を張り付け、にとりさんから借りたネイルガンで釘を打ち込み固定していく。昨日みんなが3分の2をやってくれたので俺一人の作業でも午前中に終わるだろう。レストランの内部はネイルガンが放つ音が響くだけでそれ以外の音が全くしなかった。早朝だから当たり前だが、まだみんなは集まってはいない。そもそも契約をして雇ったわけではなく、あくまで協力を申し出てくれただけなので必ず来てくれるとは限らないしな。まあ一人だけの作業って言うのも悪くないだろう。

 

 

「終わったぁ~!!!」

 

 

 最後の一枚を貼り終わり、これで腰壁が完成した。一体どれくらいの時間がかかったのだろうか。よし、このままキッチンの煉瓦に取り掛かろう。レンガほどの小さく軽い物なら楽勝だ。接着剤の役割を果たすモルタルを塗った煉瓦を大量に空中に浮かばせ、一気に積み上げる。大量の煉瓦があっという間に素敵な壁に早変わり…っと。やっぱり空気を操る程度の能力って万能だな。

 大きく背伸びをするとものすごい空腹感に襲われた。一段落したし、白玉楼に戻って何か食べよう。そうと決まったら早速…

 

 

「欧我ー!」

 

 

「ん?」

 

 

 レストランの外から声が聞こえたので窓から外を眺めてみると、そこには協力を申し出てくれた勇儀さんと萃香さんの姿があった。

 

 

「おはようございます!今日も来てくれたんですね!」

 

 

「まあな。速く完成させないと幽々子の食べ物が無くなってしまうだろ。困ったときはお互い様さ」

 

 

「それに早くこの店でみんなと酒を飲みたいからね」

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

 2人の言葉が嬉しくて、頭を下げてお礼の言葉を述べる。そうと決まったら早速はじめよう。空腹については忘れよう。うん。

 

 

「それでは今日はカウンター席の設置について…」

 

 

 2人にこれから行う作業について説明を行い、改装に取り掛かった。やはり怪力を持つ鬼が2人も協力してくれるのは非常に心強い。お互いに笑いあい、話し合いながら作業を進め、昼近くになってとうとうカウンターとカウンターテーブルの設置が完了した。

 

 

「できた!よし、休憩にしましょう。ちょうど昼だし、何か食べたいものはありますか?今から作ってきます」

 

 

「そうかい!じゃあ酒の肴を頼む!」

 

 

 酒の肴って、今から宴会やる気満々じゃないか。まあいいや、適当に揚げ出汁豆腐とか出汁巻き卵、揚げ物なんかを作って来よう。

 

 

「分かりました、作ってくるので少し待っていてくださいね!」

 

 

 レストランに勇儀さんと萃香さんを残し、白玉楼の台所に向かった。

 

 

 

 

 

「やっぱり欧我の料理している姿ってかっこいいわね」

 

 

「しかも手先が器用で一切の無駄が無いね」

 

 

「確かこういうことを板についてきたって言うんだよね」

 

 

「あのー、そんなに見られたら料理に集中できないよ。それに褒められると…」

 

 

 料理の手を止め、後ろからじっと見つめている文、小傘、心華の方を向いて苦笑いを浮かべた。今日は金曜日、つまり普段は妖怪の山に暮らしていて一緒に住む事が出来ない文と一緒に生活することができる日だ。金曜日から日曜日の3日間は文が妖怪の山を離れ冥界で一緒に暮らすことを許された日であり、この期間俺は常に大好きな文の傍にいる事が出来る。なんだけど、料理している姿をまじまじと見つめられているというのはなんか気が散ってしまって料理に集中できないよ。

 

 

「なによ、レストランではオープンキッチンにするんでしょ。今よりももっと多くの人に見られるんだから今のうちに慣れておかないとだめじゃない」

 

 

「うぐっ…」

 

 

 文に痛いところを突かれ、返す言葉が見つからなかった。文の言うとおりレストランのキッチンスペースはホールから見えるオープンキッチンだ。来店してくれたみんなの顔を見ながら料理がしたいという俺の希望でこうなったのだが、みんなを見ることができると言う事は逆に多くの人から見られることになる。たった3人で恥ずかしがっては、見ている人が何十人に増えたら料理に集中できないだろう。うん、文の言う事はもっともだ。

 

 

「分かったよ、見てていいよ」

 

 

「やったー!」

 

 

 仕方なくずっと見ていることを了承した途端3人ともものすごく喜んでいる。そんなにずっと見ていたい物なのかな?ただ一人の幽霊が料理を作っているだけだぜ。そのようなことを考えながら黙々と料理を続ける。

 

 

「あっ、欧我聞いて!この前面白いことがあって。実は文がねー、鏡の前で…」

 

 

「ちょっ小傘!?その話は止めて!」

 

 

「あ、それ私知ってる!」

 

 

「なんで心華も知っているの!?まさか小傘が教えたの?」

 

 

「うん!」

 

 

「あややや!?」

 

 

 なんかものすごく騒がしい。気になって集中できないじゃないか。文が鏡の前で一体何をしていたんだ?

 

 

「何かあったの?」

 

 

「な、何でもありませんっ!!」

 

 

料理の手を止め後ろを振り返りながらそう聞くと、文は顔を真っ赤に染めながら慌てて否定した。なんか小傘と心華がやけにニヤニヤしているんだけど、その表情見てたらものすごく気になっちゃうじゃないか。

 

 

「実はね、鏡の前で…むぐっ!」

 

 

「しゃべっちゃダメ!」

 

 

 そして暴露しようとした小傘の口を慌てて封じた。しかし。

 

 

「鏡の前でいろいろなポーズとってたんだよ。両手で自分のほっぺを指さしながら顔を傾けたり、顎の下で両手を並べて笑顔になってみたり」

 

 

 文の注意が小傘の方に集中した隙をついて、心華がジェスチャーを交えて見事に暴露してくれた。文は驚いた表情を浮かべて心華の方を向いた。その顔は熟れたトマトと同じくらい真っ赤に染まっている。

 その様子を脳内でイメージしたら、その可愛さに思わず吹き出してしまった。こんな可愛らしい一面があったなんて知らなかった。

 

 

「文、可愛い」

 

 

「…っ!?」

 

 

 どうやらこの一言がクリーンヒットしたようで、恥ずかしさのあまり台所の隅でうずくまってしまった。今度そのポーズを見せてくれるように頼んでみようかな。写真を撮りたいけど、そうしたら文に殺されそう…。

 結局文が復活しないまま勇儀さん達に持っていく酒の肴が完成した。でも、そんなにショックを受けるなんて相当恥ずかしい事なのかな。鏡の前でポーズを決め笑顔を見せる文はイメージしただけでものすごく可愛いし、実際に目の前でされたら叫んじゃうよ。

 

 

「お邪魔しまーす!」

 

 

 休憩がてら小傘達と話しているとき、その声と共にガラガラと勢いよく入口の障子が開いた。そして入ってきた早苗さんの服装を見た瞬間、驚きのあまり言葉を失ってしまった。早苗さんが着ていたもの、それは心華がアリスさんに作ってもらったレストランの制服と同じものだった。

 

 

「え、どっ、どういう事なの!?」

 

 

 何とかして声を絞り出す事が出来たのだが、その状況が全く理解できなかった。どうして早苗さんが制服なんか着ているんだ!?

 

 

「どういう事って、決まっているじゃないですか。私もレストランで働くんですよ。所謂アルバイトです。外の世界では当たり前じゃないですか?」

 

 

「た、確かに当たり前だけど…」

 

 

 早苗さんの言うとおり外の世界ではアルバイトをしてお金を稼ぐことは普通だ。そのバイト先がレストランだったとしてもおかしくはない。しかしここは幻想郷。しかも風祝であり現人神である早苗さんが神社を離れ冥界でアルバイトをしてもいいのだろうか。

 

 

「あの…」

 

 

「大丈夫ですよ!レストランのバイトは経験済みです!それになんか憧れちゃうんですよね、レストランで働くというのが…」

 

 

 はあ、この調子じゃあ何を言っても無駄かな。しかたない、早苗さんをアルバイトとして雇おう。俺自身あれだけの広さを持つレストランを俺と心華の2人だけで切り盛りするのは難しいと思っていたからね。少しは心華の負担が減ったから良しとするか。

 

 

「わかったよ、じゃあしっかりと働いてもらうからね」

 

 

「もちろんです!任せてください!」

 

 

「心華もそれでいいよね?」

 

 

「うん、いいよ!でも…」

 

 

 そう言う心華の視線は早苗さんに注がれていた。もっと言うと、早苗さんのたわわに実った2つの果実に…。

 

 

「良いなぁ、大きくて」

 

 

 えっ!?心華なんてことを言うんだ!?

 

 

「そうですか?」

 

 

 そう言いながら早苗さんは胸の下あたりを両手で押さえる。着ている制服が押され、よりくっきりとした胸のシルエットは確かに大き…って男がいるこの場でそんな話をしないでよ!慌てて目線をそらし、作り終わった肴の方に視線を移す。しかし、心華の「でも」と言う言葉に反応して再び視線を心華たちの方に移した。心華の視線は今度は小傘の胸に注がれている。

 

 

「な、なに?」

 

 

「でも、小傘ちゃんのよりは大きいよ」

 

 

「えっ!?」

 

 

 小傘は驚きの声を上げると、両手で自分の胸を触って大きさを確認した後、その両手を今度は心華の胸に伸ばした。そして心華の胸に触れた直後、まるで雷に打たれたかのような形容しがたい表情に変わる。ショックを受けているのは分かるが、その様子から見ると心華の言ったことは本当だったようだ。その表情のまま右手だけを自分の胸に戻して数回撫でた後、がっくりと膝をついた。その様子を見た早苗さんが慌ててフォローに入る。この状況、俺は一体どうするのが正解なのだろうか。答えが全く見つからない。ひとまずこの場を退散するしか…

 

 

「ねえ、欧我」

 

 

「はいっ!?」

 

 

 逃げようとしたが捕まってしまった。

 

 

「欧我は、大きいのと小さいのどっちが好き?」

 

 

「えっ!?さ、さーてそろそろ料理を勇儀さん達の所へ持っていくか~」

 

 

「あ、話そらした」

 

 

 勇儀さん達に依頼された酒の肴を手に、逃げるように台所を後にした。まさかあんなことを聞かれるなんて思ってもみなかったからどう答えればいいか全然分からなかった。そもそもどっちが好きかなんて考えたことが無いから答えようがないじゃないか。まったく。…顔が赤くなっていないだろうか。

 

 

 

 

 

「おまたせ~!酒の肴を…あれ?」

 

 

 レストランの元に戻ると何故か萃香さんの姿は無く、代わりににとりさんと椛さんの姿があり、しかも3人でお酒を酌み交わしていた。にとりさんと椛さんはかなりおびえている様子だけど。

 

 

「おーう欧我か!遅かったじゃないか。私たちはもう飲み始めているよ!」

 

 

「あ、そうですか。で、萃香さんはどこに?」

 

 

「萃香は人を集めに行ったよ。宴会をするならみんなを呼ばないとね!」

 

 

 そう言ってガハハハと豪快に笑う勇儀さん。え、大勢来ちゃうの!?

 

 

「ダメですよ!白玉楼には食材が少ないから料理を人数分作ることはできません!」

 

 

「分かってるって!だから今回は食材を持ってくるようにと言う条件を付けた。そうすれば白玉楼の食材を使わなくて済むだろ?」

 

 

「それはそうですけど…」

 

 

「だから大丈夫さ!ほら、白玉楼の連中も連れてきて一緒に酒を飲もうぜ!」

 

 

 はぁ、この状態の勇儀さんに何を言っても無駄だよな。俺って押しに弱いのかな。

 

 

「分かりました、呼んできます」

 

 

 仕方ない、宴会をやると決まったらその宴会を楽しまないと。みんなで集まってワイワイと酒を飲むのは楽しいし大好きだからいいか。今日は張り切って酒を飲もう。

 白玉楼にいるみんなに宴会について伝えるために来た道を引き返しながら、俺はぼそりとつぶやいた。

 

 

「レストラン、何時になったら完成するんだろう…」

 





うん、何時完成するだろうねー(←他人事)
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