この章は三人称視点で書いていきます。
若干読みにくいとは思いますが、あらかじめご了承ください。
俺も読みやすいように頑張ります。
今回の主役は多々良小傘です。
さあ、小傘ちゃんを皆さんで応援しましょう。
第9話 真夜中の悪巧み
午後10時 冥界―
「皆さんうらめしやー!多々良小傘です!」
「アシスタントの射命丸文です。」
「様々なトリックを使って人々を驚かせていくこのコーナー、題して『多々良小傘のドキドキドッキリ大作戦』!記念すべき第一回のターゲットはレストラン白玉楼の料理人、葉月欧我さんでーす!」
「ちょっと待って。」
かなりノリノリな2人をアリスが制止する。
「まさか、そんなくだらないことのために私たちを呼んだの?」
「「はい。」」
アリスの問いかけに、文と小傘は同時に頷いた。
「まあ良いじゃないか。楽しもうぜ。」
信じられないという表情を浮かべるアリスの肩に、魔理沙がポンと手を置いた。
「なんでそんなに楽しげなのよ。それに妹紅と屠自古もどうして?」
「私は驚かせる行為に興味があっただけだ。亡霊だし。」
「私は、ただ面白そうだと思ったからな。それに、私の能力を必要としてくれるのが嬉しくて…。」
そう胸を張って答える屠自古と、若干うつむき加減で答える妹紅。
「亡霊とか関係ないわよ。それに、そんなにくだらないことにわざわざ付き合わなくていいから断りなさいよ!」
ツッコミ役に徹するアリス。
しかし、そんなアリスの背後には不気味な人形が…。
「なんだよ、アリスも結構ノリノリじゃないか。そんな人形を作って。」
「わっ!?私は…別に…。」
「なんだよ。断ってもいいんじゃなかったのか?」
「そっ…それは…。」
アリスの顔が見る見るうちに赤く染まる。
パシャッ!
その光景を文が写真に収め、コホンッと咳払いをする。
「それでは、今回特別に協力してくれる方に登場していただきましょう。白玉楼の主、西行寺幽々子さんでーす!」
「どうもー♪」
何も無い空中から突然姿を現した。
その予想外の登場に、
「きゃあ!?」
と小傘が悲鳴を上げた。
「あらあら、驚かせちゃったみたいね。ふふっ、もっと驚かせてあげようかしら?」
「ひぇーん!」
(小傘が涙目になっている。これで無事に成功するのかしらね。)
とため息をつくアリスであった。
「さて!」
幽々子に驚かされた小傘であったが、なんとか気を取り直し、今回のトリックについて説明を開始した。
まずはそれぞれの役割分担からだ。
「妹紅さんは炎を使って人魂や巨大な顔をお願いします。」
「ああ、任せろ。」
「屠自古さんは雷の爆音で驚かせてください。」
「うん。」
「アリスさんは魔法で人形や近くにあるものを操ってください。」
「はぁ、仕方ないわね。」
「魔理沙さんは様々な物を使って音を出してください。」
「ああ、準備はバッチリだぜ!」
「そして幽々子さんは幽霊の操作やサポートをお願いします。」
「いいわよ。」
「文さんは記録や写真ね。」
「はい!」
「そして最後はわちきが止めを刺すのよ!」
と、小傘は胸を張った。
しかし、未だに不安を感じているアリスは今一乗り気じゃなかった。
「大丈夫かしらね。そもそも、どうしてそこまでして欧我を驚かせたいの?」
「それは…。」
傘をぎゅっと握りしめ、小傘はうつむいた。
発した声にも元気がなかった。
「欧我が生きていたころは、どんなに下手な方法でも必ず驚いてくれた。それにその後に見せる困ったような笑顔が好きで、驚かすたびに幸せでいっぱいになったの。でも…」
ぽつん、と地面に一粒の雫が流れ落ちた。
「でも…欧我が死んでこの世からいなくなると、もう誰も私に驚いてくれなくなった。大好きな笑顔を見ることもできなくなった。驚いてくれる人がいなくて、お腹も心もひもじくて…。」
はらはらと、途切れることなく涙を流す。
嗚咽を漏らし、小傘は泣き続けた。
「…えぐっ…でも、欧我はここに帰ってきた。だから…だから私は何としても驚かせたいの!」
「そっか…。」
そう呟くと、アリスは小傘の肩に手を置いた。
「分かったわ、私たちが精一杯協力する。絶対に欧我を驚かせましょう。」
「アリスさんっ!」
アリスに抱き着き、小傘は泣き続けた。
身体の中に溢れだした感情を堪えることができず、それらは涙となって体外に流れ出した。
そんな小傘の頭を、アリスは優しく撫でる。
「あらあら、抱き着く相手が違うわよ。ふふっ、これで本当に成功するのかしら。」
優しい笑顔を浮かべ、頭を撫で続ける。
その笑顔のまま、アリスは文の方に顔を向けた。
「文もそうなのね。小傘の気持ちを知ったから、そんなにも協力的なのね。」
文は「それもありますが…」と小さくつぶやいた後、きっぱりとこう言い放った。
「ネタの予感。」
(わぁ、雰囲気ブチ壊し…。)
小傘が落ち着きを取り戻したところで、みんなそろって白玉楼に向かった。
それぞれが所定の位置に付き、開始の瞬間を待つ。
幽々子の話によれば、欧我はもう自分の部屋で眠りについたらしい。
眠っている欧我を幽々子が起こし、食べ物をねだる。欧我が廊下に出た行動が開始の合図である。
息をひそめて所定の位置へと向かう小傘は、隣を歩く妹紅にこう聞いた。
「ねぇ、どうしたら欧我は驚いてくれるのかな?」
「そうだなぁ…。」
妹紅はわざとらしく右上を見上げ、顎に手を置いた。
「後ろからぶつかれば驚いてくれるのかもな。」
「後ろから…。」
そして小傘の方に視線を戻す。
「なんてなっ、冗談d…あれ、いない。」
しかし、すでにその場所に小傘の姿は無かった。
「しまった…。」
がっくりと肩を落とす妹紅であった。
さあ、いったいどうなることやら…。