ウマ娘たちと担当トレーナーの日々   作:室賀小史郎

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お待たせしました!
今回からまた新しいチームのお話になります!
楽しんでもらえますよう、頑張って更新します!


チーム『メジロ』の日々
優雅なティータイム


 

 メジロ家。

 長きに渡り多くの優秀なアスリートウマ娘を輩出してきた名家。

 レース界隈だけでなく、多種多様な分野にも明るく、度々大きな企画を行っている大富豪だ。

 

 本日はそんなメジロ家で(メジロ家としては)ささやかなパーティーを行っていた。

 主催はメジロ家当主であるが、主役はメジロ家当主が心から信頼を寄せている一人の男性。

 名は河部泰弘(かわべやすひろ)28歳。

 身長は177センチ。体重は平均。しかしバランス良く筋肉も付いていて、普通に立っているだけでも分かるしなやかで健康的な肉体美の持ち主。目鼻立ちがハッキリとしていて、日本人離れをしている美丈夫。

 そんな彼はメジロラモーヌとメジロアルダンの家に仕える執事の三男坊だ。

 

 長男は家業の執事を継ぎ、次男は母の実家の家業である温泉旅館の跡取りとなるため実績を積んでいる。

 実直な長男、負けず嫌いな次男ときて、三男坊は自由気ままな性格。

 しかし兄弟の中で人一倍頭が良く、大抵のものは一度見たり聞いたりすれば、難なく出来た。

 故に飽きるのも早かった。

 そんな彼が唯一飽きなかったものが、ウマ娘が走る姿を見ること。

 まだ幼いメジロラモーヌが楽しそうに走る姿をいつも面倒を見る名目で眺め、身体の弱かったメジロアルダンが走れるようにサポートしたのも彼だ。

 

 四年制大学を卒業して定職に就かず短期バイトなどで変わらず気ままな生活をしていると、メジロ家当主であるお祖母様から中央のトレーナーになる気はないかと言われ、トレーナーの実際の仕事内容を聞き、そんな面白そうな仕事があるのかと知った河部は、たった半年でトレーナーライセンスを取得してしまうのだった。

 

 そんな彼はメジロ家当主からの指名によりメジロ家のウマ娘を一手に任せられている。

 今日はささやかでも格式ある披露宴であるため、その肩書きに恥じぬようメジロ家お抱えの仕立て屋が仕立てたグリーンのメジロカラーであるタキシードを身につけている河部。

 普段から河部も常に背広は着用しているが、ネクタイまではしない。

 一方で願掛けとして、担当しているウマ娘が出走するレース時には必ず緑と白のストライプ柄のネクタイを締める。

 

「はぁ、早く終わらないかなぁ」

「あはは、お祖母様がお仕事で遅れていますから、まだ始まってすらいないのにもうですか? 観念してください、トレーナーさん♪」

「なんなら私と逃げちゃう? 私はトレーナーさんとなら全然いいよー♪」

 

 早速ネクタイを緩めたくて仕方ない河部に、メジロライアンとメジロパーマーは快活に笑ってシャンメリーが入ったグラスを渡した。

 

 ライアンは河部がチームで4番目に受け持つことになったウマ娘。

 実は河部とライアンは髪型がお揃い。

 ライアンは幼い頃から敏感肌で髪を長くすると皮膚炎を患ってしまうため、短くするしかなかった。

 そのことでライアンが自分の髪型にコンプレックスを抱いていた際に、ならお揃いにしようと河部に言われ、それが今の今まで続いている上にコンプレックスも感じなくなった。

 

 一方、パーマーは3番目。

 メジロの名に相応しくない。自分には合わない。と日々劣等感を感じていたパーマーを『そのままの君もメジロだ』と河部が支え、そのお陰で自分の走りに自信を強く持てるようになった。

 

「ライアンの言う通りですよ、トレーナーさん。それに今夜のパーティーはとても大切なものなのですから、お行儀良くお待ちになられてください」

「アルダンさんの言う通りよ。それに、その……ネクタイ似合ってるんだから」

 

 河部に優しく諭すように注意するのはメジロアルダンで、ネクタイを褒めたのはメジロドーベル。

 アルダンは2番目に担当することになったウマ娘で、河部からすれば幼い頃から面倒を見ている一人。

 身体が弱く、日々室内で過ごすことが多かったアルダンを優しく支え、アスリートウマ娘として走れるようにし、強い信頼関係で繋がっている。傍から見れば熟年夫婦顔負けの以心伝心具合だ。

 

 ドーベルに至っては相変わらず少々素っ気ない態度は見られるものの、それは色々とドーベル自身の恥ずかしいところを河部が知っているし、信頼をしているから。

 自信がなく、人の目を気にする性格もあってレースで堂々と走れなかった彼女を、河部が堂々と走れるようにした。因みにドーベルは5番目。

 

「トレーナーさま〜、ネクタイを緩めてはいけませんけれど、お椅子に座ってゆっくりすることは出来ますわ〜。ですから、我慢我慢、でしてよ〜」

「皆様の仰る通りですわ、トレーナーさん。レースの時と同じように、気を引き締めていてくださいまし」

 

 メジロブライトは相変わらずふわふわとした口調であるものの、しっかりと河部を注意。

 そしてメジロマックイーンに至っては少し厳しめに念を押した。

 

 ブライトは6番目に担当することになったウマ娘。

 クラシック路線の方はアルダン同様振るわなかったものの、遅咲きでも見事に春天を制してメジロの誇りを示せた。

 めげずに前を向いて走れたのも、全て河部のサポートのお陰。

 

 そしてマックイーンは7番目でチームの中では年齢のせいで一番遅い加入になったが、メジロの至宝として河部の手腕の元で春天2連覇を達成した。

 物言いこそは他のメジロのご令嬢たち同様、またはそれ以上に堂々としているが、スイーツに目がないのでそこを良く河部に注意され、そういった点はまだ年相応。

 

「相変わらず、貴方は飽きっぽいのね」

「俺は自由を愛してるのー」

「ふふっ……そう」

 

 メジロラモーヌは口を手で押さえて可笑しそうに笑う。

 彼女こそ河部率いるチーム『メジロ』のチームリーダーにして、URA史上初のトリプルティアラを達成したウマ娘。

 いつも凛とし、メジロの名を背負って生きるラモーヌが唯一肩肘張らずに素の自分を晒せる相手……それが河部だ。

 

「にしても、パーティーするなんて大袈裟だよな。全員がドリームシリーズに進出出来たからって……」

「あら、これくらい大袈裟なものではなくてよ? 貴方はよくご存知よね?」

「メジロって怖いなぁ」

「ふふふ、もっと早く気付くべきだったわね」

 

 ラモーヌはたおやかに笑うと、河部の手にしていたシャンメリーのグラスを奪ってグラスを空にする。

 側にいたメイドに空いたグラスを渡すと、先程の柔らかさを引き締めた。

 

「大変長らくお待たせ致しました。ご当主様のご入場です」

 

 執事が静かながらも通る声で告げると、会場にいる誰もが背筋を伸ばす。

 ガタンと重厚な緑色の扉を二人の執事が開けると、メジロ家当主である『お祖母様』が威風堂々とグリーンカーペットの上を歩き、壇上へと上がった。

 

「皆、よく来てくれましたね。先ずは、遅れてしまったことをお詫びします」

 

 そう言って小さく頭を下げるお祖母様。

 

「では、本日の主役をお呼び致します。河部家、三男、泰弘……壇上へお上がりなさい」

 

 促された河部は背筋を伸ばし、胸を張って歩を進め、当主、来賓と一礼して壇上へと上がり、お祖母様のすぐ右隣へ立った。

 

「皆も知っての通り、我がメジロのウマ娘たちを信頼して任せている人物であります」

 

 威厳ある声色ながら、優しさもある紹介に河部は小さく、それでも流麗な仕草でお辞儀する。

 

「彼のお陰で、任せたウマ娘たちはそれぞれがメジロの名に恥じぬ素晴らしいウマ娘となれました」

 

 お祖母様の言葉にその場にいる誰もが深く頷いていた。

 中でも走ることは難しいとされたアルダンがドリームシリーズに進出出来ていること自体が奇跡と言われているくらい。

 何も知らない他人からすればトゥインクルシリーズでの成績が他のメジロのウマ娘たちと比べると劣ってしまっていると思うだろう。しかしアルダンの場合はそもそも走ることさえ出来ないだろうと言われていたのだ。

 故にそんなアルダンがトゥインクルシリーズを経て今でもアスリートウマ娘として走っているということは、この場にいる誰もが一重に河部の功績だと思っている。

 

「故にこうしてこの度、この場を設けました。彼が今担当しているメジロのウマ娘たちとの婚約式に」

 

 お祖母様の言葉に会場にいる者たちは揃って拍手をした。

 これだけ優秀で信頼の置ける人物がメジロのウマ娘たちと婚約をする……メジロ家の未来は明るい、と。

 ただ一人だけ―――

 

「………………?」

 

 ―――河部だけはこの状況が飲み込めていない。

 それもそのはず、彼は今日ただただ来シーズンのドリームシリーズに向けた激励会だと思っていたし、父からもそう告げられていたから。

 停止していた思考を再度動かし、目だけ視界の端に見える父親へ向ける。

 すると父親はそんな息子の視線から逃げた。それはもう一目散に。脱兎の如く。

 

「これからも私の孫たちを頼みましたよ? もう貴方がいつ我が家に加わってもいいようにしてありますから」

 

 にこやかに、そして決して拒否させないように、婚約証書(控え)を河部へ渡すお祖母様。

 それを河部は引きつった笑顔で受け取る。すると執事(父親)がドアを開け、報道陣たちを招き入れ、フラッシュライトの嵐が河部を捉えた。

 当然、質問はない。質問は既にお祖母様が先に全て答えているから。

 それに『今のお気持ちは?』なんてのは愚者がする質問だ。何しろメジロ家に加われることがどれだけ凄いことなのか分かりきっているし、普通なら喜んでいると思っているのだから。

 

「………………」

(マジでここまでするのかよ!)

 

 故にその場にいる誰もが、河部のこのなんとも言えない心の叫びを知らない。

 

 ◇

 

 婚約式が終わり、河部は自身に与えられた邸宅に連れて来られた。

 メジロ家のお屋敷に比べれば小さいが、一般人からすれば贅沢な邸宅。

 サッカーコート1つが丸々収まる芝の庭に、クチナシ、キンモクセイ、ボタン、バラといった様々な生け垣にパーゴラ。

 玄関を潜れば高い天井に、決して安くないシャンデリア。両手にある階段を上がれば、ずらりと部屋がある上、どの部屋にもテラスがある。

 終いにはメイドに侍従に料理人、庭師と普通のご家庭にはいない使用人たちの数々。

 

「ココハドコデスカ?」

 

 心ここにあらず。ロボットのような抑揚のない問いを虚空に投げる河部をよそに、

 

「いずれは別荘になるけれど、仮住まいにしてはまあまあね。あとでこの正面玄関から入ったところに私が描いた家族(チーム)の絵を掛けましょうか。そうすれば少しは華やかになるもの」

「姉様、そういうことは旦那様がお決めになることです。それに旦那様ならきっと素晴らしいアイデアを出してくれますよ」

 

「わたくしはお庭にハンモックを置きたいですわ〜♪」

「アタシは噴水置きたいかも。ほら、子どもとか出来たら暑い日はそこで水遊び出来るし」

 

「あたしアスレチックコース作りたいですね!」

「おお、いいねー! 私もその案にさんせー!」

 

 みんな楽しそうにあれをこうしようと思案している。

 

「トレーナーさん、今後とも私(わたくし)たちと一心同体で歩んでくださいね♪」

 

 マックイーンにトドメの一言を言われ、河部は『ああ、メジロになってしまった』と心から思った。

 

 こうしてチーム『メジロ』は世間からとても祝福され、河部との新しい日々をスタートさせる。




ということで、今回からチーム『メジロ』のお話になります!
チーム名はまんまの方がいいかなと思って捻りなく名付けました! やはりtheメジロ家って感じの方が大御所感あると思って♪

今回も読んで頂き本当にありがとうございました!
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