あなたは常識人ですか?
それとも非常識な人でしょうか?
常識とはなんですか?
非常識とはなんですか?
ある人がこれが常識。と言えば、またある人がそれは非常識だと言う。
常識というのは一人ひとりの中にあり、一般的に常識というのは社会生活における健全な一般人が共通に持っている、または持つべきだとされる、普通の知識や思慮分別ということだ。
よって、
「…………メジロ家ってなんでもありなんだなぁ。舐めてたわ。割とガチで」
「何がですの? ここならば、誰にも邪魔されずに存分に楽しめますわよ? なんたってメジローランドですから!」
マックイーンがさも常識だと言っているようなことは決して社会常識とは言えない。
今日のチーム『メジロ』は完全オフ。普段から忙しくしているラモーヌもオフだ。
そして早朝4時に河部はラモーヌたちにモーニング突撃(起こし)をされ、使用人たちに着替えさせられ、専用ヘリに乗せられて日本某所にあるメジロ家が運営する、限られたゲストしか入園出来ない『メジローランド』に強制連行された。
メジローランドはメジロ家当主がラモーヌのトリプルティアラ達成の記念として建てた、広さ約6000㎡ほどの遊園地としては小さな遊園地。
メジロ家が所有する某海の某島の某所の一画にあるため、メジロ家と繋がりがある者たちしか訪れない。
しかしメジロ家と繋がりがあるということはそれなりの人物たちであるため、落としてくれる金額もそれなりであり、ここはパパラッチ等がいるかもしれないといった心配もないため、ファミリーと周りの目を気にせず楽しんだり、世間には公表してない関係の人々が安心して楽しめるテーマパークなのだ。因みに貸し切りもそれなりの(お金持ちたちからすればお安い)値段で出来る。
パーク内にはジェットコースター、観覧車、ゴーカート、空中ブランコ、コーヒーカップならぬティーカップ、迷路といったアトラクションがあり、和洋中レストラン、メジロ館、お土産ショップと勢揃い。
メジロ館はメジロ家のこれまでのアスリートウマ娘たちのレース映像やウイニングレイ、シューズ、盾が展示されている。盾に至ってはレプリカであるが、それは天皇陛下から下賜賜った盾であるから。
またお土産品で人気なのは『メジロの恋人』というラングドシャクッキーと『メジロサブレー』というメジロ家の家紋を模したサブレー。
テーマパークの名前やお土産品の名前と色々と方方にケンカを売ってはいそうだが、メジロだからセーフなのだろう。
「……とりあえず寝ていい?」
パークの入り口前にある広場。そこの中央に置かれたトリプルティアラを掲げるラモーヌの銅像の真向かいにあるベンチに座り込み、天を見上げる河部。
しかしそんなことが許されるはずがない。みんなこの日のために目一杯愛する河部との思い出を作れるように準備してきたのだから。
故に河部は、問答無用でライアンにお姫様抱っこされ、メジローランド内へ連行されていくのだった。
◇
「オープン記念で一度だけ来たことあったけど、あの時のままだなぁ」
「トレーナーさんって遊園地苦手な感じ?」
「どっちでもない。ってのが本音かな」
「じゃあ大丈夫だね♪ 無理矢理ってのは流石に私もいい気持ちしないし!」
「……婚約式は無理矢理って感じじゃない?」
「あ、そろそろ来るっぽいよ!」
「パーマーが心のキャッチボールを拒否した!」
河部がそう叫ぶと同時にジェットコースターが急降下。パーマーは「ウェーイ♪」とノリノリだが、河部は「話を聞けー!」と別の意味で大絶叫だった。
◇
「うわぁ、コーヒーカップを大好きな人と乗るの、夢だったんです♪」
「ライアンは純粋で穢れた俺の心を浄化してくれる作用があるな。それとこれティーカップね」
「もう! ムードを壊さないでくださいよ!」
「でもこういうシチュエーションもラブコメではよくあるでしょ?」
「あ、確かに……って、意識させないでください!」
「真っ赤に染まるライアンはぷりちーだなー」
「やめてくださいってば!」
からかってくる河部からその場を乗り切ろうとティーカップを高速回転させるライアン。そのせいでムードはぶっ壊れてしまったものの、目が回って伸びてしまった愛する河部をまたお姫様抱っこするというささやかな望みが叶ったライアンは、とても幸せそうだった。
◇
「ねぇ、アルダンさんや?」
「はい、なんでしょうか、トレーナーさん?♡」
「空中ブランコってこんなに接近して乗るの?」
「はい、落ちたら大変ですから♡」
「大変ではあるけれども……こうね?」
「当てているんです♡ 好きですよね?♡」
「……黙秘権を」
「黙秘は肯定です♡」
空中ブランコが終わるまで、河部はアルダンのアルダン山脈を腕に感じ、どぎまぎさせられた。そんな河部をアルダンはとても愛おしく思い、より一層河部への愛を募らせたそう。
◇
「観覧車って普通向かい合わせで乗らない?」
「何? 文句あるの?」
「ドーベルとわたくしでトレーナーさまをサンドイッチ〜ですわ〜♪」
「景色見ないの?」
「だから、なんでそんなもの見る必要あるのよ。好きなもの見て何が悪い訳?」
「トレーナーさまは横顔もと〜っても素敵でしてよ〜♪ 景色なんかよりも〜♪」
「……さいですか」
「全く。文句ばっかり……素直じゃないんだから」
「おまいう」
「ドーベル〜。流石にそれはおまいう〜ですわ〜」
「なんでよ!?」
観覧車が一周するまで騒がしく過ごしたものの、ドーベルもブライトもしっかりと河部の腕に抱きついて、愛する河部の横顔を堪能するのだった。
◇
「君がいつの間にかフードファイターに転向しているとは思わなかった。何故事前に相談してくれなかったんだ? 俺たちの仲なのに」
「普通にお食事をしているだけではありませんか!」
「いいか、マックイーン? デザートのみはバランスが悪い」
「ご心配なく! ここのスイーツは全て専属パティシエが作る低糖質低カロリースイーツですわ!」
「低糖質低カロリーでもちりつもなんだよ。例えそれが1キロカロリーだとしても100食も食べれば100キロカロリーなんだよ!」
「そんなに食べていませんわ!」
「その出っ張った腹をへこませてから物言えよ!」
「……もう、これはトレーナーさんとの愛の結晶でしてよ?」
「寝言は寝て言え。モリパクパックイーン」
「酷いですわ! やけ食いですわ!」
当然、そんなマックイーンの暴挙を河部が許すはずもなく、頼もうとしても従業員たちに河部がトレーナーとしてストップを出したことでこれ以上のスイーツは提供されなかった。
そして罰としてマックイーンはゴーカート代わりとしてパーマー、ライアン、ブライト、河部を1人ずつ背負ってゴーカートコースを5周することになるのだった。
◇
「…………」
「…………」
「ここは貴方と私の愛の結晶よ」
「そうだな。この優勝レイを見るとあの時の感動が今でも鮮明に蘇る」
「……ふふっ」
「笑うなよ」
「笑いたくもなるわ」
「どうして?」
「私の口から言わせるの? 悪い人」
「……ラモちゃんも俺と同じ気持ちってことな。恥ずかしがり屋さんめ」
「……不愉快だわ」
「じゃあどうする?」
「……今はどうもしないわ」
「え、何それ怖い」
「あら、それは愉快ね」
河部はその後もラモーヌと共にメジロ館のラモーヌと手にした栄光の思い出を見て回ったものの、ラモーヌが何をするのか怖くて思い出に浸るどころではなかったそう。
そんなこんなで1日中ラモーヌたちとメジローランドで過ごした河部は無事邸宅に帰り、当然のようにラモーヌたちもその日は泊まって同じ部屋で朝を迎えるのだった。
―――――――――
皆さんは常識というものを知ってますか?
常識というものは人それぞれではあるものの、強い固定概念を構築してしまい、それが視野を狭めてしまう可能性も孕んでいる。
『続いてのニュースです。メジロ家が所有するプライベートテーマパーク、メジローランドにて、昨日河部トレーナーと彼が指導するチーム『メジロ』のウマ娘たちが甘いひと時を過ごしたというおめでたいニュースが入っています』
テレビのアスリートウマ娘関連の情報番組で、女性アナウンサーが河部たちのオフを紹介していた。
常識的に考えればこんなニュースはワイドショーやゴシップとされる。
しかしそこはメジロ家。報道とは世論を味方に付けることも出来る、体のいい媒体でもあるのだ。
『いやぁ、仲睦まじいですな。メジロ家の未来は明るい。最初にトレーナーとはいえ、立場も責任もある成人男性が未成年かつ学生であるメジロ家のご令嬢たちとご婚約されたと聞いた時は私もすごく驚いたものですが、何も疚しい関係ではありませんしね。河部トレーナーも誠実な御仁ですし、メジロ家が婚約者に指名したのも頷けますよ』
コメンテーターの男性の言葉に他のコメンテーターたちもうんうんと笑顔で頷いている。
画面には河部とラモーヌたちが楽しくテーマパークで過ごしている様子がダイジェストで流れ、リアルタイムで画面下に番組に対するウマッターコメントもすごい勢いで流れている。
『リア充』
『人生勝ち確』
『爆ぜろ』
『尊みひでよし』
『ありがとうございます。これでまた捗ります』
等々、コメント数も視聴率も鰻登りだ。
しかも街頭インタビューの映像まであるくらいで、
『幸せそうでいいですね』
『なんかこっちまで幸せな気持ちになりますね』
『パマちん、彼ピとラビュラビュ爆アゲリア充ウェーイ♪ 今度ノロケ聞いてやっから覚悟よろ♪』
『生でその光景を拝見したい気持ちもありますが、やはり当事者たちだけで行われる尊き時間でもありますから、もうそれを考えるだけで―――』
『あ、大丈夫です。いつものことなんで。暫くすればまた心臓が動き出しますから。それはそれとして、おい、河部トレーナーこの野郎。幸せそうでいいなこの野郎。今度なんか奢れよ!』
等々、世間も河部とラモーヌたちの関係を祝福している。
「……どうしてこんなことに……」
どんどんどん外堀がタングステン鋼並みに構築されていく。
河部は別にラモーヌたちと将来結婚することに何も不満はないものの、ここまでおおっぴらにされるとは予想していなかった。
しかし頭の片隅で『メジロはやるよな』と納得してしまっている。
「プロデューサーに連絡して、今度は私たちだけのコーナーを作ってもらいましょうか」
「やめて、ラモちゃん」
「あら、残念ね」
「楽しむな」
「ふふっ♡」
こうして河部は今日もラモーヌたちに囲まれて、学園内の注目を浴びるのだった。
読んで頂き本当にありがとうございました!
そしてお知らせなのですが、今年の投稿はこれで終わりにします。
リアルが忙しく、年末年始に執筆している時間が取れないので。
新年一発目はまた遅くて大変申し訳ないのですが、1月26日とさせてください!
早いですが、皆様良い年末年始を!
来年も楽しんでもらえる物語が書けるよう頑張りますので、よろしくお願い申し上げます!