しまなみ女子工業学園戦車道履修記   作:柿之川

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第七話

それからは大騒ぎだった。多目的広場に帰って来た私達を、まるで日本の半分の人口が集まっていると錯覚してしますような、沢山の人たちが拍手と声援で迎えてくれた。先に撃破された仲間達が、駆け寄り抱き着いてくる。その後は、お立ち台に上がってのヒーローインタビューや、大洗のえらい人達からなにか表彰されたりと目まぐるしく行事が進み、閉会式と機材の片付けまであっという間だった。

 

そのあとは、大洗チームとしまなみチームの皆と一緒に屋台巡りをしたり、アイスとクレープを食べたり、楽しい時間はあっという間に過ぎていった。

 

 

サンビーチを夕陽が赤く染めていた。

 

みほは、友人達から離れ、一人砂浜で佇んでいた。今もあの戦いの興奮が冷めやまない。

 

 

「お疲れ様でした、西住さん」

 

「あ、大垣さん……」

 

 

みほの元に零が歩み寄ってきた。黒と白地のコントラストが美しかったパンツァージャケットも、少し煤けて、あの戦いの事を思い出させた。

 

 

「勝利おめでとうございます、本当に素晴らしい経験をさせて頂きました」

 

「い、いえ、、こちらこそ!ありがとうございました!」

 

 

みほは精一杯の気持ちで零に礼を言う。

 

 

「おやおや、えらい方々がお揃いで。おねーさんも混ぜてよ」

 

 

二人の元に杏がやってきた。零とみほの間に杏が挟まり、三人で並んで赤い夕陽を眺める。

 

少しの静寂が、三人の間に流れた。

 

 

「西住ちゃん、本当にありがとうね。無理やり初めてもらった戦車道で、私らにこんな楽しい時間を過ごさせてくれて。今更だけど、あの時は本当にごめんね」

 

 

杏が頭を下げると、みほはわてわてと話す。

 

 

「い、いえ気にしていませんから、頭を上げてください会長!」

 

 

そうしてみほは、ぽつぽつと話し始める。

 

「私は…… 私は今まで戦車道しかない生活をしてきました。その戦車道が私から無くなって、逃げた先が大洗でした。からっぽの自分に初めて友達が出来て、普通の学校生活が送れると思っていた時に、また戦車道の世界に戻れと言われた時は、本当につらかったです…… だけど、今こうして、大洗の皆と、会長さんと一緒に戦って、戦車道が楽しいって思えるようになったんです。だから、会長さん、頭を上げてください」

 

 

「ごめん……西住ちゃん、ちょっと顔を上げらんない」

 

 

杏は泣いていた、いつも気丈で、飄々としている強い少女がぽろぽろと涙を流していた。そうして、しばらくして顔を上げる。そこには、涙は無く、気丈で飄々とした、いつもの大洗女子学園生徒会長の姿があった。

 

 

「大垣ちゃん。本当に、本当にありがとう」

 

 

杏は零の手を強く握り、感謝の言葉を伝える。その手を零は、ぎゅっと両手で握り返す。

 

 

「こちらこそ、ありがとうございました。次は全国大会で会える日を楽しみにしています」

 

 

燃えるように赤い夕陽と、寄せては返す静かな波の音が、より強い絆で結ばれた三人を優しく包んでいた。

 

 

 

 

 

 

「でも、今日はまだまだ二人を離さないよ!この後潮騒の湯で皆で一っ風呂浴びたら、ホテルで

両チーム全員と自動車部と蝶野さんとスタッフの皆さん招いて打ち上げだかんね~♪」

 

「ふぇえ!?」

 

「そんなことでもあろうかと、地元の酒造会社に頼んで、特製柑橘系ノンアルコールチューハイを準備しておきました。ホテルにも連絡して、持ち込みの許可は頂いております」

 

「お~流石大垣ちゃん。根回しが早いね~」

 

「大洗さんの戦車は、連盟に頼んで私達の学園艦に直接搬入してもらいました。修理完了は出航と同じ、3日後の予定ですので完了次第ご連絡させて頂きます」

 

「も~大垣ちゃんには感謝してもしきれないよまったく。もうウチのお嫁さんにならない?」

 

冗談を言いながら、てきぱきと段取りを行う二人に、みほは学園艦の生徒会長の逞しさを感じた。同時に、この二人と歩んでいくこれからの戦車道は、一体どんな素晴らしいことが待っているのか、期待で胸がいっぱいになった。

 

「ほらほら行くよ西住ちゃん」

「行きましょう西住さん」

 

もう迷いは無かった。

二人から差し出される手を握り、みほは応える。

 

「はい!!」

 

 

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