しまなみ女子工業学園戦車道履修記   作:柿之川

35 / 35
第三十三・五話

 

 太平洋の大海原を望む海沿いの風光明媚な街に、大玉の花火が炸裂するような轟音が絶えず響き、街は硝煙が霧のように煙っている。総勢六校が激突するエキシビションマッチは昼を過ぎて尚も激しさを増していた。

 

「そどこちゃん先輩、大洗の重装甲コンビで隊長を守り抜くよ!」

「了解! って、誰がそどこちゃん先輩よ! 園先輩って呼びなさい!」

 

 大洗随一の重装甲を誇るポルシェティーガーとB1bis重戦車を駆るレオポンチームとカモさんチームは建物の陰から少しだけ身を乗り出しては砲撃し、また素早くぱっと後退して身を隠す。

 見た目は地味であり、泥臭い戦い方だ。だが、50トンと30トンを超える戦車が正確で周期性をもった車両運動を繰り返し行っている様子から操縦手の優れた技量が窺える。二両の戦車の連携で隙の無い防御網を展開しなければあっという間に敵戦車に履帯を切られて蜂の巣にされてしまうからだ。

 

「うにゃおぅ! あ、あっぶにゃ~ ハチハチの砲弾が掠ったにゃ」

「大丈夫でありますかアリクイ殿! おのれ黒森峰、我が突撃の錆に……」

「あわわわ、福田氏! 突撃はデザートにとっておくにゃ! 今は辛抱ぞな!」

 

「平井さん! ウチとのコンビネーションショットでやっつけるぴよ!」

「は、はい! ぴよたん殿!」

 

「長谷川ちゃん、ナイスドライブもも! 日本戦車の底力見せてやるっちゃ!」

「望む所です、ももがーさん!」

 

 黒森峰隊に単身突撃をかましそうになっていた福田はる率いる九五式軽戦車もなんとか大人しく三式中戦車チヌを駆るアリクイさんチームと共同で防御網を形成していた。

 

 みほはアリクイさんチームとコンビを組ませる際に、福田にマイクをオープンにさせて、乗員同士が会話出来るようにさせた。知波単の突撃に対する情熱は買っているが、流石にこれ以上の損耗は何としてでも避けたい。ならばと乗員同士で無線で自由にコミニュケーションを取れるようにしたのだ。

 

 たとえ盤上の一両の戦車でも、中には一緒に戦っている仲間がいる。その事を意識させ実感させれば、きっと無謀な突撃に走る事は無いだろうという考えだったが、結果として福田達は突撃に逸る事も無く、二両のコンビは上手く機能しているようで大成功だと言えた。

 

 車長が二人とも丸メガネをかけていて、日本の戦車を駆る者同士だ。もしかすると、凄くいいコンビなのかもしれない。思わぬ発見にみほも微笑む。

 

「おぉ~ ねこにゃーさん達と知波単の人達、結構上手くやってるみたい」

 

「ええ、単身で敵陣に突っ込んで行きそうになった時はどうなるかと思いましたが。いい雰囲気でコミニュケーションが取れているようですし、猫田さん達との相性も良いようですね」

 

「日本戦車のコンビというのも壮観です! 西住殿、流石の采配でありますね!」

 

 実は以前、バレー部チームことアヒルさんチームとコンビを組ませた事もあるのだが、ねこにゃー達がアヒルチームのスポ根のノリに付いていけず上手くいかなかったのだった。一か八かで組ませたコンビが吉と出てみほも少しほっと胸を撫でおろす。

 

「しかし、知波単のご令嬢さん達がネトゲ廃人達に毒されないか心配だ」

 

「何言ってんのよ、麻子だってしまなみの音森さんとネットゲームで夜更かししまくってる癖に。人の事言えないよ」

 

「むぐ…… 私と響はゲームが好きなだけだ、廃人ではない」

 

 

「くっ…… 平地で仕留めきれなかったのは私の失策だったわね」

 

「それはそうかも。でもエリカ、仕方無いって。相手が私達のクセを熟知しきってる元副隊長のみほさんなんだもん」

 

 自らの言葉にそう返す装填手の言葉にエリカも反論はせずぐっと喉を鳴らす。

 

 大洗は地の利を生かし、建物や壁面といった遮蔽物を上手く使ってこちらを翻弄しようとしてくる。普段ほわほわしているのに、一度戦車に乗れば抜群の才を発揮する大洗の隊長の顔が頭にチラつくような戦いぶりだ。

 みほを除けば、大洗の生徒たちはこれまで一度も戦車道をやった事が無いという。しかしながら大洗のどの車両も妙にいい動きをする上にトリッキーで読みづらい。

 

「特にあのポルシェティーガー、私達でも匙を投げる欠陥戦車を手懐けるだなんて」

 

「いや~ アレをあそこまで乗りこなすのはマジで凄いって! いいねぇ、いい腕してるじゃん。やるもんだねぇ大洗」

 

 レオポンチームの健闘を目の当たりにしたエリカの言葉に、ティーガーⅡの操縦手も合いの手で賞賛の声を上げる。

 

 エリカも、レオポンのパーソナルマークを付けたポルシェティーガーが特に厄介に感じていた。動きがこなれていて、装甲厚を生かした戦い方が出来ている。大洗の自動車部が乗員を務めるチームと聞いていたが、整備の腕といい中学から戦車道をやっていれば黒森峰に推薦枠で入学出来そうな腕前だ。

 

「もういっその事、シュトルムティーガーを準備しておけば良かったかしら?」

 

「ダメダメ、エリカ。そんな雑な戦い方考えたら。みほさんにも追いつけないし、しまなみの隊長さんに嫌われちまうよ?」

 

 ひと思いに、大洗の街ごとシュトルムティーガーの38cmロケット臼砲で灰燼と化してやろうかしら……と膠着する戦況に思考が横滑りし始めたエリカを砲手が諫める。

 もしも一発でも大洗にシュトルムティーガーのロケット砲弾が着弾すれば市街地はいとも容易く敵戦車もろとも瓦礫の山になるだろう。しかし、そんな破壊の限りを尽くす戦い方は最早戦車道とは言えない。

 だが、プロリーグの設立に向けて試合にエンターテイメント性を持たせるべくカール自走砲を戦車道に導入しようという動きもある。何せ世界最大の60cm臼砲から撃ち出される砲弾がもたらす大爆発は驚天動地の派手さだからだ。無論エリカも、武道の精神から外れたそういった大人たちの虫唾が走るような動きを心底軽蔑していた。

 ちなみに飛騨エマが駆るマウスは市街地を迂回して海沿いの国道を進んでいる。あそこまで巨大な戦車では街中の走行はほぼ不可能。海沿いはプラウダが受け持つ戦区であるが、しまなみの後背を脅かしプラウダを援護するという口実で単騎進軍している。

 

「分かってる。だけど、これじゃあ埒が明かないわね……」

 

 自らのティーガーⅡを先頭に、小賢しい大洗の戦線を力任せに一気に突破してやりたい気持ちになるが、それをあのみほが見逃す筈は無い。履帯を切られ擱座の醜態をさらす事だけは避けたかった。

 

「副隊長、ここは少しずつでも隊をゲインさせていきましょう。バウアーさん、あの倉庫の陰まで一気に進みます。付いてきてくれますか?」

 

「了解だよ。黒森峰の斬り込み隊長、赤星小梅! 逸見副隊長、エミ 援護頼みます」

 

 覚悟を決めるように赤星がスロートマイクに手を当てたまま深呼吸を行い、バウアーが鉢巻のように右眼を隠す眼帯の紐をきゅっと締め直す。

 あの滑落事故以来、誰よりもチームに対する献身を示してきた赤星。決して捨て鉢ややけくそでは無い、チームを少しでも前進させようという姿勢。十連覇を逃した戦犯が、贖罪のつもりなのか……と憐みの目で心無く言う者もいた。だが、唯々ひたむきに実績を積み重ね、真直ぐな戦車道を貫く彼女を悪く言うものは最早黒森峰に一人も居ない。

 自分に対するどんな言葉も、態度と戦績で黙らせ、流星のように前だけを見つめて進む。今の赤星にはそんな強さがあった。

 

(赤星さんに皆が引っ張ってもらってる…… 私も負けてられないわね)

 

 ラグビーやチェスでは守りに入るより、ぐいぐいと積極的に前に進むプレイヤーがいるとゲームが動いてより面白くなる。戦車道も同じだ。赤星の姿に、エリカも戦車乗りの血がざわざわと滾ってくるのを感じる。

 

 そうだ、自分たちはこんな所で留まっているわけにはいかない。この夏の大会で敗れた十両の戦車の乗り手達と再び相対する為に、自分達は大会後も昼夜を問わず鍛錬を続けてきたのだ。

 

「了解、赤星とバウアーで血路を開く! 小島と私は大洗の砲撃を引き付けつつ援護射撃を行う。赤星、バウアーは大洗の阻止砲火に警戒しつつ前進しポイントを確保!」

 

「了解!」

 

 エリカの命に三両の飛切りのパンター乗り達が応える。そうして敵の動きに全神経を集中し、前進のタイミングを見計らう。以前の自分達であれば、隊長の命令が無ければ何一つ動かなかった。だが、去年の大会の敗北から自分達は変わろうと血反吐を吐くような鍛錬を重ね、変わろうと必死にもがいて来た。

 

 それもこれも、起点はあの去年の大会の敗北。自らに別れの言葉も無く一人黒森峰を去った嵐の中心にあった西住みほは、大洗という新天地で水を得た魚のように爆発的に才能を開花させ、この夏の大会の頂点に立つに至った。

 

 恨みなど無い、ある筈も無い。わだかまりも無い、それは本当だ。だが、頭では割り切れず、抑えきれないめんどくさい様々な感情と思いが逸見エリカの胸に去来する。

 

「小島、射撃開始!」「了解! 逸見副隊長に続きます!」

 

 エリカの号令でティーガーⅡと小島のパンターが大洗の射線上に躍り出る。待ってましたとばかりに、大洗の五両の戦車から阻止放火が撃ち込まれるが冷静に昼飯の角度を取り、撃ってはまた動き、小島車と連携して隙のない火網を形成する。

 

「ぐうぅ! 今よ! 赤星! バウアー!」

 

「はいっ!」

 

 ティーガーⅡの背後から二両のパンターが飛び出す。

 

 王虎の装甲を伝播する着弾した砲弾の衝撃が、砲塔のキューポラから身を乗り出したエリカを激しく揺さぶる。まるでシェイカーの中に居るような激しさだが、この泥臭い戦いの中でも、苦しみを封印し、あくまでも冷静に仲間達に指示を出し、その身を挺してでも隊を前進させる。将たる者は後方で指示を出す事に専念すべきと言われるかもしれないが、その姿は紛れもなく逸見エリカの成長を物語っていた。

 

 (さぁ、みほ。とくと味わいなさい。これが…… 貴女が生んだ黒森峰の戦い方よ!)

 

 撃っては弾き、仲間と進んでは守り、声を掛け合い一歩ずつ前進していく。逸見エリカと西住みほの勝負はさらに激しさを増していく。

 

 

「わぁ~ 大洗と黒森峰の戦いすっごい…… 硝煙の匂いがこんなとこまで漂ってきてる」

 

 その頃、丘の上で観戦していたアキは大洗と黒森峰の激しい戦いに驚いていた。何せ硝煙の香りがこんな所まで漂ってくるのだ。一体どれだけ撃ち合っているのか。華麗な運動戦とは違い、戦車同士が狭い距離で激しく撃ち合う市街地戦は別格の荒々しさがある。

 

「言葉には表せない複雑な思いも、戦車道であれば伝える事が出来る。それがひと時でも共に時間を過ごした仲間が相手なら猶更さ。砲声が声で、砲弾は拳。不器用な言葉より、きっと上手く伝わるはずだよ」

 

 目を瞑り、遠くに聴こえる砲声に耳を傾けながらミカがふわりとアキに応える。先程まで聖グロの隊長と零の戦いをアナログテレビにかぶりつきで観ていたミッコは大声でしまなみに声援を送っていた。

 

「ふぅん……」

 

 アキも分かるような、分からないようなといった様子で砲煙で煙る大洗の街を見渡す。太平洋沿いの小さな街に、総勢六校の戦車がひしめき、撃ちあっているのだ。目まぐるしく変わる戦況と、激しい戦闘にアキもくらくらしてくる。

 

「いよぅ! ミカ!」

 

 自らを呼ぶ声にミカが振り向くと、そこにはヘルメットを被りベスパに乗った、アンツィオ高校・戦車道隊長のアンチョビがいた。

 

「安斎さん…… 久しいね。こんな所まで出張ってくるだなんて、どうしたんだい?」

 

「何言ってんだ、大洗にお前が来てるって聞いてな。店のお客さんも少し落ち着いたんで、会いにに来てやったんだ。あと、私の名はアンチョビだ! ほら、お土産の手作りのカンノーリだ。皆で食べてくれ」

 

「おや…… お心遣い済まないね。アキ、ミッコ、アンチョビさんがお菓子をくれたよ」

 

「わぁ、とっても美味しそう! アンチョビさん、ありがとうございます」「あざます!」

 

 イタリアの家庭の味。揚げた筒状のパイ生地にリコッタチーズクリームや生クリームを注いだカンノーリは食後のおやつにピッタリだ。嬉しそうにカンノーリを頬張るアキとミッコを見て、持ってきて良かったとアンチョビも嬉しそうに笑う。

 

「やれやれ、凄いもんだな。この硝煙と砲声、それにこの歓声。こんなに戦車道が愛される街で試合が出来る奴らは幸せ者だ」

 

「うん…… そうだね」

 

 無名校二校が優勝・準優勝するという世紀のジャイアントキリング以来、世間の戦車道人気は急激に高まっている。今までの「どうせ黒森峰か、残りの三強のどこかが勝つ」という霧のように漂っていた停滞感が払拭された事もあってか、全国の学校では戦車道をやってみたいという生徒も増加しているらしい。

 ニッチで古びた日本古来の武芸が、再び脚光を浴びつつあった。

 

「おぉ! 黒森峰の前進だ。やるな、あのティーガーⅡ 自分を盾に後続を前進させるとは、私の好きなスタイルだ」

 

「大洗の防御も見逃せないね。特にあの三式中戦車、伸びるよあれは」

 

 まるでビール片手に野球を観戦するファンのように、あれやこれやと試合に所感を述べ合う。目の前にこんな話のタネがあっては、話が進んでしょうがない。

 そうして、話題がお互いの近況に移ったあたりで、アンチョビが少し聞きにくい話を切り出す。

 

「なぁ、ミカ。お前、進路ってちゃんと考えてるのか?」

 

 もう自分達は高校三年生、しかも八月下旬だ。そろそろ進路についてしっかりと考えを固めなくてはいけない時期に入っている。自分はともかく、いつも空を流れる雲のように、風来坊をやっているミカがちゃんと将来を考えているのか心配になり、アンチョビも会いに来たのだった。

 

「どうだろうね、風の吹くままに流れるのみさ。私はともかく、安斎さんは引く手あまただろう? こんな根無し草にかまっている暇なんて無いんじゃないかな?」

 

「バカ言え! お前ほどの才能を持っている奴の何が根無し草だ! っと……すまない、大きな声を出して。こんな場でお小言みたいな事は言いたくないし、この話はここまでだ。だけど、心配だからこれから定期的にTELするからな!」

 

 自身を心配する安斎の言葉に、ミカもすまないねと返しカンテレをつま弾く。そこに、秋の訪れを感じさせる少しひんやりとした風が吹く。

 

 夏が過ぎ、すぐに実りの秋が来る。そして、雪華が舞う冬がやって来る。

 

 冬。そう、私の…… いや、()()の季節だ。ミカの胸には、復活すると噂の冬季無限軌道杯があった。

 

「移ろう季節と同じように、浮世も移ろう。分かれ道でどちらを選ぶかは、心の声に任せるよ。しかし…… ふふ、安斎さんは昔から変わらないね。面倒見がいい所も昔のままだ。それなら、さぞかし方々からお声が掛かってるんだろうね」

 

「んん? そうか? 私は昔からこんなだから、性分ってやつなのかな。進学の勧誘とかも色々と貰ってはいるが、どうにも中学までの私しか見てくれてないようなのばっかりでな……」

 

 アンツィオに入学してからのアンチョビの戦績は中々厳しいものがあるが、中学までは既に全国に名を馳せていた西住まほと肩を並べて評価されていた逸材だ。更に本人がとびきり面倒見がよく、誰からも好かれる将器を持ち合わせているとなれば見逃すスカウトはいるまい。

 

「お声が掛かるのはいい事さ。将来をしっかり考えて、路頭に迷うなんて事が無いようにね」

 

「あぁ、そうだな…… って、それはお前だミカ! 何で私が諭される側なんだ!?」

 

 ミカと話しているといつの間にかペースを持っていかれる。戦車道の時もいつもそうだ。

 

「もう行くのかい?」

 

「あぁ、そろそろ帰るよ。頑張ってP40の修理代を稼がないといけないしな。じゃあな、ミカ また電話するからな…… って、おいミカ! 何だアレは!!」

 

 お別れムードからの突然のアンチョビの豹変ぶりに、アキとミッコもびっくりして顔を上げる。

 

「どうしたんだい? 安斎さ」「とぼけるな! お前一体どこでBTを整備したんだ!」

 

 ベスパから飛び降りてBT-42に向かってダッシュで駆けていくアンチョビをミカも追う。ふわふわのツインテールが横一直線になってまるで漫画みたいなダッシュぶりだ。

 

「凄いなこの主砲……なんて綺麗なライフリングなんだ。それに、この足回り…… 転輪のソリッドゴムも、こんなトレッドパターン見たこと無いぞ。特注品か!? お、おまっ! 何だこのエンジン!?  海外の戦車道ワークスチームからぶんどってきたのか!? なぁ!! こいつをどこで整備してもらったんだ!?  教えてくれ!!」

 

 アンチョビが興奮した様子で、ミカをがくがく揺さぶりながら咆哮する。ミカ達が駆るBT-42はつい先日、しまなみ女子工業学園の戦車道履修生たちの手で最高の状態に整備されたばかりだ。

 そういえばとミカは思い出す。継続高校のスナイパーを担うヨウコも、Ⅲ号突撃砲を零達に整備してもらいたいと言っていた。自分の仕事道具に、人一倍の強いこだわりを持つヨウコがだ。

 

「さてね…… とっても可愛くて優しい戦車の妖精さん達が直してくれたのさ」

 

「う~ずるいぞミカ! こんな腕のいい職人を隠してただなんて! はっ! そうか、分かったぞ! どこかの秘密の工廠か、会員制の何かなんだな! 頼む! アンツィオも是非それに乗っからせてくれぇ!」

 

 昔から世話になっているアンチョビの必死な様に、ミカは重い口を開かざるを得ない自分を自覚していた。

 

(出来れば…… 零達とのパイプは、私たち継続だけの特権にしておきたかったんだけどね……)

 

 アキとミッコに目線を移すと、アキは少し困ったようにはにかみ、ミッコはしてやったりという表情でガッツポーズで笑っている。アキは零達に仕事を増やしてしまうであろう申し訳無さを、ミッコは零達しまなみの整備技術がアンチョビにも認められた事に嬉しさを感じていた。

 

 

 賑やかな昼下がりに、雨の気配を感じさせる湿り気を帯びたやや強い風が吹き抜ける。

 

 

 風に乗って響く砲声が、三両のマチルダⅡと一年生たちの駆る三両との激戦を伝えていた。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。