当然のように楽玲は付き合っています。
都合良くJGEに参戦してます。
なんでも許せる人向け。
かつての偉い人は言った。人間は考える葦であると。
この言葉は、INTをあげすぎると葦になってしまうという狙ってんのか狙ってないのか良くわからんバグが発生していた『畜産物語8』において、「無駄に哲学すんなや」という俺達の叫び及び、結局INTを上げまくる戦法がラスボスの突破に有効であったことから乱立していた知らない葦共(俺達)を揶揄する時に使われていた常套句だ。因みに、二番人気は、STR一極ガン上げすることでなぜか最強魔法が使えるようになる「無知の知」スタイルだった。狙ってんの?(二回目)
そんなことはどうでも良く。
今、俺こと陽務楽郎とその恋人たる斎賀玲は、
「味が、多すぎない……?」
「す、すごいですね」
ショーケースにズラリと並べられているアイスクリームのフレーバーの組み合わせに頭を悩ませていた。
JGE会場限定フレーバー、ケミカルオレンジってなんだよ…………ガトリングドラム社コラボ?まじかよ、一個はこれにしなきゃ。(洗脳済み)
今年もJGEは大盛況だった。
さっさとフレーバーを決めないと、長大な列に並んでいる他のお客さん達が暴動を起こしかねない。
こういう時は、限定フレーバー狙いというモットーがある俺ではあるが、もうひとつのフレーバーは比較的オーソドックスなやつにすることにした。
「すみませーん」
「はい!」
店員さんの口は無論笑顔なのだが、その眼光はさながら鍛え抜かれた歴戦の兵士の用に鋭い。若干気圧されつつ、選び抜いたフレーバーの名前を告げる。
「マジカルオレンジと」
もう一個は、この限定特製バニラに、
「ケミカルマッシュルームで」
あ。
「はい!マジカルオレンジとケミカルマッシュルームですね!」
あーーーー!
ちがうちがう、今のはミス!
くそ、まさか俺の意思に反して本能(好奇心)が勝ったというのか!?
あ、店員さんもう完成させてしまったんですね……。作り直しは…………頼めないな……。
「楽郎君、お待たせしまし…………だ、大丈夫ですか?」
「だいじょうぶだよ」
「も、燃え尽きてる……」
◆
この超大型イベントは、列に並ぶこと以外にも問題がある。
「空いてるとこあるかな」
「どうでしょうか」
席に座れるかという問題だ。
アイスクリームなので、食べ歩きでも問題がないのだが、そろそろゆっくりしたいという思いがないでもない。
しかし、俺達のように昼食後にアイスを買ってゆっくりしたい、という層は大勢いるようで当然のように座れるところはない。
プラチナパスポートであっても、そこまでは担保してくれないからな。
「知り合いとか、いないかな」
あわよくば、席譲ってくれねえかな。
『ハーイ、ケイ!そんなジャパニーズミニサイズじゃ体を冷やせないわ!』
『まって、シルヴィ、その量は人間が食べられる分量じゃ』
『け、ケイ!甘いものばっかりじゃなくて塩辛いものも、食べたくなってきたわよね!?』
『メグさん?気持ちは嬉しいんですけど、その大量のポテトを一体』
……………わーお、ハーレム両性魚類。
見なかったことにしよ。
「あの、あそこに、魚臣さんが」
「玲さん、馬に蹴られる趣味はないでしょ?」
馬は馬でも、飛びっきりのじゃじゃ馬な気配がしてる。
さっさと退散しよ。
気を取り直して、席確保へ。
大分混雑しているがこんなところではぐれたら、笑い話にもならないので玲さんの左手をとる。
ビクッと玲さんが硬直した気配があるけど、俺は意識的にそれを無視する。こうでもしなきゃ、玲さんと手も繋げない。
しかし、まあ、本当に席空いてないなあ。食べ歩きコースになりそう、
「あ」
「あ」
「あ」
「(それどころではない)」
知り合いじゃん。
半分席譲ってくれたりします?
◆
知り合いというのは、凸凹コンビというか、ネフホロ2でもトップランカーなルスモルコンビだった。
「サンラク、ネフホロ2にログインしろ早くしろアップデート来て新要素増えたからハリーハリー!」
「夏蓮、ステイ」
相変わらず絶好調そうだな。
「そういえば、早口少女が今回もSNSのトレンドになっていたそうで」
「ネフホロのためなら自己犠牲も厭わない、サンラクちゃんとログイン、サイガ-0も一緒に」
モルド、この妖怪ネフホロはいいぞを止めてくれ。保護者がしっかりしろよ。
「それで、サンラク」
「ん?」
「アイス溶けるけど、食べなくて良いの?」
「あ」
妖怪に翻弄されていて、忘れていた。
玲さーん、こっちに戻ってこないとアイス溶けちゃうよ。
玲さんは無事にこっちの世界にログインできたようだった。安心して、アイスを食べることができる。
「って、お前らもアイス買ったのかよ」
「会場結構暑いからねえ」
「葉、ん」
「ほい」
「んー」
…………うん。
お前ら、ノーアクションで当然のように一口交換とかすんのな。
いや、別に良いんだけど、なんか気恥ずかしい。
そっと目を反らすと、我が恋人さんと目があった。
彼女の視線はちらちらと、ルスモルの方を向く。
あー。
「玲さん、味見する?」
毒毒しい毒っぽい色をしているフレーバーと、ショッキングオレンジなフレーバーで良ければだけど。
「あ、いえ、決して、そういうわけではなく」
「そう?」
それなりにお付き合いしてきたので、さすがに玲さんの言葉がそのままの意味ではないことは分かる。俺は、匙を彼女の側に差し出して、しばらく停止。
玲さんも、しばらく静止して、意を決したのか、パクっとそれを咥えた。
「…………葉、あれが真のバカップル」
「しっ、夏蓮聞こえるよ」
「人目を気にせずに、あーんをする。これが最近の若者バカップル」
聞こえてんぞ。ルストお前どこ目線なんだよ。
「バカップラァイッ!?!」
ほらー、玲さんバグっちゃったじゃん。お前ら、責任とれよ。