しまなみ女子工業学園戦車道履修記   作:柿之川

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第二章 全国大会編
第八話


「大垣さん、遅いですね……」

 

西住みほが呟く。ここは戦車道全国大会の抽選会場、全国の数多ある戦車道を履修している学校の生徒が集い、会場は静かな熱気に包まれている。みほは、先月の練習試合で戦った友人の事を心配していた。

 

「う~ん、意外と新宿駅あたりで迷ってたりしてね」

 

会場内の喫茶店で、みほの向かいに座ってソーダを飲みながら角谷杏が呟く。先月の練習試合での、みほとの和解以来、この二人は気の置けない仲となっていた。今日も二人で、抽選会に参加をしている。

 

「あはは。でも会長、大垣さんに限ってそれは無いですよ」

普段複雑な図面や機械の回路を相手にしている、仮にも工業高校の生徒が、都会の駅の路線図程度で迷うとは考えにくいとみほは思っていた。

 

が、カンが鋭い杏の予想は見事当たっていた。

 

 

「どうしよう…… どの路線の切符を買えばいいのか全然わからない……」

 

 

零は迷っていた。現在地は新宿駅、おびただしい数の路線と乗り場がある新宿駅は、JRの路線が一本通るのみの今治とは比べ物にならない複雑さなのだ。機械の設計図や回路図は分かるのに、駅内の案内図は見てもさっぱり分からない。連休の人の海の中で零は途方に暮れていた。すると両肩を誰かに掴まれて、零はびっくりして振り向く。

 

「ねえねえ、誰かと待ち合わせ中? あそこの茶店でゆっくりしない?」

 

呆然と立っていた零を待ち合わせと思ったのか、いかにもなナンパ男に話しかけられてしまった。

 

「い、いえ あ、あの友達がすぐきますので!」

 

あせった零はそう言って右に逃げようとする。

 

「そんな連れないこといわないでさ~ボクらとお話ししようよ~」

 

が、すかさず右を別のナンパ男の仲間にブロックされて、左に逃げようとする。

 

「あんま見ない制服だけど、キミもしかして東京初めて? 案内してあげっから俺らの車でドライブしようぜ」

 

さらに左からも別の男にブロックされて、手まで掴まれて、もうパニックで泣きそうな零の前に銀髪が美しい、眼光鋭い少女が立ちはだかる。

 

「ちょっと…… あんたら、私の友達になにやってんのよ!? あんまりしつこいと警察呼ぶわよ!」

 

警察という言葉を聞いて、たじろぐナンパ男たちから、零の手を引いて、ずんずんと歩き出す少女。多分自分と同い年くらいだと思うが、握力が強く、零はなすがままに連れて行かれていってしまう。

 

「あ~ぁ行っちゃった。お前が強引すぎるんだよ」

「うるせぇ、上玉だったからついリキんだんだよ!」

「連れの子も美人だったなー 逃した魚はでかいぜ」

 

ナンパ男達はそう残念そうに語るのだった。

 

 

「あ、あの もう大丈夫ですから」

 

駅から出て、なおも手を引っ張り続ける少女に零がそう話すと、やっと掴んだ手を離した。

 

「あなた、東京は初めて? ぼーっとしてたらさっきみたいなのが寄ってくるんだから気を付けなさいよ」

 

「は、はい 気を付けます……」

 

なんだか東京に来てから、いいことがない。零が少ししゅんとしていると

 

「あぁ、ごめん。別に責めてるわけじゃないのよ。それよりあなた、どこか行きたい所があるんじゃないの? さっきからずっと路線図の前に立ってたけど」

 

そう言われて、零が事情を説明し目的地を告げると、

 

「そこなら私の行きたい所と同じだから、一緒に行く?」

 

「本当ですか? ありがとうございます!」

 

ちょっと待っててと言われ駅前で待っていると、少女が駐車場に停めていたサイドカーを出して、零の目の前に乗り付ける。

 

「どうしたの? サイドカーがそんなに珍しい?」

 

「い、いえ…… なんだかご迷惑お掛けしているような気がして……」

 

 少女が投げてよこすヘルメットを受け取った零が申し訳なさそうに話すと

 

「言ったでしょ? 目的地が一緒なんだから二人で行ったほうが効率的よ。だから早く乗って」

 

そう促されて、零はサイドカーに乗った。

 

 

「そういえばあなた名前は?」

「あ、申し遅れました  大垣、大垣零です。はじめまして」

「そう、私は逸見エリカ。こちらこそよろしく」

 

首都の街並みを一台のサイドカーが疾走する。

 

「いいバイクですね、クラシックですか?」

「そう、ドイツの軍用サイドカーのレストア品なの」

 

 

「逸見さんも戦車道をやってるんですか?」

「黒森峰女学園で副隊長を務めているわ、貴女は?」

「しまなみ女子工業学園という学校で隊長を務めています」

 

 

「逸見さんは、隊長の西住さんとは別行動なんですね」

「昨日から前泊して、お世話になってる東京の業者や学校の支援者に挨拶周りに行ってたのよ。西住隊長は戦車道連盟との会議や、他校の隊長との話し合いもあるから、こういう時に裏方が足で動き回ってサポートしないとね」

「すごいなぁ…… 流石は黒森峰の副隊長ですね」

「これが私の役目だから……でも褒められて悪い気分はしないわね」

 

 

「今日は貴女だけなの? 他校は大人数で来ている所も多いわよ」

「みんな学校で練習しています。少し前に練習試合で負けてしまったのがすごく悔しかったみたいで……」

「ガッツがあるいい隊員じゃないの、そういうの私は好きよ。大した理由もなく、雁首揃えて来てる連中とは雲泥の差だわ」

「あ、ありがとうございます……」

「隊長と隊員はいつも合わせ鏡よ。頑張り屋の隊員は貴女のそのままの姿なんだからだから、貴女も胸を張りなさいな」

 

 

「貴女達の学校はチーム名が植物の名前なのね、コチョウランチームは無いの?」

「すみません、まだ……でも逸見さんがティーガーⅡに乗って転校して来てくれたら作ります」

「あはは なにそれ、ばっかじゃないの?」

 

 

抽選会会場に行くまでの間、話は途切れる事無く進んでいく。エリカも自分がいつになく饒舌になっている事に驚いていた。そうこうしている内に、会場に到着した。

 

 

「はいっ到着、お疲れ様」

「逸見さんすみません、お話楽しかったです。本当に、ありがとうございました」

「エリカでいいわ、私も貴女を零って呼ぶから。零の方が役職は上だけど、同い年だし戦車道は私の方が先輩だから敬語は使わないわよ。それでいい?」

「は、はい! エリカさん」

 

 

「エリカ、待っていたぞ」

 

「はっ!西住隊長」

 

 

エリカが背筋を伸ばし応えるのは、黒森峰女学園戦車道で隊長を務める 西住まほ である。

 

 

「すまないな、前泊してもらった上に雑用までやってもらって。エリカがいると助かる」

 

「い、いえ これが役目ですので。詳細は本日中に報告書を提出致します」

 

「分かった。しかし珍しいな、エリカがサイドカーに人を乗せるとは…… 貴女は?」

 

「しまなみ女子工業学園戦車道隊長の大垣零と申します。お会いできて光栄です西住まほ隊長。新宿駅からエリカさんのご厚意で乗せて頂いてたんです」

 

 

「そうでしたか。こちらこそ宜しく、私は黒森峰女学園戦車道隊長の西住まほです」

 

そうして、エリカも交えて少し雑談をしている内に、まほは目の前の無名校の新人隊長に興味が沸いてきた。

 

「大垣さん、よかったら抽選会後に一緒に昼食でも取らないか?エリカも良いだろう?」

 

「もちろんです隊長! 零はどう?」

 

「私も大丈夫です、ぜひご一緒させて下さい」

 

 

そうして、別行動の黒森峰の二人と別れた零は、抽選会場に入り自分の座席を探す。

 

 

「おーい大垣ちゃん、こっちこっち」

 

 

自分を呼ぶ声が聞こえて振り向くと、そこには大洗女子学園の角谷杏と西住みほが座っていた。

 

 

「こんにちは角谷さん、西住さん。先日はお世話になりました」

「いえいえこちらこそ。この前の練習試合以来だねぇ、大垣ちゃんの席私の隣みたいだから座んなよ」

 

 

杏に促されて、席に着く。

 

 

「この前はありがとね。戦車も大垣ちゃんとこで直してもらったお陰ですこぶる快調でさ。皆喜んでるよ」

 

「あんこうチーム、Ⅳ号戦車の操縦手の麻子さんも、大垣さんに感謝してました。すごく操縦し易くなったって。今日も皆学園艦で練習してるんです、また全国大会でしまなみの皆さんと戦いたいって」

 

二人にそう言われて、零は少し照れ臭くなる。

 

「お二人にそう言って頂けて嬉しいですし、整備も皆で頑張った甲斐が有りました。チームの皆も大洗の皆さんと練習試合をしてから、毎日練習頑張ってるんですよ」

 

お互いのチームの近況を話している内に、式典が始まり、いよいよ抽選会となった。壇上に上がったみほが引いた札には8番の文字があり、一回戦はサンダース大学付属高校との戦いが決まった。

 

 

そしていよいよ零の順番になり、壇上に上がり札を引く。

 

 

しまなみ女子工業学園の初戦の相手は、知波単学園に決まった。

 

 

抽選会も終わり、みほと杏は、大洗卒業生主催の昼食会があるとの事で、ここでお別れになる。

零は、その足で会場に併設されている戦車レストランに足を進めた。

 

「あ、零こっちよこっち」

 

少しハスキーな声で呼ばれ、エリカだと気づく。そうして席に向かうと、まほとエリカが待っていた。

 

「お待たせしてすみません」

 

「いいんだ、私達も今来たところだ。エリカ注文を頼む」

「西住隊長はカツカレーセットと、私はビッグハンバーグセット、零は何を頼む?」

「それでは和風おろしハンバーグセットで……」

 

零は何となく居心地が悪く感じる。それもそのはず、自分の真向かいに座るのは日本最強の戦車道学校、黒森峰女学園の現隊長と副隊長だ。こちらは無名校の新人隊長である。なんだか他の席の戦車女子達がざわついている気がするのである。

 

「よし。飲み物も届いた事だし、乾杯といこう。エリカ頼む」

 

「では今日の良き出会いに 「「「プロージット!!!」」」

 

そうして食卓を囲んでの、おしゃべりが始まった。

 

「大垣さんの学校は、五式中戦車が二両もあるのか…… あれは試作車しか残っていない筈だったが」

「詳しい事は私も知らないんですが、大垣重工の資料館に眠っていたらしいです」

「なんとも物持ちのいい企業ね……」

 

「エリカさんは凄くバイクの運転が上手かったです」

「そうだろう? 何せエリカは大型ヘリや飛行船の操縦も出来るからな」

「はー…… 流石エリカさん、抜群の操縦センスなんですね……」

「ちょっとやめて零、なんか恥ずかしい……」

 

 

まほは、雑談をしながら零を分析していた。自分で言うのもなんだが、黒森峰は日本最強の戦車道の学校だ。その学校の戦車道現隊長・副隊長と物怖じせず、場の雰囲気にも流されず話をしている。いい意味での図太さや、落ち着きを感じる。隊長を務める者として重要な事だ。副隊長のエリカとも相性が良いようだ。もし、みほにこの能力があれば……と思うがそれは思っても仕方のない事だと頭を切り替える。

そんなこんなで、話をしていると、あっという間にお別れの時間になった。

 

「今日は色々とありがとうございました、世話になった上に、お昼までご馳走になって……」

「いや、構わない。こちらこそ有意義な時間を過ごせて良かったよ」

「戦車道の事で分からない事があれば、メールか電話しなさい。これ私と隊長の連絡先ね」

 

そう言ってエリカが、まほと自分の連絡先が書いた紙を零に渡す。

 

「零、私達は上手くいけば三回戦でお互いが戦う組み合わせだ。絶対に勝ち進めよ」

「知波単に一回戦負けでもしたら承知しないからね!」

 

そう言われて、頭を下げて二人と別れる。

 

「行きましたね…… 三回戦か…… 楽しみですね隊長」

「そうだな、早速帰艦してしまなみ女子工業の研究だ。今からなら18時には学園艦に帰れるか」

「調布飛行場にヘリを準備していますので、今から行けば間に合います」

 

 

 

一方その頃、大洗女子学園生徒会長の角谷杏は、東京の日本戦車道連盟の門を叩いていた。先日のしまなみ女子工業学園との練習試合のダイジェストDVDと、経済波及効果を記載した資料を持参して大洗の活躍をプレゼンする為である。更に、この資料を、文科省の学園艦教育局と対立している部署に持ち込む予定だ。学園艦の統廃合を強引に急ぐ学園艦教育局と、敵対している勢力は少なからず存在する。杏はそんな部署に大洗の活躍・取り組みをアピールして敵の中に、大洗の味方を作ろうと動いていた。ちなみに、DVDはあんこうチームの秋山ちゃんが、資料は生徒会の河嶋が作成した。不思議と大洗の戦車道チームには一芸に秀でた者が多い。最も、河嶋はその一芸が帳消しになるくらい砲撃が下手なのだが。

 

「さ~て、ちょっくら行きますかね……」

 

そう言って、連盟の門をくぐる。廃艦は絶対に阻止しなければならない。毎日、人知れず杏の戦いは続いていた。

 

 

 

「西住さん!」

 

「あ、大垣さん……」

 

新幹線の待合場で、零がみほに声を掛ける。

 

「角谷さんは一緒じゃないんです?」

「会長は用事があるみたいで、お昼からは別行動なんです」

 

お互い出発まで時間があるので、待合場で二人、雑談をしながら新幹線を待つ。

なんだかみほの元気がないが、零はとっておきのプレゼントを準備していた。

 

「そうだ西住さん、今日はお土産が有るんですよ これをどうぞ」

 

「わっ! すっごいこのボコ、大洗のパンツァージャケットモデル!!? ど、どうしたんですかこれ!?」

 

先ほどの様子からは想像出来ない興奮ぶりに、周りからの視線に気づき、顔を赤くしてみほが縮こまる。

 

「手芸が趣味なので、作ってみたんです。前に西住さんがボコの事を楽しそうに話してくれたので」

 

どうぞと、手のひらサイズのボコのぬいぐるみを、みほの手のひらにそっと置く。

 

「あ、ありがとうございます  あの、大垣さん!」

「どうしました西住さん」

 

零の手を強く握り、みほが語り掛ける。

 

「私、もっと大垣さんと仲良くなりたいんです。だから、わたしの事を名前で呼んで下さい。私も大垣さんの事を名前で呼んでもいいですか?」

 

「もちろんです、みほさん。なんだか、こそばゆいですね」

「そうだね、零さん えへへ、とっても嬉しいです」

 

 

そうして零はみほと別方向の新幹線に乗り、一路学園艦を目指していた。ちなみに座席はグランクラス。祖母が偶には贅沢してきなさいと自費でシートを予約していたのだ。連休にも関わらず空いており、座席がいいのかあまり揺れないので、零は手のひらサイズのボコぐるみを縫い始める。手慰みとよく言うが、手芸は集中できるので、零の数少ない趣味である。ちくちくとぬいぐるみを縫っているとふと視線を感じて目線を上げる。

 

「うん?」

 

「あ……」

 

そこには多分年の頃は小学六年生くらいだろうか、髪をワンサイドアップにした可愛らしい女の子が立っていた。

 

「えっと、どうかしたのかな?」

 

「あ…… その、あの…… それボコ……」

 

女の子がたどたどしく小さな声で喋る、零はそんな様子を可愛く思い、

 

「あぁ、ボコのぬいぐるみ? もう少しで完成なんだけど、一緒に作る?」

 

そう言って、一緒に作ろうと誘うと

 

「いいのお姉さん!? ありがとう!!」

 

そう言って座席に飛び乗ってきたので、慌てて針を除ける。その様子を見て、ごめんなさいとしゅんとする女の子を膝の上に乗せてあげる。

 

「いいのいいの、じゃあ、この子を縫ってくれる?そういえばお名前は……」

「島田愛里寿です、優しいお姉さん」

そう言って抱き着いてくる女の子の頭を撫でる零。内気な子だと思ってたけど、意外と積極的なんなだと感じつつ縫い方を教えてあげる。女の子は最初は慣れない手つきだったが、すぐに慣れて零もその上達振りに驚く。ボコられぐまのテーマを小さな声で歌いながら、二人揃ってちくちくと縫う。そうして完成した瞬間に、二人とも眠りに落ちてしまった。そんな時でも零は針の管理を徹底していた。

 

「そろそろ駅ね、隊長を迎えにいくわよ」

 

「了解アズミ、ちょい待ってね。このビール空けるから」

 

「もールミったら出張先でハメ外さないの」

 

戦車道大学選抜チーム副隊長のアズミ・ルミ・メグミの三人は、敬愛する隊長を迎えに行くため、新幹線内を歩いていた。島田流家元の方針で、隊長は新幹線はグランクラス、飛行機はファーストクラスと決まっていた。雲の上の人なので、それが当たり前だし、3人は疑問に感じていなかった。

 

そうしてアテンダントに許可をもらい、客室内に立ち入ると、3人は隊長が席にいない事に気づき、一瞬パニックになるが、すぐに落ち着いた。

 

一つの席で、隊長が見知らぬ美少女と、座席で眠っている。アテンダントが気をまわしたのか、ブランケットを掛けて眠りにつく二人の様子は平穏に溢れていて、3人はそれぞれが携帯している、隊長撮影用高画質カメラで眠る二人を連写しまくる。その音に気付き、愛里寿は目を覚ます。

 

「三人ともご苦労、すまないが化粧直しをする。少し席を外してくれ」

 

実際は化粧などはしていないが、一瞬で武人の顔に戻ると、三人にそう伝える。人気が無くなった車両で、愛里寿が零に話しかける。

 

「お姉さん、起きて」

 

「う、う~ん 愛里寿ちゃんおはよう」

 

眠たげに目をこする様子が可愛い。駅に着くまでの、今の時間はこの人を独り占めしていたいと愛里寿は考えていた。

 

「すごいね愛里寿ちゃん、こんなに上手く出来るだなんて」

「えへへ、ありがとう」

 

零はすごいすごいと褒める。実際愛里寿にしたら、この程度の事は予備知識が無くとも、零の作業工程を、記憶し最適化して、そのまま作業できるので全く問題がない。

 

「じゃあ、この子達は愛里寿ちゃんにあげるね。可愛がってあげてね」

 

「いいの!? お姉さん ありがとう!!」

 

愛里寿は嬉しくなって零に抱き着く。そうして名前を聞き出すと驚いた。

 

「私の名前は大垣零だよ、愛里寿ちゃん」

 

今年度から、戦車道を必修選択科目で復活させた学園艦の戦車道の隊長だったかと愛里寿は思い出す。

そうして近い内の再会を約束して、連絡先を交換し合い、愛里寿は新幹線を降り、足早に歩き出す。

 

「アズミ、しまなみ女子工業学園についてありったけの資料を集めろ。大至急だ」

「かしこまりました隊長」

 

「ルミは、先日の大洗女子学園としまなみ女子工業学園の練習試合の映像記録を全て集めろ」

「了解しました隊長!」

 

「メグミは家元に連絡して、今からお家に帰るのでパンケーキを焼いておいてと伝えてくれ」

「分かりました隊長」

 

愛里寿は胸ポケットに優しく二つのボコぐるみを入れる。胸ポケットから顔を覗かせるボコは、同じ色でまるで双子のようだった。

 

 

 

電車の中で、みほは考えていた。戦車道レストランで偶然見かけた、姉と、逸見さんと、零さんが楽しそうに話していた所を。その事を思い出すと、焦燥感に駆られる。一体零が、姉達と何を話していたのかを知りたい。零の声が聴きたいという気持ちがあふれてくる。

 

「零さん…… 早くまた戦いたいな……」

 

そう言いながら、零にもらったボコを少しぎゅっと握る。ボコからはきゅぅと苦しそうな音がした。

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