ウマ娘たちと担当トレーナーの日々   作:室賀小史郎

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※ウマ娘のアプリにてファインモーションの設定が王族からさる国の王族の末裔に変更されましたが、ここでは当初の設定のまま書かせてください。ガッツリ王宮で過ごす話も書いてしまったので(⁠・⁠_⁠・⁠;⁠)
フィクションの一つ、設定の一つということで、ご了承お願いします。


ジュエルスターズの5月

 

 世間はすっかりゴールデンウイーク一色。

 チーム『ジュエルスターズ』に至っては前半と後半で分け、前半の連休はまる一日トレーニングに費やし、後半の連休は午前中のみトレーニングを行い、午後を休みにし、最後の日だけ完全オフというスケジュールにしている。

 

 そして本日はその最終日。

 しかし完全オフではあっても、早朝にルビーたちは時間を決めて軽く走った。完全オフとはいえ、普段のルーティンを崩すと余計なストレスを与えてしまうから。

 それに本当にトレーニングのように走るのではなく、学園の校門前に集合して豊藤宅まで走るといったウマ娘にとっては散歩程度である。

 

「いらっしゃい。風呂の準備はしてあるから、汗を流しておいで」

 

 当然のようにやって来たルビーたちを快く迎え入れる豊藤。しかしそれもちゃんとルビーがメンバーを代表して前日の夜に伝えているからであり、豊藤も別にルビーたちが邸宅に来ることには反対しないのだ。

 それだけ婚約してから豊藤の警戒感を破壊……取っ払ってきた賜物である。

 

 汗を流し、豊藤の邸宅にいるメイドたちに身支度を整えてもらい、愛する豊藤と一緒にモーニングを取った。(ルビーたちの着替えは邸宅に十分のストックが保管されている)

 

「さてさて、オフということでオレの家に来たってことは、今日はデートのお誘いってことでいいのかな?」

 

 豊藤の言葉にルビーたちは揃って頷きを返すと、

 

「りょーかい。なら何かリクエストはある?」

 

 更に豊藤は問う。

 こういう日はデートとか関係なく、彼女たちがリラックスして過ごせるように心掛けているから。

 しかしルビーたちは豊藤と一緒に過ごせれば満足なので、これといって浮かばない。

 皆一様に思案していると、

 

「特にこれと言ってリクエストがないのであれば、ゲームセンターなんてどうですか? せっかくのデートですし、考えている時間も勿体ないです!」

 

 ダイヤがそう提案する。

 彼女の実家がアミューズメント施設を運営しているのもあるし、とにかく外に出れば何かしら興味を引く物があるだろうと。

 故にみんなは揃ってダイヤの案に頷き、学園から最寄りの駅前へ向かうことにした。

 

 ◇

 

 ダイヤの実家が経営する駅前で一番大きなゲームセンターにやって来たチーム『ジュエルスターズ』であるが、隠し切れないセレブリティのせいで逆に浮きまくっている。

 しかし幸いなのは周りの人たちが豊藤たちを見ても、騒がずに『あ、デートしてる』と彼らの邪魔をしないように配慮してくれているから。

 世論は完全に豊藤イコールルビーたちの婚約者というのが浸透しており、一緒に歩いているイコールデートだと認識しているのだ。

 これもファインを中心にSNSで『フィアンセとデート♡』、『写真はいいですが、話しかけて来るのはご遠慮してくださいますと幸いです。彼との時間を大切にしたいので』等々の情報発信している賜物だったりする。因みにファインがSNSに投稿した写真や動画は、毎回『殿下の恋路は順調』とアイルランドの国営放送から民放まで幅広く報道されており、アイルランド国民から『早く結婚しろ』と多くの祝福コメントで埋め尽くされているのだとか。

 皆でやって来たゲームセンターは地下1階から5階まであり、各階ごとに遊べるゲームの種類が統一されていている。

 

「相変わらず騒がしい場所ですね」

「貴女のご友人といい勝負ね」

 

 ルビーの小言にジェンティルが皮肉な言葉を返せば、ルビーは「あの方よりは騒がしくありません」といつも通り塩対応で返す。

 

「みんな何かやりたいゲームはないの?」

 

 豊藤の言葉にみんなは辺りを見回した。

 すると、

 

「あっ、あちらのゲームは如何ですか? 最近導入されたゲームなんです!」

 

 ダイヤがとある方向を指差す。

 みんながダイヤの指先に視線を移すと、

 

『スターウマ娘?』

 

 ゲームのタイトルに首を傾げた。(クラウンを除いて)

 

「はい! あちらのゲームは私たち、ウマ娘のゲームなんです! プレイヤーは大画面に映し出されるウマ娘レースで誰が一着になるかを予想するシンプルなゲームです! 他にも育成モードもありますが、それは慣れてきて興味が湧いたらということで」

 

 ダイヤが簡単に説明をするとみんなは『なるほど』と頷き、既にゲームをしたことがあるクラウンだけは「いいじゃない♪」とそのコーナーへ向かう。

 

「クラちゃん以外は初めてだと思うので、こちらの専用のカードとコインをどうぞ」

 

 ダイヤが指をパチリと鳴らせば、店員がゲームをプレイするのに必要なアイテムをみんなに配ってくれた。

 そしてみんなは少々戸惑いつつも、ダイヤに言われるがまま席に着く。

 

「お〜、かなり本格的だ……」

 

 席に着いてすぐに豊藤が感嘆の言葉を口にすると、ダイヤはフンスフンスと胸を張った。

 前面にある大きなスクリーンには名だたる名ウマ娘たちのパドックシーンが流れ、どの子も再現度の高いグラフィック。それでいてしっかりと表情も豊かで、背景と合わさっても違和感がない。流石は日本が誇る大手メーカーが手掛けるゲームだ。

 その後はダイヤの親切丁寧なレクチャーを受けつつ、みんなは新感覚のウマ娘レースを体感するのだった。

 ただ、

 

「……このゲームの私は一体どういった考えでこのレースに臨んでいるのでしょう。甚だ疑問です」

「私も同じ考えですわ。こんなにずさんなコンディションでレースに挑もうなどと……」

 

 ルビーとジェンティルは普段から自他共に厳しいため、例えそれがゲームであっても納得がいっていない様子。

 何故なら、ゲーム内に出て来たルビーとジェンティルは別々のレースだったが、二人共に調子が絶不調のままパドックに現れたから。

 実際の二人が到底やらかすことのないコンディション管理に、二人は思わずムッとしてしまったのだ。

 

「ゲームなんだから、そういうこともあるよ」

「そうですよ! それに絶不調でも掲示板は外さなかったじゃないですか! 善戦ですよ、善戦!」

 

 ファインとクラウンがフォローを入れるが、ゲーム内の自分であっても負けは負けなので、二人にフォローされてもルビーもジェンティルも耳を絞ったまま。

 一方でダスカとドゥラメンテも『その気持ちはよく分かる』と、二人に同情を寄せている。そしてダイヤに至ってはなんとも言えず苦笑いだ。

 

「実際のレースで二人がコンディションを崩したままレースに出るなんてオレがいる限り起こり得ない……ゲーム内のオレは何をしでかしたんだ?」

 

 そして豊藤も豊藤でゲーム内の自分のコンディション管理の甘さに表情が曇ってしまっている。

 実際のところゲームはゲーム。コンディションに至っては完全ランダムであり、ゲーム内でのトレーナーは一切関係ないし出てもこないので考えるだけ無駄である。

 しかし豊藤は遊びに本気になれる男なのだ。

 

「これはゲームではあるが、オレを戒めるためのゲームなのかもしれない。全トレーナーが一度はやるべきゲームだな。この理不尽な愛バの状況を叩きつけられることで、現実では絶対にこんな無様で無責任なコンディション管理をしてはいけないと嫌でも教えてくれる。それでいて仮にコンディション管理を不味ってしまった場合、自分が愛バに対してどれだけのフォローが出来るかもシュミレーション出来るのも大きな利点だ」

 

 ブツブツと分析モードで早口になる豊藤。

 一方で先程まで耳を絞っていたルビーとジェンティルは、彼が発した『愛バ』という単語のお陰でやる気が絶好調になり、他のメンバーも『やっぱり私(アタシ)の婚約者は最高』と頬が緩んだ。

 

 ◇

 

 ちょっとしたアクシデントはあったものの、なんだかんだその後もレースでコインを稼ぎつつ、ゲームを楽しんだ一行。

 豊藤は自分の愛バたちが出る度にゲーム内の彼女たちを本番さながらに応援し、ルビーたちはルビーたちで『ゲームでも応援してくれるんだ』と思って胸の奥がトクンと甘く響いた。実際、本番中の豊藤の応援風景はSP隊が様々な角度から撮影しているし、その映像を寮に戻って各々で鑑賞するのもレース後の楽しみだったりする。因みに豊藤の応援スタイルは本番だと大声で応援しつつ、太ももを叩く。ゲームセンター内では周りに配慮し、ずっと太ももを音が響かないように叩いていた。

 

「はぁ、なんかゲームというよりレースのシュミレーションを見ていた気分で、逆に疲れた……」

 

 ゲームセンター内の休憩スペースのソファーに座り込み、一人だけ妙に疲れ切っている豊藤。

 そんな彼が可愛らしくて、ルビーたちは思わず尻尾が揺れた。例えゲームでも彼は常に自分たちのことを考えてくれている……この事実がルビーたちは狂おしい程に嬉しく、この上ない甘美な思いにより抜け出せなくなる。

 

「なら気分転換に今度はプリクラ撮りましょうよ」

「それならゴールドシチーさんが宣伝モデルになっている機種がありますから、せっかくですしそれにしませんか?」

 

 ダスカの提案にダイヤが更に提案をすれば、みんなは『いいね』と頷き、豊藤の手を引いてプリクラフロアへ向かうことにした。

 

 ◇

 

 フロア一帯にプリクラの機械が並び、休日なのもあって多くの女性客やカップルで賑わっている。

 周りは豊藤たちを見て思わず「本物じゃん!」、「お嬢様でもプリクラ撮るんだ」、「お似合いってあの人たちのためにある言葉じゃね?」等々、言葉を零してしまっているが、誰も気にしていない。

 有力者たちが開くパーティーや社交場等でも、ここまであからさまではなくても似たような物だから。

 

「ちょうど空いてますね!」

 

 お目当ての機種を指差してダイヤは言うが、先回りしていたSP隊員たちが安全確認した上で周りの人たちに断りを入れて確保していたのだ。

 

「トレーナーさんは真ん中です!」

「ですよねー」

 

 ダイヤに言われるがまま中央に立たされる豊藤。

 あとはルビーが彼の前に立ち、左隣にファイン、右隣がダスカ。ジェンティルは豊藤の左肩から顔を出し、クラウンはその反対から顔を出す。最後にドゥラメンテがジェンティルの左隣で、ダイヤがクラウンの右隣に立てば、フォーメーションの完成だ。

 しかし5回撮影されるので、その都度ポジションは変わる。ルビーだけは身長のこともあってポジションチェンジはないが、豊藤に後ろから手を回してもらえているので大満足。実際、ルビーの実家の自室には豊藤にあすなろ抱きをされたシーンの肖像画が飾られている。(高名な画家に描かせた)

 プリクラ撮影が終わると、今度はクレーンゲームやレーシングゲーム、ゾンビアクション、音楽ゲームと様々なゲームを遊び、最高のゴールデンウイークデートを過ごした。




読んで頂き本当にありがとうございました!
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