ウマ娘たちと担当トレーナーの日々   作:室賀小史郎

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囲えー囲えーウマ娘ー

 

 とある日の午後。

 無事に座学が終わり、殆どの生徒たちはトレーニングに精を出す。

 

 一方でチーム『スターラピッド』は本日のトレーニングは休み。

 山西は変わらず書類仕事をこなしているが、

 

「トレぴ〜、ウチらと遊ばん? つか遊べし! もち遊ぶっしょ!?」

「どうせその仕事が終われば時間空くんだろ? それまでは大人しく待ってるからよ」

 

 ヘリオス、タップの二人からお出掛けのおねだり攻撃をされている。

 山西は鋼の意志で黙々と作業をしているが、一度ロックオンすると折れないヘリオスとタップ。

 エースたちに至ってはいつものことなので止めに入ることはない。一応最初だけはエースが「仕事の邪魔はすんなよ?」と声はかけたものの、それだけだ。

 何故ならエースたちもトレーニングがオフなら、そのオフを山西との時間に費やしたいから。

 それに、

 

「分かったから、これが終わるまでは静かにしててくれると嬉しいなぁ……」

 

 山西なら本人の押しの弱さのせいもあってすぐに折れてくれる。

 彼からの欲しかった返事が聞けた瞬間、ヘリオスとタップは彼には分からないように口端を上げ、無言でハイタッチして勝利を讃え合った。

 その後はもうみんなルンルン気分で山西との放課後デートを楽しみにしながら、静かに山西が仕事を終えるのを待った。

 

 ◇

 

 ヘリオスとタップが静かになったのもあり、残りの業務をすんなり終わらせることが出来き、単発アルバイトを高速で終らせてきたアイネスも無事に合流。

 出来上がった書類を退勤前に事務課へ届け、タップに背中を押され、ヘリオスに手を引かれ、お目当ての場所へと連れてかれた。

 

 そのお目当ての場所というのが、

 

「…………場違い感が半端ない上に目がチカチカするチカ」

 

「お〜、ここがシービーが言ってたカフェか〜……なんかすっげぇ内装してるな……」

「前にライアンちゃんから聞いてたから気になってたのー!」

「ウチも! パマちんが激押ししてくれたから、めーっちゃ気になってた! 内装ヤバかわ! テンションぶち上がる!」

「私もスペちゃんから教えてもらってて、一度は来てみたかったの」

「アタシはパールに教えてもらったが……Very cuteな店だな!」

「ダイヤちゃんに聞いてましたけど、とっても可愛くてワクワクしますねー!」

 

 近頃話題の人気スポットであるカフェだ。

 女性向けのポップな外装をしており、店内もパステルカラーが散りばめられたファンシーな空間が広がっている。

 全席ソファーで一階だけでなく二階まであり、一度入店してワンドリンクオーダーするだけでも閉店時間までいられるというのだから驚きだ。

 しかしそれだけなら探せば他のカフェだって同じようなシステムのところはあるだろう。

 では何故トレセン学園のウマ娘たちがこんなにも話題にするのか……それは―――

 

「んじゃ、早速メニューを頼もうぜ! あたしはシービーが言ってたオムライス! チーズソースで!」

「あたし、ライアンちゃんがおすすめしてくれたいちごパフェ!」

「ウチもー!」

「私はスペちゃんにニンジンハンバーグを勧めてもらったけれど……食べ切れる自身がないし、寮で夕飯が入らなくなるのも困るから、ソフトクリームにしようかしら」

「アタシはエースと同じオムライスだ! オーロラソースで頼む!」

「あたしもオムライスで、デミグラスソースでお願いします!」

「……僕はアイスコーヒーください」

 

「承りました! 少々お待ちください!」

 

 ―――

 ―――

 ―――

 

「お待たせしましたー!」

 

『お〜!』

「…………ジーザス」

 

 ―――ファンシーなデザインのお店とは裏腹にデカ盛りメニューで話題のお店でもあるから。

 メニュー表を開けると最初に『シェア推奨』とある理由がこれ。

 オムライスはパラパラになるまで炒めた5合のチキンライスに贅沢に卵を10個使った一品。流石に卵は巻けないので乗せているのだが、ふわとろでドレスドオムライスに仕上げているのもポイントだ。

 そしていちごパフェ。これもまた凄い量で、高さはなんと驚異の40センチ。スライスしたいちごをまんべんなく生クリームのエベレストに盛り付け、ストロベリーソースでコーティングし、最後はストロベリーアイスとシャーベットが楽しめる一品だ。

 またスズカが頼んだソフトクリームもラングドシャで作られた筒に30センチ盛られているし、山西が頼んだアイスコーヒーは1リットル入るメガジョッキである。

 

「……フードファイター専門店じゃないか、こんなの……」

 

 嘆く山西がちびちびとコーヒーを飲む中、

 

「うんめぇ! こりゃシービーに感謝だな!」

「It's delicious! ママにも食べさせてやりたいよ!」

「デミグラスソースがとっても美味しくて、チキンライスによく合います! チキンライスがパラパラなのも最高です!」

「映えヤバ! 味ヤバ! 量えぐ! ジョーダンやお嬢たちに写メ送っとこ!」

 

「あちゃー……ちょっと軽率だったかも……」

「私も……」

 

 アイネス、スズカ以外はテンション爆上がりで堪能している。

 

「トレーナー、ちょっと助けて欲しい、かも……」

「私もいいですか……?」

「分かったよ。まあ、食べ切れなくても最悪エースたちがいるから」

 

 アイネスたちのお願いに山西は苦笑いをしつつも、その願いを聞き入れた。

 ただ、

 

『っ!?』

 

 エースたちに電流走る。

 何故なら意図せず愛する山西とシェア出来る……ということは間接キスが出来るというボーナスイベントが起きたから。

 いつもならこれくらいの量は軽く食せるエースたちだが、そこは恋する乙女心の方に軍配が上がる。

 ただ山西に無理をさせるのも将来の妻としては良くないため、

 

「トレーナーさん、あたしらのも一口ずつやるよ!」

「味は見といて損なしっしょ!」

「遠慮なく味見てくれよな!」

「さぁさぁ、どうぞ!」

 

 みんな一口だけにした。

 エースたちにとって重要なのは山西の口に自分たちが使っているスプーンが触れるということだから。

 みんなの気迫に山西が断れるはずもなく、山西は素直に差し出された物を食べさせてもらい、エースたちは満足そうに頷いて、また食事を再開する。

 

「量はアレだけど、味は申し分ないね。コーヒーもコンビニで売ってるコーヒーより全然美味しい」

 

 気を取り直し、山西もコーヒーを堪能。

 普段は適当にその時特売されている中で一番安いインスタントコーヒーを飲んでいるため、こういうちゃんとしたお店で出されるコーヒーを味わうのは久しぶりなのだ。

 

「そうですね。ソフトクリームも滑らかで美味しいですし、添えられてるウエハースも美味しいです」

「いちごパフェも美味しいの! 量はアレだけど!」

 

 量に苦戦するスズカとアイネスも味はお気に召した様子。

 一方、エースたちに至っては既に半分以上を平らげていた。

 すると、

 

「お食事中に申し訳ありません。少々よろしいでしょうか?」

 

 山西たちのテーブルに紺色のスーツを身にまとった女性と一眼レフカメラを持った男性がやってくる。

 返事をする山西に女性は自身の名刺を差し出しながら口を開いた。

 

「私、〇〇出版の▲▲と申します。こちらはカメラマンの◇◇です」

「ああ、はい。どうも」

「実は今、ここのカフェの特集記事を出すために実際に訪れたお客様方に取材をしているんです。ここのカフェはウマ娘に大変人気だとお聞きしていて、実際にこうしてスターチームである『スターラピッド』の皆様にお会いすることが出来たので、是非にと! なので、お食事がお済みのあと少しお時間よろしいでしょうか?」

 

 こうした突発的なことは珍しいが、エースたちも全国的に人気なウマ娘。なので珍しいだけで、過去に何度かはこうしたことは経験している。

 山西がみんなに目配せすると、みんなは了承すると言うように頷いたので、山西はみんなの意見を汲んで記者の話に同意するのだった。

 

 ◇

 

 食事が終わり、突発的だがインタビューを受けることになったチーム『スターラピッド』の面々。

 ありきたりな味の感想や量の感想。外装やら内装やらの感想を一通り聞き終わり、無事にインタビューが終わったかと思った瞬間―――

 

「では最後にお聞きします。カップルで訪れるのにここのカフェは向いていますでしょうか?」

 

 ―――急に変化球を投げ込んできた。

 この手の質問は無難に答えたとしても変に妙な解釈を生んだり、妙な記事にされがち。それ故、山西はインタビューを止めようとしたが―――

 

「こういう店で食べさせ合うのも雰囲気が出ていいんじゃないか? 現にあたしらもトレーナーさんと食べさせ合って楽しかったしな」

 

 ―――エースが包み隠さず暴露してしまった。

 嘘は言っていない。しかし山西としてはその答えはアウトオブアウト。すぐに訂正するために口を開こうとしたが―――

 

「パフェとか恋人とシェアするのにもってこいなの♪ トレーナーにあーんってするのも楽しかったの!」

「オムライスもシェアするのはありよりのあり! 盛り付けもおしゃんだし、食べさせ合うのもテンション上がる! トレぴも美味しそうに食べてくれたし!」

「特別な人と甘い時間を過ごすなら、こういうお店で、というのも全然いいと思います。量は可愛くないかもしれませんが」

「テーブルもある程度離れて設置されてるから自分らだけの雰囲気に浸れるからな。愛を育むのに一役買ってくれる店なんじゃないか?」

「あたしたちもトレーナーさんととってもいい時間を過ごせましたから、カップルさんでもドンと来いって感じだと思います!」

 

 ―――アイネスたちも続々と答えてしまったため、止めることは出来なかった。

 ここまで答えてしまえばインタビューはもうその方向へまっしぐら。

 

「なるほどなるほど! では、皆様はとても良いお時間を過ごせたということですね! それにしても見目麗しいスターウマ娘たちに愛されて山西トレーナーさんは幸せ者ですね!」

「え……あの……」

 

 言い淀む山西だったが―――

 

「そりゃあ幸せだろ。でもな、記者さん。あたしらはトレーナーさんがいたからあれだけレースを熱くさせることが出来たんだ。それは本当にアスリートウマ娘として幸せなことだ。だから今度はあたしらがトレーナーさんを幸せにする番なんだ」

 

 ―――エースがなんともカッコいい答えをしてしまう。

 これにはもう記者も目を輝かせて頷き、カメラマンも山西の手を恋人繋ぎで握って幸せそうに笑うエースを連写した。

 山西が放心状態のまま記者たちは去り、エースたちはご満悦。

 後日発刊された特集記事には『担当と担当ウマ娘による美談!』と紹介されていたが、エースとの写真がバッチリと掲載されていたため、読者たちからは『リア充』、『勝ち組』などと言われたそう。

 滅入る山西をよそに、エースはとても良い笑顔でその雑誌を複数部入手したとか。因みにアイネスたちも雑誌は購入したが、エースの写真部分には自分の写真を貼り直したそうな。




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