ウマ娘たちと担当トレーナーの日々   作:室賀小史郎

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遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。
今年も楽しんでもらえるよう、頑張って執筆していきますので、よろしくお願い致します。

ということで、長らくお待たせしました!
今回から新チームのお話となります!
よろしくお願いします!


チーム『百花繚乱』の日々
可憐な花は強か


 

 ウマ娘というのは皆が容姿端麗。そんな彼女たちが集まるととても華やかだ。

 そんな見目麗しい彼女たちが見せる圧巻の走りとライブパフォーマンスが、多くの人々の胸を熱くする。

 

 レースを引退しても、その美貌でファッションモデルやタレントなどの職に就く子もいるし、中には既にゴールドシチーのようにモデル活動をしながら学園生活と両立している生徒も。

 しかし、

 

「ねぇねぇ、あの子……とっても可愛くない? 見学に来たのかな?」

「何言ってんの。あの人は――」

 

「ダンナ、探したぜぃ! ちょっくら来てくんな!」

 

「――『百花繚乱』のトレーナーさんでしょ」

「あっ、そうだった! いやぁ、女の子に見えちゃってつい……」

「耳、頭にないでしょ? 尻尾もないし」

「だって可愛かったから……」

「それはまあ、そうよね」

 

 ウマ娘でもつい見惚れてしまう美貌を持つトレーナーがいる。

 

 彼の名は宮武部 太正(みやたけべ たいせい)。

 

 トレセン学園に所属するトレーナーの中では若い25歳。いつも笑みを絶やさず、花のように可憐で、美少女のような容姿端麗の男性トレーナー。

 しかし美しい花に毒や棘があるように、彼はちょっぴりサディストなところがある。所謂腹黒系男子なのだ。

 身長は彼の担当バであるイナリワンより高いが、耳を加えられると負けるくらい小柄で、髪型は濡れ羽色した髪を肩甲骨辺りまで伸ばし、項が見える様にヘアゴムでまとめたポニーテール。

 服装は基本的に紺色のテーラージャケットとカーキ色や白のスラックス、暑い時期はワイシャツとループタイにし、正式な場ではスーツを着用している。

 見た目通り華奢ではあるが、実は柔術四段の実力者。スリムな見た目をしてはいても100キロを超える相手にも難なく投げが打てる腕前だ。

 宮武部の実家は代々武家として細々とだが長きに渡り代を繋ぎ、今ではアスリートウマ娘のトレーナーを輩出する隠れた名家であり、当主である宮武部の父親はURAの重役を務めている。

 そんな家の一人息子として蝶よ花よと育てられつつ、文武両道と教育されてきた。

 

「イナリさん、どうされたのですか?」

「話はあとだ! とにかく来てくれぃ!」

「分かりました」

 

 こうして宮武部はトレーナー人生で最初に担当することになったイナリワンに急かされ、彼女の背におぶさった。

 

 ◇

 

 イナリに連れられてやってきたのはチームで使用している部室。

 部室のドアは閉まっているのに、中からはウマ娘たちの声が聞こえてくる。

 

「……またですか?」

「面目ねぇ……でもこればっかりはあたしでも手出し出来ねぇんだ。喧嘩なら大歓迎なんだがよぉ」

 

 肩を落とし、項垂れるイナリを見て、宮武部は「別にイナリさんを責めているのではありませんよ」と優しく返して、彼女を安心させるように首をトントンと撫でた。

 そうすればイナリは「ありがとよ」と笑みを浮かべる。

 彼女の気持ちが回復したことを確認した宮武部は、スッとドアの方へ視線をやった。

 そして―――

 

「10秒、差し上げます」

 

 ―――とドアの向こうにいる担当バたちへ静かに告げる。

 これで十分、ウマ娘である彼女たちには届くのだ。

 その証拠にドアの向こうからしていた声はピタリと止み、即座に部室のドアが開く。

 一同は横一列に綺麗に整列し、気を付けをして宮武部の言葉を待った。彼のオーラを察してか、皆一様に表情は固く、額や背中に冷や汗が浮かんでいる。

 

「……ふむふむ。やってしまったという自覚はあるようですね。それは重畳。ではその調子で何があったのかを、順番に聞かせてみてください」

 

 笑みを絶やさず、腕を組み、前に整列する担当バたちに静かに告げる宮武部。

 すると、

 

「まず、私が部室のお掃除をしようと皆さんに呼びかけました」

 

 イナリの次にチームに加入したスーパークリークが手をあげてそう言った。

 

「しかしその際に少々問題が生じてな」

「おいおい、あれを少々で済ませてたまるかってんだ!」

 

 クリークに続いて口を開いたのは3番目に担当することになったビワハヤヒデ。

 そしてそんなハヤヒデに即座に噛みついたのが4番目に担当となったヒシアマゾンだ。

 

「私はいいと思ったんだけどなぁ」

「ローレル……頼むから話をややこしくしないでくれ」

 

 人差し指を頬に当てて涼しい顔で言うのは5番目のメンバーであるサクラローレルで、そんな彼女に困り気味に言葉を返すのが6番目のメンバー、エアグルーヴ。

 

「おやおや、困ったねぇ」

 

 そして右頬に手をやりみんなの様子を心配そうに見て言うのが、7番目の担当バであるワンダーアキュートだ。

 

 宮武部は眉間をつまみながら「要点だけを述べるように」と言えば、

 

「クリーク先輩がトレーナーのためにとベビーベッドを部室に置くと言い出したんだ。私やイナリ先輩は必要ないと言った。言ったが、そこからハヤヒデ先輩が『そもそもトレーナー君を寝かせるベビーベッドを置くならば、それなりのサイズになるだろう。であるならば部室では手狭だ』などと言い出し、そこからローレルが『ロッカーをずらせば置けるかも』などと言いおって……今に至る。本当に自分で自分が不甲斐ない限りだ」

 

 エアグルーヴが要約してくれたので、宮武部は状況をやっと把握することが出来た。出来たのだが言い争っていた理由がなんとも無意味なことだったので、宮武部は思わず隣に立つイナリの肩にもたれてしまう。

 そんな彼をイナリは『おーよしよし』と慰めるように肩を貸しつつ、その頭をぽんぽんぽんと撫でた。

 

「はぁ……因みに訊きます。ベビーベッドを置いたとして、どういう場合に私はそこに寝かせられるのでしょうか?」

 

 向き直って宮武部が問うと、

 

「私たちがお着替えしている間です。いつもトレーナーさんはお外で待っていますから、可哀想で……それに私たちが目を離している間に何かあったらと思うと……」

 

 クリークがそんなことを返してきたので、彼はとうとうイナリの背中に隠れるようにクリークから身を守る。

 

「私はこれでも柔術有段者な上に正真正銘の男で社会人です。誰に危害を加えられるというのですか。何故、女子生徒が着替えてる間ベビーベッドに寝かされねばならないのですか。私は乳飲み子ではないのですよ。もうとっくに卒業しているんです」

「でも!」

「クリークさん、そこまでいくとあなたが私を見くびっていると私は捉えますが?」

「そんなことありません! でもトレーナーさんは私が守護らないといけない大切な方なんです!」

 

 悲痛な表情を浮かべて訴えてくるクリーク。今この場面だけを見れば、感動的な男女のワンシーンに見えるかもしれない。

 しかし忘れないでほしいのは、ベビーベッドを部室に置くなどと言っている事実があることだ。それも社会人である宮武部用として。

 

「そのお気持ちは嬉しいですし感謝しますよ。しかしベビーベッドなんていりません。そしてハヤヒデさんとローレルさん。あなた方もクリークさんの戯言を真に受けないでください。何が少々手狭になるですか……そもそも置きませんから。何がロッカーをずらせば置けるですか……置かないのですからずらすも何もないでしょうに」

 

 ぴしゃりとクリークの提案を拒否し、ハヤヒデとローレルに注意をする宮武部。

 そうすればハヤヒデとローレルは謝るが、クリークは物凄く残念そうに耳を垂らし、不満を表すように尻尾を揺らす。

 しかしどんなにゴネようと宮武部の主張は変わらない。

 なので宮武部はパンパンと手を叩き、強制的に話しの場を終わらせる。

 

「では皆さん、掃除を再開してください。それとも掃除はもう終わりましたか?」

 

 宮武部からの問いに皆に代わってイナリが「掃除ならもう終えたぜ」と告げれば、宮武部は「それは重畳」と頷いた。

 

「であるならば、トレーニング前にミーティングを設けます。トレーニングウェアに着替え終えたら合図をください」

 

 そう言うと宮武部はみんなに背を向け、側に設置してあるベンチに座って持っていたタブレットで資料チェックを始めるのだった。

 

 ◇

 

「ではミーティングを始めます。皆さんも察している通り、今回のミーティングはドリームシリーズの件です」

 

 ホワイトボードの前に立った宮武部が軽く主旨を説明する。

 チーム『百花繚乱』は全員がドリームシリーズに進出し、毎年長距離では高い人気を誇ってファンを熱くさせているのだ。

 

「まず言わずもがな、長距離部門はクリークさんとハヤヒデさん、ローレルさんの三人に出てもらいます。ヒシアマさんとエアグルーヴさんは中距離を。そしてイナリさんとアキュートさんは変わらず、昨年同様ダートに出てください」

 

「私とヒシアマが中距離に行く理由はなんだ?」

 

 宮武部の言葉にエアグルーヴが手をあげて訊ねる。

 昨年、二人はヒシアマがマイルでエアグルーヴは短距離とそれぞれ出走し、優勝こそは逃したもののどちらも3着と高成績で終えた。故に今年こそはと二人共に思っていたのに先の宮武部の距離変更。

 やる気満々だっただけに二人が説明を求めるのも仕方のないことだ。

 

「お二人のやる気は十分に理解しています。追込を得意とするヒシアマさんが距離の短いマイル、そしてそもそも短距離をあまり得意としていなかったエアグルーヴさん……お二人を敢えて厳しい環境に放り込んだのは私で、そんなお二人は前評判を覆す走りを見せたのですから、その意気込みも分かります」

 

 しかし――と宮武部は続ける。

 

「お二人は私が育て、鍛え上げた精鋭です。故にドリームシリーズで最も選手層が厚い中距離を制してくれると信じています。だからこそマイル、短距離と敢えてお二人の苦手とする距離に昨年は出走させましたから」

 

「どういう意味かちゃんと言いなよ。何も距離の変更が嫌ってワケじゃないんだ。ただ今になって高まってた気合と距離感覚をわざわざ壊す理由を知りたいんだよ、アタシとエアグルーヴは」

 

 睨むような視線をやって言うヒシアマに宮武部は「ごもっともですね」と小さく零して、

 

「昨年は今年の布石です。ヒシアマさんには追込での距離の重要性を。エアグルーヴさんには差し切るスピードの感覚を。それぞれトップクラスの子たちとのレースで体感してもらったんです」

 

 言葉を紡ぎ、二人は彼の言葉にハッと耳がピクリと動いた。

 マイルは距離が短く、もう少しのところで届かなかった。短距離に至っては最高峰のスピード感に思わず息を呑んだ。

 そして二人は思ってしまったのだ―――

 

『もう少し距離が長ければ……!』

 

 ―――と。

 距離を理由に負けた言い訳をする二人ではない。しかしアスリートウマ娘の性で『得意な距離だったなら』と思ってしまう。

 宮武部はトレーナーとして二人のそうした性格もよく理解した上で、昨年は今期の飛躍のために涙を呑んでもらったのだ。

 

「クラシック路線組をティアラ路線組が覆す……楽しいレースになるでしょう? それに今年は貴婦人も出走するそうですから、女傑と女帝も望むところではありませんか?」

 

 ニッコリと純朴な少女のような笑みを見せて言う宮武部。しかし笑顔とは裏腹にとてつもない野心が溢れている。

 そんな彼を見て、みんなは『いい性格をしてる』と思いつつも彼の期待に応えようと力強い頷きを返すのだった。

 こうして今シーズンの目標が決まり、本格的にチーム『百花繚乱』が始動する。




ということで、今後はチーム『百花繚乱』の日々を綴っていきます!

読んで頂き本当にありがとうございました!
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